国が変わればバイク事情も変わる街のMTB店でドイツ流のシーズンエンドパーティーを体験 BBQからナイトライドまで

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 ドイツでのスポーツ自転車の主流は、マウンテンバイクだ。街の自転車店にも、当然マウンテンバイクのラインナップが多くなる。ドイツ中西部のドルトムント郊外に位置する自転車店「ロイバー・バイク」で11月26日、試乗やナイトライドを含む小さな催しがあると聞き訪れることに。ロイバー・バイクで店で提供された冬の風物詩の香辛料入りホットワイン“グリューワイン”を手に、ドイツのマウンテンバイク事情に触れた。

ドイツはマウンテンバイクが主流。ドルトムントにもトレイルが豊富にあり、自転車店のイベントでナイトライドが催された Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAドイツはマウンテンバイクが主流。ドルトムントにもトレイルが豊富にあり、自転車店のイベントでナイトライドが催された Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

電動MTBも人気

ドルトムントの自転車店「ロイバー・バイク」の外観 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAドルトムントの自転車店「ロイバー・バイク」の外観 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 以前は居酒屋やパン屋がテナントとして営業してきたこともあるという2階建て一軒家の自転車店は、バイクが覗くショーウィンドウが目印。この日は、店先の駐車スペースに試乗車がずらりと並んでにぎやかな雰囲気を出していた。自転車のラインナップは、マウンテンバイク中心。よく見ると、電動マウンテンバイク(E-MTB)も混ざっていた。

 ロイバー・バイクのオーナー、フランク・ロイバーさん(Frank Reuber)に聞くと、「一番の売上は街乗りタイプの自転車だけど、Eバイク(電動アシスト自転車)もいまではかなりの売上がある」のだという。ドイツでの2015年の自転車総販売台数は、2位のオランダに倍の差をつけ欧州一。拡大するEバイク市場の影響も大きく、Eバイクは国内自転車市場全体の12.5%を担うという(2015年現在)。E-MTBは、そんなEバイク市場で着実に人気が高まってきていて、Eバイクへ若年層を惹きつける鍵としても注目されているそうだ。

試乗車として並んだE-MTBのブランド「Moustache」(ムスタッシュ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA試乗車として並んだE-MTBのブランド「Moustache」(ムスタッシュ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
プロMTBライダーのトビアス・ヴォッゴン選手(右)と談笑するロイバー・バイクのオーナー、フランク・ロイバーさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAプロMTBライダーのトビアス・ヴォッゴン選手(右)と談笑するロイバー・バイクのオーナー、フランク・ロイバーさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 試乗車が並ぶ奥には、ソーセージやステーキを焼きまくるバーベキュースペース。さらにグリューワインや冷え冷えのビールが用意され、来場者がそれぞれ会話を楽しんでいた。筆者が何も手にせず写真を撮ったり観察したりしていると、「ソーセージどう?」とすかさず声がかかった。イベントの主旨は「シーズン終わりを祝う集い」とのことだったが、試乗に勤しみ、店内で寒さに耐え得るウェアやアクセサリーを物色している人を見るにつけこれが乗り納めというオーラは微塵も感じられない…筆者が尋ねると、ロイバーさんは「わたしもまだまだ乗りに出かけるつもりだよ」と手にしたビールを隠しておどけた。

訪れた客に焼きすぎず冷めすぎずと絶妙なタイミングで提供されたソーセージとステーキ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA訪れた客に焼きすぎず冷めすぎずと絶妙なタイミングで提供されたソーセージとステーキ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ステーキをパンに挟み込んで、即席ハンバーガーのできあがり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAステーキをパンに挟み込んで、即席ハンバーガーのできあがり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
店内2階。マウンテンバイクが楽しそうに並んでいた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA店内2階。マウンテンバイクが楽しそうに並んでいた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
店内1階の一部。古いオーブンは、暖炉として現役だ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA店内1階の一部。古いオーブンは、暖炉として現役だ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
店内に並んだヘルメット Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA店内に並んだヘルメット Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

子供の歴史を紡ぐ自転車店

「きょうは乗らないで飲むよ」とフランク・ロイバーさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA「きょうは乗らないで飲むよ」とフランク・ロイバーさん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 ロイバー・バイクに訪れる客は老若男女。日曜と水曜に同店を拠点とするサイクリングクラブがライドへと出かけるが、クラブの年齢層は18〜60歳と幅広いという。この日も、赤ちゃんや幼児、自転車に乗り始めた子供を連れた両親や、カップルが多く訪れていた。見知った仲間や、初めて会ったという人たちもいたが、皆楽しそうだ。

 店まで片道16kmという距離を自転車でやってきた親子3人は、お父さんが女の子を牽引し、男の子は自分の自転車で乗りつけていた。このお父さん、ロイバー・バイクですでに何台も購入している“上顧客”なのだという。子供の自転車の歴史もこの店からスタートするんだろうなぁと感慨深く眺めていると、男の子の誇らしげな様子が目に入った。よく見るとお父さんがこの日乗っていたのは、E-MTB。男の子だけが100%自分のちからでサイクリングをしてきたと言える。カメラを構えると男の子は、えへんと胸を張った。

元気いっぱい、胸を張って写真撮影に応じてくれた男の子と、その妹、お父さん。子供用マウンテンバイクを興味津々に見ていたけれど、サンタさんがくれるかな? Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA元気いっぱい、胸を張って写真撮影に応じてくれた男の子と、その妹、お父さん。子供用マウンテンバイクを興味津々に見ていたけれど、サンタさんがくれるかな? Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 街の自転車店は、そうやって子供の成長を支え、社会を繋ぐ役割を果たしていく。ロイバーさんは、「新聞広告で特価表示に目がくらんで大手チェーンやショップへ買いに行ってしまうビギナーも少なくない。だけどそうやって買った直後に、『●●の調子がおかしい』と店にやってくるんだ。大手のように大量に広告は打てないけれど結果的にうまくいっているよ」と笑顔で語った。

落ち着いた外観の店も、この日は屋外にマウンテンバイクをレイアウトして一見して何をしてるか分かるように Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA落ち着いた外観の店も、この日は屋外にマウンテンバイクをレイアウトして一見して何をしてるか分かるように Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
オーナーの奥様が手作りで用意したケーキの数々。「ご自由にどうぞ」と振る舞われた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAオーナーの奥様が手作りで用意したケーキの数々。「ご自由にどうぞ」と振る舞われた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
レジカウンターの向こうの棚にもサンタがぞろぞろ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAレジカウンターの向こうの棚にもサンタがぞろぞろ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

自在に駆けるMTB

ドルトムントと同じ州のデュッセルドルフで、ライン川沿いの石畳の上をマウンテンバイクで走るライダー。デュッセルドルフは2017年ツール・ド・フランスの開幕地になる(2016年7月撮影) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAドルトムントと同じ州のデュッセルドルフで、ライン川沿いの石畳の上をマウンテンバイクで走るライダー。デュッセルドルフは2017年ツール・ド・フランスの開幕地になる(2016年7月撮影) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 ドイツでロードバイクやピストバイクが安定的に生息するのは、人口350万人と東京の1362万人には到底及ばないもののドイツ最大の都市ベルリンや、南部の中心ミュンヘンといった街の真ん中。筆者は日本から持参したロードバイクを日頃ドルトムントで愛用しているが、ロードバイカーが集まる練習場所へ行かなければ出会うことはほとんどないと言っていい。

 真っ先に挙げられる理由は、道路のコンディション。ドイツの舗装路はきれいで走りやすく、どの道もサイクリングコースになり得る。ただし案内標識が立ちサイクリングコースとして設定されている道には、未舗装路がたびたび登場する。きちんと整備されているが舗装路用のタイヤではやはり心もとない。この未舗装路は街路樹沿いや森を抜けるコースに多く、自然をそのまま残すというドイツのメンタリティーを感じさせる。また石畳も忘れてはならない。街なかを効率よく巡回するドルトムントの自転車警察が乗るのは、やはりマウンテンバイクだった。

ドルトムント市内を走行する自転車警察 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAドルトムント市内を走行する自転車警察 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
トビアス・ヴォッゴン選手(右)が指導して出発前にライトの点灯確認 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAトビアス・ヴォッゴン選手(右)が指導して出発前にライトの点灯確認 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 そしてドイツには、マウンテンバイクに欠かせない良質なトレイルが豊富にある。今回ロイバー・バイクで急きょ行なうことになったナイトライドでは、ドイツのライトブランド「レッドレンザー」のヘッドランプが提供され、さらに同社がスポンサーにつくプロライダー、トビアス・ヴォッゴン選手(Tobias Woggon)が同行。闇につつまれた柔らかなトレイルを、ヘッドランプと共に駆け抜けた。参加者らは、走行距離30km程度と短くてもダウンヒル4つを含むコースを思い切り楽しんだという。

ヘルメットにセットされたえレッドレンザーのLED2灯ライト「XEO 19R」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAヘルメットにセットされたえレッドレンザーのLED2灯ライト「XEO 19R」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「XEO 19R」の大きなバッテリーを後頭部にセットした参加者 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA「XEO 19R」の大きなバッテリーを後頭部にセットした参加者 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
レッドレンザーのヘッドランプ「XEO 19R」を味方に夜闇を駆けた参加者ら Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAレッドレンザーのヘッドランプ「XEO 19R」を味方に夜闇を駆けた参加者ら Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
上気した顔と体から立ち上る湯気がトレイルでの楽しさを物語っているようだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA上気した顔と体から立ち上る湯気がトレイルでの楽しさを物語っているようだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
雪の上で天使をつくるのと同じ要領で枯れ葉をかく参加者 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA雪の上で天使をつくるのと同じ要領で枯れ葉をかく参加者 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

◇         ◇

 こういった街の自転車店を知ることができたのは、今年5月の取材で初めてマウンテンバイクに乗ってから、マウンテンバイクライフをスタート機会をうかがっていた筆者には朗報。今回はトレイル“見学”へクルマで移動したが、次回は自分もサドルの上から景色を見渡したい。

シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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