つれづれイタリア~ノ<番外・おしゃれ編>マルコの辛口ファッションチェック! ワールドチーム2017年のベストジャージはどのチーム?
2016年は例を見ない大きな変化があり、ワールドツアーからなんと3つもチームが消えました。チャンピオン級の選手はすぐに移籍できたものの、多くの有望なライダーとスタッフは職を失いました。さらに「チーム カチューシャ」がロシアからスイスのチームになり、アラブ諸国の資本によるチームも誕生。逆に中国の企業が立ち上げようとしていたプロジェクトは消滅するなど、まさに激変の1年でした。さて、いよいよ2017年のシーズンも本格化してきました。昨年チームがたくさん入れ替わったところで、年に1度のお楽しみ、プロチームウェアファッションチェックの季節がやってまいりました。今年も一緒に楽しんでいきましょう!
3年連続トップに輝いたエフデジ
マルコのチェックポイント!
・カラーコーディネート(7:2:1)の原則
・デザイン柄
・オリジナル性
■100点:ベストドレッサーで賞
3年連続トップに輝いたフランスの強豪チーム、エフデジ(フランス)。ツール・ド・フランスでエースのティボー・ピノ(フランス)は不発に終わり、ジロ・ディタリアでもやる気のかけらもなかったこのチームですが、ずっと同じデザインを継続。チームの成績にそぐわない安堵感があります。まぶしいほどの白とブルーのデザインが、清潔そのものです。洗剤のCMに起用したいほどです。今年の活躍は楽しみです。
100点にもう一つのチームが輝きました。クイックステップフロアーズ(ベルギー)。3回も世界チャンピオンに輝いたパオロ・ベッティーニが所属していたチームですが、2000年代に使用したデザインを復活させました。昨年の黒と濃いブルーもよかったですが、この歴史あるデザインも無駄がなく純粋にかっこいいものです。スプリンター勢に期待します。
■90点:クールで賞
高得点を獲得したのがオリカ・スコット(オーストラリア)とモビスター チーム(スペイン)。太平洋と大西洋に面するこの2つの国のチームは地理的に遠いですが、ジャージに起用した色はほぼ一緒! 濃いブルーにさわやかなグリーンと白の文字。シンプルで分かりやすい。そしてクール。素晴らしいジャージです。
■85点:ザ・ジャージで賞

「ランプレ・メリダの死体から生まれたジュゼッペ・サロンニのチーム」としてイタリアで紹介されている新参者、UAEアブダビ(アラブ首長国連邦)。ランプレが20年以上守ってきたショッキングピンクはきれいサッパリ消えました。
しかし、新しいチームのデザインは新鮮味がないものの、どこかでクラシックですっきりしています。まさに「ザ・自転車チームジャージ」を見事に表現してくれています。安心感ゆえの高得点にしました。
■80点:紅組で賞
不思議な演出で迷走に終わった昨年のNHKの壮大なカラオケ大会、紅白歌合戦で紅組が勝ったように、今年はなんと!バーレーン・メリダ(バーレーン)、BMCレーシングチーム(アメリカ)、チーム カチューシャ・ アルペシン(スイス)、トレック・セガフレード(アメリカ)4つの強豪チームは赤をベースに使っています。その上、ビブパンツは黒! カチューシャだけ全身赤で統一。
このグループの中には、別府史之と新城幸也、おなじみの日本人選手2人が活躍しているだけでなく、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、トニー・マルティン(ドイツ、チーム カチューシャ・アルペシン)など、火花が散るほどのチャンピオン級の選手が混戦しています。
心配はたった一つ、生中継です。カチューシャを別として、残りの3つのチームのジャージはよく似ています。赤いジャージに黒いビブパンツ。ヘルメットとサングラスで顔が追われている選手たちを、どう見分ければよいのか困難を極めるでしょう。選手の皮膚下に生体チップを埋め、テレビの画面に自動的に名前が表示されれば、見ている側としてもっとレースが楽しめるでしょう。
1つだけクレームを付けたいチームがあります。それはBMC! 肩部分に割って入ったあの大きな白は少し減点対象になりますが、今年は良しとします。
■65点:パックマンで賞

2015年は100点、2016年70点、そして今年は65点。少しずつ評価を落としているチーム スカイ(イギリス)のジャージ。無敵艦隊のエース、クリストファー・フルーム(イギリス)の活躍でチームはとにかく強い。強すぎるほどです! でもジャージは上品さを落としています。
最高だったアディダスからラファへ。そしてバトンタッチを受けたイタリアの老舗ウエアメーカー、カステリがなぜか80年代に世界的人気を博したビデオゲーム「パックマン」か「ドンキーコング」のデザインを模倣。変な方向に向かっています。チームにはそれを払しょくさせるような活躍をしてもらいたいものです。
■60点:無難で賞
今年も無難で安心なチームジャージはたくさんあります。黒に近いブルーのボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)、どこかで神秘的で不思議な色です。黄色を全面的に押し出しているチーム ロットNL・ユンボ(オランダ)、ジロ・ディタリアでの昨年のリベンジなるか楽しみです。
赤と白のロット・ソウダル(ベルギー)は、やはりシンプルで分かりやすい。そしてよい子のパジャマにしか見えなかったキャノンデール・ドラパック(アメリカ)はオレンジがアクセントとなって少し良くなりました。やっと合格ラインにたどり着けました。チームジャージを買いたい人はまずここからスタートすべきでしょう。
今年も「やっぱり」の個性派ジャージ
さて、ここから不合格点が始まります。
■50点:(再び)トラックにひかれたで賞
あああ! チーム サンウェブ(ドイツ)がまたやってしまった!!! 2016年1月にスペインの合宿中に起こった交通事故を忘れないようにこのデザインが復活したのでしょうか。白いジャージに黒い二つの線! 2015年にも採用されたこのデザインはまるでトラックにひかれたような跡にしか見えません。このチームのジャージを担当したデザイナーにその心理を問いたい。
■40点:(再び)カーテンで賞
アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)、どう見えてもこのデザインはダサい! ダサすぎる! 都内の自転車ショップでも珍しく見かけましたが、2年経ってもどんなに割引されても買い手が見つからない不思議なジャージです。白にブルーと茶色の組み合わせは60年代の一般の家庭でよく見られたカーテンのデザインでしか見たことありません。でもここまで死守するチームの信念に脱帽します。応援したくなります。
■30点:失敗した藍染めで賞
痛い点数ですが、カザフスタンの強豪チーム、アスタナ プロチーム(カザフスタン)の新しいウェアを見た瞬間、目を疑いました。何かの間違いではないかと! 芋虫か、失敗した藍染めのようです。確かに見たことのないオリジナルデザインですが、中途半端な高さまで滲み込んでゆく黒色は、失敗した藍染めを連想させた原因です。さらに黄色のアクセントはその痛みを増幅させます。自転車がアルゴン製に変わったことが影響しているのでしょうか。真相はわかりませんが、長年守りぬいたあの美しい水色の早急な復活を熱望します!
■20点:やる気ないで賞
昨年の「無難で賞」から大幅に順を落としたこのディメンションデータ(南アフリカ)。イギリスが生んだ最強のスプリンター、マーク・カヴェンディッシュが所属するこのチームのジャージの第一印象は、脱力感とやる気のなさ。イタリア地方のジュニアチームでさえもう少し格好良く見えるように工夫しています。大きく空いたスペースは新しいスポンサーを呼び込むためでしょうか。とにかく今年はもらっても嬉しくないジャージナンバーワンに決定。来年に期待します。

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ」