門田基志の欧州XCマラソン遠征記2017<2>ドイツ、オーストリア、スイスに面するボーデン湖を走る越境サイクリング<前編>

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 自転車の本場・ヨーロッパに1カ月間にわたって遠征中のマウンテンバイク(MTB)・クロスカントリー(XC)の門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)。UCIのステージレースとクロスカントリーマラソン(XCM)のUCIシリーズ、そしてXCM世界選手権という長距離レース3連戦の合間を縫い、プロとして、またサイクリストとして見て感じた欧州自転車旅の様子をリポートします。

←<1>レースよりも一苦労?なヨーロッパ遠征の旅 

◇         ◇

 今回は、遠征の楽しみの一つでもある国境を越えるサイクリングルート「ボーデン湖一周」の様子を紹介する。ボーデン湖はドイツ、オーストリア、スイスの国境に位置する湖。面積は約536平方キロと、アルプス地方ではレマン湖に次いで2番目の大きさを誇る。

国境をまたぐボーデン湖一周サイクリング Photo: Motoshi KADOTA

 このサイクリングの様子は僕が出演している地元のテレビ番組でも使う予定なので、取材のための撮影機材を一式「evoc」のカメラバックに詰め込み、走り出した。

 日本と違い右側通行なので、とりあえず「右回りで湖側を走ろう」ということだけを決め、あとは毎度おなじみの「行けば目的地に辿り着くだろう」という楽観的な2人の旅が始まった。

自転車が生活に溶け込んでいる世界

一周サイクリングルートの案内板とサイクリングルートの案内板。くっついてるのが一周 Photo: Motoshi KADOTA

 まずはサイクリングルートのサインを見付けることから始まる。ルートの見分け方は以前のシュトゥットガルトと同じ看板なので分かりやすい(ドイツ国内のエリアは案内の標識が統一されている)。そこで1周を示しているであろう看板を見掛けたが、よく分からないので取りあえず湖を右に見て走る事にした。このルールは琵琶湖でもしまなみ海道でも同じで、海や湖側を左右どちらかに決めて走ると迷わない。

 走っていると本当にたくさんのサイクリストを見かける。それはゴールデンウィークのしまなみ海道より多いのでは?と思えるほどだ。

オーストリアも凄く走りやすい環境でサイクリストが非常に多い Photo: Motoshi KADOTA
しっかりと手信号を出す人が多い Photo: Motoshi KADOTA

 高齢の夫婦が多く、子供連れや家族も多いことに驚かされた。自転車が生活に溶け込んでいるこの世界をうらやましく思えたが、擦れ違う老夫婦を見て…自分はあの年齢で走れるかな?と思うと、ちょっと自信がなかったりする。

撮影の秘密兵器、回転式のスタビライザー「ジンバル」 Photo: Motoshi KADOTA

 道が定まった(?)ところで、取り出したるは撮影の秘密兵器、回転式のスタビライザーの「ジンバル」。これに一眼レフカメラを固定して撮影するのは西山君。撮影者は素人だが最近は機材が何とかしてくれるのでは?自転車も機材である程度は補ってくれるしなぁ〜と、いうことで無責任にテレビ番組の撮影を一任。そして疲れた体を乗せてサクサク進む「GIANT Xtc ADVANCD SL27.5」にまたがり、ボーデン湖一周に出発した。

ボーデン湖一周の相棒は「GIANT Xtc ADVANCD SL」 Photo: Motoshi KADOTA

カプチーノで始まるコミュニケーション

きれいなサイクリングロードが続く Photo: Motoshi KADOTA

 車が走る一般道より1本湖側に走るサイクリングロードは本当に走りやすく安全だ。公園には木陰のベンチ、ヨットハーバーと景色も見ていて飽きない。

 コースの踏み切りの手前に何やら怪しいオジさんが小ぎれいな格好をしてニコニコ笑いながらこっちを見ている…。ちらっと見ると自転車の移動カフェがオープンしているではないか!!

サイクリングロードで出会った自転車カフェ Photo: Motoshi KADOTA

 西山の方に目を向けると、もう止まって飲む&撮影の準備をしている!「こいつ分かってる!」と少し評価を上げた。先を読み行動する事は大切な事だ(笑)。

かなり本格派ながら2人で10€以下と良心的な価格 Photo: Motoshi KADOTA

 注文しようとメニューをみると、どうやらドイツ語オンリーのカフェ。そりゃそうだ。普通はドイツ語を話す人しか来ないよね。そこで、僕がとった行動は堂々とした態度で日本語で「カプチーノ2つ!」と指でVサインを出すとオジさんは「カプチーノ ツヴァイ!」と答えてカップを2個用意した。

 次に僕はマフィンを指差して「マフィン ツヴァイ!」と、いま覚えたドイツ語の「2」という数字を使ってみたら、オジさんはにっこり。何となく仲良くなれた気がした。

こんな小さな橋が国境?

実はこの橋、ドイツとオーストリア国境。普通の小さな橋を渡るだけで国境を越える感覚は、日本育ちには考えられない Photo: Motoshi KADOTA

 カフェからしばらく走り、小さな橋を越えたところに、小さな普通の看板があった。読んでみると、なんとこの橋が国境なのだそう!国境がどこなのかを気にしていたから気付いたが、普通なら気付かず通り過ぎる。ヨーロッパの人々は、僕ら日本人が感じるような国境の概念がないように感じる。

 オーストリア国内を走行した距離は20km程度と短いが、食事はオーストリア内でとるのがおすすめだ。なぜならばすぐ先のスイスは物価が驚くほど高く、しかもオーストリア料理の方が美味いからだ。

当たり前のようにサイクルトレインがサイクリングコースの近くを並走している Photo: Motoshi KADOTA
自転車のマークが大きく描かれたサイクルトレイン Photo: Motoshi KADOTA
昼飯はオーストリア料理 Photo: Yasuaki NISHIYAMA

 寄り道をしつつブレゲンツの港に到着。またしても直感で良さげなレストランに入ってみた。ドイツ語のメニューは全く理解できないので、英語のメニューを持ってきてもらったけど、店員さんはドイツ語しか喋れないという事で何とかこの店の一番と二番、三番の人気メニューを聞き出し…じゃなくて指差しで教えてもらい、よく分からないまま料理が出てきたが、美味かったのでOKだ。

スイスよりも手頃で、美味しい Photo: Motoshi KADOTA
ここでもドイツ語しか通じないけど、おいしかったので結果オーライ! Photo: Motoshi KADOTA

 食後は自転車カフェで覚えた「カプチーノ ツヴァイ」を勢い良く使ってみたらにっこり笑顔のオバちゃん店員さん。日本でも海外でもオバちゃんとコミュニケーションをとるのは得意なようだ…。

 午後になり気温が上がってきた。ヨーロッパのサイクリングは日本ほど飲み物を簡単には買えないので補給に気をつけつつ、とりあえずの次の目的地スイスのローマンスホルンに向かって出発した。

有名なライン川のサイクリングロードは多くのサイクリストが出会う場所 Photo: Motoshi KADOTA

 ヨーロッパは自販機もコンビニも無い変わりに、購入できる場所に人が集まり、人と人が交わり交流する場になっている。この仕組みは人を豊かにしていて日本になくなってしまった文化のように想えた。ヨーロッパでのサイクリングの楽しみは、こういう出会いや触れ合いも一つの大きな要素なのだと感じた。

<つづく>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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