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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<215>ツール出場選手が続々と契約延長 早めの更改に見る選手たちの狙いとは

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2017は順調にステージを消化中。有力選手の落車や、集団内での大規模なクラッシュこそ起こっているものの、マイヨジョーヌをはじめとする各賞を賭けた勝負という観点ではまだまだこれから。かたやレースから一歩離れてみると、ツール出場選手が所属チームとの契約延長にサインしたことが次々と明らかになっている。そこで、今回は注目選手たちの動向をチェック。この時期にサインに臨んだ経緯などを探っていこう。

ツール・ド・フランス第2ステージのスタートラインについたチーム スカイ勢3人。クリストファー・フルーム(右)に続き、ヴァシル・キリエンカ(中)、ゲラント・トーマスもチームとの契約延長が近いとされる Photo: Yuzuru SUNADA

フルームが2020年までの契約に合意

 ツール3連覇を狙うクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は今大会の開幕前、現チームとの3年の契約延長に合意。2020年までチーム スカイで走ることになる。

2020年までチーム スカイで走ることが決まったクリストファー・フルーム。写真はツール開幕前の記者会見 © ASO/Alex BROADWAY

 2010年のチーム結成時からのメンバーとして走ってきたフルームだが、今年が契約最終年。ツール前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(6月4~11日)の頃には、BMCレーシングチームとの交渉の席についているとの情報もあった。

 そうした噂を一掃する今回の契約延長。フルームはチームを通じ、「チームが大きな成功を収めている理由はパートナーシップにあり、それがチームの安定性につながっている。ライダーとして、レースに集中できる環境を与えてもらった」とコメント。そして、「チーム スカイの未来に大きく影響を与えられることが楽しみだ」と今後への自信も語った。

 チーム スカイは、ツールで現在マイヨジョーヌを着用するゲラント・トーマス(イギリス)も契約延長間近と見られている。こちらは2019年までの2年契約となる見通し。さらに、個人タイムトライアル元世界王者のヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)も、契約を延長する方向で交渉に入っていることを明らかにしている。

バルデらも2020年まで契約を延長

 アージェードゥーゼール ラモンディアルはツール開幕前日の6月30日、ロマン・バルデ、ピエール・ラトゥール(ともにフランス)、オリバー・ナーセン(ベルギー)の3選手と2020年までの契約延長に合意したことを発表した。

アージェードゥーゼール ラモンディアルはロマン・バルデ(左端)、オリバー・ナーセン(左から3人目)らが2020年までの契約延長に合意した © ASO

 ツールではフルームのライバルとして名乗りを挙げるバルデは、いまやチームの押しも押されもせぬエースに成長。フランス自転車界の至宝でもあり、今年も含め近い将来のツール制覇を期待されている。今年アージェードゥーゼール ラモンディアルに加入したナーセンは春のクラシックでエースを務め、3月のE3ハーレルベークでは3位入賞。6月末のベルギー選手権ではロードレースを制し、ツールでは同国チャンピオンジャージで参戦している。両者は2018年までの契約が残っていることから、さらに2年の延長を選択した。

 23歳のラトゥールは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで優勝。山頂フィニッシュを制し、一躍注目を集めた。今年はフランス選手権個人タイムトライアルで優勝。トリコロールカラーのチャンピオンジャージをまとい、ツール第1ステージを走った。ラトゥールも将来的には総合系ライダーとしての活躍が嘱望されていて、このツールでも第4ステージまでを終えて新人賞のマイヨブランを着用している。若きタレントには、数チームが興味を示していると見られたが、最終的にはここまで3シーズン走ってきた現チームを選択。この先の飛躍を誓う。

フルサング、カタルドはアスタナ残留

 アスタナ プロチームは、6月29日にダリオ・カタルド(イタリア)との、翌30日にはヤコブ・フルサング(デンマーク)との契約延長を発表。ともに2019年までの2年間となる。

去就が注目されたヤコブ・フルサングはアスタナ プロチームに残留。クリテリウム・デュ・ドーフィネ総合優勝で評価を上げた Photo: Yuzuru SUNADA

 ともに現在ツールを走っているが、特にフルサングの去就には注目が集まっていた。早い段階から今年のツールで総合エースを務める方向でチームと話を進めてきたが、同じグランツールレーサーのファビオ・アル(イタリア)がけがのためジロ・デ・イタリアを回避し、ツールを目指すこととなってからは、自身の扱いについてチームに説明を求めていた。状況次第では移籍も辞さない姿勢を示していたが、ツール開幕を前に契約延長にサイン。「自分にとってはファミリーのようなもの」と合意にあたってチーム愛を強調した。

 チームのゼネラルマネージャー、アレクサンドル・ヴィノクロフ氏も「ヤコブはアスタナにとって大事なライダー。5年間にわたりグランツールで強さを発揮してきた。彼がアシストとして走ってきたこれまでを評価しているし、先日のドーフィネ総合優勝はチーム全体にモチベーションをもたらした」と賛辞を贈る。こうした言葉から見ても、今後はフルサングが総合エースとして活躍するレースは増えてきそうだ。

ポートも契約延長を発表

 BMCレーシングチームも29日に、リッチー・ポート(オーストラリア)との契約延長を発表した。

リッチー・ポートもBMCレーシングチームとの契約延長交渉がまとまった Photo: Yuzuru SUNADA

 ポートは2016年にチーム スカイから移籍。加入以来、一貫してステージレースの総合エースを務め、このツールでもマイヨジョーヌ候補の1人として大会に臨んでいる。

 契約延長にあたりポートは、「BMCレーシングチームでの2年間には本当に満足していて、契約を延長するのも当然の決断だった」と述べ、「チームの運営方針についても、私が満足できるものと確信できている」と続けた。また、チームへの思いも口にしており、「たとえツールの3週間で何があったとしても、この先BMCレーシングチームのジャージを着て走り続けられることが楽しみだ」と話した。

 なお、契約年数についてはチーム方針により公表されていない。

ビッグネームが続々と契約延長に踏み切る背景には

 ツール開幕を目前にしたタイミングでの契約延長合意。いずれもビッグネームに集中している点は、エースの立場を守り、今後もともに歩み続けるチームの強い意志を表したものであると言えよう。

 選手たちにとっては今後数年間の自身の進むべき道が明確になり、シーズン最大のターゲットであるツールに集中することができる点で、大きなメリットがあるといえるだろう。この先自身の契約がどうなるのかといった不安や、交渉が控えたままレースを走るより、心の安定やモチベーションが高まるといった面で、好結果へとつながりやすくもなるだろう。エースに対するチームの最大限の配慮でもあるはずだ。

アルベルト・コンタドールも契約延長が近い1人と見られている Photo: Yuzuru SUNADA

 また、前述したトーマスのケースでも、サインこそしていないものの仮交渉が終わっているものと推察できる。ここへきて、アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)も来シーズンに向けた交渉が締結に向かっているとの情報も、ツール現地では挙がっている。ひとまず、ジロ・デ・イタリア2018出場を念頭に置いた半年間の契約とみられているが、いずれにせよすでに仮の交渉はほぼ終わっている可能性が高い。

 この先長い戦いとなるツールだが、レースに集中できる環境を得た選手たちの走りがいかなるものか、注目してみるとおもしろいかもしれない。

今週の爆走ライダー−ネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ツール第3ステージで逃げに加わり、2カ所の山岳ポイントを1位通過。合計3点を獲得し、ステージを終えて山岳賞のマイヨアポワに袖を通した。

ツール第3ステージでマイヨアポワに袖を通したネイサン・ブラウン Photo: Yuzuru SUNADA

 当初の予定では逃げに入る予定はなかったという。レース前の指示は特になく、逃げに入るのもディラン・ファンバーレ(オランダ)に役割だったが、そのファンバーレが逃げの動きに乗り遅れたと見るや、代わりに前方へ。そこからは、前日にテイラー・フィニー(アメリカ)が手にしていたマイヨアポワを保持すべく、カテゴリー山岳での走りに集中した。

 元々上りは得意。昨年のジロ第10ステージでは4位となった実績もある。アンダー23カテゴリー時代には、リエージュ~バストーニュ~リエージュ・エスポワール(23歳未満対象)で2位になるなど、若手の登竜門的なレースでも結果を残してきた。タイムトライアルでも力を発揮できるだけに、将来的にはオールラウンダーとしての活躍が期待されている。

 思いがけずゲットしたマイヨアポワだが、1級山岳頂上フィニッシュが控える第5ステージまでと割り切っている。「本格的な山岳ステージだし、このジャージが着られる日数に限りがあることも理解している」と語る。それでも、やっぱりどこかでチャンスを求めている自分もいるよう。「チームでの役割を優先するけど、もしジャージを保持できたら最高だね」。

 7月7日に26歳の誕生日を迎える。自分へのプレゼントとなった山岳賞。せっかくだから、その日が来るまで持ち続けてみてはどうだろう。チーム事情も関係してくるが、もし自由を与えられるならジャージのキープにトライしてみる価値はあるはずだ。

将来的にはオールラウンダーとしての活躍が見込まれているネイサン・ブラウン。初出場のツールで飛躍のきっかけをつかむことができるか =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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ツール・ド・フランス2017 ツール2017・その他 週刊サイクルワールド

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