初挑戦は31位Cyclist松尾がおきなわ市民210kmに出場 “リアルロードレース”の醍醐味を満喫

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 ツール・ド・おきなわ市民210kmにCyclist編集部員の松尾修作が初挑戦した。“市民レーサーの甲子園”と称される、国内最高峰の公道ホビーレースを堪能。スケールが大きく、ハイレベルな210kmでの濃厚な経験をレポートでお届けする。

1回目は耐えた普久川の上りだったが、2回目で千切れた Photo: Naoi HIRASAWA1回目は耐えた普久川の上りだったが、2回目で千切れた Photo: Naoi HIRASAWA

社会人レーサーとして挑戦

 「おきなわ」に出場するのは2回目だ。前回は9年前の高校生時代に「ジュニア国際」カテゴリーに出場した経験がある。今回は社会人レーサーとして市民210kmにエントリーした。仕事とトレーニングを両立する“強豪”ホビーレーサーがひしめくこのカテゴリーにエントリーするのは相応の練習量がないと完走すら危うい。しかし、だからこそモチーベーションを高く持ってトレーニングに臨み、11月13日の本番を迎えることができた。

 レーススタートは朝の7時47分。朝日が昇ったばかりのスタート地点では、優勝経験を持つ高岡亮寛選手(イナーメ信濃山形)や武井亨介選手(TEAM・FORZA)が集団の先頭でスタートを待つ。私は最後尾からの出発を選択し、序盤の平坦区間で徐々にポジションを上げていこうと考えていた。

数の多い集団では常に前方で走ることを心がけた Photo: Naoi HIRASAWA数の多い集団では常に前方で走ることを心がけた Photo: Naoi HIRASAWA

 定刻通りスタートが切られると、集団のペースはそこまで速くはない。予定通り、スタートから10kmを越える前に、ほぼ最前列までポジションアップに成功。序盤は道幅の変化も多く、アップダウンが頻発し集団のスピードが上下するため激しい落車が多かった。時には60km/hほどで数十人が巻き込まれる大落車も起こったが、上手く切り抜けることができ、最初の勝負どころとなる1回目の普久川ダムの上りへとたどり着いた。前方でのポジションをキープするために脚をある程度使ったが、大集団の後方で走るリスクを考えると成功だったと思う。

 上りをフロントから15番手ほどで入った。悪くないポジションであったが、篠崎友選手が引くペースが私にとっては速くて危うく遅れかけた。序盤の勾配がある区間を、ポジションを落としながらもギリギリで走りきり、後半も耐える走りでなんとか頂上へと到着。メイン集団に喰らえつき、下りを集団内でこなすことができた。スタートでは300人強だった集団は、この時点で50人ほどまで絞られていた。

補給食は前日から準備

 快適な下りの後は海沿いを走るコースへと戻る。ここでやっと余裕が生まれたので景色を眺めると、横には鮮やかなブルーの海が広がり、レース中とは思えない心地よさを感じた。日差しは強いが湿度は低く、冬でもカラッとした暑さが沖縄を走っている実感をわかせてくれた。

前日に用意した補給食。蜂蜜を染み込ませたパンと羊羹 Photo: Naoi HIRASAWA前日に用意した補給食。蜂蜜を染み込ませたパンと羊羹 Photo: Naoi HIRASAWA

 補給食は30分に1度固形物を食べた。用意したのはロールパンを半分にカットし、中に蜂蜜をたっぷりと詰めたものと羊羹だ。ポイントは前日から作っておくことで、蜂蜜がパンに染み込み、パサパサ感がなくなるのが“ミソ”だ。レース週半ばから炭水化物を中心の食事を心がけたが、210kmを走りきるには補給を取り続けなければ力を発揮することはできない。

 平地で距離を消化し、2回目の普久川ダムの上りへと入ると、1回目ほど辛くは感じない。恐らく心拍数を上げたことで、身体が温まったのだろう。ケイデンスを高めにし、トルクをなるべくかけないよう無難に走りたかった。だが、突然脚が回らなくなり、気がついたら集団後方まで下がってしまった。ペースが上がったのか、余裕がなくなったのかはわからない。「ここで遅れたら後半に何もできない」と自身に言い聞かせたが、頂上の約500m手前で我慢しきれず千切れてしまった。

“ロードレース”ができた

 日本のロードレースは、公道を使用する場合、どうしても距離が短い周回コースを取らざるをえないことが多い。しかし、「おきなわ」はスケールが大きい“ロードレース”ができる。私は下りと平地を踏み続ければ、前方から落ちてくる選手を拾い、再び集団へと戻れるのではと考え、上りで千切れた後も脚を止めなかった。

バイクは私物のBH「ウルトラライト」で臨んだ。軽さも魅力だが、推進力の高さが好み Photo: Naoi HIRASAWAバイクは私物のBH「ウルトラライト」で臨んだ。軽さも魅力だが、推進力の高さが好み Photo: Naoi HIRASAWA

 ここでイナーメ信濃山形のポール・ソールズベリー選手や他数人の選手と一緒のパックを形成できた。皆、表情は険しいが、メイン集団へと戻れることを信じ、ローテーションをハイペースで行った。途中、単独で遅れていた中村龍太郎選手も合流。心強いメンバーも加わり、協力しながらペダルを踏み続けると、前方にオレンジ色のゼッケンをつけた210km組の集団へと追いつくことができた。上りと下りしかなく、「千切れたら即足切り」という退屈なレースではこうした経験は味わえない。

 合流した20人ほどの集団はどうやら第2集団で、前方に10余人が先行しているようだった。私たちは千切れて形成された集団なのでペースアップには限りがあり、前方に追いつくのは困難だろう。コース後半はアップダウンが続くため、上りは踏まず、下りと平地を全員がローテーションすることでペースを維持。グルペットと称される集団ではあるが、平地では40km/h後半のスピードを維持しながらゴールを目指した。

 210km初参加でコースを知らない私は後半のアップダウンの多さに驚いた。「またか」と思いたくなるような坂を何度越えたかわからない。距離も重ねてきただけに、徐々にスタミナが落ちてきているのを実感した。協力してきた集団のメンバーだったが、残り20km地点の上りでふるいにかけようとペースアップがかかる。補給食をしっかりと食べていたこともあり、なんとか粘りきった。残った10人ほどのメンバーで、ラスト10kmの平坦を50km/hに迫る勢いで目指した。

210km初挑戦は31位で終えた Photo: Photo: Naoi HIRASAWA210km初挑戦は31位で終えた Photo: Photo: Naoi HIRASAWA

 「やっと終わる」という安堵感と、「もう終わってしまうのか」という複雑な心境でラスト1kmの看板を通過。密かに集団内で頭を取ろうと狙っていたが、早いタイミングでの飛び出しに失敗し埋没。集団ではビリでゴールし、31位でレースを終えた。結果はどうあれ、全力で走りきることができ、大きな達成感を味わった。久しぶりにこんなに楽しいレースを経験したと思う。

 ツール・ド・おきなわの市民210kmは、今まで出場してきた国内レースのなかでダントツで一番面白かった。参加に至る準備、しっかりとしたトレーニングを計画的に行わないと完走すら危ういというレベルの高さ、そして、脚力だけでなく経験や思考能力も問われる“リアルロードレース”だ。おきなわ以外のレースで味わうことは無いだろう。市民レーサーが毎年、高いモチベーションで臨むのも納得ができる。すでに来年の大会まで1年を切った。来年も高い志で参加しようと思う。

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