スマートフォン版はこちら

title banner

ツール・ド・フランス2017 レースサイドレポート落車で大会を去るサガンと悲壮感漂わせるカヴェンディッシュ「なぜ肘を出す必要があったのか」

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ツール・ド・フランス2017第4ステージ、予想通りのスプリントフィニッシュと誰もが思っていた。しかし、ほんのわずかの時間で事態は深刻となった。残り2kmを切ってからの2度の大規模クラッシュ。なかでも、スプリントでバランスを崩しバリアーに激突、そのまま地面に叩きつけられたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)と、その直前に接触したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。レース後の現地は、この2人の話題が尽きることはなかった。激しい痛みに苦しんだカヴェンディッシュと、レースからの除外を通達されたサガンを中心に、現場で何が起きていたのかをお伝えしたい。

医療用トラックから出てきた瞬間のマーク・カヴェンディッシュ。報道陣の質問に気丈に答えていた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

テクニカルかつ上り基調の最終局面

 ルクセンブルクのモンドルフ・レ・バンを出発し、フランス北東部のヴィッテルを目指した207.5kmの第4ステージ。ヴィッテルといえば、ミネラルウォーターの商品名にもなっている水源地としておなじみ。この大会のオフィシャルスポンサーのうちの1社である。

 ほぼ平坦で、戦前からスプリント勝負になることが予想された1日は、その通り終始スプリンターチームがメイン集団をコントロール。数チームが主導権を争いながら最終局面へと突入した。

 話はその約3時間前にさかのぼる。フィニッシュ地点近くのサルドプレス(プレスルーム)に向かっていた筆者は、ヴィッテルの街に入る直前でコース内を通行するよう係員の指示を受けた。フィニッシュラインまでの約3kmを車で走行したのだが、その時に抱いたコースの印象は「テクニカルかつ上り基調」。残り3kmを切ってから90度カーブが3カ所。緩めのコーナーもいくつかあり、わずかな上り基調も合わせると200km以上を走ってきた選手たちにとって、決して簡単なレイアウトではないように思えた。

 静かに進んでいたレースだったが、最後の最後にクラッシュは起こった。まず残り2kmを切ったところで、集団前方での大規模落車。これにより、先頭には両手で数えられる程度の選手しか残らなかった。

 そして問題となったのが、スプリントでのサガンとカヴェンディッシュの接触。状況としては、優勝を争う選手たちが進行方向右側へと急激に流れ、そのままフィニッシュへ向かって加速していく過程で両者が当たる格好だった。

問題となった接触シーン。遠目ではあるが、ペテル・サガンの右肘がマーク・カヴェンディッシュ(左端)に当たっているように見える Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンとカヴェンディッシュの直前ではアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)の2人も接触している。グライペルとブアニの接触がその後のサガンとカヴェンディッシュに影響したとは考えにくいが、前述した進路の急な変化がスプリントを難しくしたようには思う。

 サガンの動きを見ると、接触するカヴェンディッシュに向かって右肘を突き出しているように見える。また、バイク上でバランスを保つための行為だったようにも感じられる。実際どうだったのかは、状況から察するに本人でも思い返すのは難しいだろう。

 バリアーに接触し、地面に強く叩きつけられたカヴェンディッシュはしばらくして起き上がり、アシストに付き添われてフィニッシュラインを通過。そのほか、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)ら数人も巻き込まれた。

 サガンは接触後もスプリントを続け、2着でフィニッシュラインを通過したが認められず。フィニッシュからしばらくして115位への降着と獲得ポイントの減点が大会公式ウェブサイトのリザルトにて明らかとなった。

審判長の発表にサルドプレスは騒然

 このステージを制したのは、フランスチャンピオンジャージをまとったアルノー・デマール(フランス、エフデジ)。事実上、この日がフランスでの本格ステージ初日での地元ライダーの勝利とあって、直前2度のクラッシュに対するサルドプレスのどよめきは、フランス人ジャーナリストたちの歓声によってかき消された。

 しばらく歓喜に包まれていたサルドプレスだったが、フィニッシュから1時間30分ほどして雰囲気は一変する。

審判長のフィリップ・マリアン氏を囲む各国のプレス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 大勢のジャーナリストやテレビカメラを引き連れて現れたのは、今大会審判長のフィリップ・マリアン氏。サルドプレスの最前部で立ち止まると、早口で「レース最終局面のスプリントにおいて、他者を危険な状況に陥れたとして、ペテル・サガンをツール・ド・フランス2017において失格とします」。この一言を述べると、足早にサルドプレスを去った。

 驚きにより一瞬にして凍り付いた室内。すぐにレポート制作に入る者、大急ぎでどこかへ電話をする者、マリアン氏からさらなる答えを引き出そうとしつこく食い下がる者…その場は完全にスクランブル状態となった。

サガン失格の対象はカヴェンディッシュとの接触のみ

 サガンの失格に関しては、ジャーナリスト間でも賛否は分かれた。筆者の周りでは、「さすがに失格は厳しいのではないか」といった見方が多かった。

 だが、審判団はサガンのスプリントを重大な違反行為と判定。マリアン氏はこの決定に関して、UCI競技規則12.1.040で規定されるうちの「反則スプリント」にあたると説明する。

 「反則スプリント」についてUCIは、以下のように定義している。

1回目:集団最後に降格(200スイスフランの罰金)
2回目:ステージ最下位に降格(200スイスフランの罰金)
3回目:除外(200スイスフランの罰金)
重大な場合、上記にかかわらずコミッセールパネルは1回目の違反で除外および200スイスフランの罰金を科すことができる

 今回は「重大な場合」に該当するとの判断から、審判団はサガンを大会から除外することを決定。なお、サガンの失格については、カヴェンディッシュとの接触のみが対象となったことをマリアン氏は強調した。

カヴェンディッシュは右肩甲骨を骨折

 一方、カヴェンディッシュはフィニッシュラインを通過後、サガンから直接の謝罪を受け、少しばかり対応。そして医療機器が搭載された特殊装備のトラックへ、チームドクターとともに向かった。

 そこでは、レントゲン検査と深い裂傷を負った右手の縫合を行った。処置を一通り受けると、まずはチームドクターがトラックから出て、集まった報道陣に説明。そこでは、「現状では骨折は発見されていない」との発表がなされた。

チームスタッフに促されて車へと向かうマーク・カヴェンディッシュ。病院へと直行した Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 続いてカヴェンディッシュが現れた。右腕を吊り、時折痛みに表情を歪める。報道陣から骨折が発見されなかったことについて問われると、「正直楽観視はできない。仮に骨折がなかったとしても、だからと言ってバイクに跨れるかといえばそうではない。ハンドルを握れないのに出走して、他の選手を危険な目にあわせるわけにはいかない」と述べた。

 また、今回と同様に落車負傷した3年前のツール第1ステージを引き合いに出し、「あの時よりも痛みがあり、病院で改めてけがの具合を診てもらう必要を感じている」とも。

 そしてサガンに関しては、「良好な関係にあるし、クラッシュ自体もレースにはつきもの。でも、なぜ肘を出してくる必要があったのか、そこは彼に問わないといけないと思う」と率直な思いを口にした。

 大勢の報道陣に囲まれ、しばし気丈に振る舞ったカヴェンディッシュだったが、やがてチーム関係者に促されて車へと乗り込んだ。

 その後、右肩甲骨の骨折が認められたことをチームリリースにて正式に発表。こちらもツールを去ることが決まった。

ボーラ・ハンスグローエは抗議する方向

 現時点では、サガンからのコメントは出されておらず、裁定後のメディア対応も行っていない。代わって、チームが今回の決定について抗議する意向を示しており、第5ステージのスタート前に何らかの声明を出す見通しだ。

 また、カヴェンディッシュと同様に激しく路面に叩きつけられたデゲンコルブは、右肩周辺の靭帯を損傷。ただし、レース出場には前向きな姿勢を見せており、けがの具合を見ながら第5ステージへの出走を決める意向を示している。

◇         ◇

 この件については、今後さらなる動きがあり次第、現地からお伝えしていきたい。

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2017 ツール2017・コラム

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載