創業時からの夢の実現へ「自転車を世界で最もポピュラーなスポーツに」 ラファのモットラムCEOが描く次なるステージ

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 ファッション性と機能性を併せ持つサイクルウェアで高い支持を得ている英国のブランド「Rapha」(ラファ)。ECを販売の主軸とする一方で「クラブハウス」と称する直営店も世界12カ国まで拡大し、さらに来年に向けて2カ国で新規店舗を予定している。一方で1年前に立ち上げた会員組織「Rapha Cycling Club」の会員は全世界で8000人を超えており、その勢いは止まるところを知らない。11月に来日した創業者のSimon Mottram(サイモン・モットラム)CEOに今後の展望を語ってもらった。

ラファの創業者、サイモン・モットラムCEO(撮影場所=ラファ・サイクルクラブTOKYO) Photo: Seishiro TAKIラファの創業者、サイモン・モットラムCEO(撮影場所=ラファ・サイクルクラブTOKYO) Photo: Seishiro TAKI

ブランドは「作る」ものでなく「生まれる」もの

本社となるラファ・サイクリングクラブロンドン ©Rapha本社となるラファ・サイクリングクラブロンドン ©Rapha

 「ブランドとは会社の中から生み出されるもの」─モットラム氏がラファを創業する以前、コンサルティングの仕事をしていたときから考えていることだ。

 「広告やキャッチーなコピーでアピールするのではなく、同じ価値観を共有できる仲間たちと仕事をする中で1つのスタイルが育まれ、それが確かなブランドとなる」

 実行するのは容易ではないが、2004年の創業当時からそのための“人選”を徹底し、ラファというブランドを築き上げてきた。

林道グラベルを含む169km、3600mUPという厳しいコースで開催された「ラファ・プレステージ・那須」 ©Rapha Japan / Lee Basford林道グラベルを含む169km、3600mUPという厳しいコースで開催された「ラファ・プレステージ・那須」 ©Rapha Japan / Lee Basford

 その結果の1つが、ラファが主催する数々のイベントにも表れている。5人1組でチームを組み、山岳や未舗装路が入り混じる難コースに挑む「プレステージ」、世界中の女性サイクリストが同日に100kmライドに挑戦する「Women’s 100」、そして泥のコースがシクロクロッサーを魅了する「Raphaスーパークロス野辺山」など、これらユニークなイベントはすべてスタッフの発案から生まれたものだ。

獲得標高約4000mというラファ・ジャパン史上最高難易度で開かれたライドイベント「ラファ・プレステージ・カミカツ」 ©Rapha Japan獲得標高約4000mというラファ・ジャパン史上最高難易度で開かれたライドイベント「ラファ・プレステージ・カミカツ」 ©Rapha Japan
同日に世界中の女性サイクリストが100kmを走った「Women's100」 ©Rapha Japan同日に世界中の女性サイクリストが100kmを走った「Women's 100」 ©Rapha Japan

 イベントはどれもスタッフの手作り感が漂う。そのせいか、参加者もスタッフと一緒になって作り上げるようなアットホームな雰囲気に、年々リピーターも増加している。最近では、イベント誘致をオファーした自治体とともにイベントを作り上げるなど、新たな展開を見せている。

 「イベントの成功に方程式はない」というモットラム氏。「ラファのスタッフは自分が誰よりも自転車が好きだと思っている。そういう価値観を共有できる人間が集まれば、組織が大きくなることはアイデアのバリエーションが豊かになることを意味する」という。

11月26-27日に開催された「Raphaスーパークロス野辺山」のUCI男子エリートの様子 Photo: Shusaku MATSUO11月26、27日に開催された「Raphaスーパークロス野辺山」のUCI男子エリートの様子 Photo: Shusaku MATSUO

 「同じ価値観を共有する」という考え方は、ユーザーとの関係性においても徹底している。創業以来、代理店を一切介さない直販スタイルを貫いてきたのが、その表れだ。

ラファの創業者、サイモン・モットラムCEO(撮影場所=ラファ・サイクルクラブTOKYO) Photo: Seishiro TAKIラファの創業者、サイモン・モットラムCEO(撮影場所=ラファ・サイクルクラブTOKYO) Photo: Seishiro TAKI

 「代理店を使って販路を拡大すれば売上は早い時期に上がっただろう。ただ、それによって得られるのは薄っぺらい広がりだけで、深さは求められない」

 直販は前例のない挑戦だったが、それでも彼はサイクリストたちとの関係を構築することを頑なに重視した。

世界各国にいる8000人以上の“仲間”

東京・渋谷区千駄ヶ谷にあるラファ・サイクリングクラブ東京 Photo: Seishiro TAKI東京・渋谷区千駄ヶ谷にあるラファ・サイクリングクラブ東京 Photo: Seishiro TAKI

 そのために、モットラム氏には創業当初から描いていたもう1つのビジネスプランがあった。それは世界の主要なサイクリングシティに「クラブハウス」を設置することだ。いうなれば「直営店」だが、ECでの販売を主軸とするラファにとってそこで重視するのは売上ではなく、イベントやカスタマーケアを通じたサイクリストたちとのエンゲージメントだった。

ラファのサイモン・モットラムCEO Photo: Seishiro TAKIラファのサイモン・モットラムCEO Photo: Seishiro TAKI

 「クラブハウスはラファの世界観をサイクリストたちと共有する場所。そして世界中のロードサイクリストにとって出会いと喜びを分かち合うための場所」と強調するモットラム氏。この考え方が各国のサイクリストから支持を得るにはそう時間はかからなかった。

 オープンしたばかりのソウル、シドニーを加えると、クラブハウスの数は現在12カ所。来年には台湾の台北市、オーストラリアのメルボルンでのオープンを予定しており、さらに検討中の国もいくつかある。そしてこのクラブハウスを拠点とする「Rapha Cycling Club」(RCC)という有料会員制度を2015年から開始したところ、2年目にして早くも全世界で会員8000人を超える規模となった。

 この状況についてモットラム氏は、「創業時のアイデアやプランは間違いないと確信していたが、我々のようなビジネスを展開する前例がなかったのでこれほどまでに大きくなることは予測できなかった」と本音を明かす。カスタマーケアの質を維持するためのインフラ整備を懸念しつつ、それでも今後年間1万人ペースで増加を見込んでおり、メンバー拡大の勢いは今後も止まるところを知らない。

 一方で「世界で一番大きいサイクリングクラブということもいえるが、つまりは世界中につながれる仲間が8000人いるということ」と、まるで自分の自転車仲間を数えるような口ぶりで話す。彼にとっては数の大きさだけでなく、つながりの深さに意味がある。

RCCは社会的影響力をもつ組織になる

 強固な結びつきが形となって現れたことは、同時にモットラム氏が長年描いてきた“夢”が実現化に向けて動き出した瞬間でもあった。

 モットラム氏が掲げるRCC構想は計画・目標・夢のレベルで、3つある。1つはRCCとしての市場開拓。RCC限定の商品開発や、保険や旅行業といった会員制度に対する付加価値をより手厚くする計画だ。

 そして2つめの構想が、RCCとしてのプロチームの運営。UCIワールドチーム「チーム スカイ」のウェアサプライヤーとしての契約を終えた今季、とくにその思いは強い。

RCCシンガポールで開催されたイアン・ボズウェル選手(チームスカイ)とのライドイベント。2013年から4シーズンにわたって務めていた「チームスカイ」のウェアサプライヤーとして、RCCではさまざまな交流イベントを催した ©Rapha JapanRCCシンガポールで開催されたイアン・ボズウェル選手(チームスカイ)とのライドイベント。2013年から4シーズンにわたって務めていた「チームスカイ」のウェアサプライヤーとして、RCCではさまざまな交流イベントを催した ©Rapha Japan
©Rapha Japan©Rapha Japan

 モットラム氏によると、例えば1つの国にチームを縛るのではなく、各国のRCCでチームをもち、選手を育て、そこから生え抜いた選手たちでトップチームを編成する。「実現すればチームとのスポンサー関係ではできなかったこと全て、僕らがコントロールできるようになる。そしてRCCのメンバーは自分たちが育てたチームが、晴れ舞台で活躍する姿を見られるかもしれない」と具体的な目標として掲げる。

 そして3つめは、モットラム氏が創業当時から掲げる「自転車を世界でもっともポピュラーなスポーツにする」という夢の実現。「大きな夢」といいつつも、彼自身がサイクリスト1人1人との関わりを深めてビジネスを展開してきた最大の理由がここにある。

 自転車をポピュラーなスポーツにするには、すなわち誰もが乗りやすい環境を作り出すことが前提となる。それを作り出すには社会的影響力をもつ必要があり、そのための数の力も必要となる。そこにRCCの強みを発揮できるようになるとモットラム氏は考える。

「RCCは社会的影響力をもつ組織になる」と語るモットラムCEO Photo: Seishiro TAKI「RCCは社会的影響力をもつ組織になる」と語るモットラムCEO Photo: Seishiro TAKI

 「我々は単なる数の多さではなく、サイクリストとして同じ価値観をもった人々で成り立ち、しかもグローバルなフィールドで展開している他に例のない組織。そういう組織として力をもつというのはとても大事なこと。政治家たちに期待できないことはわかっているので、自分たちが豊富なアイデアをもっているなら、自らそれを政策として動かし、社会を変えていくというアクションを起こさなければならない。それが5年先なのか10年先になるのかはわからないが、RCCは必ずそれが実現できる組織になる。その日を夢に見ている」

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