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Cyclist「一から始めるパワートレーニングin千葉競輪場」 自分の力を可視化するパワーメーター FTP計測は走りを変えるための第一歩

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 プロ選手が使用していることで脚光を浴びた「パワーメーター」。今や一般サイクリストにも身近な存在となったトレーニングデバイスだが、さまざまな機種と価格帯があるなか、実走で機能や使い方を試せる機会は多くはない。そこで『Cyclist』では、元プロロードレーサーの宮澤崇史さんらが登場するおなじみの人気連載「一から始めるパワートレーニング」と連動した体験イベントを企画。6月3日、千葉市にある千葉競輪場を借り切ってバンク走行体験と併せたパワー測定を実施した。パワートレーニング初体験者や、パワーメーターを使いこなしたいというサイクリストが各レベルに応じたイベントに参加し、パワートレーニングのスキルを高めていた。

←<速報>「一から始めるパワートレーニングin千葉競輪場」を開催

FTP測定前に宮澤崇史さんと白戸太朗さんにアドバイスを受ける参加者 Photo: Naoi HIRASAWA

出力計測だけじゃないガーミン「ベクター2J」

 イベントが行われた千葉競輪場には、朝からサイクリストの歓声が響いた。初めてバンクを走る人、パワートレーニングを初体験する人も多かったからだ。イベントは午前・午後の二部編成で開催。第一部は「ガーミンで体験 初めてのパワーメーター」と題し、パワーメーターに関心がある人や選択基準に迷っている人を対象に、ガーミン・ジャパンの担当者がガーミンの「ベクター2J」の特徴について解説した。

ガーミンのパワーメーター「ベクター2J」について説明するガーミンジャパンの小林千元さん Photo: Naoi HIRASAWA

 ガーミンの「ベクター2J」はペダルタイプのパワーメーター。ハブやクランクタイプと違って取り付けに難しい作業はなく、ペダルレンチとアーレンキーだけで取り付けられるのが特徴だ。ベクター2Jの軸にひずみゲージが内蔵されており、サイクルコンピューターへの発信機を装着。サイクルコンピューターへとデータが送信される仕組みになっている。

ペダル型のパワーメーター「Vector2J」 (ガーミン・ジャパン提供画像)

 「ベクター2J」は単に出力を計れるだけでなく、ペダルタイプの特長を生かし、ライダーのペダリングの左右バランスや踏圧分布、トルク効率などさまざまなデータを取得できる。データはリアルタイムでガーミンのサイクルコンピュータで視覚化され、よりバランスのとれたペダリングやフォームを意識することができる。

 「ベクター2J」はこれまでルックタイプのクリートのみ対応するボディを採用していたが、5月からシマノへのコンバージョンキットが登場し、換装可能になった。アルテグラグレードの「PD-6800」を用意し、従来の軸とベクター2Jの軸をチェンジすることでシマノボディを使いながらパワー計測ができ、ユーザーの選択肢が広がったことでも注目を集めている。

ワット数を体感「プロ選手ってすごい!」

 「ベクター2J」の機能や使い方について解説を受けた後、その性能を体感すべく参加者はバンクへと移動。固定ローラーを使って「ベクター2J」を取り付けたバイクを漕ぎ、具体的にワット数(W)として表示される出力や、左右のペダリングバランスなどを確認した。

ペダル型のパワーメーター「ベクター2J」 Photo: Naoi HIRASAWA
出力の左右バランスが可視化される Photo: Naoi HIRASAWA
ガーミンのパワーメーター「ベクター2J」を体験する参加者 Photo: Naoi HIRASAWA

 「ベクター2J」を使って初めてパワーメーターを体験したという荻原健二さんは、「力任せで踏んでいて力が外に逃げる感じがあると日頃から感じていた。初めて自分の左右バランスをみて、意識することの重要性を感じた」とコメント。また、同じくパワーメーター初体験の玉木翔さんは「こうして自分の出力を可視化して、改めてプロ選手のすごさを感じた」と率直な感想を語っていた。

2分間、全力で踏んだ場合の平均出力を体験 Photo: Naoi HIRASAWA
表示されるW数や左右のバランスに一喜一憂 Photo: Naoi HIRASAWA

 また、ローラー台の待ち時間を利用し、自身のロードバイクで500mバンクを走行する体験会も開催された。参加者はバンク走行に対しても、パワーメーターと同じくらい興味があったようで、なめらかな路面での走りごたえを堪能したり、24度の斜面での走行を体験していた。

500mのバンクを思いきり快走する参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA
中村妃智(きさと)選手 Photo: Naoi HIRASAWA

 この他にもバンクの走行体験会では、日本競輪選手会千葉支部長の中村浩士さんの指導による競輪用スターターを使ったスタート体験や、中長距離の中村妃智(きさと)選手(日本写真判定千葉事業所サービスチーム)の先導によるペース走行など、普段は体験できない貴重な機会を満喫していた。

「一度バンクを走ってみたかった!」という女性の参加者も Photo: Naoi HIRASAWA
一部では、日本競輪選手会千葉支部長の中村浩士さん(写真右)の指導のもと、競輪用スターターを使った体験も行われた Photo: Naoi HIRASAWA
第一部の参加者全員で記念撮影 Photo: Naoi HIRASAWA

 第一部の最後には、宮澤さんらによるパワートレーニング講座が行われた。宮澤さんは参加者に対して「現在取り入れているトレーニング法」をたずねると、大半が心拍トレーニングという結果に。こうした状況に「心拍は上がりやすさ、上がりにくさなどその時の体調に依存してしまい、トレーニング中の心拍は安定しないです」との見解を話した。一方で「パワーという値は体のコンディションなどの内面的な要因や、風や道の斜度などの外的要因があったとしても、出てくる数字はライダーがその瞬間に出した客観的で正直な数字」とトレーニング上の利点を強調した。

力を出し尽くす20分間

 「パワーメーター使いこなし術 FTPで実力チェック」と題した第二部には、すでにパワーメーターユーザーで「より効果的なパワートレーニングが知りたい」という強者サイクリストが集結。一部とはまた違った熱気漂うイベントは、白戸さんの「皆さんリラックスして~」の一声から始まった。

FTP計測に向けてウォーミングアップをする参加者たち Photo: Kenta SAWAo
大人の男性に混じってFTP計測に参加していた伊藤桃奈ちゃん Photo: Naoi HIRASAWA

 第二部でのポイントとなるのはFTP値(Functional Threshold Power)の使い方。FTPとは1時間当たりの最大平均W数を表した値。フィジカルレベルを表す値で、トレーニングメニューを組む際の指標となる。

 FTP計測にはいくつか方法があるなかで、今回は最も一般的な「20分間の最大平均W数から5%差し引いた数値」で測定。コンディションを整えて全力で臨むことが必要となるため、参加者全員測定前に20分間のウォーミングアップを念入りに行った。その後、9人ずつの2チームに分かれ、20分間の測定に臨んだ。

2組に分かれてFTP計測を開始 Photo: Naoi HIRASAWA
これから20分間の計測を前に緊張の面持ちの参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA
飛ばし過ぎず、丁寧にペダルを回す Photo: Naoi HIRASAWA

 宮澤さんによると、FTPを正しく測定するコツは程よい負荷でペダルを回せるギアをチョイスし、90回転前後のケイデンスを維持する。最初は力を抑えつつ、少しずつギアを上げ、出力を高めていくことを心がけることだという。

 スタートの合図とともに測定開始。必要以上の力でペダルを踏み込もうとする参加者に、宮澤さんが「FTPは人と比べるものではない。抜かれても焦る必要はない。丁寧に踏み続けて」とマイク越しに叫ぶ。参加者たちは逸る気持ちを抑え、自分に合ったペースを探し、キープしていた。

元プロロードレーサーである『Cyclsit』編集部の松尾修作記者もFTP計測に参加 Photo: Naoi HIRASAWA
計測終了。全力を使い果たした Photo: Naoi HIRASAWA
続いて後半チームが計測。待たされた分、パワーが漲ってる? Photo: Naoi HIRASAWA

 続いて後半チームもスタート。前半チームの走りを見ていただけに、序盤から抑え気味。それでもじわじわと襲ってくる疲労に苦しい表情を浮かべる。「残り10分」という宮澤さんの声。やっと折り返し地点であることに心が折れそうになるも、そこはイベントならではの強み。バンクでの走行感と周囲のがんばりに刺激を受け、持ちこたえる。「ラスト3分!」という合図にさらにペースアップ。最後の力を振り絞って出力をあげる。

「あと15分、あと10分」という掛け声に耐え、踏み続ける参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA
追い越しは右から Photo: Naoi HIRASAWA
計測中も声をかけ続ける白戸太朗さん Photo: Naoi HIRASAWA
参加者の喉の渇きを潤した伊藤園の「アミノ水素水」 Photo: Naoi HIRASAWA

 「はい20分!メーターをストップ!データ保存して!」という掛け声とともにペースダウン。バンク内に戻ってきた参加者たちは、皆一様にパワーを出し切ったように自転車にもたれかかった。「出し切った~」「20分は長かったけど、自宅でローラーを回すより思い切り走れた」と皆、疲れながらも解放感あふれる笑顔に包まれていた。

 そんな測定を終えた参加者たちの喉の渇きを潤していたのが、よく冷えた伊藤園の「アミノ水素水」。アミノ酸3200mgを水素水でおいしく摂取できるスポーツウォーターで、甘くなく、すっきりとした飲み口。水分を絞り出した体に心地よく滲みていく様子が、その表情から伝わってくる。同じ辛さを分かち合った者どうし、まるで杯を交わすようにボトルを飲み干していた。

「甘くなくすっきりとした味で運動時の水分補給にぴったり」と好評 Photo: Naoi HIRASAWA
全力を尽くした体に何よりのご褒美 Photo: Naoi HIRASAWA

FTPを目的に応じたトレーニングに活用

出走した『Cyclist』編集部の松尾記者の計測データをもとに解説する宮澤崇史さん Photo: Naoi HIRASAWA

 計測後は軽食を摂りながら、宮澤さんらによるFTPデータの活用に関する講座が行われた。宮澤さんは参加者とともに出走した『Cyclist』記者、松尾修作のFTPを例にデータの見方を解析。「序盤はパワーを抑え、一定のケイデンスをキープしつつ後半に向けて徐々に出力を上げることができている。しっかり踏めており、お手本としては理想的なデータ」と評価した。

 一方でペダルに加わる力の左右バランス(パワーフェーズ)については、「トルクのかかり方が左足で早く、右足が遅い」とズレを指摘。さらに「左足の下死点(力がかかる最下位置)から9時の地点まで力がかかっているということから、踵が上がって踏込みにロスが生まれている可能性がある」と分析した。

『Cyclist』編集部、松尾記者の計測データ。グレーがケイデンス、ピンクがw数。後半に向けて徐々に出力があがっているのがわかる 提供: Shusaku MATSUO
ペダル上のどこに力が加わっているかやパワーの値を検知する「サイクリングダイナミクス」を解説 Photo: Naoi HIRASAWA

 このFTPの値をもとに、目的別のトレーニングが行われることになる。宮澤さんによると、トレーニング強度のレベルは7段階あり、これらを目的に応じて組み合わせる。

◆トレーニング強度のレベル

レベル1(L1):「アクティブリカバリー」=FTPの55%以下
レベル2(L2):「エンデュランス」=FTPの56-75%
レベル3(L3):「テンポ」=FTPの76-90%
レベル4(L4):「スイートスポット」=FTPの88-94%、「LT」=FTPの91-105%
レベル5(L5):「VO2max」=FTPの106-120%
レベル6(L6):「アネロビック」=FTPの121-150%
レベル7(L7):「スプリント」=MAXパワー

 例えば、アップダウンのあるコースでの100kmレースを想定した場合、L4とLTあたりの強度でスプリント30秒、レスト30秒のインターバルを5~10分程度繰り返す。その他にも、レース中のポジション取りの苦手な選手はレスト中にL3を組み合わせるといった細かなアレンジも可能だという。宮澤さんは、「パワートレーニングの組み合わせは1万種類くらいある。軸となるトレーニングを決め、自分で経験を重ねて作っていくことが大切」と強調した。

会場からの質問にこたえる白戸太朗さん Photo: Naoi HIRASAWA
食い入るように耳を傾ける参加者 Photo: Naoi HIRASAWA

 会場から寄せられたトレーニングの頻度についての質問に宮澤さんは、「選手のレベルにもよるが、できれば週3回が望ましい。山がなければローラーでも良い。1時間あればできるトレーニングはある」と答えた。

白戸太朗さん(写真左)と宮澤崇史さん Photo: Naoi HIRASAWA

 宮澤さんからパワートレーニングを教わった自称“パワトレビギナー”の白戸さんは、「やるべきことが明確化されるのでトレーニングが楽しくなる。いわゆる“向かい風=つらい”でなく、それさえもトレーニングの要素に変わる」と強調。さらにパフォーマンス中も、「ペースや力の配分をコントロールできるようになり、後半ばてることがなくなった。がんばりすぎず余すことなく力を使い切るために、自分の力を可視化するのがパワートレーニング」と語った。

 宮澤さんは「パワートレーニングにレベルは関係ない。基本をしっかりおさえるという点で、むしろ入門者の時から始めるとポテンシャルが伸びやすい」とし、自分の走りを変える第一歩としてパワートレーニングの導入を提唱した。

第二部参加者と、バンクで記念撮影 Photo: Naoi HIRASAWA

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