スマートフォン版はこちら

『Cyclist』編集部が体験リポートモンベル「佐渡SEA TO SUMMIT」 景色が変わる「自転車+カヤック+登山」の“垂直トライアスロン”

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
  • 一覧

 アウトドア総合ブランドのモンベルが手掛ける「SEA TO SUMMIT」(シートゥーサミット)というイベントをご存じだろうか。「スイム・バイク・ラン」が“横のトライアスロン”ならば、こちらは「カヤック・バイク・登山」を組み合わせた“縦のトライアスロン”。といっても競技ではなく、海から山へ「自然の循環を体感する」というテーマをもった誰でも楽しめるスポーツイベントだ。得意のバイクを軸にいつもとは違うアクティビティや景色が楽しめるとあって、サイクリストの参加も増えている。その魅力に迫るべく、7月8、9日に開催された「佐渡SEA TO SUMMIT」に『Cyclist』の記者が挑戦した。

真野湾を望む大佐渡スカイライン。バイクステージはサイクリスト垂涎の絶景と激坂 Photo: Kazuya SASAKI

競技ではない環境スポーツイベント

 テントや寝袋、バックパックなどのアウトドアアイテムでおなじみのモンベルは、いわゆる“山屋”のイメージで、一見スポーツバイクとは無縁のブランドという印象がある。しかし機能に定評のあるレインウェアやドラム型のフロントバッグ、輪行袋や吸汗速乾性に優れたアンダーウェアなど、実は要所要所で多くのサイクリストの自転車ライフを支えている存在なのだ。

見慣れたバイクの横に… Photo: Kyoko GOTO
見慣れないカヤック Photo: Kyoko GOTO
「SEA TO SUMMIT 2017」は全国12カ所で開催 ©montbell

 そのモンベルが手掛けるイベント「シートゥーサミット」(以下STS)は、人の力で海(カヤック)から里(自転車)、そして山頂(登山)へと進む中で自然の循環に思いを巡らせ、自然について考えようという環境スポーツイベント。ゆえに環境に負荷をかけないよう、参加者の上限を300人と設定し、登山ステージもランではなく歩き限定。イベント構成も初日の環境シンポジウムと、翌日のアクティビティの2日間に渡って行われている。

 STSがスタートしたのは2009年。鳥取県の皆生・大山で開催したのを皮切りに、2017年7月末現在は南は愛媛県西予から北は北海道の大雪旭岳まで全12会場で開催され、近年参加者数を伸ばしている。各地域の自然や文化をたっぷり堪能できるという魅力もあるが、ユニークな参加形態も人気を集めている理由の1つだ。

「トライアスロンは水泳の練習が必要だけど、STSはやってみようと思ったらすぐチャレンジできるのがいい」と話す佐渡島在住の長藤孝修さん Photo: Kyoko GOTO
自転車もカヤックも好きという佐渡島在住の江龍田章さん Photo: Kyoko GOTO

 通常のトライアスロンは全種目を1人でこなすが、STSでは個人参加に加えてチーム参加の枠がある。例えばカヤック、バイクのいずれかが得意な人どうしがチームを組み、最後の山は一緒に登るというスタイルもOK。もちろんカヤックもバイクも他の人に任せて、自分は登山のみという人もいたり、組み合わせは自由。自分が得意とする分野をもちながら、アウトドアの趣味を異にする友人とも楽しめるのがこのイベントの魅力ともいえる。

大学では自転車部だったという3人。「たまにはいつもと違うアクティビティにもチャレンジしてみたい」とチームで参加 Photo: Kyoko GOTO
「チームnont-dell」の皆さん。チームだけどそれぞれ個人の部で出場 Photo: Kyoko GOTO

 コースプロファイルは各大会ごとに個性がある。今回の佐渡STSはカヤック約5km、バイク約25km、登山約4.5kmの全長34.5km。登山は比較的軽めのコースで、1172mの標高差をほぼバイクステージで駆け上がる。しかしここで注目したいのは、バイクステージの中間地点にある中継地点まではほぼ平坦であるということ。つまり残りの12kmで約900mほどを上るという、坂好きのサイクリストのためにあるといっても過言ではないコース設定となっている。

佐渡STSのコースプロファイル ©montbell

自転車では得られない水面からの景色

 このコースプロファイルを知ってか知らずか、イベント当日の朝はサイクリストらしき参加者も多く見かけた。最初のカヤックステージがスタートする直前、筆者と同様にサイクルジャージの上にライフジャケットを着用し、パドルを漕ぐ練習をするサイクリストたちが仲間のように見えて安心する。

不慣れなカヤックを前に、直前のパドリング練習 Photo: Kazuya SASAKI
会場で参加者に配られていた経口補水液。夏のアウトドアスポーツは水分補給が命綱 Photo: Kyoko GOTO

 「カヤックをもっていない」という人でも心配はいらない。数に限りはあるが、ほぼ全ての会場でカヤックのレンタルを行っているので、エントリー時にその可否を確認できる。カヤックに挑戦してみたいという人は、モンベルが各店舗などで実施している「モンベルアウトドアチャレンジ」というイベントを利用して事前に体験しておくのも良いだろう。

ライフジャケットも着用して準備万端。最初のカヤックステージにいざ出発! Photo: Kazuya SASAKI

 準備万端。いよいよ最初の海のステージへと漕ぎ出す。筆者はチームでの参加だが、カヤック、バイク、登山の全ステージに挑戦する。普段バイクで鍛えているのは脚と体幹。この“総合格闘技”のようなイベントに一抹の不安を抱くものの、スタートの合図が鳴ればそんな緊張もどこへやら。チームの番号が呼ばれると同時にスイッチが入り、「えいっ」と海原へ漕ぎ出した。

 晴天にも恵まれた当日は波も穏やか。パドルで水面をなでるよう軽く漕ぐと、カヤックが想像以上にすいーっと進む。次第に肩の力が抜け、景色を楽しめるようになると、視野いっぱいに佐渡島の青い海と空が広がる。自転車では体験できない景色が新鮮で感動的だ。沖にあるブイをぐるりと迂回し、浜へと漕ぎ戻る。これから上る山が一望でき、たしかに海から上ってゆく皆の姿は空へと上ってゆく水蒸気のようだと実感した。

最初は不安だったが、少しずつ慣れていく Photo: Takahiro TANAKA
自転車では得られない光景。たまにはこういう視点も新鮮 Photo: Kyoko GOTO

サイクリストも悶絶必至「大佐渡スカイライン」

 「海のステージ」の次はいよいよバイクで走る「里のステージ」だ。今回はせっかくなので全身モンベルアイテムでコーディネート。ウェアはもちろん、ヘルメットやシューズ、そしてロードバイクまですべて揃えることができるのだ。さすがの吸汗速乾性を誇るジャージに加え、ヘルメットやシューズも非常に軽量でリーズナブル。さらにロードバイクも日本人体型を考慮したジオメトリーのヒルクライム用バイクと、なかなかの力の入れようだ。

次はバイクステージ。ヘルメットにシューズ、そしてバイクまで全身モンベルでフル装備! Photo: Kazuya SASAKI

 ここから25kmのバイクステージ。普段は「山ガール」という女性が平地でロードバイクを体験し、ヒルクライムがスタートする中継地点でサイクリストの男性にバトンタッチするというチームもあった。こうした初心者と経験者が入り混じり協力しあう光景もSTSならでは。筆者はもちろん全行程一人で走り切る気満々。得意のバイクでかっこいいところを見せようと、鼻息荒く飛び出した。

白雲台に向けて25kmのライドスタート。得意のバイクステージでかっこいい姿を見せたいところ Photo: Kazuya SASAKI
いつもは「山ガール」という宇野麻里子さんはチームメイトのバイクを借りて13km先の中継地点まで出走 Photo: Takahiro TANAKA
「水を得た魚」もとい「バイクを得たサイクリスト」 Photo: Kyoko GOTO

 不慣れな手付きでカヤックを操っていたサイクリストたちは、ひとたびバイクにまたがれば水を得た魚。なじみの感覚が逆に新鮮で、自転車の気持ち良さを再認識する感じがおもしろい。

 などといってられるのも束の間。少しずつアップする斜度に、この先に待ち受ける金山の存在を感じ始める。過酷なヒルクライムイベントの舞台としても名を馳せる「大佐渡スカイライン」。のちに地元の人に聞いた話では、「大佐渡スカイラインを自転車で上るなんてとんでもない」と恐れられている場所だそう。

 中継地点を過ぎ、観光施設「史跡 佐渡金山」を過ぎたあたりから急に斜度が増し始めた。巨大な金脈を掘り進めるうちに山が割れたという「道遊の割戸」(どうゆうのわれと)が存在する佐渡金山。ただならぬ雰囲気をまとう深山は、次第にその強烈な個性を見せ始める。

独特の雰囲気を醸し出す金山周辺。その様子はまさに深山幽谷 Photo: Kyoko GOTO
激坂ヒルクライムを前に選手交代。得手不得手を補いながら楽しめるのもこのイベントならでは Photo: Kazuya SASAKI

 ヒルクライムゾーンの平均斜度は6%程度だそうだが、それはあくまで緩急含めた平均斜度。とわかっていても、これは明らかに違うと感じた。それ以上だ。カーブはどう見ても10%超で、アウトコースでさえも‟よじ上る”ような印象だ。そして脚を休ませない直登が追い打ちをかける。この組み合わせが延々と繰り返す。

さすがのサイクリストも悶絶の表情 Photo: Kazuya SASAKI
坂に慣れていない人の中には自転車を下りて押し歩く人も Photo: Kyoko GOTO

 次のカーブの先こそは斜度が緩むかも…という淡い期待も毎回粉砕。山道に入ると坂が襲いかかってくる壁のように見えてきた。さすがは全国屈指といわれる激坂コース。これだけでも十分なのにカヤックと登山も合わせるなんて、ほのぼのとしたイベントながら、このタフさには思わず「さすがはモンベル」といわずにいられない。もはや自転車媒体の意地にかけて足だけはつかないようするのが精いっぱいだった。

余裕の表情で上る岩崎弥彦さん。山登りのときもテントなどを担いでMTBでアプローチするという強者 Photo: Kyoko GOTO
その横であまりのきつさに目線が下を向く筆者 Photo: Kazuya SASAKI
やっとスカイラインの最高地点に到達。どんな坂でも終わりはある… Photo: Kyoko GOTO

 しかし、最高地点に上り詰めた先には見事な景色が開けた。境目がわからないくらい青い海と空。上り切った達成感と安堵感で解放感もひとしお。「大佐渡スカイライン」─きつさも絶景も名前負けしていない素晴らしいコースだ。視線と同じ高さで浮いているように見える雲に、すっかり忘れていた「自然の循環」というイベントの趣旨を思い出す。ひんやりとした風を感じ、いまやっと自分は雲になった、と感じた。

視線の先に広がる海と空。「大佐渡スカイライン」、名前負けしていない Photo: Kyoko GOTO
仲間のゴールを喜び合う Photo: Takahiro TANAKA
バイクステージをゴールした2人。山のステージを残して、すでに恍惚の表情 Photo: Kazuya SASAKI

雲になって山の上へ

登山靴などの装備はチームのメンバーが運んでくれたが、個人参加でも手荷物として預ければ登山のスタート地点で受け取れる仕組みになっている Photo: Kazuya SASAKI

 そして最後の山のステージはチームのメンバー全員で佐渡の最高峰・金北山山頂を目指す。佐渡STSはバイクステージがきついのに対し、登山コースは比較的難易度が低めで、サイクリストには助かる。しかも通常は通行禁止となっている「防衛省管理道路」が同イベントのコースとして開放されるため、特別なエリアに足を踏み入れるワクワク感がある。

普段は入れない防衛道路に足を踏み入れる Photo: Kyoko GOTO
サイクルウェアで登山という姿もこのイベントならではの光景 Photo: Kazuya SASAKI

 標高1000m前後の山々が連なっている同エリアは見晴らしが良い場所である一方で、本土防衛の最先端。通過地点である妙見山には普段見慣れないレーダー基地がそびえ立っている。金山を抜けた後に見るこの光景に、佐渡の過去と現在の姿を縦に貫いたような感覚をおぼえる。

レーダー基地が間近に。こんな体験なかなかできない Photo: Kyoko GOTO
使われなくなったレーダー基地が今も残る Photo: Kyoko GOTO
山頂にゴール。登山でも自転車でも登頂はうれしい ©montbell

 そんなことを考えながら歩くこと2時間。ようやくゴールの金北山山頂に到着した。順位はつかないが、スタート時に渡されていたカードをスリットすることでタイムが記録される。個人的には全種目をやり通した達成感もあるが、ゴールを果たしたときにチームメンバーがいると、その嬉しさや楽しさも倍増するようだ。

ゴール後の金北山山頂からの眺め。フェリーが発着する両津港まで見渡せる Photo: Kyoko GOTO
絶景を前に疲れを忘れるひととき Photo: Takahiro TANAKA
自転車で上ってきた道や、ハイクで歩いてきた道が見える Photo: Takahiro TANAKA
一漕ぎ、一歩の積み重ねで、あの海から頂上までたどりついた Photo: Takahiro TANAKA

 ゴール後は、乗ってきたマイカーや下山用のバスが待つ登山ステージのスタート地点まで下りる。道中、カヤックを漕いだ真野湾や上ってきた道を眺め、一漕ぎ、一歩を積み重ねて山頂にたどり着いた行程をかみしめる。得意な自転車からちょっと足を伸ばし、少しフィールドを広げるだけで見える景色が大きく変わり、自転車もいつもとは違った角度で楽しめる。これが自転車のみのイベントにとどまらないSTSの魅力なのだろう。

ふとっぱらな「プレゼント抽選会」

お待ちかねのプレゼント抽選会。協賛各社の豪華景品がずらり Photo: Kyoko GOTO

 そして、STSのもう1つの魅力が大会終了後に開催されるプレゼント抽選会だ。モンベルからの賞品をはじめ、開催地域の特産品の詰め合わせや大会協賛各社のプレゼントが思いのほか豪華で、かつ品数が多い。これが成績に関係なく、ルーレット方式で当選者が決まるため、会場は一喜一憂に湧く。

 大会によっては参加者数が300人を超える場合もあるが、佐渡島STSはバイクステージのきつさもあってわりと小規模なので、ここだけの話、景品も当たりやすく、サイクリストにとってはねらい目だ。

競争ではないが、1~3位までの参加者には賞品が贈られる Photo: Takahiro TANAKA
筆者のグループもしっかり「佐渡特産品セット」をゲット! Photo: Takahiro TANAKA

 佐渡STS以外にも、走り応えのあるバイクステージがある大会は他にもある。例えば、8月26、27日に開催を控えている「鳥海山STS」のバイクステージはヒルクライムイベントも開催されており、サイクリストにもおなじみのコースだ。

 自転車以外のアクティビティに興味を持っている人や異なるアウトドアの趣味をもつ仲間がいる人は、まずはチームを組んで参加してみてはいかがだろう?

参加者全員で記念撮影 ©montbell

関連記事

この記事のタグ

イベント モンベル

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

新春初夢プレゼント2018

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載