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ツール・ド・フランス2017 レースサイドレポート“最初”と“最後”を飾ったサガン兄弟 3週間の旅はいよいよフランスへ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2017は第3ステージまでを終えた。雨で始まった今大会だが、3日目にして快晴に。それはまるで、ツールが本来の舞台であるフランスへ戻ってきたことを祝うかのようだった。そして、この日もレース内外でたくさんのドラマがあった。筆者がこの日見たものをお伝えしよう。

ツール・ド・フランス2017第3ステージで優勝したペテル・サガン。フィニッシュ直後、高らかに右手を挙げた Photo: Yuzuru SUNADA

予想外の大渋滞で選手・関係者のスタート会場入りが遅れる

 ドイツ・デュッセルドルフで行われた第1ステージ、同じくデュッセルドルフを出発した第2ステージは、どちらも雨のレース。第1ステージでは、今大会の活躍が期待されていたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)がコーナーで落車し大けがを負った。

 また、第2ステージでは残り約30kmの地点で大規模なクラッシュが発生。リタイアした選手こそ出なかったが、多くの選手がフィニッシュ後に医務室へ直行。総合優勝候補のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、チームメートで現在マイヨジョーヌを着るゲラント・トーマス(イギリス)、フルームのライバルと目されるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ら有力選手たちも、濡れた路面で体を滑らせてしまった。

 迎えた第3ステージ。気温20度を切っていた前日までが嘘のように晴れ上がった。2日間、ナーバスだった選手たちもさぞかしリラックスしてスタートを迎えられるだろう…と思っていたら、スタート会場を目前にちょっとしたトラブルが起こった。

 大会関係者がスタートやフィニッシュ会場入りするには、主催者A.S.O.が指定するルートを通ることが求められるのだが、この日通るよう指示されていた道で大渋滞が発生したのだ。スタート約2時間前をメドに多くのチームが会場入りする傾向にあるが、ほぼ同じタイミングでスタート会場を目指していた筆者も数チームとともにまったく動きのない交通事情にしばし悩まされてしまった。

まさかの足止めにトレック・セガフレードのスタッフも困り顔 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 大渋滞の理由は“キャラバン隊”。コース内各所に設定される通過予告時刻のおおよそ2時間前に、大会のスポンサー企業が用意するキャラバンカーが列をなして沿道を盛り上げる。なにやらこの日は関係者と同じ導線を通過せねばならず、そのためにわれわれは長時間待つことになったという。「違うルートを用意しておけよ!」と文句を言うのは簡単だが、実際のところはスタート地の都市規模や街のつくり、道路事情も大いに関係してくる。長いステージレースなのだから、こんな日だってあるだろう。

 たまたま居合わせたA.S.O.関係者が渋滞状況を撮影する筆者に一言、「これはビッグニュースになるね」。これくらいの心のゆとりが3週間の旅には必要だ。もっとも、選手たちはどんな気持ちで待ち時間を過ごしていたかは計りかねるけれど…。

 30分ほど待っただろうか。ようやく車列が動き出したとき、筆者が運転する車のボディを叩く音が。何事かと驚いて外を見たら、そこにはドライバーとともにモーターバイクに乗った、フォトグラファー・砂田弓弦さんの笑顔があった。

調子のよさを実感する新城幸也

 多くのレース関係者が大渋滞に巻き込まれた一方で、早めに会場入りしていたいくつかのチームはハプニングとは無縁だったよう。

スタート1時間前の新城幸也。調子のよさを実感し、この笑顔 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 新城幸也擁するバーレーン・メリダもその1つ。チームピットを覗いてみると、新城の姿があった。スタートまで1時間を切ろうかというタイミングにもかかわらず、Tシャツとジャージ姿。彼を囲んだ日本人ジャーナリストたちも「まだ準備しなくて大丈夫?」と囁いたほど、悠然とした佇まいだった。

 前日のステージを振り返り、「スプリントトレインは完璧だった」と力強く答えた新城。スプリントではエースのソニー・コルブレッリ(イタリア)が一時は先頭に躍り出るなど、優勝こそ逃したがインパクトは残した。新城もたびたび集団前方へと上がり、スプリントトレインを牽引。開幕前の共同記者会見では「走ってみないと分からない」とコンディションについて語ったが、開幕から2ステージ走って「体調も脚も問題ない」と調子のよさを感じているようだ。

 チームは、総合エースを予定していたヨン・イサギレ(スペイン)が第1ステージでの落車により負傷リタイア。山岳ステージについてはプラン変更を強いられるが、今大会における新城の“本業”となるスプリントについては、コルブレッリでの勝負に変わりはないという。

小国ルクセンブルクの自転車熱に感銘

 レースは途中で、今大会3カ国目となるルクセンブルクへ。小さな国土ではあるが、工業・金融・情報通信など多種多様な産業の発達により世界有数の豊かさを誇る。

ウイルツの街を盛り上げたサイクリング楽団 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして何より、サイクルロードレース界において多くの名選手を輩出する“自転車王国”でもある。フランソワ・ファベール、ニコラ・フランツ、シャルリー・ゴール、キム・キルシェン、フランクとアンディのシュレク兄弟…。今年のジロ・デ・イタリア総合8位のボブ・ユンゲルス(クイックステップフロアーズ)、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージ優勝のジャンピエール・ドリュケール(BMCレーシングチーム)、ローラン・ディディエ(トレック・セガフレード)は、現在のルクセンブルクを代表する選手たちだ。

 このツールでは、ベン・ガスタウアー(アージェードゥーゼール ラモンディアル)が同国選手唯一の出場。入国後至るところで「GO BEN!!」と書かれた横断幕を目にした。逃げや山岳を得意とする彼だが、今大会では絶対エースのロマン・バルデ(フランス)の重要アシストとして臨んでいるだけに、この凱旋ステージでも任務をまっとうしたよう。逃げでレースを進めることはしなかった。

関係車両の通行時には“落車パフォーマンス”のドッキリまで Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 牧歌的な風景や街並みはフランスの田舎に似た雰囲気を感じていたが、この日最初の山岳ポイントが設けられたウイルツの街に入るとその光景は一変。街の端から端まで切れ目なく沿道は人で埋め尽くされ、選手たちの到来を今や遅しと待ち続けた。また、6人乗りの自転車に跨りながら音楽を演奏する“サイクリング楽団”も登場し、街を盛り上げた。

 そうして迎えたプロトンの通過で、熱気は最高潮に。街を挙げてのお祭りは、ルクセンブルクの自転車熱を反映した賑わいとなった。

プロトンの通過に熱狂するウイルツの人々。ルクセンブルクの自転車熱が反映されたものだった Photo: Syunsuke FUKUMITSU

兄サガンはスタート一番乗り 弟の優勝に貢献

 ベルギー、ルクセンブルク、フランスの3カ国を走った212.5kmのステージは、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が鮮やかな上りスプリントで勝利。加速を試みたフィニッシュ前250mで一度はペダルからクリートが外れてしまうミスがありながらも、すぐにペダルをキャッチし踏み直してのステージ優勝。

 「あの瞬間は“もうダメだ!”と思ったのだけれど、勝つことができてよかった。ボクはラッキーガイだね」と喜びを表現。クリートが外れてからのリカバリーの早さは、バックボーンであるシクロクロスやマウンテンバイク時代に培ったテクニックが生かされたのではないだろうか。

スタート地点に一番乗りしたユライ・サガン。弟・ペテルを勝利に導くと誓ってレースに臨んだ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 サガンが歓喜する約5時間前のこと。兄・ユライがスタートラインに一番乗りをしていた。2年連続の世界王者であり、この大会のポイント賞「マイヨヴェール」6連覇がかかる弟の一方で、彼はプロキャリア8年目にして初のグランツール。それがツールとあって、「すごく気分がよいんだ」との言葉通り、やる気満々にスタート地点へと現れた。「今日はピーター(弟の名を英語発音で呼ぶ)を勝たせなければならないんだ。昨日負けてしまったからね」と筆者に語ってくれたが、まさに誓い通りの結果。ゴールでは世界チャンピオンジャージを着る弟が、真っ先にラインを駆け抜けた。

 兄・ユライに始まり、弟・ペテルが締めた、「サガン兄弟デー」。レースやイベントを通じ数度来日し、日本でもファンの多い両者は、兄弟仲のよさでも知られるところ。弟・ペテルはレース後の記者会見で「今日のチームは素晴らしい働きぶりだった」と前置きしたうえで、「ボクのスーパーブラザーであるユライが本当によくやってくれたんだ」とサラリ。ユーモアたっぷりのコメントがウリのペテルだけれど、この時ばかりは兄への思いや感謝を素直に口にしたのだった。

ポディウムで勝ち名乗りを受けたペテル・サガン。その後の記者会見で兄・ユライへの感謝を口にした Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール・ド・フランス2017は、いよいよフランスでの戦いがスタート。第4ステージでは、ほんの少しだけルクセンブルクに戻るが、すぐにまたフランスへ。水源地として知られるヴィッテルが、目的地になる。

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