ジャパンカップオープン覇者の才田直人が3度目の挑戦青空と絶景が待つ3000m超級ヒルクライム 「台湾KOMチャレンジ2016」レポート

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 険しい山々が連なる台湾の東部の太魯閣峡谷で10月28日、台湾で最大規模のヒルクライムレース「台湾KOMチャレンジ2016」が開催された。獲得標高が3000mを超え、距離は100kmとハードなヒルクライムに、ジャパンカップオープン男子を制した才田直人(LEOMO Bellmare Racing Team)が出場。本人の参戦レポートで過酷なレースを振り返る。

太魯閣渓谷の険しいヒルクライムに挑む才田直人(LEOMO Bellmare Racing Team) Photo: Taiwan Cyclist Federation太魯閣渓谷の険しいヒルクライムに挑む才田直人(LEOMO Bellmare Racing Team) Photo: Taiwan Cyclist Federation

距離100km、獲得標高3600m

フィニッシュ地点からは絶景が望める (提供写真)フィニッシュ地点からは絶景が望める (提供写真)

 距離100km、獲得標高3600m、優勝賞金300万円を超えるヒルクライムを想像できるだろうか? なんと飛行機に乗れば東京から約3時間でたどり着ける島国、台湾でこの規格外のレースが開催されている。私がこのレースに初めて出会ったのは2011年。そして今年で3度目の出場となった。

 去年に引き続きサイクルジャージメーカーのSUNVOLTのサポートでこのレースに参加することができた。同じくSUNVOLTがサポートするKIZUNA CYCLING TEAMの一員としての参戦だ。

KIZUNA CYCLING TEAMのメンバー (提供写真)KIZUNA CYCLING TEAMのメンバー (提供写真)
3000m超えのフィニッシュ地点 (提供写真)3000m超えのフィニッシュ地点 (提供写真)

 まだ星が輝くうちに朝食を済ませ6時半のスタートに備える。天気予報は快晴。このレースは標高差が大きいため気温差も大きくなりジャージのチョイスも難しい。私は迷うことなくSUNVOLTのPROfitライトワンピースを選択した。薄手の長袖でバックポケットも付いているため補給食も携帯できる。

最大斜度は20%超の厳しいコース

 スタート地点となるのは台湾東海岸の街、花蓮の海岸線。標高0mからゴールとなる標高3275mの武嶺を目指すことになる。コース終盤に下り区間を含むため獲得標高は3600mを超える。そしてラスト10kmは富士山のあざみラインにも例えられる最大勾配20%以上の激坂が待ち受ける。

土煙が上がるコースを走る先頭集団 (提供写真)土煙が上がるコースを走る先頭集団 (提供写真)

 賞金が大きいこともあり、アジアはもちろん、ヨーロッパからも選手が集まってくる。今年はブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得したオマール・フライレ選手(スペイン、ディメンションデータ)、チームUKYOのオスカル・プジョル選手(スペイン)をはじめ多くのトップクライマーが参戦してきた。日本からは“山の神”森本誠選手や矢部周作選手など名だたるヒルクライマーが同じKIZUNA CYCLING TEAMとして参加した。

 レースは18kmのパレードでスタート。先導車を先頭に時速40kmほどで集団は海岸線を進む。海岸線を離れ橋を渡るといよいよリアルスタートだ。このレースは最後の10kmで決まると言ってよい。そのため強豪選手は静かに勝負の時を待つ。いかに脚を使わずに距離を消化するかが重要だ。

 しかし、これが日本で一般的にイメージするヒルクライムよりはるかに難しい。台湾最大の渓谷である太魯閣渓谷は台風の影響などを受けやすく、あちらこちらで土砂が流れたり、道幅が狭くなったりしている。真っ暗で前が見えないトンネルも多い。車線の中央線には一定間隔でキャットアイが設置されていて、集団内での位置取りにより一層ストレスを与える。

コースには荒れた箇所も点在 (提供写真)コースには荒れた箇所も点在 (提供写真)

 小さな逃げはできるものの、強豪達はお互いの調子を確かめるように淡々と距離を消化していく。レースが進むにつれて、スペインやイタリアのプロ選手がペースを作りアタックを封じ込めていく。標高が2000mを超えてくると呼吸が苦しくなってくる。補給所や土砂が流れた路面の影響で落車が頻発するもうまく回避しながら大きな下り区間を迎えた。

 この下りの後にいよいよラスト10kmの激坂区間が待ち受ける。安全に下ったら、後は全力で挑むのみ!と自分に言い聞かせるも、集団内の下りでキャットアイを踏み自転車が浮いてコントロールを失う。ガードレールに向かって直進しながらも何とか体勢を立て直し、ガードレールに体を預けながら落車を回避。最悪の事態は免れたものの大きく番手を下げて勝負どころに突入することになった。

毎年挑戦したい魅力がある

 そして迎えた激坂区間。脚の疲労に加えて高地による呼吸の苦しさからくる頭痛まで出てきている。気持ちに身体が付いてこない。ここでペースアップをかけたのは外国勢ではなく、なんと森本選手だった。この攻撃で私は遅れてしまい、ここからはただひたすらに自分との戦いに入ってしまった。

12位でゴールした才田 (提供写真)12位でゴールした才田 (提供写真)

 薄い空気の中、永遠とも感じられる激坂が続く。沿道からの「加油!(がんばれ!)」という声援に背中を押されながらひと踏みひと踏み進んで行く。ゴールは目の前に見えているがなかなか近づいてこない。それでも一歩ずつペダルを踏む以外にこの登坂を終わらせる方法はない。そしていよいよゴール。完走の証のメダルを首にかけてもらいやっと足をつくことができた。

KIZUNA CYCLING TEAMはチーム総合2位を獲得 (提供写真)KIZUNA CYCLING TEAMはチーム総合2位を獲得 (提供写真)
完走メダルを首にかけ、頂上で写真に映る才田 (提供写真)完走メダルを首にかけ、頂上で写真に映る才田 (提供写真)
“山の神”と称される森本誠も出場し、6位(アジア人1位)でゴールした (提供写真)“山の神”と称される森本誠も出場し、6位(アジア人1位)でゴールした (提供写真)

 呼吸が整わないなか、ふと顔を上げると抜けるような青空と3000m級の山々。絶景が目の前に。言葉では表現できない達成感がそこにはあった。

 結果は12位。優勝はオスカル・プジョル選手で、森本選手は6位(アジア人1位!)の大健闘だった。そしてKIZUNA CYCLING TEAMはチーム総合で2位を獲得。皆で表彰台に上ることができて最高の思い出を作ることができた。世界で最も厳しいヒルクライムであると思う。登り切った時は疲労困憊だ。それでも来年また走りたいと思う。そんなクライマーたちの心を掴んで離さない魅力がある大会だと3度目の挑戦で改めて実感した。おそらく来年、私はこの激坂でまた一歩一歩ペダルを踏んでいることだろう。

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