門田基志の欧州XCマラソン遠征記2017<1>再びのデコボコ師弟珍道中 レースよりも一苦労?なヨーロッパ遠征の旅

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 マウンテンバイク(MTB)・クロスカントリー(XC)の門田基志選手(チームジャイアント)が自転車の本場・ヨーロッパへ1カ月間の遠征に向けて、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)とともに5月30日に出発しました。UCIのステージレースとクロスカントリーマラソン(XCM)のUCIシリーズ、そしてXCM世界選手権という長距離レース3連戦。門田選手がレースの合間を縫って、現地からライブ感あるリポートをお届けします。

◇         ◇

フランクフルト空港で大荷物を抱えて大移動する門田基志選手。実はレース出場よりも大変? Photo: Motoshi KADOTA

 今年も恒例のヨーロッパ遠征が始まる。パートナーは弟子で今期から強化指定選手となり、6月末のXCM(クロスカントリーマラソン)世界選手権の日本代表にもなった西山靖晃だ。まずXCM、XCO問わず世界に出て走っているMTB選手は少数であり、そのうちの2人がこうして遠征に出られる環境を作ってくれている皆さんに感謝したい。

「CJ−1富士見パノラマ」の翌日からヨーロッパ遠征は始まる Photo: Ryotaro SHIBUI

 「世界で勝負を!W杯を!」という夢を抱き、口にするのは簡単だがそれを実現するのは簡単な話ではない。世界選手権、アジア選手権の代表に選ばれ、国を代表して勝負する延長線には獲得したUCIポイントを生かしてのW杯、XCMならワールドシリーズに繋がる。が、ワールドシリーズが世界選手権に繋がらなければナショナルチームで日本代表で参戦しても目標ではなく、それは夢幻だと数年前に痛感した。以来、世界を目標としてUCIポイント獲得し、世界と戦うために海外遠征に出ることを決めた。

 今回のヨーロッパ遠征ではオーストリアでUCIのステージレースを4レース走り、ドロミテに移動してマラソンシリーズを1レース、その後ドイツのジンゲンに移動しXCM世界選手権を走る。

レース直後のドタバタ出国

「CJ−1富士見パノラマ」を走り終えたその日のうちに都内へ移動 Photo: Motoshi KADOTA

 5月28日に「CJ−1富士見パノラマ」を走り終え、その日のうちに都内へ移動。翌日29日に「GIANT」本社でメカニックにバイク調整と梱包をしてもらい、その夜中に出発するという超強行スケジュール! バイク2台をevocバイクトラベルバックに4人掛かりで詰め込み、空いている隙間にスペアタイヤやパーツをパズルのように入れて梱包完了。

バイクはevocのバイクトラベルバッグを使用。隙間にはスペアタイヤを詰め込めるだけ詰め込む Photo: Motoshi KADOTA

 バイク4台、100Lクラスのスーツケース2個、遠征用のバック2個、スーツケース小1個、バックパック…ととにかく荷物が多いので早めに空港へ行き、チェックインを済ませたら、空港関係者が「中身はロードバイクか?」とたずねて来る。「ツアー・オブ・ジャパン」(TOJ)関係で羽田を利用する人が多かったそうで、その話を聞いて僕も昔、TOJを死にそうになりながら完走したことを思い出した。

 などと浸る間もなく、空港ロビーのチェックイン手前で、早速「あっ!パスポート類をホテルに忘れました!」と西山。毎度、トラブルがないわけがない西山との2人旅だが、危うく1人旅になるところだった。神のお告げか?早めに来ていて良かった。

弟子でありパートナーの西山靖晃。早速パスポートを忘れるという失態… Photo: Motoshi KADOTA
空港に到着したらひとまず買い物を済ませ、ラウンジで搭乗までの時間を過ごすのも楽しみの1つ Photo: Motoshi KADOTA

快適さが体感時間を左右する空の旅

大量の荷物を空港に運びチェックインするのはいつものANA。過去のバイク輸送でトラブル無しの安心の対応 Photo: Motoshi KADOTA

 「快適な空の旅」─よく聞くフレーズだ。長距離路線で、さらにシビアなレース機材預け。確かに空の旅は快適で完璧でなくてはならない。ただ、毎度機内で思う課題がある。折角のフルフラットシートを離陸前はリクライニング無しで待機しなくてはならないが、夜中便は離陸前に眠りに落ちてしまい、そのままの状態で数時間寝てしまうのだ。が、今回は飛び立つまで寝るのを我慢。なんとかクリアできた。

ANAで日本の夜中に出発し、ヨーロッパ時間早朝に到着する便を選ぶ事で時差ボケ対策。とにかく飛行機では寝る!快適な空間が大切だ Photo: Motoshi KADOTA

 そして、楽しみなのはキャビンアテンダントさんのおもてなしである。毎回、熟練の方(という言葉で察して欲しい)でとても気が利き、本当に快適な空間を作ってくれる。おかげで今回はしっかり7時間程熟睡できた。目が覚めて食事をとり、映画を1本見たら機内誌に目を通し…危うく機内販売の時計に手を付けそうになる気持ちを抑えたりしていたら、あっという間にヨーロッパに到着した。

クルマ移動もエキサイティング

フランクフルト空港に到着してからが大変だ。日本のレンタカー会社みたいに優しくない…というか大荷物が特殊なんだろう Photo: Motoshi KADOTA

 到着後、大荷物を抱えてレンタカーを借りるカウンターへと向かう。ここで毎回日本のサービスと比較し、日本の素晴らしさを感じる。過剰ともいえるサービスだが、使う側に立った視点はやはり日本ならではだ。

 大きな荷物を押して引いて、エレベーターやスロープを駆使し受付カウンターに到着した頃には疲れ果てている。カウンターで手続きを済ませたら鍵を渡され、自分でレンタカーを取りに行く。さらにレンタカーは空港の大きな駐車場の奥、最果ての地だ。やっとの思いでレンタカーに辿り着き、車の中に荷物を入れ終わっていざ出発!

腹が減ってはアウトバーンでの運転ができぬ! Photo: Motoshi KADOTA
途中のドライブインはドイツ語しか通じず、得意の指差しコミニュケーションで欲しいものはゲットできた Photo: Motoshi KADOTA
レンタカーに荷物を積み終えていざ出発! Photo: Motoshi KADOTA

 僕らのルールは“二人掛かりで運転をする”という事。右側通行で左ハンドル、交通ルールも何となく直感頼りなので助手席は本当に助手であり、安全確認を一緒にして運転手は前を見る。

 そしてナビは携帯の“Googleナビ”がおすすめ。ラウンドアバウト(環状交差点)でも出口を細かく指示してくれる。助手席は先を予測し、「Googleマップ」を見ながら運転手が分かりやすいようにサポートする。1人でこのデカい車を運転し、ドイツ語のナビゲーションを理解するのは不可能だ。

 市街地を抜けてアウトバーンをかっ飛ばし、交代しながら運転する。が、アウトバーンは不慣れな日本人にとっては戦場だ!時速140kmで走る僕らを時速200km以上のオバちゃんがぶち抜いていく(笑)。抜いて行く車の音が映画で見る戦闘機のような「バシュシュシュシュー!!バシューン!」と、もう勢いが違う。

ボーデン湖畔で足慣らし

フリードリヒスハーフェンの宿に到着 Photo: Motoshi KADOTA

 今回はレース明けで疲労が溜まっていたこともあり、オーストリアまでの途中の町、フリードリヒスハーフェンというユーロバイクの町で2泊することに。軽く足を回すという口実のもと、国境をまたぐサイクリングロードでもあるボーデン湖一周を走り、3日目にオーストリアに移動する計画をたてた。

 ボーデン湖でサイクリングルートを検索していると、走っているすぐ横の道がサイクリングロードのようで、子供からお年寄りまで性別問わずたくさんのサイクリストが楽しんでいた。ドイツらしいのは、クロスバイクにいわゆる「ママチャリ」のようなハンドルがついた町乗り車とクロスバイクの中間のような自転車が多く、服装も動きやすい普通の服からサイクルウェアと多種多様だ。

ここからボーデン湖一周サイクリングが始まる Photo: Motoshi KADOTA

 ホテルに着いて、ドイツ語しか話せないスタッフと話し…たといえるのか分からないが、部屋を確保。バイクを組み立てるのがまた大変だ。安定した作業台もなく道端の日陰で行ったが…ここでメカニックに謝罪。チタンのボルトを1本舐めました…ごめんなさい(苦笑)。

 そして2台のバイクを組み終わりペダルを取り付けるところで、1個ペダルが足りない(笑)。入れ忘れたんだろう。忘れ物は思い出した時、はじめて忘れ物になるのだ。まあバイク2台一緒に乗る事ないから、付け替えて乗れば良いのでそんなに大した問題ではない。

自転車が溶け込んでいる街

 バイクも組み上がったところで気持ちに余裕が生まれたのか、喉の渇きを覚えた。ヨーロッパは自動販売機はもちろん、コンビニもない。ガソリンスタンドが割高だがコンビニのような感覚。日本ほどお手軽に飲み物を手に入れる事はできない。

先ずは体のあちこちが固まって違和感が強いので、軽めのサイクリングを Photo: Motoshi KADOTA

 「港も近いし、偵察を兼ねてカフェにでも何か飲みに行くか」と着替えて散策サイクリングで出発することに。しかし、忘れていた事がもう一つ!レギュラーで4年以上出演している地元のテレビ番組。この遠征で6月放送分の撮影スケジュールが破綻するので、代わりに「ヨーロッパ紀行にする」という事で、半ば強引だが今回の遠征の仕事の1つとして持ち込んでいたのだ。その仕事を遂行すべく、新たに導入したミラーレス一眼カメラと「ジンバル」というブレ補正の機器を背負い、弟子とともにフリードリヒスハーフェンの町を散策、撮影して回った。

アイスと炭酸水で一息 Photo: Motoshi KADOTA

 町には自転車が溶け込み、活用され市民権をしっかり得ている。カフェのスタッフもサイクリストに優しく、僕らは吸い込まれるようにカフェに入り炭酸水とアイスを注文した。

 街中のサイクリングロードは石畳で、ロードには少しガタガタするかな?と感じるがMTBにとっては走りやすく快適な道。案内の絵や看板も直感的に分かりやすく、外国人でも気軽にサイクリングを楽しめる。海外インバウンドを視野に入れるなら、シンプルで直感的に理解できる物が必要なのだと思った(…と視察してますよ的な事も書いておく)。

日本では見られない信号やサインが町のあちこちに点在している Photo: Motoshi KADOTA
わかりやすく描かれた自転車道 Photo: Motoshi KADOTA
夕方の街を散策し終わり、湖畔のレストランで夕食をとる Photo: Motoshi KADOTA

 ホテルには夕食が付いてないので、雰囲気の良い湖畔のレストランでとることに…。そう、ここが毎回問題なのだ。どんなにムードが良い場所でも、きれいな景色でも歴史的に素晴らしい物を見ても、男2人ではムードのかけらも無いのだ。

 注文は毎回、直感勝負! 肉続きだったので魚介を注文すると、そのメニューがこの店の一番人気ということで期待大!だったのだが、だだのイカだった(笑)。ボーデン湖は淡水! イカは海水にしかいないよね? 損した気分がぬぐい去れない一方、西山の料理はトラウト系の香草焼き…ここは負けを確信した。

20時でもまだ外は明るい Photo: Motoshi KADOTA

 夕食を食べ終わり、ホテルに帰る途中で飲み物を買い込み、時差ぼけと戦いながら時間調整をして就寝。夜は涼しいはずのドイツだったが、この日は暑く、寝付きの悪い夜となった。

⇒<2>ボーデン湖を走る越境サイクリング<前編>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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