全日本シクロクロス選手権2016【詳報】男子は沢田時が有言実行のV 女子優勝の坂口聖香は連覇達成で世界へ

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 12月11日、宇都宮市内で行われた全日本シクロクロス選手権は、男子エリートでカテゴリー1年目の沢田時(ブリヂストンアンカー)が安定した速さでトップを独走。「競技を始めた子供の頃からの目標だった」というレースを手中に収めた。女子エリートではディフェンディングチャンピオンの坂口聖香(パナソニックレディース)が実力を見せつけての独走勝利。U23は終始つばぜり合いが続いたが、軍配は横山航太(シマノレーシング)に上がり、ジュニアは日野泰静(松山城南高校)がタイトルを手にした。

表彰式で笑顔の沢田時(中央)、左は2位の前田公平、右は小坂光 Photo: Kenta SAWANO表彰式で笑顔の沢田時(中央)、左は2位の前田公平、右は小坂光 Photo: Kenta SAWANO

 宇都宮市内の「うつのみや ろまんちっく村」の特設コースは、乾燥した前日のコンディションから一変。前日は選手が土煙を上げて試走したが、朝方にかけて気温が氷点下になり凍結。午前中のレースでは霜で滑りやすく、気温が上がると溶けた霜が土を湿らせた。

「勝つつもりで走った」有言実行の沢田

男子エリートでホールショットを奪ったのは竹之内悠(Toyo Frame) Photo: Kenta SAWANO男子エリートでホールショットを奪ったのは竹之内悠(Toyo Frame) Photo: Kenta SAWANO

 最も観客が盛り上がったのは男子エリートカテゴリー。11日は主催者発表で1万6000人の観客が熱い声援を送った。注目されたのは2015年の王者、竹之内悠(TOYO Frame)、地元チームから参戦する小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)、また、エリート1年目ながら直近のUCIレースの野辺山で健闘した沢田だ。

1周目の中盤、先頭に立つ小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) Photo: Kenta SAWANO1周目の中盤、先頭に立つ小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) Photo: Kenta SAWANO
スタート直後の平地では竹之内悠(Toyo Frame)(左)、小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)がリード Photo: Kenta SAWANOスタート直後の平地では竹之内悠(Toyo Frame)(左)、小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)がリード Photo: Kenta SAWANO
1周目の後半、先頭に立ち集団のペースを上げる武井享介(Team・FORZA) Photo: Kenta SAWANO1周目の後半、先頭に立ち集団のペースを上げる武井享介(Team・FORZA) Photo: Kenta SAWANO
サンドセクションを力強くクリアする沢田時(ブリヂストンアンカー) Photo: Kenta SAWANOサンドセクションを力強くクリアする沢田時(ブリヂストンアンカー) Photo: Kenta SAWANO
2周目、階段に沿ったセクションを上る沢田時(ブリヂストンアンカー)ら先頭集団 Photo: Kenta SAWANO2周目、階段に沿ったセクションを上る沢田時(ブリヂストンアンカー)ら先頭集団 Photo: Kenta SAWANO

 スタートが切られると3人に加え、武井亨介(TEAM・FORZA)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)のパックが直後に形成。後続との差は一瞬で開き、実力の差を見せつけた。5人はハイペースでレースを展開。拮抗しているかに見えたが、最初に遅れたのは前年王者の竹之内だった。

 先頭は1周目から沢田がリード。小坂と前田が続き、少し離れて武井が食い下がった。小坂は沢田を目視で捉えられる距離だったが、次第に離れて脱落。一方、前田は自らのペースを乱すことなく走り、小坂を猛追。程なくして前田が小坂を抜いて2番手に浮上した。

地元の宇都宮で開催さ れ、ブリッツェンの応援団の大声援に押され走る小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) Photo: Kenta SAWANO地元の宇都宮で開催さ れ、ブリッツェンの応援団の大声援に押され走る小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) Photo: Kenta SAWANO
表彰式で笑顔で話す沢田時(ブリヂストンアンカー) Photo: Kenta SAWANO表彰式で笑顔で話す沢田時(ブリヂストンアンカー) Photo: Kenta SAWANO

 「勝てると思ったのは朝から。勝つつもりで走った」とレース後にコメントした沢田は、その自信の通り安定したラップを刻み、トップの座を譲ることなくフィニッシュ。エリート1年目にして堂々たる走りで全日本選手権を制した。沢田は「勝負が決まったのはキャンバーのS字区間で、自分だけ乗車してクリアすることができた。1回だけだが差が開いた」と振り返った。「目標は世界選手権。エリート1年目でどこまで走れるかわからないが、自己最高の状態で臨む」と決意を表明した。

レース直後に健闘を称え合う沢田時(ブリヂストンアンカー)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Shusaku MATSUOレース直後に健闘を称え合う沢田時(ブリヂストンアンカー)と前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Shusaku MATSUO

 2位だった前田は「残り3周で小坂選手に追いついた。林のセクションは自分の方が速いと睨んでいた。予想通り、踏み込むと小坂選手が離れたので、あとはゴールを目指すだけだった。今日のレースは85点。ここ最近のレースの中では最も走れたが、全日本選手権に出場するからには優勝をしたかった」とコメント。3位の小坂はゴール後に「ペースが上がらず差を詰め切れなかった。勝たないと意味がない。今日は時が一番強かった」と悔しさを滲ませていた。

男子エリート結果
1 沢田時(ブリヂストンアンカー) 1時間2分22秒
2 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) +34秒
3 小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) +40秒
4 竹之内悠(Toyo Frame) +1分42秒
5 武井享介(Team・FORZA) +2分18秒

不安をかき消す「連覇」

 坂口のホールショットで始まった女子エリートレース。直近のレースで勝利を重ねてきた坂口に、他の選手がいかに対抗するかが注目された。序盤は武田和佳(Liv)が坂口に食らいつき、周回を重ねた。

レース序盤、先頭を走る坂口聖香(右)をマークする武田和佳レース序盤、先頭を走る坂口聖香(右)をマークする武田和佳

 一方、後続には今井美穂(Cycleclub.jp)が位置したが、キャンバーで転倒。メカトラブルを抱えている間に、與那嶺恵理(FORZA・YONEX)が今井をかわし3番手へと浮上した。

序盤のキャンバーで滑り、コースロープに絡む今井美穂 Photo: Kenta SAWANO序盤のキャンバーで滑り、コースロープに絡む今井美穂 Photo: Kenta SAWANO

 トップを走る坂口は順調に快走。武田は次第に離れ、坂口の独走となった。「あと何周でフィニッシュかわからなかったが、沿道の父からラップ数を教えてもらい初めて最終周回だとわかった。そこまで勝利を確信できなかった」と語った坂口。スタート前に不安を口にしていたが、大会連覇という結果で見事に払しょくしてみせた。

力強い走りで3位に入った與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO力強い走りで3位に入った與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO
2位に入ったものの、手を合わせるポーズでゴールする武田和佳 Photo: Kenta SAWANO2位に入ったものの、手を合わせるポーズでゴールする武田和佳 Photo: Kenta SAWANO

 実は、坂口は前日の試走の際、落車で肩を脱臼していた。セクションごとを100%の速さで走ろうとしてしまいミスを誘発したという。「本番は1つ1つの速さを抑えても、丁寧にセクションをクリアし、レースを組み立てよう」と父の雅彦氏と作戦を練った。坂口は「前夜は夜中に何度も起きてしまい寝られなかった。勝手にプレッシャーを感じてしまった。レース中も正直まとまらない走りだった。しかし、周りの支えやサポートもあり勝つことができた。ほっとしている」と笑みを見せた。

女子エリートを2連覇し感無量の表情を見せる坂口聖香 Photo: Kenta SAWANO女子エリートを2連覇し感無量の表情を見せる坂口聖香 Photo: Kenta SAWANO

 来季からオランダで走り、環境が変わることについては「世界選をまずは見据えたいと思う。ここでどう走れるかわからないが、指標となるはず。あまり期間はないが、全日本のような平常心でない状態ではなく、ベストな状態で臨みたい」とコメントした。

表彰台で笑顔を見せる、(左から)2位の武田和佳、優勝の坂口聖香、3位の與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO表彰台で笑顔を見せる、(左から)2位の武田和佳、優勝の坂口聖香、3位の與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO

女子エリート結果
1 坂口聖香(パナソニックレディース) 45分43秒
2 武田和佳(Liv) +38秒
3 與那嶺恵理(FORZA・YONEX) +2分22秒
4 今井美穂(Cycleclub.jp) +2分48秒
5 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) +3分25秒

冷静にマッチレース制した横山

 U23男子は横山と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)のマッチレースの様相を呈した。「互いに前に行かせたくないと張り合っていたらペースが上がり、2人の勝負になっていた」と織田が話した通り、抜きつ抜かれつの勝負が続いた。どちらかがミスをするたびにアタックを仕掛け、相手の足を削りあったという。

U23の序盤の階段沿いのセクションで争う横山航太(左)と織田聖 Photo: Kenta SAWANOU23の序盤の階段沿いのセクションで争う横山航太(左)と織田聖 Photo: Kenta SAWANO
横山航太(シマノレーシング)に最後で遅れを取り頭を抱えてゴールする2位の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Kenta SAWANO横山航太(シマノレーシング)に最後で遅れを取り頭を抱えてゴールする2位の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) Photo: Kenta SAWANO

 最終周回までもつれたレースは、後半のダートセクションで横山がペースアップ。織田が追いきれず、横山が逃げ切っての優勝を遂げた。織田は「毎回同じところでクリートキャッチをミスっていた。横山選手に見透かされていたと思う」と振り返り、横山も「織田選手がミスったのでそこを突いた。クリートキャッチが僕の方が速いのはわかっていた。冷静に見られたと思う」と勝負に徹した姿勢を明かした。

U23の表彰式で笑顔の横山航太(中央)。左は2位の織田聖 Photo: Kenta SAWANOU23の表彰式で笑顔の横山航太(中央)。左は2位の織田聖 Photo: Kenta SAWANO

男子U23結果
1 横山航太(シマノレーシング) 51分9秒
2 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) +7秒
3 日野竜嘉(ボンシャンス) +4分49秒
4 加藤健悟(臼杵レーシング) +5分9秒
5 藤田拓海(SNEL CYCLO CROSS TEAM) +5分9秒

 男子ジュニアは路面が凍る午前中にスタート。1周目からスリップダウンが相次ぎ、順位が目まぐるしく変わった。展開が落ち着きを見せた1周目の中盤、日野と江越海玖也(横浜高校自転車競技部)がレースをリード。

左から男子ジュニア2位の村上功太郎(松山工業高校)、優勝した日野泰静(松山城南高校)、3位の江越海玖也(横浜高校自転車競技部)左から男子ジュニア2位の村上功太郎(松山工業高校)、優勝した日野泰静(松山城南高校)、3位の江越海玖也(横浜高校自転車競技部)

 次第に江越がジリジリと遅れると、日野が独走した。2番手を走る江越だったが、3番手につけていた村上功太郎(松山工業高校)が背後に迫り逆転。日野は全日本チャンピオンジャージを獲得し、村上が2位、江越は3位でフィニッシュを果たした。

男子ジュニア結果
1 日野泰静(松山城南高校) 43分13秒
2 村上功太郎(松山工業高校) +38秒
3 江越海玖也(横浜高校自転車競技部) +1分22秒
4 積田連(Team GARNEAU CHAINRING) +3分39秒
5 梶鉄輝(伊丹市立伊丹高校) +3分47秒

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