スポーツ見本市「ISPO2017」で注目室内トレーニングをよりリアルに タックスの“トレッドミル型”新製品でヒルクライムレースに挑戦

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 ドイツ・ミュンヘンで2月5日から8日に開催された欧州最大のスポーツ見本市「ISPO」で、自転車の室内トレーニングをサポートする革新的な製品がお披露目された。オランダの固定ローラーブランド「Tacx」(タックス)が手がけた「magnum」(マグナム)だ。現地で開発のきっかけを聞くとともに、実際にマグナムでの走行を体験してきた。

固定ローラーブランド「Tacx」が手がけた「magnum」が、ドイツ・ミュンヘンで開催されたISPO2017にてお披露目された。デモ走行は会場で注目の的だった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

プロライダーがトレーニングに活用

 ランニング向けのトレッドミルをひとまわり大きくしたマグナムは、全長およそ2.3m。実際にロードバイクを載せてみると、前後輪がベルト上にゆったりと収まる。一見サイズの違い程度しか特徴が見当たらないシンプルな構造は、実演スタッフがマグナム横にロードバイクを運んでくるまでは会場にひしめく同様のトレーニング機器に埋もれて筆者を含め大勢の来場者がその存在に気が付かなかったくらいだ。

ディスプレイに並ぶ山岳レースや名峠のリスト。リモコン操作でメニューを選択し、トレーニングを開始する Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 トレーニングを始めるには、マグナムのフロントに設置されたディスプレイからリモコン操作でメニューを選択。マグナムが単なる室内トレーニングマシンにとどまらない理由は、メニュー画面を見ていて明らかになった。ディスプレイには「エロイカ」「ミラノ〜サンレモ」「モン・ヴァントゥ」といった、サイクリストなら聞いたことがある山岳レースや名峠の名前がぞろぞろ。そう、マグナムはヒルクライムのトレーニングを室内で可能にしたマシンだったのだ。

 「外で走るのと同じポジションで山のコースを走りたかったんです」と開発理由を語るのは、展示責任者のレオン・カウト氏(Leon Kuijt)。会社の所在地がオランダだったことを思い出し、カウト氏にオランダ国内の最高地点を尋ねると「高くて500mかな(実際には標高323mが最高)」と笑いながら話し、「リアルを追求した結果生まれたのがマグナム。製品開発には(同国在住の)プロライダー、ロベルト・ヘーシンク(チーム ロットNL・ユンボ)からのフィードバックも生かされています」と続けた。

低地のオランダにあって「外で走るのと同じポジションで上りたかった」と話すレオン・カウト氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
マグナムの製品開発には、ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージの山岳ゴールを制したロベルト・ヘーシンク(チーム ロットNL・ユンボ)のフィードバックが生かされている Photo : Yuzuru SUNADA

 ヘーシンクといえば、2016年の「ブエルタ・ア・エスパーニャ」第14ステージ、オービスク峠のゴールを制した記憶も新しい。カウト氏によれば、家庭の事情でチームの合宿に参加しなかったヘーシンクは、プロトタイプとして2016年に提供されたマグナムを用いて、自宅でのトレーニングを積んだ。使用例としては、「屋外で3時間の走行をした後、マグナムで1時間の“クライム”をする」といった内容だったそうだ。

展示ブースでデモ走行を担当していたジェシー・レバレンツさんは、最初にマグナムを体験した時のことを「ファンタスティック!(すばらしかった)」と振り返った Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ミラノ〜サンレモを体験走行

ベルトのフレーム部分配されたセンサーによって速度が自動で調整される Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 マグナムが再現可能な山岳ルートは、最大傾斜15%。また最大時速30kmを再現できるとあって、実演スタッフからは玉の汗が吹き出していた。この日筆者はスポーツをする服装ではなかったが、せっかくなのでミラノ〜サンレモのコースに挑戦してみることにした。

 コースを選択し、「3・2・1」というカウント後にバイクを前方へ進ませるとベルトが動き出した。ベルトのフレーム部分にセンサーが配され、決められた範囲の前方で前輪を感知すると速度が上昇し、後方にくると減速・停止するという仕組みだ。ライダーから見ると、ブルーのラインのうちレッドのラインが一定速度で走行するためのめやすとなる。

32インチディスプレイには、映像のほか、速度・ケイデンスといった情報も表示されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 最初はゆるゆると平地をスタート。32インチディスプレイに映し出される映像はなかなかリアルで、流れていく街並みのほかに、追い抜いていくクルマや横断歩道を渡る人たちなどが描写された。障害物ゲームではないので避ける必要はないが、単調になりがちな室内トレーニングにほどよい刺激を与えてくれそうだ。

 マグナムの幅はおよそ1.3m。ベルト上である程度自由に動けるため、ペダリング時の窮屈さは感じられない。同時に、ゴムではあるものの“路面”への集中力も切らさず走ることができた。ただし筆者は後輪が落ちないかどうかが気になって、アルミ素材の手すりを持ったまま走行。ハンドルバーを握る右手だけでは変速ができなかったため、わずか3%の坂でもけっこうな負荷を得られた。10分弱走行したところで「もうだめです!」と停止すると、じんわりと汗ばんでいた。

「ミラノ〜サンレモ」のコースを選択し“走行”する筆者。後輪が落ちたら…と思うと手すりから左手を離せなかった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

コースのバリエーションは「無限大」

バイクを立てかけて、今度はランニングモードにして「マグナム」を使用 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 マグナムで計測できるのは、速度、ケイデンス、パワー。またANT+やBluetooth接続が可能だ。コースは登録済みのものに加え、オリジナルのアプリストアにて新しく展開していくため「無限大」(カウト氏)。今回はヒルクライムにフォーカスしたが、もちろんランニングもできる。

 発売時期は2017年4月で、まずはオランダのほかドイツ、イギリスが対象となり日本での展開は未定。価格は8000ユーロ(約96万4000円)を予定している。

シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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