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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<184>大型スポンサーで新たなチームカラー チーム カチューシャ・アルペシン 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 前回からスタートした2017年シーズンのチーム展望。UCIワールドチームを中心に、注目チームを次々と追いかけていきたいと思う。今回は、チーム カチューシャ・アルペシン。今シーズンまでは「チーム カチューシャ」として、ロシアの国家プロジェクトとして活動してきたが、来季からは大型スポンサーが加わることもあり、スイスへと登録を移す。選手の大幅な入れ替えもあり、チームカラーが変わるであろうこのチームの可能性を探っていく。

アルペシン社のスポンサー加入、チームのスイス登録など、大幅に変わるチーム体制。チーム カチューシャ・アルペシンの2017年に注目が集まる =UCIロード世界選手権男子チームタイムトライアル、2016年10月9日 Photo: Yuzuru SUNADAアルペシン社のスポンサー加入、チームのスイス登録など、大幅に変わるチーム体制。チーム カチューシャ・アルペシンの2017年に注目が集まる =UCIロード世界選手権男子チームタイムトライアル、2016年10月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

アルペシン社が“移籍”

 2009年にロシアの大企業であるガスプロム、イテラ、ロステクノロジーの3社による合同出資によって発足。チーム カチューシャ、カチューシャ チーム、そして再びチーム カチューシャと呼称が変化してきたが、常に「ロシアンサイクリングプロジェクト」と自チームを称し、国家プロジェクトとしての方向性を変えずに進んできた。

ロシアの国家プロジェクトしての色合いの濃かったチームだが、新たなステップへと踏み出そうとしている =ツール・ド・フランス2016チームプレゼンテーション、2016年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADAロシアの国家プロジェクトしての色合いの濃かったチームだが、新たなステップへと踏み出そうとしている =ツール・ド・フランス2016チームプレゼンテーション、2016年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 だが、2017年シーズンからは新たな風が吹き込まれることになる。この秋、ドイツの育毛シャンプーメーカーであるアルペシン社が第2スポンサーに就くことが決定。現在、チーム ジャイアント・アルペシンでスポンサーを務めるが、契約満了を機に他チームへの“移籍”を決めた。

 昨年のこの時期は、所属するロシア人選手の奮起に期待し、その先には8月に開催されたリオデジャネイロ五輪・ロードレースの出場枠獲得という目標を定めていた。そのプログラムが一段落し、次のステップへ踏み出そうというチーム方針の一端が、アルペシン社とのスポンサー契約だったと見ることができる。

クリストフ、ザカリンを軸としたチーム編成

 2010年の加入からエースとして走り続け、チームの顔でもあったホアキン・ロドリゲス(スペイン)が、このオフにバーレーン・メリダとの契約に合意。移籍が決定した。7月に行われたツール・ド・フランス中に今シーズン限りでの現役引退を発表し、当初はリオ五輪がキャリア最後のレースになるとの見方もあったが、本人がそれを否定。その後、イル・ロンバルディア(イタリア、UCIワールドツアー)を走り、さらには移籍することで引退撤回となった。

 次なる支柱となる人物をチームは必要とするが、これまでの活躍度から見るに、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)とイルヌール・ザカリン(ロシア)が有力だ。

絶対的なスプリントエースとして君臨するアレクサンドル・クリストフ。クラシックではパリ~ルーベの制覇を目指している =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA絶対的なスプリントエースとして君臨するアレクサンドル・クリストフ。クラシックではパリ~ルーベの制覇を目指している =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 エーススプリンターのクリストフは今年、クラシックにグランツールに勝利を量産した一昨年、昨年ほどのインパクトを残すことができなかったが、それでもUCIワールドツアー個人ランキングで7位と存在感は残した。

 来シーズンも、ミラノ~サンレモや北のクラシックでのビッグタイトル獲得、ツールでのステージ優勝などが目標になってきそうだ。クラシックにおいては、2014年にミラノ~サンレモを、2015年にツール・デ・フランドルを制覇しており、「今度はパリ~ルーベを」との思いを自ら口にしている。また、ステージレースでのスプリントでは、マルコ・ハラー(オーストリア)やミケル・モルコフ(デンマーク)といった発射台が控える。リードアウトトレインとの連携を強化し、勝利数を増やしていきたい。

 そして、ターゲットはもう1つ。ノルウェー・ベルゲンで開催されるロード世界選手権だ。ホームアドバンテージを武器に、地元優勝に燃える。ベルゲンのコースは厳しい登板区間こそあれど、展開次第では“上れるスプリンター”でも対応可能と予想される。チームメートとの意思疎通が図られず、7位に終わった今年の悔しさを晴らす舞台でもある。

グランツールでの活躍が期待されるイルヌール・ザカリン。総合表彰台に上がる可能性も高い =ツール・ド・フランス2016第17ステージ、2016年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADAグランツールでの活躍が期待されるイルヌール・ザカリン。総合表彰台に上がる可能性も高い =ツール・ド・フランス2016第17ステージ、2016年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールをメインに、総合エースを任されるのはザカリン。今年のジロ・デ・イタリアでは、自身初の総合トップ10入りが見えていたが、第19ステージでのダウンヒルで激しく落車。チャンスを失ってしまった。それでも、驚異の回復力を見せ、7月のツールでは第17ステージで感激のステージ優勝。総合争いには加わらなかったものの、要所で意地を見せたあたりはさすがだ。

 来シーズンは、再びグランツールでの上位進出にチャレンジする。厳しい山岳になればなるほど積極的な走りが光り、タイムトライアルでもステージ優勝が狙えるだけの独走力を持つだけに、ハマれば総合表彰台も夢ではない。

 この記事を執筆している時点では、ザカリンがどのレースをメインターゲットにしているかはっきりしていないが、ジロかツールが有力。アルベルト・ロサダ(スペイン)、パヴェル・コチェトコフ(ロシア)、レイン・タラマエ(エストニア)といった山岳巧者がアシストとして仕えることになるだろう。

 そのほか、1週間程度のステージレースでは、スペシャリストのシモン・スピラク(スロベニア)も実力を発揮するだろう。過去にはツール・ド・ロマンディやツール・ド・スイスでの総合優勝経験を持つ。確実に上位を押さえる術を知っている点に強みがある。

山岳アシストを務めるレイン・タラマエ =ジロ・デ・イタリア2016第20ステージ、2016年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA山岳アシストを務めるレイン・タラマエ =ジロ・デ・イタリア2016第20ステージ、2016年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA
ステージレースで総合を狙うシモン・スピラク =ツール・ド・スイス第1ステージ、2016年6月11日 Photo: Yuzuru SUNADAステージレースで総合を狙うシモン・スピラク =ツール・ド・スイス第1ステージ、2016年6月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

マルティンがアルカンシエルでチーム合流

 チームは11月10日に、確定した来シーズンの陣容を発表。所属は26選手、11選手が退団し、10選手が移籍加入と、大幅な選手入れ替えが行われる。

個人TTで世界王者に返り咲いたトニー・マルティン。マイヨアルカンシエルを持って新チームに合流する =UCIロード世界選手権男子エリート個人タイムトライアル、2016年10月12日 Photo: Yuzuru SUNADA個人TTで世界王者に返り咲いたトニー・マルティン。マイヨアルカンシエルを持って新チームに合流する =UCIロード世界選手権男子エリート個人タイムトライアル、2016年10月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 加入組の筆頭となるのは、エティックス・クイックステップから移籍のトニー・マルティン(ドイツ)。5年間所属した現チームを離れ、新たな環境での活躍を誓う。

 マルティンといえば、10月のロード世界選手権個人タイムトライアルでの3年ぶりの優勝が記憶に新しい。晴れてマイヨアルカンシエル返り咲きとなり、純白に虹色のジャージを新チームに持参する。個人タイムトライアルでの好走もさることながら、グランツールなどでのチームタイムトライアル強化が期待されている。これまでもチームタイムトライアルで上位進出を果たしてきたが、マルティンの加入がチームにどう影響を及ぼすか注目だ。

アンダー23で個人TT世界王者となったマルコ・マティスもチーム カチューシャ・アルペシンに加わる =UCIロード世界選手権2016男子アンダー23個人タイムトライアル、2016年10月10日 Photo: Yuzuru SUNADAアンダー23で個人TT世界王者となったマルコ・マティスもチーム カチューシャ・アルペシンに加わる =UCIロード世界選手権2016男子アンダー23個人タイムトライアル、2016年10月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ドイツ企業と大型スポンサー契約を結んだこともあり、同国選手を多数スカウティングしたあたりも特徴的。マルティンに限らず、ロード世界選手権アンダー23個人タイムトライアルを制したマルコ・マティス、BMCレーシングチームからはリック・ツァベルといった「タレント候補生」の獲得に成功している。

 また、昨年と今年のパリ~ルーベ・エスポワール(23歳以下対象)で2位となったイェンス・ビエルマンス、今年のUCIヨーロッパツアー個人ランキング総合1位のバプティスト・プランカールト(ともにベルギー)、2015年のロード世界選手権アンダー23個人タイムトライアル優勝のマッズ・ウルスシュミット(デンマーク)、今年6月のツール・ド・ルクセンブルク(UCIヨーロッパツアー2.HC)総合優勝のマウリツ・ラマルティンク(オランダ)など、世界的には無名ながら今後の飛躍が期待される選手たちが次々と加わる。こうしたバランスのよい補強が、チームの大躍進につながる可能性を秘める。

 一方で、所属選手の多くを占めていたロシア人選手が大幅に減る。大部分が自国のプロコンチネンタルチームであるガスプロム・ルスヴェロへと移籍。これからは、こちらがロードレースにおける国家プロジェクトチームとしての比重が大きくなるものと見られる。

 こうした活性化した動きにともない、新チームは13カ国の選手からなる多国籍チームへと生まれ変わる。

 なお、チームは11月28日から12月9日までの日程で、スペイン・カルぺでチームビルディングキャンプを行う。さらに、期間中の12月3日には、チームプレゼンテーションを実施することが決まっている。

チーム カチューシャ・アルペシン 2016-2017 選手動向

【残留】
マキシム・ベルコフ(ロシア)
スヴェンエーリク・ビストラム(ノルウェー)
マルコ・ハラー(オーストリア)
パヴェル・コチェトコフ(ロシア)
アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)
ビアチェスラフ・クズネツォフ(ロシア)
アルベルト・ロサダ(スペイン)
ティアゴジョセピント・マシャド(ポルトガル)
マトヴェイ・マミキン(ロシア)
ミケル・モルコフ(デンマーク)
ニルス・ポリッツ(ドイツ)
ホナタン・レストレポ(コロンビア)
シモン・スピラク(スロベニア)
レイン・タラマエ(エストニア)
アンヘル・ビシオソ(スペイン)
イルヌール・ザカリン(ロシア)
 
【加入】
イェンス・ビエルマンス(ベルギー) ←SEGレーシングアカデミー
ホセイシドロマシエル・ゴンカルヴェス(ポルトガル) ←カハルラル・セグロス エルヘアー
レト・ホレンシュタイン(スイス) ←イアム サイクリング
ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア) ←ティンコフ
マウリツ・ラマルティンク(オランダ) ←ロームポット・オラニエプロトン
トニー・マルティン(ドイツ) ←エティックス・クイックステップ
マルコ・マティス(ドイツ) ←ラドネット・ローズチーム
バプティスト・プランカールト(ベルギー) ←ワロニーブリュッセル・グループプロテクト
マッズ・ウルスシュミット(デンマーク) ←チーム ヴィルトゥプロ・ヴェロコンセプト
リック・ツァベル(ドイツ) ←BMCレーシングチーム
 
【退団】
セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア) →アスタナ プロチーム
ヤコポ・グアルニエーリ(イタリア) →エフデジ
ウラジミール・イサイチェフ(ロシア) →未定
ディミトリー・コゾンチュク(ロシア) →ガスプロム・ルスヴェロ
セルゲイ・ラグティン(ロシア) →ガスプロム・ルスヴェロ
アレクサンドル・ポルセフ(ロシア) →ガスプロム・ルスヴェロ
ホアキン・ロドリゲス(スペイン) →バーレーン・メリダ
エゴル・シリン(ロシア) →未定
アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア) →ガスプロム・ルスヴェロ
ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー) →チーム ロットNL・ユンボ
アントン・ヴォロビエフ(ロシア) →未定

今週の爆走ライダー-ホナタン・レストレポ(コロンビア、チーム カチューシャ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今回は、チームが大きな期待を寄せる若きスピードスターを紹介。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージでは、アシストが評価されて敢闘賞を獲得したホナタン・レストレポ =2016年8月27日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージでは、アシストが評価されて敢闘賞を獲得したホナタン・レストレポ =2016年8月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 次々と有力クライマーを輩出するコロンビアだが、平地のスピードではスプリンターのフェルナンド・ガヴィリア(エティックス・クイックステップ)にも匹敵するとの評判。それでいて、今年のブエルタ・ア・エスパーニャでは山岳ステージで逃げで魅せるなど、オールラウンドに力を発揮する。

 そのバックボーンは、トラック競技にある。ジュニア時代から台頭し、アメリカ大陸選手権では金メダルを数多く獲得。特に、パシュート(追い抜き)種目のスペシャリストで、2015年には個人・チームの2冠を達成した。

 そのスピードを生かすべく、ロードに本格進出して2年。プロ初年度からグランツールデビューを果たし、ブエルタ第8ステージでは敢闘賞を獲得。スプリントステージでは3度のトップ10入りと、能力の片鱗を見せた。

 次の目標は、プロ初勝利といきたい。平地でも上りでもしっかりと走れるならば、アピールの場は自然と増える。自らの将来を導く意味でも、最初の勝利が重要となってくる。

トラック競技で培ったスピードを武器にオールラウンドに力を発揮するホナタン・レストレポ。次の目標はプロ初勝利だ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージ、2016年8月27日 Photo: Yuzuru SUNADAトラック競技で培ったスピードを武器にオールラウンドに力を発揮するホナタン・レストレポ。次の目標はプロ初勝利だ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージ、2016年8月27日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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