スマートフォン版はこちら

野辺山高原の美しさを自転車で感じて 「野辺山シクロクロス」の舞台裏

  • 一覧

【レースレポート】泥と戦った選手たち 竹之内が大会3連覇

設置前の表彰台。八ヶ岳連峰を背景に設置前の表彰台。八ヶ岳連峰を背景に

 八ヶ岳連峰のふもと、野辺山高原の「滝沢牧場」で11月17、18日の2日間に渡って開催された「野辺山シクロクロス」。運営や会場設営をつうじてイベントを支えたスタッフの多くは、イベントを主催する長野県南牧村商工会に属する地元の方々だ。企画に携わるRapha(ラファ)と商工会スタッフの舞台裏を取材した。(柄沢亜希)

“牧場”を“シクロクロス会場”へ

 ロードバイクに似た形の自転車に専用ブレーキやタイヤを装着して、泥の中を疾走するシクロクロス。ロードレース選手の冬場のトレーニングとして広まり、ヨーロッパやアメリカで発達してきた競技だ。

 滝沢牧場には、牧草地や泥地、周辺の舗装路、バギーコースの砂利道などがあり、シクロクロスの条件が揃っている。ただ、レースを行うには、「ゴール幅6m、コース幅3m」といったUCI(国際自転車競技連合)の規格に合ったコースを設定し、危険のないように整備する必要がある。

ふだんは牛がたたずむのどかな牧場=滝沢牧場(長野県)ふだんは牛がたたずむのどかな牧場=滝沢牧場(長野県)
広い会場内の移動は軽トラックが便利広い会場内の移動は軽トラックが便利
南牧村商工会副会長の横森国平さん。硬い地面に先がつぶれた杭は、加工して来年また使われる南牧村商工会副会長の横森国平さん。硬い地面に先がつぶれた杭は、加工して来年また使われる

 「みんなそれぞれ軽トラや耕運機を持っていたり、大工や土建屋がいたりと頼りになるんですよ」と話すのは、村の商工会副会長を務める横森国平さん(70)。本業は、同村内にあるロッジの経営だ。「今は(夏と違って)暇だから手伝えます」と笑いつつ、スタッフを集める大変さなどを教えてくれた。

 この日、会場設営を手伝っていた商工会のスタッフは30数人。商工会の全会員のうち3分の1ほどにあたるという。5年前から牧場に勤め、野辺山シクロクロスには初回に参戦したという原田明羅太(あらた)さん(26)は、毎年この時期を楽しみにしている。「昨年、モリー・キャメロンの飛ぶような走りを見て、すっかりファンになってしまいました。今年も応援します」とトップレベルの選手を目前で観られる興奮を語った。

スポンサーであるスペシャライズドカラーの立体交差の階段が装飾されていくスポンサーであるスペシャライズドカラーの立体交差の階段が装飾されていく
試走しながら会場準備を見守る、モリー・キャメロン選手試走しながら会場準備を見守る、モリー・キャメロン選手

 設営中のコースでは、杭打ち作業がはかどっている。ビンセント・フラナガンさん(50)は大阪在住でMTBのインストラクターをしながら「ラファ・サイクルクラブ大阪」へもスタッフとして顔を出す。「多彩なコースでタイヤの選択が難しい。(先端が)スパイク状のシューズがあった方がいいかもしれないね」と設営中も自身で参戦予定のコース分析に余念がなかった。

楽しむ来場者を見守る仕事

 前日にコースを実際に走行しチェックして回っていた衣本始司さん(42)は、ラファの社員。レース開催中も、あちこちでコースの状態を見回っていた。衣本さんは、昨年まではボランティアとしてイベントを手助けしてきた。「今年は最初からコース設計に携わることができて、やりがいを感じる。参加者には、苦しく楽しんで走ってもらいたい」と話した。

 また今年は、受け付け横の救護ブースに看護師を配備した。これは、昨年けが人が出た際、専門的な対処ができなかった反省からだという。幸い、初日は雨天だったにもかかわらず、けが人はゼロ。商工会のスタッフは「よかった」と胸をなでおろしていた。

準備中のゴール前ストレート準備中のゴール前ストレート
会期中、ゼッケンを目測するスタッフ会期中、ゼッケンを目測するスタッフ

 野辺山シクロクロスでは、計測タグに代わる手段として、スタッフによる目視が欠かせない。ゴールラインの先でスピードを落とさせ、ゼッケンを確認してタイムチェックする作業を実施する。ロードレースと比べて速度が遅いとはいえ、泥だらけで帰ってくる選手のゼッケンは読みにくい。ゴール付近には、番号を読み上げるスタッフの声が響いていた。

地元への想いを自転車に託して

会場の滝沢牧場を運営する滝沢恒夫さん。南牧村商工会会長を勤め、会場設営の音頭をとる会場の滝沢牧場を運営する滝沢恒夫さん。南牧村商工会会長を勤め、会場設営の音頭をとる
八ヶ岳連峰が目の前に迫る八ヶ岳連峰が目の前に迫る

 イベント前日の牧場にたどり着くと、せわしなくコース上を歩き回り、指示をしている人がいた。牧場を経営する滝沢恒夫さん(61)だ。滝沢さんは、7年にわたって商工会長を務めており、数々のイベント企画・開催に携わってきた。熟練のスタッフからも、若い人からも“大将”と呼ばれて慕われている。

 南牧村の人口は3200人ほど。観光客でにぎわうのは夏がほとんどで、冬は積雪がそれほど多くないという村では、長年、集客手段を模索してきた。滝沢さんは「10月に開催する『牧場祭』は来場者数が2000人あり規模は大きいが、それだけで終わってしまう。スポーツイベントは、参加費で地元への負担が抑えられるし、コースなどが整備されていれば、その後もトレーニング合宿や新たなイベントの舞台としての活用が期待できます」と野辺山シクロクロスにかける想いを話す。

 滝沢さんが特に大切にしていることは「続けること」だ。地元産の白い小さな梨「小梨」にちなんだ6月の祭りや、今年2月に17回を数えた「アイスキャンドルフェスティバル」など、年に6回程度のイベントをこなしている。今後は、スキー場跡地の利用のひとつとして、MTBのイベントを開催できないか検討中だという。

 野辺山シクロクロス初日の天気は雨。1日目を終えた感想を尋ねると、「主催側としては、牧場からのすばらしい八ヶ岳連峰の眺めを見せたかった。でも、シクロクロスは泥だらけになって走るのが楽しいイベント。選手は楽しめたようでよかったよ。だから、100点中90点かな」と笑顔を見せた。

野辺山シクロクロスの表彰台は、高級重機ジョンディアが引く野辺山シクロクロスの表彰台は、高級重機ジョンディアが引く

文・写真 柄沢亜希
 

関連記事

この記事のタグ

シクロクロス ラファ

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

新春初夢プレゼント2018

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載