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栗村修の“輪”生相談<104>30代男性「ブレーキの上達方法を教えてください」

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 突然ですが、ブレーキ技術をうまくなりたいです。

 先日、下り坂の交差点に直進していたところ、右折しようとしてきた乗用車とぶつかりそうになり、急ブレーキをかける場面がありました。

 事故は回避できましたが、急ブレーキ時に後輪が滑って怖い思いをしました。この時、事故を回避するために「止まる技術」の重要性を肌で感じました。それ以来、道路の停止線の手前で綺麗に止まる練習やパイロンを置いてブレーキ練習を定期的にしています。

 しかし、「これで本当にブレーキ技術の上達をしているのかな…?」と疑問に感じることがあります。

 そこで、改めてブレーキの基本的な考え方と上達方法、急ブレーキ時の注意点を教えてくれませんか。

(30代男性)

 僕も過去にブレーキングが原因で落車したことがあります。重要ですね、ブレーキングは。

 僕のように、ブレーキングが原因で転んだことがある方は多いと思うんです。ロードバイクのブレーキはシティサイクルよりも強く効きますし、細く、高圧のタイヤはロックして滑りやすい。しかも、ブレーキやホイールにはいろいろありますから、制動力や制動性にかなり違いがあります。

 つまりロードバイクのブレーキって、扱いがシビアなんですよ。プロもよく、急制動でホイールをロックさせている場面を見ますよね。だから練習が必要です。

 本題に入る前に改めてになりますが、「ブレーキング(特に急制動)と落車のメカニズム」をちょっと考えてみたいと思います。「ブレーキをかける」とは、すごく簡単に表現すると「ブレーキシステムが生み出す摩擦抵抗」と「タイヤと路面が生み出す摩擦抵抗」のコラボ技になります。このコラボの力関係が、仮に「ブレーキシステムが生み出す摩擦抵抗」<「タイヤと路面が生み出す摩擦抵抗」だった場合は、「このブレーキいまいち効かないなあ(転びにくい)」というインプレッションに繋がる気がします。一方、「ブレーキシステムが生み出す摩擦抵抗」=「タイヤと路面が生み出す摩擦抵抗」だった場合は、難しいことを抜きにして考えれば、「ん~バランスがとれたブレーキだ!」と感じることになると思います。そして、問題となる、「ブレーキシステムが生み出す摩擦抵抗」>「タイヤと路面が生み出す摩擦抵抗」のパターンでは、「うわ~このブレーキ効きすぎ!いろいろ工夫してブレーキかけないと危ない(転びやすい)」という感想に繋がるのでしょう。

 要するには、スポーツバイクのブレーキシステムというのは、タイヤのグリップ力に対して強大なブレーキングパワーを生み出す傾向にあるため、前後の重量バランスや、車体の傾き、前後ブレーキへの入力配分、そして、ブレーキシステム自体への入力の強弱を調整しないと、あっという間にタイヤのグリップ力がブレーキの制動力に負けて転倒に繋がるというメカニズムに陥りやすいわけです。

ブレーキングは繊細なテクニックだ Photo: Yuzuru SUNADA

 我々、ライダーというのは、この一連の調整動作を各種身体センサーや、これまでの経験値などをベースとして、無意識にブレーキレバーを触る指先を細かく動かし、絶妙な体重移動などで、タイヤのグリップ力の限界値とブレーキシステムが持つ制動力の均衡点を一瞬で判断し調整しているわけですね。

 ロードバイクで「練習」というと、インターバルとかLSD(ゆっくり長距離を乗る)とか、フィジカルトレーニングのことばかりが話題になりますが、上記の様な理由から、ブレーキングの練習も大切だということがわかりますね。プロだって練習したがりますから。とくに最近。

 なんでかというと、ディスクブレーキが登場したからです。ディスクブレーキは効き具合がリムブレーキとぜんぜん違いますから、レースの前に、体に特性を覚え込ませるための練習が必要なんです。百戦錬磨のトッププロだって、ぶっつけ本番で新しいブレーキを使わせたら、落車すると思います。そういうものです。

 じゃあ、どうやって体に覚え込ませるか。

 基本はシンプルです。トレーニングの原点に立ち返りましょう。あちこちで言ってきましたが、「トレーニングとは順応」なのです。慣れることです。これはテクニックトレーニングでもフィジカルトレーニングでも一緒です。

 なにに順応するか。それは「タイヤのグリップ力」と「ブレーキの制動力やクセ」を覚え、その均衡点を知る作業(順応)です。

 このトレーニングは危険です。絶対に安全な場所、クローズされた場所で、できればプロテクターをつけて行ってください。

 ブレーキングの練習というと、8の字に走る「スラローム」を思い浮かべそうですが、それだけでは十分じゃないと考えます。本番のレースにつきものの、加減速の要素がないんですよ。

 だから、加速とブレーキング(急制動)、コーナーリングを繰り返すべきでしょう。モータースポーツでいう「ジムカーナ」ですね。これを10分、20分やれば、それだけで体は、そのブレーキシステムの癖とタイヤの限界点をある程度覚えるはずです。ブレーキやホイールを変えたら、かならず行うべきトレーニングです。慣れたら、濡れた路面でもやってみてください。ただし、安全には最大限の注意を払ってくださいね。

 急ブレーキの注意点は、あちこちで言われてはいますが、ちゃんと腰を引き、後ろ荷重にすること(後輪が浮き上がり気味になり後輪の摩擦抵抗が減ることを防ぐテクニック)です。どのロードバイクの教本にも書いてありますが、いざ急ブレーキが必要なシチュエーションになると、忘れてしまう人も多いと思います。これらは頭で考えて行う動作ではなく、カラダが自然にとっさに動かなければ意味がありません。

 だから、これも順応=トレーニングが必要なわけです。ジムカーナと合わせて、ほんの数分でいいですから、やってみてください。あなたと愛車を救うことになるかもしれませんよ。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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