ジロ・デ・イタリア2017 第16ステージ下りも攻めたニーバリがクイーンステージ制覇 デュムランにトイレストップの災難

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 ジロ・デ・イタリアは5月23日、第16ステージがロヴェッタからボルミオに至る222kmで行われ、チーマ・コッピ(今大会最高地点)を含む難関山岳ステージで、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が今大会初の地元イタリア人による勝利を飾った。総合首位のマリアローザを着るトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)は、最後の峠で生理現象による緊急ストップのアクシデントに見舞われ、辛うじて首位を守ったものの、この日2分以上のタイムを失った。

ディフェンディングチャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリ(右)が、ミケル・ランダとのマッチスプリントを制してステージ優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

スカルポーニに捧げるモルティローロ

 休息日が明けて最終週に入ったジロは、初日からクイーンステージを迎えた。おなじみのモルティローロ峠と、ステルヴィオ峠を越えてスイスに入国。下ってから再びステルヴィオ峠方面に反対側の別ルートを上り、ウンブライルパスから約20kmを下ってゴールとなる。距離や山岳の厳しさもさることながら、雪の残る山頂付近の寒さとの戦いや、最後の峠を越えてからの下りでの攻防にも注目の一日だ。

雪の残る峠での攻防 Photo: Yuzuru SUNADA

 スタート前、前日22日にロードバイク乗車中の交通事故でこの世を去った、元モトGP王者のニッキー・ヘイデン(アメリカ)への黙祷が捧げられた。またこの日の最初の山岳のモルティローロは、今大会直前に交通事故で命を落としたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)が、2010年にジロで勝利を挙げた際に通過した峠。今回は特別に通常の倍の山岳ポイントが与えられることになった。

 レースは序盤から30人近い逃げ集団が形成された。モルティローロ峠の上りではルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)が、先頭固定のままハイペースで突き進んだ。この大会にエースとして臨むはずだったスカルポーニに捧げる走り。山岳賞ジャージを着るオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)が2番手で追随するが、山頂では争うことなくそのままサンチェスが先頭通過した。

名誉挽回を狙うランダの攻撃

 メイン集団はデュムラン擁するチーム サンウェブが前半コントロールし、逃げとの差はモルティローロを下った時点で約2分半に抑えられた。ゴール地点のボルミオを一度通過すると、いよいよチーマ・コッピ、標高2758mのステルヴィオ峠の上りが始まる。距離21.7kmで獲得標高1549mという長い登坂。入り口で25人ほどだった逃げ集団だが、徐々にその人数を減らしていった。

ステージ優勝を狙って上りで攻めたミケル・ランダ Photo: Yuzuru SUNADA

 山頂近くになると雪の壁が道路脇に姿を現し、峠の頂上では気温はわずか5℃にまで下がる。集団内でも上り途中から上着を着込む選手が少なくない。逃げ集団は上り後半に入り、その人数は10人以下に。チーム スカイのエースナンバーを付けるミケル・ランダ(スペイン)のために、アシストのフィリップ・ダイグナン(アイルランド)が献身的にペースを作る。

 スカイの総合エースの一人として今大会に臨んだランダだったが、総合ではすでに44分遅れの39位に沈んで、総合上位争いにおいては完全圏外となっていた。名誉挽回のために欲しいのはチーマ・コッピとステージ優勝。頂上直前で鋭いアタックを決めると、まずは単独先頭でチーマ・コッピを通過した。

デュムラン、まさかの足止め

 逃げ続けていたランダに、下りで追走が合流して8人の先頭集団となり、最後のウンブライルパスの上りへと突入した。上り序盤ではまずステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)がアタック。ランダ、ヤン・ヒルト(チェコ、ツェツェツェ・スプランディ・ポルコヴィツェ)との3人に先頭は絞られた。

 いっぽう1分40秒差で追うメイン集団では、この日最大のアクシデントが起きた。マリアローザを着るデュムランが突然コース脇に自転車を止めたのだ。マシントラブルかと思いきや、大慌てでヘルメットとジャージを脱いで草むらに座り込むデュムラン。下りで胃腸を冷やしたのか、緊急トイレストップだ。すぐにレースに復帰するものの、約1分半のタイムロスとなってしまった。

マリアローザのデュムランを待たずペースアップしたメイン集団 Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団のライバル勢は、しばらくペースを落としてデュムランの様子をうかがっていたが、落車や機材トラブルなどの「フェアプレーとして待つべき事由」には当たらないと判断したか、ほどなくしてバーレーン・メリダのアシストが集団先頭に立って、デュムランの復帰を待たずにペースを上げ始めた。

窮地のマリアローザ 攻めるニーバリ

ライバルたちを単独で追うトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA

 先頭では頂上まで残り4kmでランダがアタック。単独先頭に立って3つ目の山頂を通過した。一方メイン集団は総合2位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、同4位のニーバリのために、両チームのアシストがペースを上げる。これを追うデュムランはアシスト選手を使い果たし、ほぼ単独での追走だ。

 メイン集団でも頂上近くになりニーバリがアタック。キンタナがこれをマークするが攻撃の姿勢は見せず、後ろから合流してきたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)と共に最後の峠を越えた。先頭のランダとの差は10秒未満ともうわずかだ。

 下りではその速さに定評のあるニーバリが、その実力を発揮した。攻撃的なダウンヒルでキンタナを振り切り、単独でランダに追いつくことに成功したのだ。先頭に立ってからも休まないニーバリ。ライバルのキンタナ、そしてデュムランとの差を1秒でも広げてゴールする作戦だ。

 ライバルたちを追うデュムランは、先頭から2分20秒遅れで山頂を通過。下りでも助けを得られないまま、単独での追走を強いられていた。前ステージまで2位に2分41秒と大差をつけていたが、その貯金も今や風前の灯火だ。

攻め続けたニーバリが勝利

 先頭を行くニーバリとランダは、いよいよゴール地点のボルミオの街へと入った。残り3kmからは急カーブが連続し、残り1kmからもゴール直前まで8つのカーブが続く。ステージ優勝が欲しいランダと、優勝に加えて1位のボーナスタイムも欲しいニーバリとの、極限のせめぎ合い。残り600mで先行したランダが粘り続けるが、最終コーナーでランダの内側のコースを取ったニーバリが、最後の最後で逆転に成功した。ハンドルを叩いて悔しがるランダを横に、ニーバリが車輪一つ分先行してゴールラインを切った。

辛うじてマリアローザを守ったトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA

 下りで離されたキンタナは、12秒差の3位でゴール。デュムランはニーバリから2分18秒遅れの、ステージ12位でゴールした。マリアローザは守ったものの、必要以上に体力を消耗する結果となり、憮然とした表情で表彰台を後にした。山岳賞ジャージはこの日2つの頂上を取ったランダが獲得したが、あと一歩だった優勝を逃したとあって、こちらも嬉しさを見せない表彰台となった。

 続く第17ステージは山岳ポイントが前半に集中。通常であれば総合争いの動きになりにくいステージだが、第16ステージでのデュムランの消耗を受けて、ライバルが一気に序盤から攻撃を仕掛ける展開も予想される。スタート直後からの山岳での動きに要注目だ。

今大会初の地元イタリア人勝者となったニーバリ。個人総合でも1つ順位を上げて総合3位となった Photo: Yuzuru SUNADA

第16ステージ結果
1 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 6時間24分22秒
2 ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ) +0秒
3 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +12秒
4 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +24秒
5 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +34秒
6 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +1分26秒
7 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1分35秒
8 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
9 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
10 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)

個人総合(マリアローザ)
1 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) 70時間14分48秒
2 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +31秒
3 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1分12秒
4 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2分38秒
5 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2分40秒
6 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +3分05秒
7 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +3分49秒
8 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +4分35秒
9 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +6分20秒
10 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +7分00秒

ポイント賞(マリアチクラミーノ)
1 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 325pts
2 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts

山岳賞(マリアアッズーラ)
1 ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ) 124pts
2 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム) 108pts
3 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 85pts

新人賞(マリアビアンカ)
1 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 70時間19分23秒
2 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2分25秒
3 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2分42秒

チーム総合
1 モビスター チーム 211時間13分12秒
2 バーレーン・メリダ +36分20秒
3 UAE・チームエミレーツ +39分37秒

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