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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<187>充実した戦力でビッグレース勝利へ BMCレーシングチーム 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 国際自転車競技連合(UCI)による2017年のチーム審査がおおむね完了し、トップカテゴリーとなるUCIワールドチームがほぼ出揃った。タイミングを同じくして、ワールドチームの多くが来季陣容を固め始めており、次なるシーズンに向けた活動へとシフトしている。そうした中から、今回はプロトン屈指のビッグチームであるBMCレーシングチームをピックアップ。五輪金メダリストからグランツールレーサーまで、幅広く戦力の充実を図っていることをお伝えしたい。

戦力充実のBMCレーシングチーム。リッチー・ポートを中心にグランツールでの上位進出を図る =ツール・ド・フランス2016第17ステージ、2016年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA戦力充実のBMCレーシングチーム。リッチー・ポートを中心にグランツールでの上位進出を図る =ツール・ド・フランス2016第17ステージ、2016年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

ヴァンアーヴルマートが国内最優秀選手に

 BMCレーシングチームの2016年は、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー)の活躍に尽きるといってもよいだろう。2月下旬に行われたセミクラシック、オムループ・ヘット・ニュースブラッド(ベルギー、UCI1.HC)で初優勝すると、3月のティレーノ~アドリアティコでは山岳ステージの中止などで巡ってきたチャンスをものにし総合優勝。ツール・ド・フランスでは第5ステージで大逃げを決めて勝利し、初めてマイヨジョーヌに袖を通した。山岳での粘りもあり3日間ジャージを着用した。

 その勢いは、8月に行われたリオデジャネイロ五輪へと続いた。テクニカルなコースに多くの選手たちが悪戦苦闘したなか、終盤の競り合いを制して金メダルを獲得。クライマーやステージレーサーが上位を占めようかという戦いで、クラシックレースで培ってきた駆け引きの巧みさが大いに生かされた栄冠だった。

 その後も9月のグランプリ・シクリスト・ド・モンレアル(カナダ)で優勝、ほかにも上位進出が多数と、獅子奮迅の働きを見せた1年だった。

リオ五輪男子ロードレースで金メダルを獲得したフレッヒ・ヴァーンアーヴルマート。チームにとっても2016年のハイライトとなった =リオデジャネイロ五輪男子ロードレース、2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADAリオ五輪男子ロードレースで金メダルを獲得したフレッヒ・ヴァーンあーヴルマート。チームにとっても2016年のハイライトとなった =リオデジャネイロ五輪男子ロードレース、2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これらの走りが評価され、同国の年間表彰である「フランドリアン・トロフィー」に4年連続で選ばれた。

シーズン前半はクラシックに照準を定めるフレッヒ・ヴァンアーヴルマート。トレーニングでの負傷はほぼ癒えている =ツール・ド・フランス2016第7ステージ、2016年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADAシーズン前半はクラシックに照準を定めるフレッヒ・ヴァンアーヴルマート。トレーニングでの負傷はほぼ癒えている =ツール・ド・フランス2016第7ステージ、2016年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 31歳と、キャリアでも最も脂の乗った時期に差し掛かっている。このオフは、マウンテンバイクトレーニング中に落車し、左足首を骨折。手術を行ったが、すでにトレーニングは再開しており、予定通りに2017年シーズンを迎えられる見通し。2月下旬から始まる石畳系のレースでエンジンを本格始動させ、3月のミラノ~サンレモ、さらには北のクラシックに臨む。今年はツールや五輪へのリスクを考慮しパリ~ルーベを回避したが、来シーズンは2年ぶりに参戦すると見られる。

 北のクラシックでは2014年のツール・デ・フランドル2位が最高で、優勝には届いていない。自国最大の栄誉であるフランドル、クラシックの女王であるルーベは、ビッグターゲットとして視野に入ってくる。

 そして、9月にノルウェー・ベルゲンで行われるUCIロード世界選手権は、彼が得意とする登坂力とスピードが要求されるアップダウンコース。マイヨアルカンシエルという勲章は、シーズン後半の大きな目標となるだろう。

ポートを中心にグランツール戦線を賑わす

 豊富な資金を生かした戦力の構築は、グランツールでの活躍にも直結する。

2017年はツールの総合表彰台をうかがうリッチー・ポート(中央)。左はWエースの一角となるティージェイ・ヴァンガードレン =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA2017年はツールの総合表彰台をうかがうリッチー・ポート(中央)。左はWエースの一角となるティージェイ・ヴァンガードレン =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その筆頭は、リッチー・ポート(オーストラリア)。今年からチームに加入すると、ツアー・ダウンアンダーで総合2位と好スタート。以降、ステージレースでは確実に上位進出し、最大目標であったツールで総合5位と自身初のトップ10入り。山岳ステージでは、総合優勝したクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)と肩を並べるほどの強さを見せただけに、大会序盤でのトラブルによる遅れがなければさらに上を狙えたと見ることもできる。

 リオ五輪での落車負傷により早々のシーズン終了となったが、次のシーズンに向けて十分に休養をとった。今年同様にツールに照準を定める。いつもより山岳の比重が高くなる3週間は望むところ。タイムトライアルも上位で走ることが計算できるだけに、目指すは総合表彰台となる。

ティージェイ・ヴァンガードレンもグランツールではエースを務める。近年の不運を払拭できるか =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADAティージェイ・ヴァンガードレンもグランツールではエースを務める。近年の不運を払拭できるか =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ポートと並んでチームを引っ張るのは、ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)。2012年、2014年とツール総合5位の実力者は、ここ2年は不運もあって上位進出を果たせていない。傾向として、ツール前のレースで調子が上がりすぎてしまいがち。28歳で迎える来季はピーキングが課題となってくる。ポートとヴァンガードレン、2人のツール総合上位入りが本来のチーム目標。両者とも共闘を歓迎しているだけに、今度こそ結果にこだわりたい。

 2人以外にもエースクラスがそろう。ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)は、今シーズンこそツールでアシストに徹したが、2014年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合9位、2015年のジロ・デ・イタリア総合8位の実力者。堅実な走りが持ち味で、エースでもアシストでも安定した走りができる。

ベテランのサムエル・サンチェスもチームと契約を更新。若い選手へのサポートに意欲的だ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ、2016年8月29日 Photo: Yuzuru SUNADAベテランのサムエル・サンチェスもチームと契約を更新。若い選手へのサポートに意欲的だ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ、2016年8月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 大ベテラン、サムエル・サンチェス(スペイン)もチームと契約を更新。2月に39歳となり、このところ毎年のように現役最終シーズンになるのではとの噂も飛び交うが、本人のモチベーションは保たれているようだ。2008年北京五輪で金メダルを獲得し、グランツールで総合優勝争いに加わっていた時期と比べると、その走りに陰りは見られるが、経験を生かした走りや若い選手へのサポートでまだまだ貢献はできる。

 さらに強力な援軍も加入する。ティンコフ・サクソやチーム スカイでアシストを務めてきたニコラ・ロッシュ(アイルランド)がチームの一員となる。8月の移籍市場開放早々に発表され、ロッシュ自身も「ポートたちを支える」と意欲的。こちらも総合エースを務められるだけの実力の持ち主だが、新天地でどのようなレースプログラムとなるのか注目したい。

エルミガーら5人が新加入

 現時点で移籍加入が決まっている選手は、ロッシュも含め5人。なかでも実績で群を抜くのが、イアム サイクリングから加わるマルティン・エルミガー(スイス)の存在だ。

イアム サイクリングから加入するマルティン・エルミガー。北のクラシックではフレッヒ・ヴァンアーヴルマートらとともに強力チームを形成する =ツール・デ・フランドル2015、2015年4月5日 Photo: Yuzuru SUNADAイアム サイクリングから加入するマルティン・エルミガー。北のクラシックではフレッヒ・ヴァンアーヴルマートらとともに強力チームを形成する =ツール・デ・フランドル2015、2015年4月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 来シーズンでプロ17年目を迎えるエルミガー。9月には39歳となるが、その走りはまだまだ健在。ここまでのキャリアではアシストとして走ることが多いが、2015年のパリ~ルーベではヴェロドロームまで優勝争いを演じて5位になるなど、展開次第では上位を狙う走りもできる。まずはクラシックレースでヴァンアーヴルマートやダニエル・オス(イタリア)を支えることになるが、チャンスがあれば自ら勝負に出ることもあるだろう。実力のみならず、ベテランとして若い選手に走り方を伝えるなど、精神的支柱としての役割にも大きな期待が寄せられる。

チームにとって、シーズン後半のターゲットはチームTTでの世界王座奪還だ。今年はUCIロード世界選手権で2位に終わった =UCIロード世界選手権男子チームタイムトライアル、2016年10月9日 Photo: Yuzuru SUNADAチームにとって、シーズン後半のターゲットはチームTTでの世界王座奪還だ。今年はUCIロード世界選手権で2位に終わった =UCIロード世界選手権男子チームタイムトライアル、2016年10月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 クラシック、グランツールの総合をメインターゲットに据えつつも、シーズン後半はUCIロード世界選手権でのチームタイムトライアル王座奪還も狙うことだろう。昨年まで2連覇を達成したが、今年は2位と敗れた。ローハン・デニス(オーストラリア)やマヌエル・クインツィアート(イタリア)らを中心に、秋にも照準を定める。

 なおチームは、12月9日からスペイン南部のデニアでプレシーズントレーニングキャンプを開始。新シーズンに向けた準備が本格化する。

BMCレーシングチーム 2016-2017 選手動向

【残留】
トム・ボーリ(スイス)
ブレント・ブックウォルター(アメリカ)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
ローハン・デニス(オーストラリア)
シルヴァン・ディリエ(スイス)
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク)
フロリス・ゲルツ(オランダ)
ベン・ヘルマンス(ベルギー)
シュテファン・キュンク(スイス)
アマエル・モワナール(フランス)
ダニエル・オス(イタリア)
リッチー・ポート(オーストラリア)
マヌエル・クインツィアート(イタリア)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ)
サムエル・サンチェス(スペイン)
ミヒャエル・シャール(スイス)
マヌエル・センニ(イタリア)
ディラン・トゥーンス(ベルギー)
フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー)
ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)
ロイック・ヴリーゲン(ベルギー)
ダニロ・ウィス(スイス)

【加入】
マルティン・エルミガー(スイス) ←イアム サイクリング
キリアン・フランキニー(スイス) ←BMCデヴェロップメントチーム(アマチュア)
ニコラ・ロッシュ(アイルランド) ←チーム スカイ
マイルズ・スコットソン(オーストラリア) ←チーム イルミネイト
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン) ←モビスター チーム

【退団】
ホンダルウィン・アタプマ(コロンビア) →TJスポーツ・ランプレ
マルクス・ブールクハート(ドイツ) →ボーラ・ハンスグローエ
フィリップ・ジルベール(ベルギー) →クイックステップ フロアーズ
テイラー・フィニー(アメリカ) →キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム
ペテル・ヴェリトス(スロバキア) →引退
リック・ツァベル(ドイツ) →チーム カチューシャ・アルペシン

今週の爆走ライダー-ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 かつてグランツールでトップ10を経験しているだけに、2016年シーズンのリザルトだけを見れば少し物足りない印象かもしれない。だが、ツールでは序盤にリードを広げられたポートの総合順位を引き上げ、直後のリオ五輪では一気のペースアップでメイン集団を崩壊させるなど、随所で強さを発揮した。アシストとしてインパクトを残した今年だったが、迎えるシーズンはそれだけでは満足するわけにはいかない。

2016年はアシストとしての貢献ぶりが光ったダミアーノ・カルーゾ(右)。リオデジャネイロ五輪でも印象的な働きを見せた =2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADA2016年はアシストとしての貢献ぶりが光ったダミアーノ・カルーゾ(右)。リオデジャネイロ五輪でも印象的な働きを見せた =2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 大きなモチベーションとなるものが控えているからだ。2年ぶりの出場を狙うジロは、大会前半に地元のシチリア島でのステージが待ち受ける。その初日は名峰・エトナ火山での頂上フィニッシュ。島内を走るステージだけで総合争いの大勢が決まるわけではないが、故郷の人たちによい走りで凱旋したいという思いは、トッププロであれば誰もが抱く心境だ。

 18歳まで地元のサイクリングチームで走り、イタリアでの小さなチームでの活動を経て、トップシーンで活躍する現在に至った。成長した姿を見せるべく、地元での快走から勢いに乗って総合上位進出を果たしたい。

 同時に、チームリーダーとしての役割も求められるシーズンとなる。グランツールで総合を意識して走るうえで、アシストたちとの信頼関係を築いていくことができるかという点でも、真価が問われる1年となりそうだ。

2017年は地元シチリア島を走るジロ・デ・イタリアに照準を定めるダミアーノ・カルーゾ。グランツールトップ10返り咲きを誓う =イル・ロンバルディア2016、2016年10月1日 Photo: Yuzuru SUNADA2017年は地元シチリア島を走るジロ・デ・イタリアに照準を定めるダミアーノ・カルーゾ。グランツールトップ10返り咲きを誓う =イル・ロンバルディア2016、2016年10月1日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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