国府田正司の「もう1つのツール」 stage1箱根で出会った「茄子男」にもらったパワー

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 オンラインゲーム会社に勤める国府田正司さんが2012年5月から、全国のネットカフェを訪問し、ゲームのPRやチャリティー募金を行う日本縦断自転車旅行「ツール ド ネットカフェ2012」に挑戦しています。「Cyclist」では“コーチャン”こと国府田さんに、旅の経験談を寄稿してもらい、随時掲載していきます。
「ツール ド ネットカフェ2012」公式サイト

いよいよツール・ド・ネットカフェに出発!いよいよツール・ド・ネットカフェに出発!

 ひょんなきっかけから趣味と実益を兼ねた企画を進行することになり、当惑しつつも「これで自転車に乗れる時間が増える…」と私は楽観的に考えていた。

 実際には、自転車は「面白い移動手段」というだけの、企画に添える彩りに過ぎず、あくまでも主菜は訪問したネットカフェで行うゲームイベント。だからこそ、「面白い移動手段」である自転車を目一杯楽しもう、そして苦しもう、と私は決めていた。正直、ツーリングというよりは、トレーニングのような意識で臨んでいた。

 5月23日午前10時30分。メディアの取材をこなし、50人近くの社員から見送りを受け、ややのぼせ気味にスタートを切る。心拍数は1分あたり100拍付近。実はレースのスタートよりも緊張していた。

いざ、「ツール・ド・ネットカフェ」へ

 初日は恵比寿から戸塚までの47km。最初の目的地は大森にあるネットカフェである。距離にして約10km。普段なら30分もかからない距離であるが、何しろ後ろには8kgほどのオモリを積んでいる。感触を確かめながら、スローペースで走った。

 自転車は、5年前初めて購入したスポーツバイクでもあり、今でも練習機として愛用しているJAMIS Satellite。「ツーリング向きのエントリークロモリロードバイク」というコンセプトなので、ダボ穴が付いており、そこにトピークのMTXトランクバッグDXPを装着し、2日分の着替えやノートPC、その他周辺機器を入れていた。その結果、車重は倍近くになり、当然、動きは不安定になる。しかし、それを御する面白さもあり、徐々に巡航速度は上がっていった。

ネットカフェのスタッフやお客様に温かく迎えていただく。本当にありがたいことですネットカフェのスタッフやお客様に温かく迎えていただく。本当にありがたいことです

 訪問する店舗には、もちろん事前に企画の説明とアポイントメントは取っている。しかし、お店の反応は「本当にチャリで来たんですね!!」というもの。それは「歓迎」と言うよりは、「驚き」や「呆れ」であったのかもしれない。

 何しろ、ネットカフェというインドアの極地に、ピチっとしたサイクルジャージとレーシングパンツに身を包んだ男が自転車でやってくるのだ。それも仕事で。酔狂以外のナニモノであろうか。ただ、改めて「本当にチャリで来たんですね!」と驚かれると、私はなぜか温かい気持ちになった。

 自転車趣味をある程度続けていると、自転車で遠くへ行くのも、傍から見れば変態的な格好でお店へ入るもの「当たり前」になってしまう。お店の方の反応は、まだスポーツバイクに関するすべてが新鮮だったころの気持ちを思い出させてくれた。

 また、ただでさえ目立ついでたちに加え、のぼり旗まで立てて走っているため、路上での注目度も抜群。「日本一周されてる方ですか?」と聞かれることもしばしばであった。

 「目立つこと」こそがこの企画の趣旨であるが、私自身、それに慣れていない。だが、目立つことがきっかけとなり、様々な人と交流することができる。それがわかり、旅を続けることの意義が、やっと見いだせてきたような気がした。

 翌5月24日は、戸塚から小田原までの49km。基本的には東海道線沿いに走るのだが、せっかくなので少し脇に逸れ、湘南海岸沿いを行く。

湘南海岸にて湘南海岸にて

 私は海のない栃木県出身のためか、海が近いと無条件で興奮してしまう癖がある。興奮はそのままペダルを回す力となり、江ノ島から茅ヶ崎までのほぼ一直線の道のりを、時速38kmから40kmほどで一気に駆け抜ける。

 途中、10台以上の自転車とすれ違った。週末ともなれば、もっと賑わうことであろう。普段練習している農道や山道とは違った華やかさ、開放感があり、非常に気持よく走ることができた。

自転車人生初の箱根越え自転車人生初の箱根越え

「茄子男」に遭遇!

 5月25日。まさに山場となる箱根越え。正月の箱根駅伝で見慣れた風景。自転車では初めて上る箱根は、どんなものであるのか。後悔と興奮が入り混じった感覚を覚えながら、箱根駅を通り過ぎる。

 平均勾配は約5%。きついところでも10%。距離は長いものの、「激坂」はない。しかし、重量級の自転車で上る初めての山である。心拍数を確認しながら、一定ペースで上る。時折、沿道からかかる声援に心の疲労が少し和らいだ。

 麓から1時間20分ほどかけ、芦ノ湖に到着。ちょうどここで、雨が降り始める。これまで快晴が続いていたが、ダウンヒル目前に雨とはついていない。冷えて風邪を引く前にインナーとジャージを着替え、レインジャケットを着る。

 三島方面への下り。落車だけは避けたいので、慎重に下る。

 7kmほど下ったところだろうか、反対側の歩道に「茄子」がいた。正確に言うと、茄子の着ぐるみを来た男が、自転車を押しながら芦ノ湖方面へ上っていたのだ! 当然、声をかけてみる。

茄子男との邂逅。無事につくばへ自転車と寄付金を届けたそうだ茄子男との邂逅。無事につくばへ自転車と寄付金を届けたそうだ

 茄子男S君は、兵庫県から竜巻被害のあったつくば市まで、自転車を自走で届けに行く最中。自転車は、古いママチャリである。相当数の自転車が竜巻で飛ばされたという報道を目にし、自分にできることは何か…と考え、行動に移したそうである。

 なかなかの意義ある無茶旅。寄付金を募りながらの旅であったため、目立つために茄子の着ぐるみを着用して走っているらしく、効果は上々という。

 しばし話をした後、お互いの健闘と安全を祈りS君と別れる。走り方や趣旨は違えど、同じく「自転車を通じて何かをしよう」と行動している者同士、シンパシーを感じる。一方的かもしれないが、企画を続けていくためのパワーを貰うことができた。

のぼり旗に増えていく寄せ書きは、ペダルを回すパワーに!のぼり旗に増えていく寄せ書きは、ペダルを回すパワーに!

 5月26日は富士市から静岡市まで、そして最終日となる5月27日は、静岡市から浜松市まで。5日間で計283.87kmを走った。プロモーション活動を行いながらのツーリングは、思っていたよりも大変なものだったが、ただ走るだけではない、ただ営業回りをするだけではない何か。人々との出会いや、狭いようで広い日本各地の土地そのものとの出会いに意義を感じることができる旅であった。

 通常業務と並行させながら12月まで旅を続けていくことに、正直大きな不安はある。だが、旅が終わった時、自分がどうなっているのか。どう変わっているのか。楽しめる部分は最大限楽しみ、前向きに旅を続けていこう。そう、決意を新たにした「第1ステージ」であった。

国府田正司国府田正司(こうだ まさし)
2008年よりダイエットのためロードバイクに乗り始め、現在では実業団レースなどへ積極的に出場。オンラインゲーム会社「NC Japan」社員。日本全国のインターネット・カフェを巡る企画を思いつき、単身、自転車旅に出る。好きなゲームは「タワー オブ アイオン」、好きな補給食はアンパン。特技は愛娘と特訓した「スマイルプリキュア!」ダンス。1977年生まれ、栃木県在住。

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