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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<213>ツール前哨戦終了 キッテルとマイカが順調な調整、カヴやトーマスは復調気配

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 6月に入って各地で行われてきたレースが終了。今月の最終週末は多くの国で国内選手権が開催されるため、UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーやコンチネンタルツアーはひと段落となった。ここまでに行われてきた有名レースは、一様に“ツール前哨戦”の様相を見せた。Cyclistで連日レポートをお届けしてきたクリテリウム・デュ・ドーフィネツール・ド・スイスに続き、有力選手たちが顔をそろえた各所でのレースと彼らの動向を押さえていきたい。

オランダで開催されたステルZLMツール第4ステージで快勝したマルセル・キッテル。ツール・ド・フランス本番に向けて調整は順調だ © Procycleshots.com

スロベニアはマイカが総合優勝

 6月15~18日に行われたツアー・オブ・スロベニア(UCIヨーロッパツアー2.1)では、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が総合優勝。山岳勝負となった第3ステージで強さを発揮し、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)らを寄せ付けなかった。

ツアー・オブ・スロベニア第4ステージのスタートラインについたラファル・マイカ。好調に表情も明るい Photo: Tour of Slovenia

 この大会は、例年UCIワールドチームや同プロコンチネンタルチームが複数集まり、ハイレベルのレースが繰り広げられる。特に近年はその傾向が強く、ヨーロッパ各国をメインにサイクルロードレース中継に力を入れる「ユーロスポーツ」などもライブ中継を行うほど。今年はマイカを擁するボーラ・ハンスグローエのほか、バーレーン・メリダ、オリカ・スコット、ディメンションデータ、NIPPO・ヴィーニファンティーニなどが参戦。ツールはもとより、その先のビッグレースに向けた脚試しの場ともなった。

 ボーラ・ハンスグローエはマイカのほか、サム・ベネット(アイルランド)が第1、第4ステージでスプリント勝利。ベネットのツール出場は見送られる予定だが、代わってツール本番ではツール・ド・スイスで圧倒的な強さを見せたペテル・サガン(スロバキア)がエーススプリンターを務める。サガンにはポイント賞のマイヨヴェール6連覇がかかっていることも含め、このチームがツールでダークホースとなる可能性が大いにある。過去2度のマイヨアポワ(山岳賞)に輝いているマイカは、いよいよ総合上位進出を狙っている。

体調不良により戦線を離脱していたマーク・カヴェンディッシュ(左)はツアー・オブ・スロベニア第4ステージで2位と復調。右はステージ優勝のサム・ベネット Photo: Tour of Slovenia

 さて、3月にエプスタイン・バール・ウイルス感染を公表し、しばらく戦線を離脱していたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チーム ディメンションデータ)がこの大会でレース復帰。第1ステージでは10位、第4ステージでは2位と健闘し、復調をアピールした。依然、ツール出場には慎重な姿勢だが、間近に控えるイギリス選手権を経て最終決定が下されることだろう。ちなみに、同国選手権はカヴェンディッシュの地元・マン島で開催。ここで復活勝利を遂げることがあれば、その先のレースへ勢いを増すはずだ。

スプリンターは順調な仕上がりアピール

 6月14~18日にオランダで行われたステルZLMツール(UCIヨーロッパツアー2.1)では、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)が第1、第2ステージ優勝。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が最終の第4ステージを制し、ツールで両チームのスプリントエースを務める見通しの2人が順調な仕上がりを見せている。

ステルZLMツールでステージ2勝を挙げたディラン・フルーネウェーヘン。写真の第2ステージでは完勝 Photo: STER ZLM TOER

 スプリンターやスピードマンが集うレースとして、こちらもここ数年はツール前哨戦としての役割を果たしている。チームの地元であるオランダ開催とあって、強力メンバーをそろえたロットNL・ユンボは、初日のプロローグ(7.5km個人タイムトライアル)で、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)が勝利。第3ステージまでリーダージャージを着用し続けた。チームはログリッチェとフルーネウェーヘンで3ステージを制覇。今シーズンは1週間のステージレースで上位フィニッシュを繰り返すログリッチェと、進境著しいスプリンターのフルーネウェーヘン、この2人でツールを戦うメドが立った。

ステルZLMツール第4ステージを制したマルセル・キッテル © Procycleshots.com

 キッテルはこの大会に6年連続出場。ツール前の恒例イベントとなっている。ステージ通算4勝を挙げてきた相性のよい大会で、今年も勝利数を積み重ねた。また、プロローグでも2位と、若き日の“専門種目”であった個人TTでも持ち前のスピードを発揮。こちらもツール本番に向け、明るい光が射している。

 また、ジロ・デ・イタリア第2ステージを勝利し、マリアローザ着用も果たしたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)も第2ステージ2位、第4ステージ3位とまずまずの走り。ジロでは1勝を挙げて以降、いまひとつ不発に終わった印象だが、途中で大会を離脱し、ここまで再調整に充ててきた。こちらも狙うは、もちろんツール。これまでの経験と実績を考えれば、しっかりと調子を合わせてくることだろう。オランダでの調整レースを見る限り、不安はなさそうだ。

 今大会は第3ステージで逃げ切り勝利を挙げた28歳のジョセ・ゴンサルヴェス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)が総合優勝している。

トーマス、プールスもツールを賭け前哨戦へ

 ピレネー山脈が舞台となるフランスのステージレース、ルート・ドゥ・スッド(UCIヨーロッパツアー2.1)では、落車負傷によりジロを途中リタイアしたゲラント・トーマス(イギリス)、膝の故障のため4月のアルデンヌクラシックを棒に振ったワウト・プールス(オランダ)のチーム スカイ勢が参戦。トーマスは総合優勝したシルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシングチーム)から14分33秒差の総合25位、プールスは同じく26分11秒差の41位で終えた。

ルート・ドゥ・スッドに出場し、ツール本番への足掛かりとしたゲラント・トーマス。写真はジロ・デ・イタリア2017第7ステージでのもの =2017年5月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もっとも、トーマスに関してはけがの回復状況を見るための出場ともいえ、レースを通じてツールに向けた調整を進めたのが実情。チーム首脳陣がクリストファー・フルーム(イギリス)の山岳アシストとして、トーマスをメンバー入りさせたい意向を示しており、トーマス本人もそれに応えるべくトレーニングを積んでいる。負傷から約1カ月しか経っておらず、完調とはいえないがツールのスタートラインに立つ可能性は高まったと見てよいだろう。

 一方のプールスも、ツール出場に向けこの時期の復帰を目指してきた。ただ、こちらはシーズン通してのレース数が極端に少なく、この大会が2月以来というのが心配な点。本人は「悲観していない」と述べているが、層の厚いチームにあって高い要求に応じられるだけの走りができるかは不透明。あと少し様子を見ていく必要がありそうだ。

 そのほかでは、第3ステージでピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)が山岳を制覇。また、今年のツールをもって現役を退く予定のトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)も総合23位で完走。フランスが誇るベテラン2人がツール本番に向けて元気に姿を披露している。

モビスター、サンウェブがツール候補を発表

 ツールの出場選手は、多くのチームが国内選手権を終えた後に発表するが、モビスター チームとチーム サンウェブについては、すでにロングリスト(最終候補選手)を公表している。さらにこの数日間のうちに、他チームからも同様の発表が行われる可能性がある。

モビスター チームはナイロ・キンタナがツールのロングリスト入り。ジロの疲れが心配されるが、精力的に準備を行なっている =ジロ・デ・イタリア2017第21ステージ、2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 モビスター チームは6月13日に14人の候補選手を発表。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、ナイロ・キンタナ(コロンビア)の主軸2人が順当にメンバー入り。最終的な9人の出場選手は、各国の国内選手権を終えた時点で発表される。

 キンタナはジロとツールの2冠を目指し今シーズンを戦ってきたが、ジロ最終日に逆転を許し、総合2位。心身のダメージが心配されるところだが、このほどツール最終決戦の場となるアルプスのコース試走に向かったことが明らかになっている。SNSなどで自ら写真をアップしており、その表情も明るい。調子はさておいて、ツールへのモチベーションは上々のようだ。

チーム サンウェブはマイケル・マシューズがツールでリーダーを務める見通し =ツール・ド・スイス2017第3ステージ、2017年6月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チーム サンウェブは15日に13人の選手を発表。中心となるのは、スプリンターのマイケル・マシューズ(オーストラリア)だ。先ごろのツール・ド・スイスでも第3ステージで勝利。この大会で2勝を挙げたサガンとは、ツールでもマッチアップが期待される。

 なお、ジロ総合優勝のトム・デュムラン(オランダ)はこのリストに含まれず、ツール回避が正式に決定。この先はブエルタ・ア・エスパーニャをターゲットにするものとみられる。

●モビスター チーム ツール・ド・フランス最終候補選手

アンドレイ・アマドール(コスタリカ)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)
ホナタン・カストロビエホ(スペイン)
アレックス・ドーセット(イギリス)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ルーベン・フェルナンデス(スペイン)
ヘスス・エラダ(スペイン)
ダニエル・モレノ(スペイン)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)
ナイロ・キンタナ(コロンビア)
ホセ・ロハス(スペイン)
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)

●チーム サンウェブ ツール・ド・フランス最終候補選手

ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク)
ニキアス・アルント(ドイツ)
ワレン・バルギル(フランス)
フィル・バウハウス(ドイツ)
ロイ・クルフェルス(オランダ)
ヨハネス・フレリンガー(ドイツ)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ)
マイケル・マシューズ(オーストラリア)
ラモン・シンケルダム(オランダ)
トム・スタムスナイデル(オランダ)
ローレンス・テンダム(オランダ)
マイク・テウニッセン(オランダ)
アルバート・ティッメル(オランダ)

今週の爆走ライダー−ラリー・ワーバス(アメリカ、アクアブルースポーツ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ワイルドカードでチームが出場権を得たツール・ド・スイスで、自身も驚きのステージ優勝。この大会の第3ステージは、自らにとっても、チームにとっても初勝利というメモリアルな1日となった。

縁のあるスイスでの劇的勝利となったラリー・ワーバス Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年まで2年間はスイス籍のイアム サイクリング、その前の2年間はスイスのサイクリングブランドがメインスポンサーのBMCレーシングチームに所属。縁の深い同国でのプロ初勝利は、運命に導かれたものなのかもしれない。

 大金星と言われた勝利だが、伏線がなかったわけではない。5月のツール・ド・ヨークシャー(UCIヨーロッパツアー2.1)では総合13位、続くツール・ド・ノルウェー(UCIヨーロッパツアー2.HC)では総合8位。スピードと起伏への対応力が求められる両レースで一定の結果を残しており、それがフロックではないことを証明したスイスでの走りでもあった。

 それでも、いまの状況は奇跡だと実感する。なぜなら、昨年の秋頃はチームの解散が決まり、次のチーム探しに苦心していたのだから。一度は引退を決意しながら、現チームの結成に誘われ今に至っている。「ライダー、スタッフ、みんなに感謝しないといけない」との言葉に、彼の切実な思いが込められている。

 チームはトップシーン進出1年目からブエルタの出場権を獲得。8月下旬からは、情熱の国スペインでの戦いが待ち受ける。まだ自身の出場は確定していないが、昨年までに3度出場しておりレースの雰囲気はチームの誰よりも知っている。

 チームのニキ・ソレンセン監督が「チームにとってターニングポイントになる」と称したスイスでの勝利。それをもたらしたワーバスにとっても、キャリアの新たな領域へと突入するターニングポイントになったに違いない。謙虚なアメリカンの次なる挑戦が始まろうとしている。

ポディウムで喜ぶラリー・ワーバス。チームにとっても自身にとってもターニングポイントとなる勝利で、この先のビッグレースでの活躍を誓う Photo: Tour de Suisse
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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