荒川河川敷道路を走る(1)荒川の歴史は東京の治水の歴史 河川敷の大規模建築を愉しみながら走る

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 東京都内で快適に自転車で走ることができる場所は?…という疑問に対しての解答の一つが、河川敷のサイクリングロードだ。何せ、サイクリングの道と呼んでいるだけに、快適でないはずが無い。という事で、都民に親しまれ、サイクリストの間でも「アラサイ」と呼ばれている荒川河川敷道路の下流域を走ってみることにした。2回に分けて紹介する。

 今回は笹目橋(国道17号線・新大宮バイパス)から、東京都心側の道を、河口に向かう。アラサイはさらにずっと上流、熊谷近辺まで続いているが、今回は東京都内エリアを走ってみる。河口からは約28キロ。往復でも60キロ足らずと、楽しんで走るにはちょうど良い距離だ。

道幅は広いが、厳重な車止めに行く手を阻まれる道幅は広いが、厳重な車止めに行く手を阻まれる

 土手を越えて河川敷に入っていくと、いきなり車止めにぶつかる。何とか自転車に乗ったまま通過できるが、かなり減速しないと通れない。少々ストレスだが、これくらい厳重でないと自動車やオートバイが入ってきてしまうのだろう。気を取り直して、下流を目指して走り始める。

 下流域のアラサイは道幅が広くて走りやすい。この道路は平時の河川管理業務や災害時の救助活動や輸送などに使われることになっており、実はこの区域は自転車道として整備されたものではないそうだ。我々サイクリストは安易にアラサイと呼んでいるが、実は純粋なサイクリングロードではない…。近頃はそういった事情も絡んで、通行マナーなどの問題も取りざたされているが、取材日は平日だったのであまり通行量は多くなく、ひたすら快適。しばらくは大きく景色の変わらない中を走る。

 3kmほど走り、最初に見えてくるのは国道17号線が通る戸田橋。すぐ隣には東北・上越新幹線と埼京線の鉄橋がある。この付近も含め、下流域は道路脇に野球などのグラウンドが多い。休日は人通りも多く、グラウンド利用者や散歩する人々とサイクリストが交錯して危険な場面も増えているという。歩行者の多いエリアではお互いのために安全第一で十分に減速して走ろう。

 スタートして7km少々。国道122号線・新荒川大橋を過ぎると、目の前に巨大な水門が見えてきた。岩淵水門だ。水門の向こうは隅田川。ここで荒川と隅田川が分岐するのだが、大雨などで増水が発生した際には、この水門が閉じられ、隅田川に荒川の水が流れ込まないようになる。

連なって見える新旧の岩淵水門連なって見える新旧の岩淵水門
大正13年完成の赤水門は、やや小ぶりで可愛いらしい。右の一門のみ、船を通すために背が高くなっている大正13年完成の赤水門は、やや小ぶりで可愛いらしい。右の一門のみ、船を通すために背が高くなっている
現在使われている青水門の裏。さすがの迫力。車止めがあるが、左側を乗車して通ることは可能現在使われている青水門の裏。さすがの迫力。車止めがあるが、左側を乗車して通ることは可能

 そもそも20世紀初頭まで、現在の隅田川が、荒川の本流だった。しかし「荒」川の名の通り昔から水害が多く、これに対する抜本的解決策として、荒川下流に全長22kmの広大な放水路(人工河川)が作られた。増水時には岩淵水門で荒川と隅田川を遮断して、放水路側にのみ流すことで、都心を洪水から守っているのだ。

 現在使用されているのは水色の「青水門」(1982年完成)だが、その隣に現在は使われていない朱色の「赤水門」(1924年完成)も残されている。赤水門は経済産業省の近代化産業遺産にも認定されている。

 すぐ傍には、国土交通省の荒川下流河川事務所と、それに隣接して荒川知水資料館がある。展示は荒川の自然や治水の歴史など、なかなか骨太で男子心をくすぐる内容。硬軟豊富な資料に触れると、荒川の歴史がそのまま東京の治水の歴史であることが良く分かる。入館無料なので、一度は見ておいて損はない。あと、ここは館内にトイレや、ジュースの自販機がある。荒川河川敷道路内に自販機は皆無なので、補給ポイントとしても覚えておくと役に立つだろう。

 アラサイは青門の上を通って、下流に続いていく。ここから下流は、荒川放水路と呼ばれる、20世紀なってから作られた人工の川だ。景色も気のせいか広がった気がする。周りが開けると心もち風も強くなる。この日は下流から吹く向かい風。押し戻される力を感じながら進む。対岸には首都高速の高架橋が現れて、そのまま河口付近まで、向こう岸を並走していく。この先は首都高の橋も、幾つか見られるようになる。中央環状線に繋がる五色桜大橋は2002年完成で、ダブルデッキニールセンローゼ橋という特徴的な形をしている。こういった時代も工法も様々な橋を、次々眺めていくだけでも楽しい。

 ところで、橋の近くの路面に、何やら巨大な模様が描かれている。土手に上がって見てみると、橋の名前が書いてあった。上空からヘリや飛行機で見ても、どこにいるか一目瞭然というわけだ。普段よりむしろ、緊急災害時への備えなのだろう。

何やら文字が書いてあるように見えるが、走っているとさすがに読むのは困難何やら文字が書いてあるように見えるが、走っているとさすがに読むのは困難
土手に上がって見ると、この通り。西新井橋土手に上がって見ると、この通り。西新井橋

 国道6号線、千住新橋を過ぎると、幾重にも連なった鉄道橋が見えてくる。すぐ近くの北千住駅を通った鉄道が、そのまま並んで渡っていくのだ。地下鉄千代田線、JR常磐線、つくばエクスプレス線、東武伊勢崎線の4本の鉄橋を、それぞれバラエティに富んだ電車がひっきりなしに通っていく。河口までの道のりも半分を過ぎた。ここで少し休憩、ということで後編に続く。
荒川河川敷道路を走る(2)
変化する荒川下流域 歴史を作るのは、われわれだ!?

(写真・文 米山一輝)

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