門田基志の欧州クロスカントリーマラソン遠征記<5>最後の遠征地はモンブランの麓 世界一過酷なマラソンレースは試走も困難

  • 一覧

 マウンテンバイク(MTB)のクロスカントリーマラソン(XCM)世界選手権を、92位で完走した門田基志選手(チームジャイアント)。まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)とともに、3週間のヨーロッパ遠征の最終戦となる「MB Race Culture vélo」に出場のため、アルプス・モンブランの麓の町、メジェーブへと向かいます。

◇         ◇

←<4>クロスカントリーマラソン世界選手権を激走

メジェーブのメインストリートに立つレースのゲート Photo: Motoshi KADOTAメジェーブのメインストリートに立つレースのゲート Photo: Motoshi KADOTA

世界選手権の疲れを引きずりつつ…

メジェーブへ行く途中の市街地、市街地は自転車走行レーンが決まっている Photo: Motoshi KADOTAメジェーブへ行く途中の市街地、市街地は自転車走行レーンが決まっている Photo: Motoshi KADOTA

 世界選手権の地、仏レサックから400km程度の車移動で、今回の遠征最後のレース地、メジェーブへと移動する。それにしても行く先々で聞き覚えのある地名が出てくるもので、アルベールビル…確か冬季オリンピック開催地だったよな〜とか、あれこれ思いながら凄い山道を越えて、目的地メジェーブに到着した。

 今回のホテルもプール付きをチョイスしたが、山の上で少し寒く入る事はあるのだろうか?と思いながらチェックインし荷物を2階に運んだ。

 今回の部屋は訳あってスイートルーム。2人で寝る訳じゃないですよ! 2人とも身長180cm越えの日本で言う巨人サイズなので、スーベリアクラスの部屋だと狭いというのが理由。でも何だか他の人からの目線が気になる(笑)。初日は移動疲れとレース疲れから、食事をするために街に出た程度でゆっくり過ごした。

ins-1

 2日目の朝は試走をするつもりがXCM世界選手権から2日で動ける訳もなく、リカバリーライドという事で近所を散策しながらスーパーや街の様子を調査した。

 今回のレースはネット上を探しても街で探してもマップが存在しない。問い合わせのメールをしても、他の大会と違ってまるで返事が来ない。色々検索して分かったのは、この山に囲まれたエリアは道が無数で試走は困難らしいということ。しかしさらにネットを駆使したところ、何となくコースかなというGPSデータを発見したので、それを元に翌日から試走をする事にした。

 試走プランを考えるのもマラソンレース。140kmにもなる超ロングコースをどう試走するのが一番効率良く回れるのか? 西山と相談しつつ考え、スタートは皆元気だし前に行かないとレースが不利になるという事で、スタートから70kmを1日で走り、全コースの試走は回復を考えると無理なので、後半70kmの試走は捨てるという事にした。

Eバイクのサイクリングツアー Photo: Motoshi KADOTAEバイクのサイクリングツアー Photo: Motoshi KADOTA
メジェーブのラウンドアバウト内の大会モニュメント Photo: Motoshi KADOTAメジェーブのラウンドアバウト内の大会モニュメント Photo: Motoshi KADOTA
大会メイン会場。大きなスタートゲート Photo: Motoshi KADOTA大会メイン会場。大きなスタートゲート Photo: Motoshi KADOTA
こちらはゴールゲート Photo: Motoshi KADOTAこちらはゴールゲート Photo: Motoshi KADOTA

電撃にはご用心

歩行者のレーンもラインで引かれる Photo: Motoshi KADOTA歩行者のレーンもラインで引かれる Photo: Motoshi KADOTA

 コースはメジェーヴの中心地から市街地を走り、わりと舗装路が多い序盤の登坂を行く。所々で超激坂が含まれているが基本的には走りやすい。民家がまだあるエリアで生活圏内なので綺麗なのだろう。

 ちょっと郊外に出ると、「ここ、動画見たところだ!」と前夜に調べ尽くして見尽くした動画のワンカットのセクションを発見して、道は間違いではない事を確認でき、少し高めのテンションで、度々くる激坂とリバークロスを越えて上り続けた。

 体は疲労はしてるけど調子は悪くないな〜程度なので、刺激入れのためにインターバルを少々入れてみると、体は動く…が切れがない。

 そのままモンブランが見える牧草地まで来ると、牛と草原と山…まあ撮影は始まりますよね〜という事で、今日の試走最高標高地点で、牛と戯れながら動画や写真を撮りまくる。楽しい気分の途中でふと思い出したが、レースの日の天気予報は雨。路面を見ると牛の糞が乾いて無数に落ちている…。容易に想像できるレース日の路面状況に絶句しながら試走を進めた。

遠くに見えるモンブランに感動、景色は最高だ Photo: Motoshi KADOTA遠くに見えるモンブランに感動、景色は最高だ Photo: Motoshi KADOTA
車輪越しの牛とモンブラン Photo: Motoshi KADOTA車輪越しの牛とモンブラン Photo: Motoshi KADOTA

 まだ完全にコースができている訳でもないので、道と牧草地の間に張られている獣よけの電撃の紐(日本でも少し前に感電でニュースになった)が、度々道を塞ぐ形でも張られている。この部分はフックで外す事が可能で、外して越えてフックを掛け直す。

 その先の超泥沼エリアは板が泥の上に置かれていて、バランス良く行けば泥沼に入らないという雑な作り。でもバイクを持って歩くと、下は泥でぐらつくからバランスが崩れ…電撃紐に当たって「バチッ!!」と電撃を食らった。驚いて奇声を上げると、後から来る西山は慎重に歩いて突破してくる…先に道を切り開く者の大変さはこの辺りでも過酷だ。

 次に問題のフック! フックを外し自分が越えたあと、西山に手渡しする時にグリップじゃなくてフック部分を触ってしまいより強力な電撃をくらってしまった! これはけっこう強烈で骨まで響くというやつ! 指先で触ったのに衝撃は手首までガツンと来た! ココでの試走は電撃紐だけは気をつけようと2人は心に誓った。

試走で最初の難関の泥沼、序盤に泥でバイクを痛める訳にいかないのでラインを考える。レース日は土が入り綺麗になっていた Photo: Motoshi KADOTA試走で最初の難関の泥沼、序盤に泥でバイクを痛める訳にいかないのでラインを考える。レース日は土が入り綺麗になっていた Photo: Motoshi KADOTA

 その後フランスらしい根っこセクションと、日本の山的な急角度で黒土のシングルトラックを越え、物凄い泥沼は押し担ぎ、こっちだろ!?いやこっちかな?を繰り返していると、ボトルの中身が底をついてしまった。お腹も空くし、街どころか人も居ない山奥で試走を進めた。

コーヒーとデザートに「完敗」

 マップは無いが高低図はあるので、あと10km程度走った所に街があるのかな?ということだけは分かる。そこまで何とか行こうとバイクを進める。土砂崩れや倒木だらけの押し担ぎの連続で、思わずここレースで使うの?落ちたりしないのか?って記念撮影。やっとの思いで辿り着いた小さな町で昼食を取る事になった。

崩れて1本のラインしかないセクション Photo: Motoshi KADOTA崩れて1本のラインしかないセクション Photo: Motoshi KADOTA

 この町ではどこで食べるかは迷いようがない。なぜならレストランは1軒だ。レストランの通りにはツール・ド・フランスのゲートがある。ここもツール後半戦に通る場所らしく、小さな町も自転車で盛り上がっている。

 レストランを見ると外の広場に椅子とテーブルが並び、サイクリストも食事をしているので何となく自然に座ってたけど…なんとなくフランス語だろうな〜という想像が的中(笑)。英語が全く通じないレストラン! まあフランスですからね。

 そこで玄関に置いている立て看板の14ユーロの看板、あれはランチだろう!と勝手な想像で指差し注文して適当にやってたら、隣の席に座っていた年配のサイクリストが助け舟を出してくれて、ようやく何となく理解できて美味しい昼食にありつけた。

サイクリストはみんな親切! Photo: Motoshi KADOTAサイクリストはみんな親切! Photo: Motoshi KADOTA
肉とポテトの組み合わせ。出てくるまでは何が出て来るかは分からないのも楽しみのうち Photo: Motoshi KADOTA肉とポテトの組み合わせ。出てくるまでは何が出て来るかは分からないのも楽しみのうち Photo: Motoshi KADOTA

 天気も良く、程よくお腹も満たされカプチーノを1杯…もう走る気なんて失せている2人は助けてくれたオジさんを見送り、次はアイスクリームにも手を出してみる。

 体の方も世界選手権の疲労が回復しきれておらず、試走してコース把握が優先なのか?体の回復を一番とするのか?葛藤をしていたが…アイスクリームがもう休めと言っている。疲労的にもここから30kmはまず無理でレースに支障をきたすだろう。

 一応、地理関係を確認して45kmで試走は終了し回復に専念する事に決定! カプチーノとアイスクリームのゴールデンコンビに完敗。と言っても10km程度はまだ走って山を越えないと帰れないので、アイスの分はカロリー消費しますよ!

 何となくコースかな?という道を行ったり来たりしながら降りてきた道は、リカバリーライドで通った場所。見覚えがあるエリアに帰ってきて試走は終了した。ホテルに帰ってプールでクールダウン。使うかな?と思っていたが、やはりこの流れは最高だ。

笑い話は良い土産話

 試走はあまりできなかったが、まあ世界一過酷なマラソンレースというだけの事はある。2人でレース前のプランを考えつつ、連日通っているレストランで夕食をとった。コース料理なので前菜を決めて、とりあえず僕はメインで肉! 西山は…意味の分からない「僕、この一番長い文字のメニューにしてみます」という。店員さんはシーフードだよと説明。

メジェーブのレストラン前 Photo: Motoshi KADOTAメジェーブのレストラン前 Photo: Motoshi KADOTA
貝の山盛りに笑うしかない Photo: Motoshi KADOTA貝の山盛りに笑うしかない Photo: Motoshi KADOTA
頭をかかえる西山を向こうに、僕は安定の肉とポテト Photo: Motoshi KADOTA頭をかかえる西山を向こうに、僕は安定の肉とポテト Photo: Motoshi KADOTA

 僕のは想像通り、牛の赤身のステーキ。西山は巨大な器に山盛りの貝。それとパン!! ムール貝の小さいやつというか、そんなに貝だけ食べて大丈夫か?と思える程の量に笑うしかない。この夜西山はワインに良く合う貝とパンと水でお腹を満たした…のか?

 まあ「食の楽しみ」もある意味では遠征の醍醐味! 良い土産話がうらやましい(笑)

 土曜レースで木曜と金曜をどうするのかを話し合い、リカバリー程度の運動とレース準備として回復に専念するという事になった。

Eバイクの広がりを実感

GIANTのEバイクレンタルは各所に広がり、新しい自転車文化を感じる。遠くに見える雪山はモンブランGIANTのEバイクレンタルは各所に広がり、新しい自転車文化を感じる。遠くに見える雪山はモンブラン

 翌日は疲れもありゆっくり起きて、絶景な窓の外を見てもイマイチ外に出る気もせず、モンブランの麓でインドアな午前を過ごした。

 お昼前からちょっと動き出し、軽目のライドでランチを食べに隣町に行ってみると、ココにもあるGIANTのEバイクレンタル! この数年で物凄い増え方だなと思う。このEバイクが日本でも走れると色々な人のサイクリングライフを変えてくれる事は間違いないだろう。

 そして近くのモンブランが見えるレストランでランチをとり、バイク整備のためにオイルクリーナーを探してサイクリングを続ける。

 近くの自転車屋さんを見つけて行ってみると、そこにもEバイクレンタルが10台前後置いてあり、ツアーを主催しているようだった。そういえば前日10人前後のツアーを見たけど、あれか! 楽しそうだから日本でもやりたいな〜と思っていた。西山と店主が話す内容が耳に入ってきて、オイルクリーナーはすぐに手に入ったが問題はその先…。

 「MBレースは最初大した事無いけど、飛ばしすぎると後半がかなりキツいので、失速するから注意しろ。特に45kmから後の数十キロとラスト20kmがキツいよ」と店主。

美しいモンブランの眺め Photo: Motoshi KADOTA美しいモンブランの眺め Photo: Motoshi KADOTA

 つまり…試走を断念したその先か! 体力的な意味では試走を終えて正解だったが、不安を煽る店主の言葉でバイク整備は入念に、ブレーキパッドも新品にしようとか、できる事を最大限しようと思った。

 選手ができる範囲で最大限の整備を終えて、次はタイヤをどうするのか? レーシングラルフで行くのか? 泥対策をしてロケットロンで行くのか? 迷う。悩んでも答えは天気予報次第で、毎日変わるのが山の天気。前日午後の天気予報を見て最終最後に雨ならロケットロンに変更、曇り程度ならレーシングラルフでという事でタイヤ交換は最後に持ち越した。

 体の捻れを感じていたので、マッサージかなにか体のケアができないか? インターネットを駆使して町を調べると、オステオパシーという整体のような、体のアライメントを調整してくれる所を見つけ飛び込みで行ってみた。これがなかなか良く、そこで体のメンテナンスの重要性を再確認すると共に、普段のケアの重要性を痛感し、レース前日のマッサージの予約も済ませて夜を迎えた。

かなり本格的だが形的に見たことのない治療台 Photo: Motoshi KADOTAかなり本格的だが形的に見たことのない治療台 Photo: Motoshi KADOTA
遠くは400km離れた町からもオステオパシーを受けに来る程、凄腕の治療院。偶然見つけてラッキーだった Photo: Motoshi KADOTA遠くは400km離れた町からもオステオパシーを受けに来る程、凄腕の治療院。偶然見つけてラッキーだった Photo: Motoshi KADOTA

最後のレース前日もドタバタ

 レース前日、まずやる事は天気予報を見る事! なんと完璧雨でスタート時は曇り、2時間以内に雨と雷と出ている。表現がサンダーストームでかなりヤバそうに感じる。タイヤを交換して受付やライセンスコントロールを済ませた。

 申込時から変だな〜と思っていた西山のゼッケン。僕は26なのに何故か200…クラスが違うとか何か理由が無いと、UCIでここまで数字が離れるかな?と何となくの違和感を覚えていた。一度会場を後にしたが、やはり違和感はぬぐい去れず、西山に「どう考えてもおかしいから、今からもう一度しっかり確認をするように」と話して、受付へと戻った。

j-1
j-2
j-4

 案の定違和感は当たっていて、一般クラスの140km参加扱いになっていた。他にも違っていた選手がいるらしく、申し出があった選手をその場で切り替えているようだった。危ないところだった!

 赤いシールを貼ってもらい、これで安心してUCIクラス出場ができるようになった。迷った時は良いように判断を勝手にせず、必ず担当者に聞く事が、海外で失敗しない方法だと僕は思っている。

マラソンは補給が成績を大きく左右する大切なもの。本当に効果を得られるものをこだわってチョイス! Photo: Motoshi KADOTAマラソンは補給が成績を大きく左右する大切なもの。本当に効果を得られるものをこだわってチョイス! Photo: Motoshi KADOTA

 会場近くのスーパーで買ったお気に入りの洋梨とチーズを、山盛りに持ってホテルに帰った。レース前の夜という事で外食は控えて、食べたい物を自分のタイミングで食べてレースに備える。

 補給食はやはりお気に入りのメイタンサイクルチャージをミニボトルに入れて計12本分! 足りる訳がないが持てる最大量だろう。ボンクブレーカーも数個、ドリンクはスーパーメダリスト9000と電解質パウダーに決まりだ。

 チューブやボンベ、必要と思える物を一度まとめてみて多過ぎると思い減らして、また付け足してをイメージしながら繰り返し、準備ができたところで就寝。といっても朝6時スタートで3時間程度前に食事を済ませようと思ったら、2時半とか3時前には朝食となる。睡眠時間もそうは取れないが、まあ横になる。

(続く)

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

MTBレース 門田基志の欧州クロスカントリーマラソン遠征記

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載