上りでアタック、鮮やか逃げ切り増田成幸が“最高のシーズン”を締めくくる快勝 ツール・ド・おきなわ男子詳報

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 日本最大級のロードレースイベントである「第28回ツール・ド・おきなわ2016」。11月13日に行われたUCI(国際自転車競技連合)公認レースの男子チャンピオンレースは、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が単独逃げ切りで2年ぶり2度目の優勝。自身も「素晴らしいシーズンだった」と振り返った1年を最高の形で締めくくった。

ラスト約12kmを独走し2年ぶり2度目の優勝を飾った増田成幸 Photo: Syunsuke FUKUMITSUラスト約12kmを独走し2年ぶり2度目の優勝を飾った増田成幸 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

中盤までハイペースでレース進行

 “ホビーレーサーの祭典”とも称されるツール・ド・おきなわだが、メインレースである男子チャンピオンレースはUCIアジアツアー1.2クラスに位置づけられる。同ツアーはすでに2017年シーズン対象のレースが始まっており、このチャンピオンレースも該当。来シーズンのビッグレース出場に関係する、UCIポイント獲得における貴重な機会となっている。

午前6時45分、号砲とともに選手たちがスタート Photo: Syunsuke FUKUMITSU午前6時45分、号砲とともに選手たちがスタート Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 このレースの特徴は、210kmという長丁場である点。例年11月の開催は、シーズン最終盤とあって、力のある選手にとっても過酷な戦いとなる。コースは名護市を出発し、名護湾と東シナ海に面した本部半島を時計回りに進んだ後、海岸線を北上。沖縄本島最北端の国頭村を反時計回りに周回し、太平洋沿いを南下して名護市へと戻ってくる。沖縄本島北部をおおむね8の字に進むルートは、中盤に2カ所の山岳ポイントが設けられるほか、後半にかけても細かなアップダウンが控える。

 午前6時45分、号砲とともにスタートした出走77選手。パレード走行区間が設けられていないこともあって、早くから次々と逃げ狙いのアタックが発生する。たびたび10人から15人程度の先頭グループが形成されかけるが、メイン集団が彼らの先行を許さない。

ようやく4人が先行するも

 なかなか逃げが決まらないまま、レースは中盤戦へ。60km地点を過ぎたあたりで秋田拓磨(シマノレーシング)とバルト・ディエリッセン(オランダ、ベイビーダンプ サイクリングチーム)が集団から抜け出すことに成功。ようやく逃げが決まった。1回目の山岳ポイントを前に、ホセビセンテ・トリビオ(スペイン)と安原大貴のマトリックスパワータグ勢がそろって追走を開始。頂上を前に合流し、山岳ポイントは安原が1位で通過した。

スタートから60kmを過ぎてメイン集団から抜け出した秋田拓磨(左)とバルト・ディエリッセン Photo: Naoi HIRASAWAスタートから60kmを過ぎてメイン集団から抜け出した秋田拓磨(左)とバルト・ディエリッセン Photo: Naoi HIRASAWA
1回目の山岳ポイントを前に、安原大貴(左)とホセヴィセンテ・トリビオのマトリックスパワータグ勢が追走を開始。やがて先頭2人に追いつく Photo: Naoi HIRASAWA1回目の山岳ポイントを前に、安原大貴(左)とホセヴィセンテ・トリビオのマトリックスパワータグ勢が追走を開始。やがて先頭2人に追いつく Photo: Naoi HIRASAWA

 そのまま先行すると見られた4人だが、沖縄本島北部ルートに入ってトリビオと安原がペースアップ。秋田とディエリッセンを振り切り、チームメート2人でリードを開始。メイン集団に対し、最大で8分20秒の差を築いた。

追走のスピードを上げるメイン集団。人数が徐々に絞られ、約20人が先頭に追いつく Photo: Naoi HIRASAWA追走のスピードを上げるメイン集団。人数が徐々に絞られ、約20人が先頭に追いつく Photo: Naoi HIRASAWA

 一方のメイン集団もアップダウンを利用して人数の絞り込みを図る。2回目の山岳ポイントを通過する頃には約20人となり、各チームの有力選手たちが勝負を見据えて進んでいく。

 迎えた2回目の山岳ポイントも安原が1位通過。しかし、メイン集団がグングンと差を縮め、名護市に向かって太平洋沿いを南下し始めると逃げていた2人を吸収した。

4人に絞られた優勝争い 冴えた増田のアタック

 有力選手がそろったメイン集団だったが、メンバーの絞り込みはさらに進み、8人が先頭グループを形成する。メンバーは、増田、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)、湊諒(シマノレーシング)、吉田隼人(マトリックスパワータグ)、内間康平、西薗良太(ともにブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)、ベンジャミン・プラデス(スペイン、チームUKYO)。その後方では、数人がブリッジを仕掛けるが、好メンバーがそろった先頭グループのペースが緩むことはなく、追いつくことは難しい状況だ。

 さらに、クロフォードがアタックすると、増田と内間が反応。プラデスも追いつき、4人が先を急ぐ。その他のメンバーもペースアップして続きたいところだが、その差は開く一方だ。

会心の勝利に、沿道の観客に向かってガッツポーズする増田成幸 Photo: Syunsuke FUKUMITSU会心の勝利に、沿道の観客に向かってガッツポーズする増田成幸 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 4人に絞られた勝負は、ラスト12kmで大きな局面を迎えた。上りを利用して増田がアタックすると、ここまで協調してきた他の3人と差が徐々に広がっていく。やがてプラデスが遅れ、クロフォードと内間が増田を追うが、タイム差は10秒、20秒、30秒と開きを見せる。残り5kmとなる頃には約40秒のリードを確保。増田にとっては、トラブルさえなければ問題なく逃げ切れる差だ。

2位争いはジャイ・クロフォードが制した Photo: Syunsuke FUKUMITSU2位争いはジャイ・クロフォードが制した Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そして、快調に飛ばした増田が1人でフィニッシュ前へとやってきた。トップの座を競うライバルの姿はない。文句なしの逃げ切り勝利は目前だ。優勝を確信すると、沿道の観客に向けてガッツポーズでしっかりとアピール。最後は両拳を高々と掲げてフィニッシュラインを通過した。増田にとっては、2年ぶりのおきなわ制覇となった。

 増田歓喜のフィニッシュから33秒後、2位争いとなったクロフォードと内間がやってきた。先着したのはクロフォード。地元沖縄での凱旋レースとなった内間は少し遅れて3位でレースを終えた。

増田「日本のレースシーンを盛り上げていきたい」

 会心の逃げ切りに満面の笑みをたたえた増田。今シーズンはUCIレース、国内リーグのJプロツアーと大活躍の1年となった。また、逃げ切りといえば9月に行われたツール・ド・北海道第2ステージでの圧勝劇も記憶に新しい。力で得意の展開に持ち込んだ印象だ。

山岳賞は2度の1位通過を果たした安原大貴が輝いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU山岳賞は2度の1位通過を果たした安原大貴が輝いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 アタックの瞬間を振り返って、「僕も含めてみんないっぱいの状態だったと思う。ただ、ここで行かなかったら絶対に後悔すると思って」と、思い切って勝負に出たことを強調する。そこで勝負を決めたあたりに、ベテランらしい巧みなレース運びが現れたといえるだろう。2位のクロフォードがレース後、「増田のアタックはとても速くて、ついていくことができなかったんだ」と唸ったように、ライバルのお株を奪う仕掛けでもあった。

 それでも、決して楽な勝利だったわけではないという。「いつ走っても厳しいコース」と評し、優勝をかけて逃げ続けた終盤については「何でこんなに苦しい思いをしているんだろう…という気分だった」と苦笑い。苦労してつかんだ栄冠にホッとした様子だ。

6位でフィニッシュした雨澤毅明がヤングライダー賞として表彰された Photo: Syunsuke FUKUMITSU6位でフィニッシュした雨澤毅明がヤングライダー賞として表彰された Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 1月のアジア選手権に始まり、ほぼ休みなく突き進んだ今シーズン。「最高の形で終えられて感無量」と述べる一方で、「経験上、よかった年の次のシーズンは注意しないといけないというのは分かっている。気を抜くことなく、来年を迎えたいと思う」とし、少し休んだらトレーニングを再開する心構えだ。

 長きにわたって日本のトップを走る増田だが、10月で33歳になった。このレースをもって36歳の綾部勇成(愛三工業レーシング)と35歳の井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が現役を退くこともあり、プロトンの年長者としての自覚を強める。

 「僕もあと何年競技ができるか分からないけれど、日本のレースシーンを盛り上げられるようにプロらしい走りを続けていきたい」。さらなる活躍を誓う美しい勝利となった。

表彰を受けた上位3選手。左から2位ジャイ・クロフォード、1位増田成幸、3位内間康平 Photo: Syunsuke FUKUMITSU表彰を受けた上位3選手。左から2位ジャイ・クロフォード、1位増田成幸、3位内間康平 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

ツール・ド・おきなわ 男子チャンピオンロードレース(210km)結果
1 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 5時間7分21秒
2 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +33秒
3 内間康平(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +40秒
4 ベンジャミン・プラデス(スペイン、チームUKYO) +3分45秒
5 湊諒(シマノレーシング)
6 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
7 西薗良太(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
8 吉田隼人(マトリックスパワータグ) +3分49秒
9 畑中勇介(チームUKYO) +5分35秒
10 入部正太朗(シマノレーシング) +7分8秒

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・おきなわ 増田成幸 宇都宮ブリッツェン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載