笑顔が弾けた熊本復興レース九島勇気がプロクラス優勝 若者大活躍の「ダウンヒルシリーズ」第9戦・吉無田高原

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 マウンテンバイク(MTB)ダウンヒル競技のシリーズ戦、「ダウンヒルシリーズ」の今季第6戦が11月12、13日、熊本県の吉無田高原で行われた。4月の熊本地震では、まさに震度7を観測した地域。復興レースとして開催された今大会では、プロクラスで全日本王者の九島勇気(玄武/MONDRAKER)が優勝。また地元の若い世代の選手が各クラスで大活躍を見せた。 (SLmedia 平野志磨子)

プロクラス表彰式 © DOWNHILL SERIESプロクラス表彰式 © DOWNHILL SERIES

震災後2度目のレースイベント

吉無田高原のコースは「丸見え」なのが特徴。コース脇からは応援の声が飛ぶ © DOWNHILL SERIES吉無田高原のコースは「丸見え」なのが特徴。コース脇からは応援の声が飛ぶ © DOWNHILL SERIES

 吉無田高原があるのは、熊本県の上益城郡御船町。4月の熊本地震でまさに、震度7を観測した地域だ。今もブルーシートが被せられた家がたくさんあり、去年は空き地だった場所には仮設住宅が建ち並んでいた。震災後、レース会場である吉無田高原の緑の村も営業を休止する事態となった。しかし不幸中の幸いか、コースや施設に大きな被害はなく、3カ月後に営業を再開。再開と同時に「がんばろう熊本 吉無田ダウンヒルフェスタ」というイベントが開催され、今回のダウンヒルシリーズは震災後2度目のレースイベントとなった。

AKI FACTORY TEAMが今シーズンを通してレース会場で行った熊本地震緊急支援募金。井手川直樹から、よしむたMTBクラブの高野氏に手渡された © DOWNHILL SERIESAKI FACTORY TEAMが今シーズンを通してレース会場で行った熊本地震緊急支援募金。井手川直樹から、よしむたMTBクラブの高野氏に手渡された © DOWNHILL SERIES

 「震災の時、聞き慣れた地名を何度も何度もテレビで聞いて、心配でTVで様子は見ていたけれど、今回せっかくレースが開催されるなら、実際に現地へ行って、いつも通りみんなと走りたくて!」と、九州全土、中国・近畿地方、そして遠くは東京から、100人近い参加者が集まった。年々参加者が増える吉無田高原、今年も歴代最多エントリー数を更新した。営業を再開して以降、吉無田ローカルのライダーたちが作り上げたコースは、昨年よりもハイスピードでテクニカルなコーナーが多く設定された。

大雨で始まった大会初日

 大会初日、土曜日の朝は大雨。雷注意報が発令され、町から会場までの道のりにあるアンダーパスが水没するほどの荒れた天気になった。土砂降りで、少し雨も弱く空も明るくなってきたかな?と思えばまたも暗雲立ちこめ、バケツをひっくり返したような雨。次こそやむかな?と思いきや、濃霧で視界は5m程度に。そんな天気に翻弄されながらも、雷注意報が解除されると「吉無田キッズ」をはじめとする小学生・中学生ライダーは意気揚々とコース試走を繰り返した。

土曜日の朝、会場は真っ白な霧に包まれた © DOWNHILL SERIES土曜日の朝、会場は真っ白な霧に包まれた © DOWNHILL SERIES
霧が晴れたら、次は大雨。フィニッシュゲートの下は大きな水たまりに © DOWNHILL SERIES霧が晴れたら、次は大雨。フィニッシュゲートの下は大きな水たまりに © DOWNHILL SERIES
雨の中試走を繰り返す吉無田キッズ・山本一晴(takebow-tune Gravity republic/よしむたMTBクラブ)の顔は泥だらけ、でも楽しそう! © DOWNHILL SERIES雨の中試走を繰り返す吉無田キッズ・山本一晴(takebow-tune Gravity republic/よしむたMTBクラブ)の顔は泥だらけ、でも楽しそう! © DOWNHILL SERIES

 午後のタイムドセッションが始まる頃に、やっと晴れ間が出てきた。阿蘇の外輪山の外れにあるこのコースは、火山灰が混ざった真っ黒な土。表面の土は滑りやすく、土砂降りの影響でツルツル。難しいコーナーに差し掛かるとスッテンコロリンと滑って転けるライダーたちの姿がフィニッシュエリアからも見える。降りてきたライダーたちは顔から足先まで泥だらけで真っ黒で、それでも皆また、ここ吉無田高原でレースができる喜びを噛みしめるように笑顔を輝かせた。

今年の全日本チャンピオン九島勇気(右から2人目、玄武/MONDRAKER)をはじめ、若手ライダーも全国各地から集まった © DOWNHILL SERIES今年の全日本チャンピオン九島勇気(右から2人目、玄武/MONDRAKER)をはじめ、若手ライダーも全国各地から集まった © DOWNHILL SERIES

 タイムドセッションのトップタイムは井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)の56.698。続いて全日本チャンピオンの九島勇気(玄武/MONDRAKER)、阿藤寛(Acciarpone bikes)とプロクラスライダーが続いたあと、エリートクラスの田中将之(FOG bikes/チキン☆ヒーローズ)、エキスパートクラスの中学生ライダー古城栄翔が続く結果となった。

地元店など3つの飲食ブースが出展し、ライダーや観客のお腹を満たした © DOWNHILL SERIES地元店など3つの飲食ブースが出展し、ライダーや観客のお腹を満たした © DOWNHILL SERIES
くまモンのエプロンがお揃いの「上田代ばぁば会」が販売した巻き寿司やおこわは大好評 © DOWNHILL SERIESくまモンのエプロンがお揃いの「上田代ばぁば会」が販売した巻き寿司やおこわは大好評 © DOWNHILL SERIES
飲食ブースでは、4月の震災復興Tシャツとトートバックの販売も © DOWNHILL SERIES飲食ブースでは、4月の震災復興Tシャツとトートバックの販売も © DOWNHILL SERIES

決勝は前日タイムを大幅更新

九州の女子ライダー荒木晶子(タケボウチューン)もランチタイムでニッコリ © DOWNHILL SERIES九州の女子ライダー荒木晶子(タケボウチューン)もランチタイムでニッコリ © DOWNHILL SERIES

 決勝レースが行われる日曜日。夜に少しだけ降った雨は、コースを乾かすのを妨げた。しかし、水はけが良いと言われる土だけあって、午前中の試走の間にもぐんぐんと路面コンディションは回復。本戦が始まると、タイムは前日よりも大幅に更新されていった。

 XC BIKEクラスは、ファットバイク対20年前のDHバイクという闘いを制した眞武広一(Click八幡)が勝利。ファーストタイマークラスでは、毎週末吉無田高原へ練習に来るということもあって、レース前には「僕、勝っちゃうかも」と話していた小学4年生の吉無田キッズ、井ノ一公史郎(ヨシムタMTBクラブ/ニュースタイル/CLEAT)が宣言通り2位に5秒近い差をつけて優勝。毎戦40人近いエントリーが集まる激戦のスポーツクラスでは、公史郎選手の兄で中学1年生の井ノ一涼介(ヨシムタMTBクラブ/ニュースタイル/CLEAT)が大人たちを押さえて優勝した。

XC BIKEクラス表彰式 © DOWNHILL SERIESXC BIKEクラス表彰式 © DOWNHILL SERIES
ファーストタイマークラス表彰式 © DOWNHILL SERIESファーストタイマークラス表彰式 © DOWNHILL SERIES
スポーツクラス表彰式 © DOWNHILL SERIESスポーツクラス表彰式 © DOWNHILL SERIES

 そして、これまたエリートクラスに上がりたい大人たちがひしめくエキスパートクラスでは、前日のタイムドセッションでもトップタイムだった中学1年生の古城栄翔が圧巻の勝利。タイムが読み上げられた瞬間には感嘆のため息のあとに会場中から歓声と拍手がわき起こった。ダウンヒルシリーズの始まった3年前から大人たちに混ざってレースへ参戦してきた彼の優勝は、この日一番と言っていい盛り上がりとなった。

エキスパートクラス表彰式 © DOWNHILL SERIESエキスパートクラス表彰式 © DOWNHILL SERIES
エリート女子表彰式 © DOWNHILL SERIESエリート女子表彰式 © DOWNHILL SERIES
エリートクラス表彰式 © DOWNHILL SERIESエリートクラス表彰式 © DOWNHILL SERIES

 エリート女子クラスでは、走るパン屋さん・富田敬子(Accairpone bikes)が圧勝。エリート男子クラスでは九州の帝王・本村貴之(delsol/cleat/トクサガ峰)とのコンマ差の闘いを制した高校3年生、田丸裕(Acciarpone bikes)が優勝した。

 プロクラスは前日よりも7秒縮めたタイムで今年の全日本チャンピオン九島勇気が今年のダウンヒルシリーズ初優勝を決めた。

「吉無田キッズ」が大活躍

プロクラスライダーと、吉無田キッズをはじめとする西日本の若手ライダーたち © DOWNHILL SERIESプロクラスライダーと、吉無田キッズをはじめとする西日本の若手ライダーたち © DOWNHILL SERIES

 震災時には既に日程が発表されていた今回のダウンヒルシリーズ吉無田高原大会。震災が起こった時、開催できるのか?開催すべきなのか?と様々な葛藤があった。

 しかし、終わってみれば、プロクラスを除く全クラスの優勝者は小学生〜高校生の若者たち。何より、「吉無田キッズ」と言われる子供たちが大活躍する結果だった。そして、表彰台の一番高い場所から、毎週末練習へ連れて行ってくれる祖父母や、長距離の遠征を支えてくれる両親に向けて送られた「いつもありがとう」という言葉に家族だけでなく大人たち全員が涙ぐみ、エリート女子クラスで優勝した富田選手の「勝てたことよりも、ここ吉無田でまたみんなでレースができたことが何より嬉しい!」という言葉には歓声があがった。

集合写真。また来年、ここで会いましょう! © DOWNHILL SERIES集合写真。また来年、ここで会いましょう! © DOWNHILL SERIES

 今回の開催に至るまで手を尽くしてくださったオーガナイザー高野さんやローカルライダーの皆さん、復興工事などで熊本市内の宿泊施設が満杯、それなら!とご自宅にたくさんのライダーを受け入れてくださったローカルライダーのご家族、そして遠くから集まってくれた100人近いライダーたちに心からお礼を言いたい。

 「がんばろう熊本!」「熊本を元気に!」という言葉のもとに「復興レース」として開催されたが、それ以上に熊本・九州から私たちが元気をもらった、素晴らしい大会となった。

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