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クローズアップ苦痛を超える喜びを希求 サイモン・モットラムCEOが語るRaphaのブランド・アイデンティティ

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 英国で誕生し、日本をはじめ世界各国で愛用されているサイクルウェアブランド、Rapha(ラファ)。その活動はアパレル販売にとどまらず、さまざまなイベントを開催したり、独自の世界観を伝えるショートフィルムの制作・公開したりと、自転車界にムーヴメントを巻き起こしている。来季、世界トップレベルのロードレースチーム「スカイ プロサイクリング」へウェアを供給することも決定した。そんなラファの原動力について、ブランド創設者のSimon Mottram(サイモン・モットラム)CEOに語ってもらった。

ラファのサイモン・モットラムCEOラファのサイモン・モットラムCEO

“ロード・サイクリング・ブランド”

 「製品をPRするだけでなく、サイクリストとスポーツをつなぐ役割を果たしたい。ラファのすべては、ロードレースから着想を得ている―」

 モットラムCEOが語るラファの原点だ。まず初めに、サイクリングへの想いや情熱がある。アパレルの製造・販売を手がけるようになったのは、ユーザーに理解してもらいやすいと考えたから。

ラファのサイモン・モットラムCEO

 2003年に創立して以来、何度も語られてきたキーワードは「Suffering(苦痛、苦悩)」。やわらかい風合いで英国らしいトラッドさをかもし出すラファのジャージやグッズを見ているだけでは、想像しにくい言葉だ。「苦痛なくして、ロードレースは語れない。そうでなければ、レジャーになってしまう」。モットラムCEOの眼差しには、畏敬の念さえ浮かんでいる。

 ロードレースの中でも、その苦痛の頂点といえるのが、1カ月近くかけてフランスをめぐる「ツール・ド・フランス」だ。2013年には100周年を迎えるが、モットラムCEOは特に1984~85年頃のレース・シーンから多くのインスピレーションを受けているという。

 この日、インタビューを行なった盆栽自転車店(東京・千駄ヶ谷)でモットラムCEOは、書棚に並んだ84年当時のロードレース写真集を目ざとく見つけ、しばし見入る場面も。山岳で死闘を繰り広げるベルナール・イノー、ローラン・フィニョンといった名選手の写真を繰りながら、「苦しいという感情を知る多くのサイクリストに、街へ、山へ、ラファ製品を身に着けて走ってもらいたい」と語った。

インタビューは和やかな雰囲気で進行したインタビューは和やかな雰囲気で進行した

「強くあるべき」―ショートフィルムが映すラファの世界観

 ラファのブランドコンセプトを明快に表現しているのが、2007年にスタートした映像企画「ラファ・コンチネンタル」だ。ウェブサイトでは、今年9月に東北で撮影された作品を含め、世界各地で撮影された50本以上のショートフィルムを見ることができる。ラファ製品を身にまとった数人のライダーが、世界各地の道を疾走するといった内容で、中にはヨーロッパのクラシックレースで有名な石畳の道を舞台にするなど、過酷なコース設定も多い。

ロンドンから持参した愛車は、ディスクブレーキを装備したクロモリのオーダーバイクロンドンから持参した愛車は、ディスクブレーキを装備したクロモリのオーダーバイク

 モットラムCEOは、「ラファ・コンチネンタルを走るライダーは、みな強い。スピードがあるから、すなわち体力があるからこそ得ることができる驚きや喜びが、ショートフィルムに収められている」とアピールする。

 ただ、自身はトレーニングの中で心拍計やパワーメーターを使ったことがないという。数値は、レースで競うために、あるいはフィットネスの効果を高めるために重要としつつも、「サイクリングは自分のペースで楽しんでいる。数値で戒めなくても、上りの苦しさなどで私たちの体は限界を感じることができる」と、数値では測れない価値を説く。

 「フィジカルな数値は、サイクリングに限らず、例えばマラソンやトライアスロンなどにも共通する指標だ。数値を求めるだけの人は、ほかのスポーツへ移っても不思議ではない。だから、数値を向上させるという目的はサイクリングを続ける理由にならず、それを越える喜びを見出したラッキーな人が、自転車に残るのだろう」

つながる―ポール・スミス、スカイとのコラボレーション

 ラファはこれまでに、英国のファッションブランド「ポール・スミス」とのコラボレーション製品をたびたびラインアップしてきた。実は同ブランドとは、ラファ創設前に、モットラムCEOがポール・スミス本人のもとへ、製品スケッチとビジネスプランを持参してアプローチした頃からの付き合いだという。

 「私自身がポール・スミスのファンということもあり、仕事をいっしょにできればいいなと。それに、彼がかつてロードレースのプロ選手を目指していたことも知っていたので、うまくできるんじゃないかと思っていた」と振り返るモットラムCEO。ポール・スミス本人は事故により選手生活をあきらめ、過去を封印していたというが、ラファとの出会いをきっかけに自転車について公の場で語るようになり、いまでは少年のように生き生きと自転車を楽しんでいるという。

インタビューに応えるサイモン・モットラムCEOインタビューに応えるサイモン・モットラムCEO
この日着ていたポース・スミスとのコラボレーション製品。裾の折り返し部分に自転車関連のキーワードがびっしり並んでいるこの日着ていたポース・スミスとのコラボレーション製品。裾の折り返し部分に自転車関連のキーワードがびっしり並んでいる

 来季からウェアを供給する「スカイ プロサイクリング」の デイヴ・ブレールスフォード監督とは、チーム設立前から知り合いだったという。今年、ツール・ド・フランスやロンドン五輪で大活躍したスカイとの協業に話が及ぶと、モットラムCEOは「Amazing(すごいよ)!」と興奮を隠さなかった。

 「これまで1人のファンとして、フェンスの外から眺めているだけだったのに、ナンバーワンのチームと共に働く機会が得られるなんて本当に嬉しい」と率直に喜びを口にする。一方で、ビジネス面のメリットや、ラファが果たすべき役割について、「スカイというチームの内部から発信することができる情報や製品があることは、ラファのユーザーにとっても、スカイやロードレースのファンにとってもメリットとなるはずだ」と、冷静に分析している。

「野辺山シクロクロス」もラファのアイデンティティ

 11月17日~18日には、ラファが主催するレースイベント「野辺山シクロクロス」が長野県で開催される。昨年の大会には参加者約500人、観戦者は約700人が集ったといい、今年は1000人以上の観衆を見込んでいるという。

 ラファがロードレースに根ざしたブランドであるとはいえ、シクロクロスはロード選手の冬季のトレーニング手段として発展した側面もあり、親和性は高い。「クローズド・コースでありながら、アウトドアで泥まみれになって競い合う楽しさは、過酷なスポーツを希求するラファのブランドアイデンティティに合致する」とモットラムCEO。アメリカではシクロクロスのチームを抱えていると言い、「ラファとして取り組みやすいジャンル」だという。

 一方、ロンドンでは数年前からラファがクリテリウムイベントを開催している。日本でも、多くの観戦者が集まりやすい都市型のイベントの開催を模索しているという。

来日したサイモン・モットラムCEO(右)と並ぶ日本法人の矢野大介ジェネラル・マネージャー来日したサイモン・モットラムCEO(右)と並ぶ日本法人の矢野大介ジェネラル・マネージャー
モットラムCEOのために用意された「盆栽自転車店」特製のカプチーノモットラムCEOのために用意された「盆栽自転車店」特製のカプチーノ

 
文 柄沢亜希・撮影 上野嘉之
取材協力 盆栽自転車店(東京・千駄ヶ谷)
 
「Rapha」公式ウェブサイト


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インタビュー ポール・スミス ラファ

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