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栗村修の“輪”生相談<89>17歳男性「落車のトラウマを克服するためにはどうしたらいいですか?」

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先日、ロードバイクに乗って坂を下っているとき、滑って落車してしまいました。たくさん怪我をして、以後ロードバイクに乗ることが怖くなって乗ることができません。

 ですがロードバイクに乗りたいという気持ちはあります。

 なので、そのようなトラウマを克服するためにはどうしたらいいかを教えて頂きたいです。

(17歳男性)

 自転車って、残念ながら転ぶ乗り物なんですね。だから、ママチャリまでを含むと、転んだ経験を持たない人はまずいないと思うんです。その意味で、誰にでも当てはまる問題ですね。

 転んでもすぐに立ち上がって走り出すプロは、落車が怖くないのかと聞かれることがあります。そう見えるのも無理はありませんが、程度の差こそあれ、怖いんですよ。プロでも。

 トラウマという言葉が適しているかは微妙ですが、僕の経験上、いちど落車すると、不思議とその後も落車が続くんです。なぜか。

 ひとつは、精神的な恐怖心でしょうね。自転車って、二輪だし、バランスが大事な乗り物じゃないですか。ブレーキングも繊細です。でも、落車をすると恐怖が残りますから、体がこわばるんじゃないでしょうか。体が固まっていると微妙なバランスをとりにくくなりますから、バランスを崩したりして、それが落車につながる、と。それが一つ。

 今お話ししたのは精神的なものでしたが、もうひとつは、フィジカル的なもの。すなわち、落車による肉体的ダメージが、さらなる落車を引き起こすという可能性です。

 骨折など大けがまで至らなくても、落車の衝撃で骨盤など、いわば体のフレームに微妙な歪みが生じることがあると思うんです。すると、やはりバランスが崩れ、落車に繋がってしまう。

 あと、落車の瞬間には、体の一部に極端に力を入れますよね。そのことによって、むち打ちのように、直接衝撃が加わらない部分にも、また別のダメージが残ることがあるはずです。結果、やはりバランスを崩してしまう。

自転車に落車はつきもの。トッププロといえど落車の危険とは常に背中合わせだ(ジロ・デ・イタリア1995) Photo: Yuzuru SUNADA自転車に落車はつきもの。トッププロといえど落車の危険とは常に背中合わせだ(ジロ・デ・イタリア1995) Photo: Yuzuru SUNADA

 まとめると、落車はメンタルにもフィジカルにもダメージを残して、体のあちこちにアンバランスな状態を作りだすと思うんです。自転車は左右のバランスだけでなく、ブレーキングタッチのバランスとか、とにかくバランスが大切な乗り物ですから、これは致命的ですね。

 ツール・ド・フランスのタイムトライアルなどを見ていても、いちど転んだ選手が立て続けに転んだりするじゃないですか。あれも、似た現象だと思います。

 さて、トラウマの克服というご質問でした。

 ここまでお話してきた理由により、今の質問者さんは転びやすい状態にあります。なので、注意してください。プロではない方なら、極論、1週間くらいは自転車から離れていいと思うんです。すると、上で触れた、続けて落車を起こす要因のうち、フィジカル的なものはだいぶ癒えるでしょうから。

 しかし問題はトラウマです。1週間で消えるかというと、それはないでしょうね。中には平気な人もいるかもしれませんが…。

 トラウマ克服のために、できるだけ安全を確保したうえで、あえて「落車に近づく、極端な」状態を経験してみてはいかがでしょうか。こう言うとなにか、とんでもないことをするように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。ごく基本的なテクニック練習です。でも、クローズされた安全なところでやってくださいね。

スラローム走行は自転車操作の基本のチェックに役立つ Photo: Shusaku MATSUOスラローム走行は自転車操作の基本のチェックに役立つ Photo: Shusaku MATSUO

 まず、極端なブレーキング。いわゆるフルブレーキです。細かいやり方は、あちこちの本や雑誌にあるので、割愛しますね。

 次に、極端なグリップ。スラローム走行です。子供向けの自転車教室などでやっていますよね。

 そして、極端な接触状態。ブレーキングの失敗やグリップを失うことと並び、接触は落車の主要な原因です。それに近い状態を作るんです。

 方法は、これも結構知られたトレーニングですが、肩組走行です。2人で肩を組んで走るんです(繰り返しになりますが一般公道ではできませんので広い駐車場など安全なところで十分に気をつけて行ってください)。

 こういうトレーニングで、あえて極端な状態での走行に慣れれば、通常走行時のトラウマは軽減されると思います。もちろん、落車後は転びやすい状態が継続しているので気を付けることは大前提ですが。

 ほかに、余裕があれば、オフロードを走るシクロクロスやMTBなどで、滑ることに慣れるのも手ですね。どちらかというと、ロードバイクに近いシクロクロスがいいと思いますが、いずれも効果的です。自信がつき、トラウマ克服につながると思いますよ。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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