東京五輪への思いをより強くトラックW杯2戦連続銀メダルの上野みなみ 「叶わなかった五輪出場の悔しさをバネに」

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 11月上旬に開催されたUCI(国際自転車競技連合)トラックワールドカップに出場した上野(うわの)みなみ(シエルブルー鹿屋)が、第1戦、第2戦と立て続けに銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げた。確実な進化を感じさせる強さの理由について、「リオ五輪の日本代表に選ばれなかった身として、東京五輪に向けての強化に気持ちを切り替えるしかないと思った」と語った上野。代表として五輪出場を果たしたチームメイトの塚越さくらの背中を見送りながら、その悔しさを次の力へと変えていた。

11月20日の全日本選手権オムニアムに出場した上野みなみ Photo: Kyoko GOTO11月20日の全日本選手権オムニアムに出場した上野みなみ Photo: Kyoko GOTO

嬉しくも悔しい2位

 イギリス・グラスゴーで11月4~6日に開催された「UCIトラックワールドカップ」第1戦で銀メダルを獲得したのは「スクラッチ」という種目。定められた距離を走り、順位を競う個人種目で、いうなればトラック競技場で行うロードレースだ。

スクラッチで集団レースを展開する上野みなみ(中央) Photo: T.Wakoスクラッチで集団レースを展開する上野みなみ(中央) Photo: T.Wako

 40周で争われた「女子スクラッチ」は残り22周に集団から抜け出したエリーゼ・デルゼン(フランス)ら2選手を上野ら2人が追走する形で逃げが決まり、最終ラップにデルゼンが集団内でスプリントを開始したところで上野がその後ろにつけたが、惜しくもデルゼンを捉えられず2位でフィニッシュした。

 また、オランダ・アペルドールンで11月13日に開催された第2戦の「ポイントレース」は、1周250mのトラックを80周する20kmでポイント獲得数を競う種目。上野は8回あるポイント周回のうち、前半2回目と4回目を1位通過。集団を1周ラップした際に与えられるラップポイントも獲得し、合計33ポイントを稼ぎ出して銀メダルを獲得した。

第1戦の女子スクラッチに続き「2戦連続」で銀メダルの表彰台に立った上野(左) Photo: T.Wako第1戦の女子スクラッチに続き「2戦連続」で銀メダルの表彰台に立った上野(左) Photo: T.Wako

 ただ、この快挙に対して上野は「一戦目は正直勝てるレースだったので、『また2位か…』という思いが強かった。嬉しさよりも悔しい気持ちでいっぱいだった」と振り返る。一方のポイントレースについては「優勝選手が本当に強かった。もっと力をつけなければと思った。ただ、内容は良かったと言ってもらえたので、それは良かったと思っています」と語りつつ、やはり2位であることの無念さは拭えないようだった。

自分の居場所で自分なりに頑張るしかない

 しかし、着実に実力をつけていることは間違いない。久しぶりに見る顔も一回り小さくなり、全体的に絞れた印象だった。

同じ「シエルブルー鹿屋」に所属する塚越さくら(左)と上野みなみ(2016年2月トラック日本ナショナルチームの練習にて) Photo:Kyoko GOTO同じ「シエルブルー鹿屋」に所属する塚越さくら(左)と上野みなみ(2016年2月トラック日本ナショナルチームの練習にて) Photo:Kyoko GOTO

 「リオ五輪の代表選手に選ばれなかったことに色々思うところはありました。最終的にさくら(塚越)が選ばれて、『おめでとう』という思いと『悔しい』という気持ちが混ざっていた」。大学時代から苦楽を共にしてきたチームメイト。気持ちを切り替えることは容易ではなかった。

 それでも「自分の居場所で自分なりに頑張るしかない」と言い聞かせ、タイミングよく出場できた海外レースに打ち込んだ。ナショナルチームのトラック競技選手であると同時にロードレース選手でもある上野は、中国やタイ、フランスのレースにも出場し、「さくらとは違う場所で輝こう」と決めた。

 「自分は残された身として、次にやることといったら東京五輪に向けて強化すること。そのためにはまず、今年のワールドカップで少しでも成績を残すことが重要で、それに向けてしっかり走れるような準備をするしかなかった」という上野。「日本がリオ五輪で盛り上がっている間、正直、その場にいたら複雑な思いを引きずったと思うけれど、海外でレースに集中できたので気持ち的には楽になった」と胸の内を明かした。

ワールドカップで梶原の走りに奮起

 気持ちを新たにして臨んだワールドカップ。そこで目にしたのが梶原悠未(筑波大学)の走りだった。上野が走る女子スクラッチと同日に行われた女子オムニアムで、梶原は前半2種目終了時点で暫定1位につけ、さらに3種目目のエリミネーションも3位につけ暫定1位を守ったが、最終のポイントレースで逆転され4位となった。

 「初めてのエリートのワールドカップで、こんな成績をコンスタントに出す人はこれまでいなかった。すごいと思ったのと、正直“やばい”と思った」と本音を明かす。しかし、その姿に刺激を受けた。「自分の強みをいかして自分らしいレースをしようと割り切ってスタートできた。良い刺激をもらった上で、そういう気持ちで走れたことはレースに大きく影響した」と当時を振り返る。

圧倒的な強さで2連覇を果たした梶原悠未(左) ©JCF圧倒的な強さで2連覇を果たした梶原悠未(左) ©JCF

 そして11月20日に静岡県の伊豆ベロドロームで開催された「2016全日本自転車競技選手権大会オムニアム」では、梶原が圧倒的な強さを見せて大会2連覇を果たした。「すごい強さ」という上野の言葉に裏付けられるように、上野もここ最近は勝つことができていない。

 一方で梶原は、東京五輪への出場権獲得をかけて上野がライバルになるとの見方を示している。これに対して上野は、「経験は自分の方がいっぱい積ませてもらっているので、そのような強みはさらに強化し、スピード面では最低でも同じくらい走れるようしていかなければと思う」と闘志を燃やす。

オムニアムの種目改定は日本人に有利

 実際、オムニアムは脚の強さだけでなく経験による判断が必要な場合も多くある。とくに五輪を終えて今シーズンから新たに改定されたルールではその要素が強まった。

 種目数が6種目から4種目に減り、さらに従来のスクラッチ、エリミネーション、ポイントレースに加え、「テンポレース」という種目を新たに追加する形で再構築されたのだ。テンポレースは、毎周回先頭通過選手に1ポイントを与えて最終的な獲得ポイントを争う競技。個人追い抜き、タイムトライアル、フライングラップという短距離主体のタイム系3種目がなくなり、このテンポレースが加わったことで、実質、中長距離を得意とする選手に有利な構成となった。

11月20日の全日本選手権オムニアム。表彰式後、梶原悠未(前列中央)ら男女エリート上位3位の選手たちと談笑する上野みなみ(前列右)。レースが終わって皆リラックスした表情 Photo: Kyoko GOTO11月20日の全日本選手権オムニアム。表彰式後、梶原悠未(前列中央)ら男女エリート上位3位の選手たちと談笑する上野みなみ(前列右)。レースが終わって皆リラックスした表情 Photo: Kyoko GOTO

 「タイム系のレースは世界と大きな差があり、それを4年間で縮めるのは正直難しいと感じていた。それがレース系が中心となったら本当に何があるかわからない。運もあるかもしれないし、自分で展開を作れば自分よりもタイムが10秒も早いような選手と互角に戦えるということは自分が走っていても感じるし、トータルでみて日本に有利になったと思う」との見方を示す。

 上野によると、国内と国外のレースは全く別物で、国内のレースはペースが遅く、動く人がほぼ決まっている一方で、海外のレースではスピード域や人数、展開が多彩だ。「逃げるきっかけは色々な人が動く中にある」という上野。そのタイミングをつかむことを得意とする彼女にとっては海外レースでこそ強味を発揮しやすいという。

自分で「君が代」を流したい

 今後、2017年2月にアジア選手権、そしてワールドカップ3戦、4戦と続き、そして4月には世界選手権を控えている。「世界選手権では成績をしっかり残すのは絶対。そのためにアジア選手権やワールドカップで世界選手権の枠を確実にとっていきたい」と意欲を示す。

「金メダルをとって自分で『君が代』を流したい」と話す上野みなみ Photo: Kyoko GOTO「金メダルをとって自分で『君が代』を流したい」と話す上野みなみ Photo: Kyoko GOTO

 さらに「五輪が終わったばかりで、本当に強い選手がワールドカップに出てきていない場合もある。こういう機会にこそ団体追い抜きで予選を通過したり、いままでになかった経験を積んで世界選手権につなげていきたい」と成長に貪欲だ。

 そして次に目指すは念願の金メダル。

 「表彰台に乗った時に、『君が代』を自分で流したい(笑)。海外で聞いたことがないので、一番最初に流したいと思います」

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