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ツール・ド・フランス2017 レースサイドレポート対照的な姿のサガンとカヴェンディッシュ ツールは本格山岳に入り新たな局面へ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 熱戦が続くツール・ド・フランス2017。7月5日に行われた第5ステージは、今大会最初の頂上フィニッシュとあって、戦前から序盤戦の注目どころとされていた。そして迎えたこの日。前日のスプリントで起きたクラッシュによるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の失格と、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)の負傷リタイアの余波が続いたまま、新たなステージを迎えたのだった。

クラッシュから一夜明け、報道陣の前に姿を現したマーク・カヴェンディッシュ。ペテル・サガンからの謝罪を受けたことを明かし、前向きな言葉を残した © ASO/Pauline BALLET

悲しみを隠せないサガンと前を向き始めたカヴェンディッシュ

 スプリントでの落車で右肩甲骨を骨折したカヴェンディッシュと、それを誘発する危険な動きをしたと判定され大会からの除外の裁定が下ったサガン。カヴェンディッシュに関しては、負傷に関してチームからの正式なリリースが出されたが、サガンは前日のレース以降コメントを残していなかった。

問題となった第4ステージでのスプリント。マーク・カヴェンディッシュ(左端)とペテル・サガンともに大会を去ることとなった Photo: Yuzuru SUNADA

 一夜明け、サガンは宿泊先のホテルでメディアの前に姿を現した。そこで彼は、騒動を謝罪したうえでこう語った。

 「(裁定について)僕に何ができるだろうか? 審判団の決定には従うが、僕はスプリントで間違いを犯したつもりはない。それだけは確信している」

 その表情には悔しさと悲しみが入り混じっていた。

 また、当時の状況を「(全体的に)クレイジーなスプリントだった」と振り返る。そして何より「マーク(・カヴェンディッシュ)が傷んだこと、早く回復できるか、僕に何ができるわけではないけれど、それらに尽きる。順調な回復を祈っている」と残し、その場を後にした。

 そのサガンは前夜、カヴェンディッシュに謝りの電話を入れていたという。カヴェンディッシュが明らかにしたもので、「サガンはバランスを取るために右肘が出てしまったと言っていた。それが分かっただけで僕は満足だ。彼は後ろから僕が迫っていることにも気づいていなかったと言っていたし、それらが悪意のあるものではないことくらい僕でも分かる」と説明。「僕たちは良好な関係にあるし、僕自身悲しい気持ちはもうない」と続け、両者にわだかまりがないことを強調した。

 落ち込んだ様子のサガンと対照的に、前を向き始めたカヴェンディッシュ。かつて自身が危険なスプリント走行でペナルティを受けた経験に基づき、「選手たちはいつだって正しい走りをしていると思うもの。僕が過去に降着とされた時だってそうだった」とサガンの気持ちに理解を示す。そして、自らについては「病気と違ってけがだから、患部を守りながらホームトレーナーでトレーニングができる。早期の復帰を目指すよ」と述べた。

 今年のツールと別れを告げ、自宅へと帰るサガンとカヴェンディッシュ。それぞれに少し休んで、残るシーズンの目標を決めるという。

ツール2017最初の頂上フィニッシュを終え、マイヨジョーヌに袖を通したクリストファー・フルーム。大会は新たな局面へと突入した © ASO/Thomas MAHEUX

黄色が広がった山頂フィニッシュ地点

 この日のフィニッシュ地点、ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユは数々の名場面が生まれた山岳だ。

2012年の第7ステージではスカイ プロサイクリング(当時)がラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユで猛攻撃。ブラッドリー・ウィギンス(右から3人目)とクリストファー・フルーム(右から4人目)を前方へと送り出した Photo: Yuzuru SUNADA

 2012年の第7ステージでは、スカイ プロサイクリング(現チーム スカイ)が上りの入口から猛攻撃。当時山岳最終アシストだったクリストファー・フルームが、エースのブラッドリー・ウィギンス(ともにイギリス)を引き連れたままステージ優勝。同時にウィギンスがマイヨジョーヌを獲得し、そのままパリ・シャンゼリゼまで守りきった。スカイは2010年のチーム結成当初、「ウィギンスのツール総合優勝」がテーマだった。あの日見せた驚異の攻撃力は、チームの歴史を決定づけたものだった。

2014年の第10ステージではヴィンチェンツォ・ニーバリが快勝。マイヨジョーヌを手繰り寄せた Photo: Yuzuru SUNADA

 その2年後、今度はヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、当時アスタナ プロチーム)が、独走で頂上を制覇。前日に手放していたマイヨジョーヌを再び手繰り寄せ、そのままシャンゼリゼまで着続けた。

 そうした過去から見ても、マイヨジョーヌの行方を占うにはピッタリのステージと言える。勾配10%前後の上りが続き、フィニッシュを目前に勾配20%もの激坂が待ち受けている時点で、力のある者だけが勝負できる場所であることは、日頃レースを見ている者なら容易に想像がつく。

 さて、われわれプレスはフィニッシュから16km手前にある麓の街にサルドプレス(プレスルーム)が設けられ、そこからシャトルバスに乗ってフィニッシュ地点へと向かった。通常であれば、フィニッシュ地点近くにサルドプレスが設けられ、簡単に行き来できるよう導線が引かれているのだが、この日ばかりはラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユの上りが険しいため、車両の通行を制限。ジャーナリストやフォトグラファーのほとんどが、主催者A.S.O.からシャトルバスで移動するよう指示された。

 お世辞にもエアコンの効きがよいとは言えないフランスのバス。満席ゆえ車内は蒸し風呂のようになったが、それをしばし我慢して頂上へ。そこには、プロトンの猛者たちを今か今かと待つ大勢の観客の姿があった。一様に、大会スポンサーが配布したマイヨジョーヌカラーの帽子をかぶり、選手を迎える準備は万端。普段であれば木々の緑が映える山頂なのだろうけれど、この日ばかりは一面黄色の光景が広がった。

スポンサーが配布したマイヨジョーヌカラーの帽子をかぶり、選手たちの到着を待つ観客 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

主役候補たちが順当に上位へ

 注目されたレースは、イタリアチャンピオンジャージのファビオ・アル(アスタナ プロチーム)がアタックを成功させて逃げ切り勝利。春にけがをし、一時は戦線を離脱していたが、このステージで完全復活を印象付けた。

ステージを制したファビオ・アル。けがからの完全復活を印象付けた Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、マイヨジョーヌはフルームへ。やはり、ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユの山頂で王者が総合首位に立った。

 上り口からのチーム スカイのペースコントロールは、5年前を彷彿とさせるものだった。アシストの牽引に任せたフルームはアルのアタックを見送り、残り1kmを切ってからの激坂区間をきっちり走る選択をした。最後はダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)の抜け出しこそ許したが、他のライバルには先着。ステージ3位のボーナスタイム4秒を獲得したこともそうだが、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)と同タイムでのフィニッシュとあって、前評判の最も高い2人がやはり来たか、という印象だ。

フィニッシュを目指しペースを上げるクリストファー・フルーム(左から2人目)とリッチー・ポート(左から3人目)。前評判の高い2人が調子を上げてきた Photo: Yuzuru SUNADA

 ちなみに、現地で取材するジャーナリストの間では、「フルームはこのツールに仕上げてきている」という見方が多い。今シーズンは未勝利ではあるが、経験や実績は群を抜くだけに、どのような戦いぶりになろうとも、マイヨジョーヌに一番近いのはフルームであると。このステージでは、その片鱗を見せたといえるかもしれない。

 早くもマイヨジョーヌを手にしたフルームは、この先ジャージを守る走りをするのか、一旦手放すことも辞さない姿勢で走るのか見ものとなる。もし、このまま最後までマイヨジョーヌを守り続けるとなれば…ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユは通過した過去3回連続で総合優勝者を導いた山岳となる。

ファンが見守る中を進むプロトン。また新たなドラマが待ち受ける © ASO/Pauline BALLET

 カヴェンディッシュとサガン、2人のスピードスターを失ったツールだが、本格山岳の始まりで次なる局面へと突入した。また新たなドラマをわれわれは目撃することになる。

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