台湾のサイクリストに会いに行こう!<3完>予定変更で新たな発見も 日向涼子さん「雨が縮めた台湾との距離」
あいにくの雨に見舞われ、やむなく当初の予定を変更することになったカペルミュール主催のイベント「台湾ファンライド」。難易度の高いコースからの変更に、残念な思いと安堵の気持ち半々の日向涼子さんでしたが、そう甘くはないのが台湾です。独特の地形や、日本でいう「旧道」のような道路に面喰いながら、初めての台湾を走りました。そして次第に霧が立ち込める山頂で、日向さんは台湾ならではの気の利いたサービスを体験します。最終回となる今回も、日向さんのレポートでお届けします。
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普通の坂が“玄人向け”

10月9日、ライドイベント当日。天候は雨。当初予定をしていた距離132km・累積獲得標高3500m超のコースから「カフェを目指す強度低め」コースに変更することになりました。ちょっと安心…したのも束の間、スタート直後からいきなり山岳がスタートしました。
「アップなし? しかも勾配きつい!」
早速、序盤でバラけてしまいましたが、しばらくすると平坦に近い緩坂が現れました。そしてまた急坂…。勾配の変化が激しく、フロントギアの変速が慌ただしい。最近、イベント続きで輪行しまくっているせいか、ディレイラーの調子がよくないので慎重にギアを変えて走ります。

路面状況や斜度の緩急のつき具合は、日本の旧道に似ているように感じました。ある意味、玄人向けです。
「強度が低くてこれかあ…。台湾の人はヒルクライムが得意なんだろうなあ」と思いながら走っていると、「頑張ってー!」との声とともに私の横を抜けてゆく車が。
「ん?」
さらに後続車は窓を開けて私を撮影しています。集まった全員が走ったわけではなく、半数は雨なので自転車はやめて車で移動することにしたみたい(笑)。私にとっては、“めったに上れない山”ですが、台湾の人にとっては“いつもの山”ですから、当然かもしれません。
そう、台湾では街中からすぐのところにトレーニングにちょうど良い山があるのです。私は自宅から山まで、自走すると片道2時間以上かかるところに住んでいるので、思わず「うらやましい~!」と走りながら叫んでしまいました。
台湾で多いサイクリング用配車サービス
台湾の景色と勾配の変化を楽しみながら上っていると、山頂に近づくにつれ霧が…。カフェはまだ先にあるとのことで、下りの寒さを想像すると憂鬱です。ところが、山頂に到着すると大きな車が待機していました。
「今日はここまでにしましょう」と、到着した人から自転車を積んでいくではないですか。そして、各々が車に乗り込みカフェへ移動。濃霧の中で下山するのは気が重かったので助かったけど…、これは一体?

「あの車は旅行会社のものですか?」と尋ねると、「台湾では個人でサイクリング用の配車サービスをしている人が少なくないんですよ」とのこと。例えば、仲間同士でヒルクライムをして帰りは車に載せて下山するなど、ちょっとしたイベントでも気軽に利用することが多いそうで、そういったビジネスが成り立つそうです。
今回はカフェタイムが終わった頃にお願いしていたそうですが、ドライバーさんが機転を利かせて早めに山頂で待っていてくれたんだとか。こういったフットワークの軽さは個人サービスならではかもしれませんね。日本でもこうしたサイクリストに優しいビジネスが出てくることを願います。
雨のおかげで?サイクリストたちとたっぷり交流

到着したお店は、イチゴのスイーツとワッフルが人気のカフェ。国は違えど、ライドのごほうびは大切です。ワッフルとカプチーノで雨で冷えた体を温めつつ、ほっと一息。
お店の端でカペルミュールの商品を並べた途端、まるでバーゲン会場かのような盛り上がりに! カペルミュールは台湾でも人気のブランドで、私が着用していた台湾限定ジャージも多くの注文が入ったそうです。
一段落したところで、「你好(ニーハオ)」と皆さんに挨拶をしました。その途端、会場からどよめきが…。台湾では多くの人が日本語か英語を話すので会話には困りませんが、自分たちが使っている言葉を外国人が話すと嬉しいのは万国共通のようですね。
よっぽど発音が良かったのか(笑)、他には、「多謝(ドオシャー)」「好吃(ハォチー)」くらいしか知らないのに、「台湾語が上手ですね」と言っていただき、そこからはさらに距離が近づいたように感じました。

昼が近づくにつれ、皆…特に男性がそわそわし始めました。台湾では午後は家族サービスのために時間を使うらしく、帰宅時間が気になっていたようです(「休日も家のことをほったらかして!」と言われている日本のお父様方には耳が痛い話でしょうか?)。
最後には参加者全員に限定キャップをプレゼントし、記念撮影をして解散しました。
早くもまた行きたい台湾
結局、翌日に予定していた朝ライドも雨で中止となりました。ただ、走りだけで見れば物足りないですが、その分台湾の人達やグルメ、交通事情やサービスを知る時間が得られたのは、初回にしては上出来かもしれません。
台湾グルメは満腹を超えた量が出てくるけれど、日本人の感覚としては、この腹八分目がちょうどいい。物足りないくらいの方が「また行きたい!」ってなりますしね。
案の定、「自転車を持って台湾に行こうよ」と仲間に声をかけているところです(笑)。
(写真提供:ウエイブワン)