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11月には初のサイクリングイベントを開催和歌山県すさみ町が70kmのサイクリングコースを策定 大自然を巡るアドベンチャー

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 紀伊半島南部に位置する和歌山県すさみ町で、このほどサイクリングコースが策定され、町を挙げてのサイクリング事業が本格スタートした。町が誇る自然や景観をふんだんに取り入れ、コースのほとんどを主要道路が占めるなど、サイクリングの楽しみと走りやすさを充実させた。11月には初めてとなるサイクリングイベントも開催される運びとあって、地元サイクリストの案内のもと、モデルでサイクリストの日向涼子さんらと実際に走ってみた。

日向涼子さん(右端)らがすさみ町のサイクリング事業に一役買っている。11月には初のサイクリングイベントが開催される予定だ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

サイクリングを通じた町おこしに

 すさみ町は人口4247人(2017年2月末時点)。紀伊半島のほぼ南端に位置し、太平洋に面している。沖合を黒潮が流れる関係から伝統的に漁業が盛んで、カツオが特産品。イノシシとブタの雑種である「イノブタ」の本場でもあり、風味豊かで甘みのある脂身は鍋でいただくとピッタリなのだとか。

サイクリングコースから望む太平洋。70kmを走る間、何度も美しい風景を目にすることができる Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 海に面した町ではあるものの、町域の90%が山林で占められていることから、平地は少なめ。新たに策定されたサイクリングコースは、そんな地形的特性を生かして作られたものだ。

 町の中心部に近い、すさみ海水浴場を発着点とする1周70kmのコースは、23kmの海岸エリア、30kmの山岳エリア、17kmの沿川エリアと3つに分けられる。海・山・川がすべて含まれ、大自然を巡るアドベンチャー要素満載のルートセッティングがポイントだ。ルートの一部はお隣の白浜町にもまたがるが、おおむねすさみ町の魅力を実感できるコースとなっている。獲得標高は940m、想定所要時間は4時間30分から5時間(休憩含まず)といったところだ。

すさみ町役場など3カ所でレンタサイクルを実施。電動アシスト付自転車が借りられる Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 コース内要所にはショートカットルートも設置。こちらも町内の主要道路を活用しているので、体力や天候に合わせて走行を検討できることだろう。また、海岸エリアを中心に9カ所に「サイクルステーション」が設けられ、空気入れ・工具・バイクラックを設置。すさみ町役場をはじめとする3カ所では、レンタサイクルとして電動アシスト付自転車を各所5台ずつ完備。1000円で1日乗り放題となり、自転車での遊び方はロードバイクにはとどまらない。

 昨年8月30日には、紀勢自動車道が南紀白浜ICからすさみ南ICまで開通し、大阪や和歌山市方面からすさみ町へのアクセスが容易になった。一方で、主要幹線道路であった国道42号線の町内における交通量が80%減少し、国道沿いの店舗が軒並み閉店を余儀なくされるなど、町の事情は苦しいという。すさみ町産業建設課・桂渉副主査は「地域活性化の起爆剤としてサイクリング事業を推し進めていきたい」と語り、交通量の減った主要道路をコースに含んだことについても「サイクリストにとっては走りやすさをきっと感じてもらえるはず。ぜひ自然を大満喫しながら、この町の良さやサイクリングの楽しさを自由に見つけてほしい」とし、サイクリングコースへの期待を膨らませる。

すさみ町内の漁港。カツオが町の特産だ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 町の人々の思いを乗せたサイクリングコースでは、11月19日に「枯木灘サイクリングフェスタ RIDE ON SUSAMI 2017~ぐるっと自然を大満喫~」が初開催される予定だ。自転車のマナー向上と安全意識の啓発活動に取り組む団体「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」(グッチャリ)も同町のサイクリング事業に参画しており、産声を上げようとしているサイクリングイベントの準備を進めている。昨年から6度にわたって同町へ足を運び、コース試走を続けてきたグッチャリ・韓祐志代表理事は「町を挙げてのサイクリングイベント。自然を感じられる、温かいイベントにしたい」と思いを馳せる。

 すさみ町へは、車であれば大阪から約2時間、和歌山市内から約1時間30分。鉄道であれば、JR紀勢本線・特急くろしお号ですさみ駅下車。羽田空港から南紀白浜空港へと飛べば、自走だって可能な距離だ。近畿圏はもとより、和歌山から徳島間のフェリー航路が充実する四国からのアクセス、そして関東から足を運ぶこともできる。韓代表理事も「紀伊半島の自然は、言葉で表せないほどの美しさ。すさみ町がサイクリストにとってポピュラーな場所になってほしい」と述べるように、サイクリングの聖地となる可能性は大いに秘めている。

3つのルートを実走

 3月24日、メディア発表会を兼ねた走行会が行われ、筆者も参加。グッチャリのメンバーとして韓代表理事のほか、日向涼子さんもサイクリングに臨んだ。今回、アテンドしてくれたのは、地元のサイクリングチーム「HEZZI」の向井克往さんと出嶋洋昭さんだ。

すさみ町役場をバックに記念撮影。いよいよサイクリングへ出発! Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 すさみ海水浴場を出発して、しばらくは海岸エリアを走る。潮風を浴びながらのサイクリング…と行きたいところだが、思いのほかアップダウンが繰り返される。ビギナーにとっては、あまり飛ばしすぎると心拍数が一気に上がってしまいかねないので、慎重かつリラックスして走ることを心がけてほしい。

 丘の上に現れる「BUSH」は、太平洋を一望できるカフェ。コーヒーはもとより、ケーキや焼菓子も美味しいと評判だ。11月の枯木灘サイクリングフェスタでは、お菓子の販売も兼ねたエイドステーションが設けられる構想だ。

「BUSH」のテラス席で休憩する日向涼子さん。カフェからは太平洋を一望できる Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 海岸エリアの終点は「道の駅すさみ」。この先に山岳エリアが控えるが、トイレや自動販売機が設置されていない区間が長く続くため、道の駅で用を足しておきたい。

 いよいよ、30kmに及ぶ山岳エリアが始まる。JR江住駅付近から上りが始まり、標高344mまで一気に上る。実際に走った感覚で、勾配にして10%前後の登坂が続いていた印象だ。5kmほど上りが続くので、補給や水分補給はしっかりと。体調次第では、脚攣り予防のサプリメントなども用意しておきたい。

 頂上を通過後いったん下るが、このコースの最高標高地点である368mまでもう一度上りが待ち受ける。1つ目の上りにも言えることだが、舗装が傷んでいる箇所が多いため、走行ラインの確保は慎重に。さらに、交通量こそ少ないものの、大型車が通過することがあるため、状況によっては一度脚を止めて、車両の通過を待つことも必要だ。下りについても、路面舗装を見ながら走行を。苔が生えている箇所も少なくないため、雨上がりにはスリップするケースもある。道路幅が狭いため、ブラインドコーナーでの落車や事故には細心の注意を払いたい。上り1つ目と2つ目の間には、ショートカットルートが設けられる。こちらは、すさみ町中心部の周参見駅方面まで下っていくことができる。

緑豊かな山岳エリアを進む。ペース配分は慎重に Photo: Syunsuke FUKUMITSU
路面が荒れていたり、苔が生えている箇所も。下りでは最新の注意を払いたい Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 日置川が見えてくると、山岳エリアはクリア。ここからは日置川と並走する沿川エリアとなる。このエリアに入ると、自動販売機のほか近くのキャンプ場のトイレの利用が可能となる(利用前に一声お願いを)。山岳エリアからの下り基調が続いており、風向きによってはそれはもう、とても気持ちよく走れるのだ。

 沿川エリア前半に見えてくる「えびね温泉」では、入浴はもちろん、食事や温泉水を飲むことができる。われわれ一行は、ここの名物でもあるうどんをオーダー。4種類のうどんメニューが用意されるが、筆者個人的に気に入ったのは「たまごうどん」(550円)。下りで冷えた体を温めてくれた、優しい味だった。

沿川エリアに位置する「えびね温泉」。入浴はもちろん、食事も可能 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
えびね温泉でいただける4種類のうどん。冷えた体を癒してくれる優しい味 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

ビギナーに「自信を与えてくれるコース」と日向涼子さん

 日置川の下流にやってくると、残すは約10km。再度海岸エリアに入って、ラストスパートだ。

眼前に大海原が広がってきたらラストスパート Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 繰り返されるアップダウンに身も心もいっぱいになりそうなところで、生き返らせてくれるのは眼前に広がる大海原。丘を上った先に陽に輝く海が見えるポイントが続き、まるで海へ飛び込んでいくような大きな気分になることができる。心地よい疲れを感じながらも、晴れ晴れとした気持ちでフィニッシュを目指そう。

 国道42号線・熊野街道に合流すると、フィニッシュはすぐそこ。最後は、スタートしたすさみ海水浴場へと戻ってきて、サイクリングは終了だ。サイクルコンピュータを見てみると、走行距離はピッタリ70kmを指していた。

「完走することで自信を与えてくれるコース」と感想を語った日向涼子さん Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 今回一緒に走った日向さんにコースの印象をうかがうと、「海・山・川といった自然や景観が凝縮されたコース。上級者にとっては70kmという距離は短く感じるかもしれないけれど、ただ走るだけではなく、グルメや町の人々との交流をを図ってこそのサイクリング。誰もが素晴らしいアクティビティに魅せられると思う」と話してくれた。先に控えるサイクリングイベントへの参加も予定しており、「決して簡単には完走させてくれない、適度な難しさもある。ビギナーや中級ライダーにとっては、完走することで大きな自信を与えてくれるコース」とも。

 今回は初春のライドとなったが、これからは桜が咲き誇り、夏には一面緑の自然が、秋には紅葉と、すさみ町ならではの四季折々の風情が感じられるコースとのイメージを筆者は持った。桂副主査や向井さん、出嶋さんとは個人的に同町を改めて訪れると約束。季節ごとの違いを感じるべく、またサイクリングに足を運ぼうと決めた。

70kmを走りきり笑顔が弾ける Photo: Syunsuke FUKUMITSU

◇         ◇

 すさみ町のサイクリング事業については今後、同町ホームページなどで発信をしていくとのこと。開催が楽しみな「RIDE ON SUSAMI 2017」も詳細が決定次第、プロモーションが始まるので、ぜひ心待ちにしていてもらいたい。紀伊半島南部の町で興るサイクリングの歴史は、町の人々と訪れるサイクリストたちによって築かれようとしている。

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サイクリング 和歌山県

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