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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<200>ビッグレースの頂点を狙うエースたち ロットNL、キャノンデール 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2013年3月に連載スタートした「週刊サイクルワールド」は、おかげさまで今回で第200回目を迎えました。当初は執筆も話題の提供も、手探りで始まったものですが、みなさまに育てていただき、ここまで続けてまいりました。これからは、300回…いや、夢は大きく1000回、それ以上と続けていけるよう努めてまいります。引き続きどうぞよろしくお願いします。そんな記念すべき今回は、2017年シーズンのチーム展望として、チーム ロットNL・ユンボ、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチームについてお届けします。

今回紹介するチーム ロットNL・ユンボとキャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム。ともに計算できるエースをそろえる。写真はジョージ・ベネット(左)とダヴィデ・フォルモロ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第20ステージ、2016年9月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

ジロで雪辱誓うクライスヴァイク

 昨年のジロ・デ・イタリア。大会前半の難関ステージから好走を続け、上位戦線をにぎわせたステフェン・クライスヴァイク(オランダ)。第14ステージには個人総合首位の証であるマリアローザに袖を通し、その後のステージでも強さを見せ続けた。しかし、初制覇が見えつつあった第19ステージで、雪が降りしきるダウンヒルで落車。完全に流れを失ってしまった。

昨年のジロ・デ・イタリアで大躍進のステフェン・クライスヴァイク。今年こそ頂点を目指す =ジロ・デ・イタリア2016第18ステージ、2016年5月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 それでも最終的に総合4位とまとめ、その戦いぶりからグランツールレーサーとしての地位は確立した。その後臨んだブエルタ・ア・エスパーニャでは、期待されながらもコンディション不良で途中リタイアとなったが、シーズンオフには今年のジロ参戦を明言。すでにコース試走を部分的に済ませており、気合は十分。彼にとってジロは昨年を含め3度総合トップ10に食い込んでいる、相性のよいレース。マリアローザを思わぬ形で手放した雪辱に燃える。

ジロ制覇を目指すステフェン・クライスヴァイクにとって、心強いアシストの存在は大きい =ジロ・デ・イタリア2016第18ステージ、2016年5月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 脚質的には、数人のフィニッシュ勝負でのスピードはライバルに劣る。しかし、険しい上りでたびたび見せる、集団を崩壊させるほどのアタックは、今年のジロでも脅威となるだろう。タイムトライアル(TT)も得意としており、長距離個人TTでは上位で終えられるだけの力を持つ。その意味では、今年のジロのステージ構成は有利となるかもしれない。

 また、心強いアシストも脇を固める。今シーズンからチームに加わるユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー)は、具体的な目標として「クライスヴァイクのアシスト」を掲げる。2012年にはツール・ド・フランスで総合4位になった実力者は近年、アシストとして成果を残しているが、今度はキャリアのピークに差し掛かっているオランダ人リーダーを支えることとなる。

ツールはヘーシンクとフルーネヴェーヘンが共闘

 クライスヴァイクがジロに集中することによって、ツールはもう1人のグランツールレーサーであるロベルト・ヘーシンクと、期待の若手スプリンターであるディラン・フルーネヴェーヘン(ともにオランダ)が両翼を担う。

2017年はツールのステージ優勝に集中するロベルト・ヘーシンク =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージ、2016年9月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ヘーシンクは2014年春に心疾患で戦線を離脱。そのシーズン中に復帰を果たし、翌年のツールでは総合6位と華麗に復活を果たした。それを境にグランツールへの取り組み方を、山岳ステージでの勝利を目指す形に変化させている。過去にツールで2度、ブエルタでは3度総合トップ10を経験したことに満足感があるとし、これからは「ステージ優勝で人生を変えてみたい」と考えているという。

 加えて、チーム内であらゆる脚質の選手が育っていることによって、自身のアシストだけをそろえてグランツールの舞台に立つことが難しくなっているチーム事情も理解していると述べる。昨年はブエルタでステージ1勝。今度はツールで新たな勲章を手にできるか。

活躍が期待されるスプリンターのディラン・フルーネヴェーヘン。ツールでステージ優勝なるか =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんなヘーシンクの考え方を変化させた1人といってもよさそうなのが、現・オランダチャンピオンでもあるフルーネヴェーヘン。昨年はUCI(国際自転車競技連合)ワールドチーム入り1年目ながら、シーズン11勝と大活躍。UCIロード世界選手権では、同国のスプリントエースにも抜擢された。2年連続出場となる見込みのツールでは、ステージ初勝利を目指すことになる。彼のスプリントを支えるリードアウトマンには、ロバート・ワーグナー(ドイツ)やトム・レーゼル(オランダ)、3シーズンぶりに復帰し北のクラシックでの活躍も楽しみなラルス・ボーム(オランダ)らが有力視される。

チーム ロットNL・ユンボ 2016-2017 選手動向

【残留】
エンリーコ・バッタリーン(イタリア)
ジョージ・ベネット(ニュージーランド)
クーン・ボウマン(オランダ)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)
トワン・カストランツ(オランダ)
ロベルト・ヘーシンク(オランダ)
ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ)
マルティン・ケイゼル(オランダ)
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)
ステフェン・ラメルティンク(オランダ)
トム・レーゼル(オランダ)
ベアトヤン・リンデマン(オランダ)
パウル・マルテンス(ドイツ)
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)
ティモ・ローセン(オランダ)
ブラム・タンキンク(オランダ)
ヨス・ファンエムデン(オランダ)
アレクセイ・ヴァーミューレン(アメリカ)
ロバート・ワーグナー(ドイツ)
マールテン・ワイナンツ(ベルギー)

【加入】
ラルス・ボーム(オランダ) ←アスタナ プロチーム
スタフ・クレメント(オランダ) ←イアム サイクリング
フローリス・デティエ(ベルギー) ←トップスポートフラーンデレン・バロワーズ
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー) ←チーム ヨーケル・ビグトルゲ
ファンホセ・ロバト(スペイン) ←モビスター チーム
ダーン・オリヴィエ(オランダ) ←無所属
アントワン・トルホーク(オランダ) ←ルームポット・オラニエプロトン
ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー) ←チーム カチューシャ
ハイス・ヴァンフック(ベルギー) ←トップスポートフラーンデレン・バロワーズ

【退団】
モレノ・ホフラント(オランダ) →ロット・ソウダル
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ) →チーム サンウェブ
マイク・テウニッセン(オランダ) →チーム サンウェブ
トム・ヴァンアスブロック(ベルギー) →キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム
デニス・ファンウィンデン(オランダ) →イスラエルサイクリングアカデミー
セップ・ヴァンマルク(ベルギー) →キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム

ヴァンマルクは今年こそパヴェの頂点に

 キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチームにとってのトピックは、セップ・ヴァンマルク(ベルギー)の5年ぶりのチーム復帰。チーム ガーミン・サーヴェロとして活動していた2011年に加入し、翌年にはベルギー伝統のオンループ・ヘットニュースブラッドで優勝。2013年以降チームを離れてから、北のクラシックでは欠かせない強豪に成長。かつてとは見違えるほどに大物となって戻ってきた。

セップ・ヴァンマルクは5年ぶりのチーム復帰で北のクラシック制覇なるか =パリ〜ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この先に控えるクラシックシーズン、チームの絶対エースとして臨むことになるが、いまだビッグタイトルには手が届いていない。ここ数年で表彰台の常連となり、優勝争いを演出する場面も多い。それでありながら、ここ一番でのライバルのアタックや最終局面でのスプリントに屈してしまう。こればかりは勝負ゆえ、脚質ばかりを敗因に挙げることは難しいが、やはりあと少し詰めの部分を強化できれば、すぐにでもタイトルを手にできるはずだ。パヴェでの強烈なアタックで集団を崩しながらも、一方でライバルを引き連れてしまうパターンから、どう勝利に持ち込むかがポイントになる。

2月25日に行われたオンループ・ヘットニュースブラッドでは3位だったセップ・ヴァンマルク。ここ一番での勝負強さが課題だ Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンは、UCIワールドツアーに昇格したオンループ・ヘットニュースブラッド(2月25日)で3位と、クラシックシーズン本番に向けて上々の結果を残している。だが、この時も優勝したグレッグ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、2位のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)との勝負には敗れている。今後数年にわたって戦い続ける強力ライバルを打ち破るきっかけを、今シーズンは何としてもつかみたいところだ。

 この後は、3月8日に開幕するティレーノ~アドリアティコ(イタリア)に参戦し、同22日のドワーズ・ドール・フラーンデレン、同24日のレコードバンク・E3ハレルベーク、同26日のヘント~ウェヴェルヘム、4月2日のツール・デ・フランドルと、地元ベルギーのビッグクラシックを転戦。そして、同9日のパリ~ルーベ(フランス)へと向かう。

グランツールに期待のライダーが続々

 3月上旬現在では目立った結果こそないものの、グランツールにはチーム全体としてしっかりと調子を合わせてくるはずだ。

2017年はジロとツールの連戦を予定しているピエール・ロラン =ツール・ド・フランス2016第19ステージ、2016年7月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズン、ジロとツールの連戦を視野に入れているのがピエール・ロラン(フランス)。チームに合流した昨年はいまひとつだったが、過去にはツールで3度の総合トップ10フィニッシュと実績は十分。ジロとツールともに出場となれば、チーム ヨーロッパカー時代の2014年以来のチャレンジとなる。このときは、ジロ総合4位、ツール総合11位と健闘。その再現を目指す今年は、グランツール以外のレースは「あくまでも調整としての出場」と割り切る。実際、現在出場中のパリ~ニースでは総合下位を走っており、すべては5月と7月のためのトレーニングとの位置づけだ。

これまで山岳アシストとして貢献してきたジョセフロイド・ドンブロウスキー(左)は今年、総合エースとしての飛躍が期待される =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第17ステージ、2016年9月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロでは、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)とジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)との共闘が予定される。フォルモロは昨年のブエルタで総合9位。ジロでも2015年にステージ1勝と、着実に力を伸ばしている24歳のオールラウンダー。25歳以下が対象の新人賞は今年が最終年とあって、ジロ出場がなればマリアビアンカ候補の1人となる。ドンブロウスキーは昨年、一昨年と山岳アシストとして大きく貢献。2015年にはツアー・オブ・ユタ(アメリカ、UCI2.1)で総合優勝しており、次世代の総合系ライダーとして注目されている。

 また、ツールにはリゴベルト・ウラン(コロンビア)が出場の予定。かつてジロで2度の総合2位を経験するグランツール上位の常連は、ツールでも輝きを放つべく意欲に燃えている。こちらはジロを回避する予定で、今のところスケジュール通りに進めば、4月のアルデンヌクラシックとツールに照準を定めることになる。

 チームには、昨年のブエルタ総合5位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ)も控える。彼も実績に富んでいるだけに、これだけのメンバーの中でどのレースに送り込むかが見ものとなる。

 力のある選手たちをそろえ、3つのグランツールそれぞれで2枚、または3枚看板として臨むのか、総合エースを一本化するのか、このあたりの戦術は名将ジョナサン・ヴォーターズ氏の手腕にかかってきそうだ。

リゴベルト・ウラン(左)はツール出場を表明している =ストラーデ・ビアンケ2017、2017年3月4日 Photo: Yuzuru SUNADA
昨年のブエルタ総合5位のアンドリュー・タランスキーも活躍が見込まれる =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ、2016年8月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

キャノンデール プロサイクリングチーム 2016-2017 選手動向

【残留】
アルベルト・ベッティオール(イタリア)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド)
ネイサン・ブラウン(アメリカ)
サイモン・クラーク(オーストラリア)
ローソン・クラドック(アメリカ)
ジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)
アレックス・ハウズ(アメリカ)
クリスティアン・コレン(スロベニア)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ)
ライアン・ミューレン(アイルランド)
ピエール・ロラン(フランス)
トムス・スクインシュ(ラトビア)
トムイェルト・スラフトール(オランダ)
アンドリュー・タランスキー(アメリカ)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)
ワウテル・ウィッペルト(オランダ)
マイケル・ウッズ(カナダ)

【加入】
ブレンダン・カンティ(オーストラリア) ←ドラパック プロフェッショナルサイクリング
ヒュー・カーシー(イギリス) ←カハルラル・セグロスRGA
ウィリアム・クラーク(オーストラリア) ←ドラパック プロフェッショナルサイクリング
テイラー・フィニー(アメリカ) ←BMCレーシングチーム
トーマス・スクーリー(ニュージーランド) ←ドラパック プロフェッショナルサイクリング
トム・ヴァンアスブロック(ベルギー) ←チーム ロットNL・ユンボ
セップ・ヴァンマルク(ベルギー) ←チーム ロットNL・ユンボ

【退団】
ジャック・バウアー(ニュージーランド) →クイックステップフロアーズ
マッティ・ブレシェル(デンマーク) →アスタナ プロチーム
アンドレ・カルドソ(ポルトガル) →トレック・セガフレード
フィリップ・ガイモン(アメリカ) →引退
ベンジャミン・キング(アメリカ) →ディメンションデータ
アラン・マランゴーニ(イタリア) →NIPPO・ヴィーニファンティーニ
モレーノ・モゼール(イタリア) →アスタナ プロチーム
ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア) →バーレーン・メリダ
クリストファー・シェルピング(ノルウェー) →ヨーケル・イコパル
ルーベン・ツェブントケ(ドイツ) →デヴェロップメントチーム サンウェブ

今週の爆走ライダー−ユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー、チーム ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 数年にわたって続く悪い流れを断ち切るべく、自国のチームを離れて新たなチャレンジに位置付けた2016年シーズン。期待されて加わったチーム カチューシャだったが、見合う働きはできず。1年で次なるチームに移ることとなった。

新チームのジャージを身にまとうユルゲン・ヴァンデンブロック Photo: Team LottoNL - Jumbo

 それでも、今年から所属するチーム ロットNL・ユンボは自身の経験と意欲を最大限買ってくれたと喜ぶ。かつてはエース待遇にこだわるがゆえに強気な発言も目立ったが、これからは自分より若いチームリーダーを支える役割に回ると誇らしげに語った。特に、クライスヴァイクの強さを評価しているといい、ジロでは何としても上位に押し上げたいとしている。

 ジュニア時代の2001年には、個人タイムトライアルで世界の頂点に立った。その後はオールラウンダーとして力をつけ、ツールを中心に総合争いにも身を置いた。一方で、調整に失敗し、大事なレースで悔いを残したこともある。調子のピークが早く来てしまうあたりを専門家から指摘されることもあった。

 エースの座を降り、違った立場から戦いに挑むグランツールに向けて、そうした経験を若い選手に伝えられる人材が必要だ。これからのチーム ロットNL・ユンボにとって、ヴァンデンブロックの加入は大きな意味を持つことだろう。

 ジロで栄光のジャージ、マリアローザ獲得に意気込むエースを大事な場面で羽ばたかせることができるか。これまでとは違った、味のある仕事がヴァンデンブロックには求められる。

チーム カチューシャ時代のユルゲン・ヴァンデンブロック。ここ数年は苦しいレースが続いたが、心機一転して若い選手を支える側に回る =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージ、2016年6月11日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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