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歓喜に満ちた「ブラボー」の声ようこそドイツへ! 30年ぶりの生ツール観戦は刺激に満ちた“夏祭り”

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ツール・ド・フランス2017の開幕地となったドイツ・デュッセルドルフで、ツール仕様に飾られたショーウィンドウ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 「ツール・ド・フランス」の2017年の開幕地(グランデパール)は、ドイツ西部のデュッセルドルフ。参戦チームのお披露目であるプレゼンテーションが開催された6月29日には、街はすでにお祭り騒ぎとなった。1987年以来となるツール・ド・フランスのドイツ遠征はどのように迎えられたのか。ドイツ在住の筆者が取材した。

公式グッズ販売が人気

 街は思いの外、ツール・ド・フランスを象徴する「イエロー一色」ではなく、どちらかというと「フランス一色」という雰囲気。エッフェル塔をモチーフにしたショーウィンドウの飾り付けや、トリコロールカラーの装飾が目についた。

 美術館横に仮設されたステージ側壁には、ツール・ド・フランスにゆかりのあるデザインを発見。デュッセルドルフ出身のエレクトロミュージックバンド「クラフトワーク」(Kraftwerk)による楽曲、『ツール・ド・フランス』の音楽アルバムのカバーデザインだ。7月1日の開幕に合わせて、クラフトワークのコンサートが催されるのだという。

ツール・ド・フランス向けに装飾されたドイツ・デュッセルドルフの旧市街 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
トリコロールカラーは、地元出身の「クラフトワーク」による楽曲、『ツール・ド・フランス』のアルバムカバーデザイン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
フランス的な要素を取り込んでデコレーションされたパン屋のショーウィンドウ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
スペシャライズドのポップアップストアではデュッセルドルフやパリといった文字が踊る限定ジャージが並んでいた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 市内に登場したバイクブランドのポップアップストアも、世界最大の自転車イベントの盛り上げに一役買っていた。「スペシャライズド」のポップアップストアは、高級ブティックの並ぶ中心街の通り沿いという立地。周辺の店舗に溶け込む洗練されたインテリアの店内では、限定ジャージやデュッセルドルフに関連するデザインのTシャツなどがよく売れているという。この日は同バイクを駆るツール・ド・フランス参戦チーム「ボーラ・ハンスグローエ」主催のイベント開催のため通常のレイアウトは見ることができなかったものの、マリオ・チポリーニやファビアン・カンチェラーラらのバイク展示を見て、歴史に触れることができた。

スペシャライズドのポップアップストアではマリオ・チポッリーニやファビアン・カンチェッラーラらのバイク展示もされていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
スペシャライズドのポップアップストアで販売されていたTシャツ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 また地元ドイツのブランド「キャニオン」もポップアップストアを展開。正確にはストアではなく、ライン川沿いに停泊するボートに設けたコミュニティースペースだ。ズイフトでのマッチアップや試乗のほか、着席できるリラックススペースを広くレイアウトしていた。

ライン川沿いに停泊するボートに設けられたキャニオンのポップアップストア Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA


親子3人、買ったばかりのTシャツを来て写真撮影 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 そのほか、公式グッズ販売ブースはどこも混雑していたのが印象的だった。ツール・ド・フランスを満喫するためのグッズや知識がすでに充分備わっているためか、あるいは購入する機会が当日に限らず豊富にあるためなのか、フランスで同じような光景はあまり見たことがない。イエローの真新しいTシャツに身を包んだ男の子2人に写真のモデルになってもらおうと筆者が声をかけると、お父さんも購入したばかりのTシャツを着て嬉しそう。親子3人で写真に収まってもらった。

公式グッズ販売ブースはどこも混雑 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
チームプレゼン会場に設置されていたツール・ド・フランス開幕までのカウントダウン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

デュッセルドルフ市長「選手を讃え、飲もう!」

 夕方に迎えたチームプレゼンテーションは、ベートーベンの交響曲第9番『歓喜の歌』唱歌で開幕。女性歌手と子供らがドイツ語で歌い上げると、広場を埋め尽くした人たちから「ブラボー」の声が飛び、ステージは拍手の波に飲み込まれた。

チームプレゼンのステージと広場を埋め尽くした大観衆 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 その後登壇したトーマス・ガイゼル デュッセルドルフ市長は、「いま私はとても誇りに思っている」と余韻に浸るようにあいさつ。続けて「ツール・ド・フランス招致は簡単ではなかった。追い風の時もあれば向かい風の時もある、長い道のりだった」と告白し、最後に「きょうから日曜まで、いよいよ幸せがやってきたと言える。ツール・ド・フランスはサッカーのワールドカップよりも大きな世界一のイベント。ライダーたちを大いに讃え、その後大いに飲もう!」と観衆へ語りかけると、会場は再び拍手喝采に包まれた。

ドイツ・デュッセルドルフの市庁舎(旧庁舎)とその前の広場に設置された選手の“花道” Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 ドイツでのグランデパールの様子について、筆者にはガイゼル市長の語りかけにあった「大いに飲もう」がすべてを表しているように思えてならない。つまり、ツール観戦は家族や仲間と集い楽しむ一大イベントとしてドイツでも違和感なく迎え入れられたと感じている。さながら、刺激に満ちた夏祭り。本国フランスにも負けず劣らずな観衆に、ツール・ド・フランスを主催するA.S.O.のクリスティアン・プリュドム氏も「デュッセルドルフでの開催は間違っていなかったと確かな気持ち」と壇上で胸をなでおろした。

プレゼン後の花道で光ったサガンの技

チームプレゼンを終えにこやかに走り去っていく新城幸也(バーレーン・メリダ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 選手がプレゼンテーションへ向けて出発する地点から、プレゼンテーションを終えてチームバスへ戻るまでは、およそ1.8kmの長い“花道”が設置され、沿道には観客が並んだ。筆者が構えた沿道の前でも、新城幸也(バーレーン・メリダ)がにこやかに通過していく姿が確認できた。この日の昼間新城は、メリダが刷新した「リアクト」でチームトレーニングに参加している。心身ともに準備万端、期待がかかる。

メリダの新「リアクト」でチームトレーニングに参加した新城幸也(バーレーン・メリダ) Photo: BAHRAIN-MERIDA
バーレーン・メリダが宿泊するホテル横で整備されるメリダの新「リアクト」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 ちなみに旧市街、人垣を抜けライン川へ下る坂は選手らを魅了してやまなかったようで、おどけてみたりバレリーナのように脚を優雅に動かしてみたりと、“一発芸”を披露していくライダーが絶えなかった。観客の期待が一気に高まったのは、ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)。いまかいまかと待ち構えていた観客から歓声が上がるとサガンは、ニヤリと笑いブレーキをかけつつ前輪へ体重を預ける技をやってのけた(バイクにとってはよくなさそうな音がしていた)。

派手な音を出してブレーキをかけつつ前輪へ体重を預け坂を下る…という技を披露したペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)。沿道からは歓声&拍手喝采 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ライン川へ下る坂ではさまざまな選手が“一発芸”を見せてくれた。エアロダウンヒルスタイルのイェンス・クールレール(オリカ・スコット) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
沿道の観客に密接しながら写真に収まるマシュー・ヘイマン(オリカ・スコット)。「カメラはあっち?」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
立ち止まるベン・スウィフト(UAE・チームエミレーツ)。顔見知りの観客の前で小話・長話をしていく選手も多かった。 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 サガンの様子を笑いながら見ていたドイツ男性は、「サガンは技術に1番優れたライダーだと思う」としみじみ。「濡れた路面だったとしても、山岳路の下りなどバイクコントロールに長けている。私の好きなライダーです」と語ってくれた。

観客一人ひとりの声援に応えていくマルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 また今ツールに出場するドイツ出身の選手は16人。自国でのスタート、大勢の観客に笑いが止まらないようで、アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)やジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレード)もにやけながら走り抜けていった。マルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)も始終笑顔で、観客一人ひとりの声援に応えていると、チームスタッフから先を急がされていた。

 ディフェンディングチャンピオンのクリストファー・フルーム(チームスカイ)と共にレースに挑むドイツ選手クリスティアン・クネース(同)は、ドイツ開催を一言でコメントするならという筆者の質問に「最高としか言いようがない」と喜びを表した。

にやけながら通過するアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
テレビ取材に応じるとクリスティアン・クネース(チームスカイ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

◇         ◇

 チームプレゼンテーションが終わったあとの会場はライブ会場と化し、爆音の音楽が響き渡っていた。まだ会場にたたずんでいたデュッセルドルフ出身だという家族へ声をかけると、「プレゼンテーション会場の横に私(女性)の職場があって、準備が始まったら落ち着かなくて来てしまいました」と笑う。「ライダーたちをこんなに間近に見たのは初めてで興奮した。みんな若くてやる気にあふれいてよかったわ」

初めて間近に選手を見たデュッセルドルフ出身の家族は「みんな若くてやる気にあふれいてよかった」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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