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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<195>主軸の活躍で最高のシーズンイン ロット・ソウダル 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレース王国ベルギーが誇るトップチームの1つ、ロット・ソウダル。エーススプリンター、アンドレ・グライペル(ドイツ)を擁し、グランツールのステージ勝利などの量産を得意とする。また、ベルギーチームの特徴でもある、クラシックをはじめとするワンデーレースでの上位入りも光る。今シーズンは始まったばかりだが、早くも勝利を重ね、最高の出足を飾っている。注目されるチームの状況を押さえていこう。

ヨーロッパ開幕戦のチャレンジ・マヨルカの1つ「トロフェオ・ファラニチユ-プラレス」でシーズン初勝利を飾ったアンドレ・グライペル Photo: 	Lotto - Soudalヨーロッパ開幕戦のチャレンジ・マヨルカの1つ「トロフェオ・ファラニチユ-プラレス」でシーズン初勝利を飾ったアンドレ・グライペル Photo: Lotto - Soudal

チャレンジ・マヨルカを席巻

 南半球から始まったシーズンは、いよいよ本場ヨーロッパにも移っている。事実上のヨーロッパ開幕戦の1つである、チャレンジ・マヨルカ(スペイン)にはUCI(国際自転車競技連合)ワールドチームを筆頭に、同プロコンチネンタルチーム、同コンチネンタルチームと多くの有力どころが参戦した。

 UCIヨーロッパツアー1.1クラスを4連戦するシリーズで、いずれのレースもロット・ソウダルが席巻した。

1月28日のトロフェオ・ポルト・デ・アンドラーツを制したティム・ウェレンス。前日のトロフェオ・セッラ・デ・トラムンタナでも優勝し、チーム3連勝を挙げた Photo: Lotto - Soudal1月28日のトロフェオ・ポルト・デ・アンドラーツを制したティム・ウェレンス。前日のトロフェオ・セッラ・デ・トラムンタナでも優勝し、チーム3連勝を挙げた Photo: Lotto - Soudal

 初日(1月26日)のトロフェオ・ファラニチユ-プラレスでは、完璧なリードアウトからグライペルがスプリント勝利。これを弾みに、翌日のトロフェオ・セッラ・デ・トラムンタナではティム・ウェレンスが、険しいアップダウンと激しい雨の中を独走勝利。続くトロフェオ・ポルト・デ・アンドラーツでもウェレンスが頂上フィニッシュを制して連勝。最終日のトロフェオ・パルマではグライペルが4位に終わったが、4戦3勝という、これ以上ない成果を残した。

 近年チームを牽引しているグライペルとウェレンスが勝利しただけでなく、チームの底上げを実感させる4日間であったことも確か。トロフェオ・セッラ・デ・トラムンタナでは23歳のルイ・ヴルヴァーク(ベルギー)が2位に続き、トロフェオ・ポルト・デ・アンドラーツでは22歳のティエシー・ブノート(ベルギー)が3位、ヴルヴァークが4位。戦力面の充実は、春のクラシックレースでの活躍を予感させるものとなった。

グライペルとリードアウトマンとのホットライン

 現チームでは7年目のシーズンとなったグライペル。押しも押されもせぬ絶対的なエーススプリンターとして、今年もチームを引っ張る。7月で35歳となるが、年齢面での衰えはまだまだ見られない。ラスト250mで加速し、フィニッシュへと飛び込むスタイルで数々の勝利をつかむことだろう。

ツール・ド・フランス最終日のパリ・シャンゼリゼを2年連続で制しているアンドレ・グライペル。今年もツールのステージ優勝に集中するだろう =2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス最終日のパリ・シャンゼリゼを2年連続で制しているアンドレ・グライペル。今年もツールのステージ優勝に集中するだろう =2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この走りを支えるリードアウトマンたちとのホットラインも見もの。長年発射台を務めてきたグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)は移籍したが、スピードマンのマルセル・シーベルグ(ドイツ)やユルヘン・ルーランツ(ベルギー)といった選手たちが、その役割を引き継ぐことになりそうだ。マヨルカ・チャレンジでは、新加入のモレノ・ホフラント(オランダ)が早速機能。グライペルの今シーズン初勝利をお膳立てしている。

 今のところ、シーズンの目標などは明かしていないが、やはりグランツールでのステージ優勝がメインターゲットとなるだろう。ツールでは2年連続で最終ステージ勝利。パリ・シャンゼリゼ通りでのスプリントを制している。ポイント賞などのリーダージャージ獲得は意識しておらず、スプリントステージを勝ち取ることに集中するスタンス。これが今年は奏功するか、どれだけ勝利を重ねられるかが問われることになる。

チーム浮沈のカギはクラシックにあり

 グランツールの総合争いを見据える選手が少ないこともあり、チームが勝負する場はグライペルのスプリントか、クラシックなどのワンデーレースにおおむね絞られる。若い選手たちの走りが計算できることもあり、今年は戦力が整ったと見てもよさそうだ。

 石畳系の北のクラシックでは、ルーランツとブノート、イェンス・デビュッシュール(ベルギー)に期待がかかる。

北のクラシックで期待がかかるユルヘン・ルーランツ =パリ~ルーベ2017、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA北のクラシックで期待がかかるユルヘン・ルーランツ =パリ~ルーベ2017、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ルーランツは2013年のツール・デ・フランドルで3位に入ると、以降はトップ10の常連となった。スプリント力が高いほか、ライバルのアタックに反応する勘も冴えていることから、少人数での勝負になると強さを発揮する。昨年は、ミラノ~サンレモでも3位に入っており、3月から4月にかけて彼の名を聞く機会が多くなる可能性が高い。

上々のシーズンインを果たしたティエシー・ブノート。クラシックシーズンまで好調を維持したい =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA上々のシーズンインを果たしたティエシー・ブノート。クラシックシーズンまで好調を維持したい =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ブノートは、デビューイヤーだった2015年のフランドルでいきなり5位に入り、関係者を驚かせた。優勝候補に名が挙がった昨年は不発に終わったが、その能力は誰もが認めるところ。マヨルカ・チャレンジでの好調さを春まで維持できれば、大躍進の可能性がある。

 この2人に加え、スプリンターとしても活躍するデビュッシュールも控える。昨年はヘント~ウェヴェルヘムでの落車で戦線を離脱したが、2015年にはパリ~ルーベで9位に入り、石畳適性の高さを示した。ルーランツ同様、人数が絞られた中でのスプリントとなればライバルに脅威を与えられそうだ。ブノートも含め、重要局面で人数がそろっていれば、大きく優位に立つことができそうだ。

ワンデーレースを得意とするトニー・ガロパン。アルデンヌクラシックでの活躍なるか =ツール・ド・フランス2016台15ステージ、2016年7月17日 Photo: Yuzuru SUNADAワンデーレースを得意とするトニー・ガロパン。アルデンヌクラシックでの活躍なるか =ツール・ド・フランス2016台15ステージ、2016年7月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 アルデンヌクラシックでは、ウェレンスやトニー・ガロパン(フランス)の走りが見ものとなる。昨年はウェレンスがアムステル・ゴールドレースで10位に入った以外、勝負に絡むことはできなかったが、ともに繰り返し訪れるアップダウンを得意とし、一発のアタックで勝利を呼び寄せられる強みがある。今年は勝利につながる攻撃を見せられるか。また、1週間のステージレースでも実績がある2人だけに、3月のパリ~ニースなどの走りがその先に控えるビッグレースへの指標となるかもしれない。

 さらには、アムステルやラ・フレーシュ・ワロンヌのポディウム経験のあるイエール・ヴァネンデル(ベルギー)も展開次第では上位戦線で勝負が可能。こうした層の厚さが、戦いの行方を決定付けることは大いに考えられる。

ハンセンのグランツール連続完走記録はどこまで続く?

 ロット・ソウダルの顔といえば、“鉄人”アダム・ハンセン(オーストラリア)。鉄人と呼ばれる所以でもある、グランツールの連続完走記録は16まで伸ばしている。

グランツール16大会連続出場中のアダム・ハンセン。どこまで記録を伸ばすか =ツアー・ダウンアンダー2017第1ステージ、2017年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADAグランツール16大会連続出場中のアダム・ハンセン。どこまで記録を伸ばすか =ツアー・ダウンアンダー2017第1ステージ、2017年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2011年のブエルタ・ア・エスパーニャ以来、すべてのグランツールに参戦し、いずれも完走を果たしている。それも、ただ全21ステージを走りきっているのではなく、スプリントトレインの牽引や自身のステージ優勝といった、特筆すべき働きぶりを見せている点に彼のすごさがあるといえるだろう。

 今年も記録更新すべく、グランツール参戦を続けていくことになる。まずは5月のジロ・デ・イタリアだ。すでにシーズンインしており、自国開催のツアー・ダウンアンダーでは総合61位で終えている。逃げを試みるなど、見せ場も作っている。

逃げのスペシャリスト、トーマス・デヘントはツアー・ダウンアンダーで山岳賞を獲得 =2017年1月22日 Photo: Yuzuru SUNADA逃げのスペシャリスト、トーマス・デヘントはツアー・ダウンアンダーで山岳賞を獲得 =2017年1月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このダウンアンダーでは、トマス・デヘント(ベルギー)が山岳賞を獲得。2012年のジロでは難関山岳のパッソ・デッロ・ステルヴィオを制し総合でも3位となったが、その後は得意とする逃げで魅せる。昨年のツール第12ステージでは優勝し、最終的に山岳賞ランキングでも2位。“自由”を与えられたときの強さはプロトン随一。今年もレースを先行するシーンがたびたび見られそうだ。

 UCIワールドツアーを主戦場とするトップチームを筆頭に、同女子ワールドツアーを戦うレディースチーム、育成部門のアンダー23チームとそろえ、一貫した選手強化を行っているのも特徴。例年、選手の入れ替えが少ないのは、ベルギー人選手を中心としたこれらの取り組みが功を奏しているからだ。ブノートやヴルヴァーク、トッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー)といった有望株が台頭し、いよいよ実を結ぼうとしている。なお、今年の新加入選手5人のうち、ジェームス・ショー(イギリス)とエンゾ・ワウテルス(ベルギー)が、アンダー23チームからの昇格を果たした。

スティグ・ブルークスの回復を願い、「Fight for Stig」のラバーブレスを着用してレースへ臨んだ(2016年撮影) Photo: Lotto - Soudalスティグ・ブルークスの回復を願い、「Fight for Stig」のラバーブレスを着用してレースへ臨んだ(2016年撮影) Photo: Lotto - Soudal

 なお、昨年の5月のツール・ド・ベルギー第3ステージでモトバイクとの接触事故にあい、生死の淵をさまよったスティグ・ブルークス(ベルギー)の回復を願って、チームは強く戦っていくことを宣言。ブルークスは昨年12月に昏睡状態を脱し、意識が戻りつつある段階であると発表された。ゼネラルマネージャーのマルク・セルジャン氏は、ブルークスが戦列に復帰することは事実上不可能だとしながらも、「彼のことを忘れずに戦う」と宣言。「Fight for Stig(スティグのために戦う)」をテーマにチームはトップシーンを駆ける。

ロット・ソウダル 2016-2017 選手動向

【残留】
サンデル・アルメ(ベルギー)
ラースユティング・バク(デンマーク)
ティエシー・ブノート(ベルギー)
クリス・ブックマンス(ベルギー)
ショーン・ドゥビー(ベルギー)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー)
バルト・デクレルク(ベルギー)
トマス・デヘント(ベルギー)
イェンス・デビュッシュール(ベルギー)
フレデリック・フリソン(ベルギー)
トニー・ガロパン(フランス)
アンドレ・グライペル(ドイツ)
アダム・ハンセン(オーストラリア)
トーマス・マルチンスキー(ポーランド)
マキシム・モンフォール(ベルギー)
ユルヘン・ルーランツ(ベルギー)
マルセル・シーベルグ(ドイツ)
ラファエル・バルス(スペイン)
トッシュ・ヴァンデルザンド(ベルギー)
イェール・ヴァネンデル(ベルギー)
ルイ・ヴルヴァーク(ベルギー)
イェール・ワライス(ベルギー)
ティム・ウェレンス(ベルギー)

【加入】
モレノ・ホフラント(オランダ) ←チーム ロットNL・ユンボ
ニコラス・マース(ベルギー) ←エティックス・クイックステップ
レミー・メルツ(ベルギー) ←カラーコード・アルデンビーフ
ジェームス・ショー(イギリス) ←ロット・ソウダルU23(アマチュア)
エンゾ・ワウテルス(ベルギー) ←ロット・ソウダルU23(アマチュア)

【退団】
スティグ・ブルークス(ベルギー) →未定
ヘルト・ドックス(ベルギー) →引退
グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド) →ユナイテッドヘルスケア プロサイクリングチーム
ピム・リヒトハルト(オランダ) →ロームポット・ネーデルランツェロッテリー

今週の爆走ライダー-マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 スプリンターやワンデーレーサーぞろいのチームにあって、数少ないオールラウンダー。グランツールでは総合成績を狙うことも多く、山岳やタイムトライアルでの安定感に長ける。

山岳やタイムトライアルの安定感でグランツール上位を狙うマキシム・モンフォール =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第11ステージ、2016年8月31日 Photo: Yuzuru SUNADA山岳やタイムトライアルの安定感でグランツール上位を狙うマキシム・モンフォール =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第11ステージ、2016年8月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールでの自己最高は、2011年ブエルタでの総合6位。トップ10の壁を突破することが難しく、総合10位台で3週間を終えることが多い。今年は6年ぶりに総合上位進出が現実的な目標となりそうだ。

 近年は、グライペルのスプリントを重視するツールのメンバーから外れ、急峻な山岳での戦いとなるジロやブエルタに集中できる状況が整った。それだけに、結果を残して自らの力を誇示したいところだ。

 ベルギー人ライダーの多くが同国北部のフランドル地方出身だが、モンフォールはトップライダーの中では数少ない南部・ワロン地方出身。フラマン語とフランス語を巧みに操り、チームメートとのコミュニケーションもうまく図っているのだそう。34歳とベテランの域に達しているが、チームメートや首脳陣からの信頼を集めているのは、そんな優れた人間性が大きな要素となっているに違いない。

イエール・ヴァネンデルと走るマキシム・モンフォール(右)。スペイン・マヨルカ島でのトレーニングキャンプでのひとこま Photo: Lotto - Soudalイエール・ヴァネンデルと走るマキシム・モンフォール(右)。スペイン・マヨルカ島でのトレーニングキャンプでのひとこま Photo: Lotto - Soudal
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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