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当初はコーチ・指導者向けに販売サイクリストの動作を即時に可視化 リオモが画期的な計測装置「タイプR」を発表

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 日本発のコーチ・指導者向けのモーションキャプチャーデバイス「TYPE-R」(タイプR)を開発したLEOMO(リオモ)が3月9日、アメリカ・ロサンゼルスで製品概要を発表した。タイプRはコンパクトな9軸センサーを体に取り付けることで、サイクリストの動きをリアルタイムで計測・視覚化し、ログデータを元に指導者が最適なアドバイスを行うためのツールだ。

LEOMO(リオモ)が開発したモーションキャプチャデバイス「TYPE-R」(タイプR) ©LEOMO

ハンター・アレンらも開発に関わる

 リオモはJプロツアーチーム「LEOMOベルマーレ」をスポンサード。代表は加地邦彦氏が務め、孫正義氏(ソフトバンクグループの創業者)の弟の孫泰藏氏が株主として設立。アメリカ籍企業ではあるが、タイプRは東京・港区のオフィスで開発された。孫氏が投資し、iPhoneも手がける台湾籍企業のフォックスコンの工場で製造されている。

バイク用アタッチメントに取り付けたタイプR。タッチパネルを採用している ©LEOMO

 タイプRの開発には元プロロードレーサーの宮澤崇史氏、スマートコーチングの安藤隼人氏、「パワートレーニングバイブル」の著者であるハンター・アレン氏、プロコーチのニール・ヘンダーソン氏らが担当。3年の期間を経て開発された。

 タイプRを使う際には、9軸センサーを腰(仙骨)、シューズ、太腿(ビブショーツ内)に取り付け、ライドを行う。高解像度の液晶モニター上にはリアルタイムで角速度、加速度、角度、速度などのほか、一般的なスピード、距離、パワーなど様々な項目の表示が可能だ。モニターはタッチパネルで操作できるほか、モニター下部のパッドでもコントロールができる。

 「新たなトレーニングの指標となる」と語る加地氏に、開発のきっかけや、モーションキャプチャの将来性について聞いた。

◇         ◇

“プロっぽい動き”を視覚化

松尾:タイプR誕生のきっかけを教えてください。

加地氏:なぜ動きを視覚化しようとしたかというと、動きを説明するのが大変だからです。「手を上げてください」と言われても動かし方は様々ですよね。体の前から上げる、側面から上げる、肘を曲げずに…など単純な動きでも言葉にするとなかなか伝えるのが困難です。

タイプR開発のきっかけを話すLEOMOの加地邦彦代表 Photo: Shusaku MATSUO

 自転車のペダリングは更に複雑です。開発を共に行った宮澤は「バンバンバン、グワっと加速すると良い」のようにアドバイスしますが(笑)。また、「10時の位置から踏む」などの表現も言わんとしていることはわかりますが、実際に行うサイクリストは正解の動きなのか否かはわかりません。

タイプRのディスプレーと、センサー。センサーの充電はキューブにはめ込んで行う Photo: Shusaku MATSUO

松尾:開発の経緯はどのようなものでしたか?

加地氏:プロのコーチや選手の共通の意見として“速い人の動き”に特徴があることに気が付きました。ある程度の経験があるコーチや選手からすると“プロっぽい動き”があり、見てすぐに玄人かビギナーなのかわかるというのです。この動きは何かを付き止めれば、最適で高効率なトレーニングが可能なのかと思ったのがタイプRを作ったきっかけです。

 開発のエピソードとして、宮澤にペダリングをしてもらいデータと動画を撮りました。次に、宮澤の脚を押さえつけてペダリングし、彼がヘロヘロになった状態で計測を行いました。その後、宮澤には普段どおりにペダリングしてもらうと安藤コーチも、宮澤も動画をみて「こっちが良く踏めてる、こっちは踏み遅れている」と指摘します。しかし、脚の動きのデータを見ても、動画を見ても私には違いはわかりませんでした。

ディスプレイの解像度は高く、タッチパネルの感度も優れていた Photo: Shusaku MATSUO

 そこで、上半身部を見えないようにした状態で比べてみました。すると安藤コーチも宮澤も違いがわからなかった。要は脚を見ているつもりだったのですが、腰や肩の動きなど総合的な動きで判断をしていたのです。よって、脚だけでなく、腰にもセンサーを取り付けることにしました。今後は腕や頭部にもつける必要が出てくるかもしれません。

体に取り付ける5つの9軸センサー Photo: Shusaku MATSUO
腰は仙骨部に医療用両面テープを用いて取り付ける Photo: Shusaku MATSUO
シューズには紐やワイヤーなどにアタッチメントを取り付けたうえでセンサーを装着する Photo: Shusaku MATSUO

松尾:タイプRは一般のサイクリスト向きなのでしょうか

加地氏:ある程度サンプリングができてくると、“動きの何かが悪い”原因のひとつに「アンクリング」がありました。よくビギナーへ向けた最初の提言となっていますが、データが集まると具体的に何が悪いのかという部分が明確になりました。そこでDSS(デッド・スポット・スコア)という指標を作りました。

 リアルタイムで表示され、左右の脚の数字が0に近くなるほど“綺麗なフォーム”ということになります。ハンターは「どんなに上手い選手でも0にすることは難しい」と言っていましたが、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)は限りなく0の値を出していました。

 我々はタイプRでまず動きを計測する仕組みを作りました。しかし、評価するプログラムの開発はまだこれからといえます。なので販売は指導者向けにと考えています。一般のサイクリストが数値だけみてもトレーニングに生かすことはできないでしょう。

シンクタンクの設立を

タイプRの有用性を語る加地邦彦氏 Photo: Shusaku MATSUO

加地氏:我々はスポーツ科学者、運動生理学者、コーチ、理学療法士、プロのバイクフィッターからなるシンクタンク、IMA (Institute of Motion Analysis)の設立を発表しました。今まではどんなコーチも年間でみる被験者は多くても100人でしょう。5年でも500サンプル程度です。

 同じコーチから同じ内容のコーチングを受けても怪我をする人もいれば、しない人もいる。強くなる人も弱くなる人もいるかもしれません。怪我をしたらコーチが診るのではなく、医者や理学療法士が診断します。でも、どんな動きやコーチング内容でけかに至ったかを知る術は、現在多くはないでしょう。

 そこでシンクタンクを作り、アイデアや最新の研究やデータを共有し、学ぶプラットフォームを提供します。スポーツ専門家の横の関係を作り、アスリートのコンディション、パフォーマンスアップにつなげたいと考えています。

 集まったデータやサンプルはコーチ1人だけが有しているデータ数の比ではありません。更に的確なフォーム、トレーニングの指導に役立つだろうと思います。

 現在はまずDSSという指標がありますが、膨大なデータから他の要素についても評価プログラムを開発し、一般の方がわかりやすく、日々のトレーニングに生かせるシステムを開発することもできるでしょう。まずはハンターと一緒にコーチ向けのプログラムを作っているので、今後リリースしていく予定です。

◇         ◇

 タイプRはサイクリングシーンではなく、ランニングやウエイトトレーニングなどにも応用できるよう開発を進めていくという。当面、一般のサイクリストへの販売は無く、指導者へ向けた提供になる予定だ。

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