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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<183>UCIワールドチーム残留なるか ディメンションデータ 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ヨーロッパを中心に、サイクルロードレースシーズンはオフを迎えつつある現在。例年、大物の移籍で盛り上がるストーブリーグは、2017年シーズンからUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーレースが増加することもあり、所属メンバーの整備を慎重に進めるチームが多い。その中にあって、すでに来年の陣容がおおむね固まっているのがディメンションデータ。UCIワールドチーム残留にかかる不安は残しているものの、戦える体制づくりを整えた“アフリカの雄”について、来季の展望をお届けしたい。

UCIワールドチーム残留なるか発表が待たれるディメンションデータ。戦力は充実している =ツール・ド・フランス2016チームプレゼンテーション、2016年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADAUCIワールドチーム残留なるか発表が待たれるディメンションデータ。戦力は充実している =ツール・ド・フランス2016チームプレゼンテーション、2016年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

UCIワールドチーム残留は決定か

 本コーナー第178回で、来シーズンのUCIワールドチーム決定に関して解説したが、この数週間で情勢は一気に変化を見せている。

トップカテゴリー1年目はUCIワールドツアーチームランキングで最下位だったディメンションデータ =ティレーノ~アドリアティコ2016第1ステージ、2016年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADAトップカテゴリー1年目はUCIワールドツアーチームランキングで最下位だったディメンションデータ =ティレーノ~アドリアティコ2016第1ステージ、2016年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIは当初、2017年シーズンのUCIワールドチーム(第1カテゴリー)の数を現行の18から1チーム減らして17とする案を採用。さらに、2019年までには16チームで構成し、「チャレンジシステム」として年間ポイントによるUCIプロコンチネンタルチーム(第2カテゴリー)との入れ替え制の導入を目指していくとしていた。

 改革の第1弾にあたるこのシーズンオフ、今年限りでティンコフとイアム サイクリングが解散となり、代わってボーラ・ハンスグローエ(現ボーラ・アルゴン18)とバーレーン・メリダが参入を目指してトップカテゴリーへの申請を行っている。このままでは、どこか1チームがUCIワールドチームから落選する憂き目に遭うこととなる。

 その候補の1つがディメンションデータと見られていた。今シーズンのUCIワールドツアーチームランキングでは最下位。対してボーラ・ハンスグローエとバーレーン・メリダは、所属予定選手が保持するUCIワールドツアーポイントを合計すると、全体の上位に入るため、新規参入には支障がないというのがもっぱらの見方であった。

 そんな危険状態にあったディメンションデータに朗報が舞い込んだのは、10月下旬のこと。UCIが予定していたワールドチーム数の削減を撤回し、2018年シーズン終了までは現在の18チームで行っていく方針を定めたというのだ。それが決まれば、新規参入2チームも含め、よほどの問題(経済状況などの運営面、アンチ・ドーピング姿勢、チーム戦力など)がない限り、少なくとも来年はトップカテゴリーを主戦場とすることができる。

 これには、ツール・ド・フランスを主催するアモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)が大きく関係していると考えられている。元々、A.S.O.がUCIワールドチームの数を減らすようUCIに求めていたとされるが、ディメンションデータ社はツールを筆頭にA.S.O.主催レースにおいてデータ提供を行っており、先頃には大型契約を結んだとも報じられた。こうした背景から、同社がスポンサードするチームが「よりよい環境で戦えるよう」ビジネス的な配慮も行った可能性が高い。

チームと契約延長に合意したタイラー・ファラー =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージ、2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADAチームと契約延長に合意したタイラー・ファラー =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージ、2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 こうした流れの中、チームではエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)、タイラー・ファラー(アメリカ)、イゴール・アントン(スペイン)の主力3選手が契約延長に合意。ビッグレースで活躍する彼らの判断からは、チームの置かれている状況がある程度落ち着きを見せたと推測することもできる。

 UCIとA.S.O.の利害が一致しての暫定的な方針転換となったが、あとは正式な発表が待たれるのみとなっている。11月中にはUCIが17または18のUCIワールドチームを明らかにする予定だ。

カヴェンディッシュはロードへの比重を高める

 揺れ動く状況のチームではあるが、どのような形であれトップシーンで見られることは間違いない。戦力面にも目を向けていこう。

 チームは今シーズン、32勝を挙げた。ステージ優勝が多くを占め、それが結果的にUCIワールドツアーポイントの上積みにつなげられなかった感は否めないが、それでも今年からトップカテゴリーに昇格したチームとしては上出来だといえるだろう。2007年に前身チームが発足して以降、着々と階段を上がってきている。

 その中心に立つのは、エーススプリンターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)。今シーズンは多くの夢を叶えた1年となった。

悲願のマイヨジョーヌに袖を通したマーク・カヴェンディッシュ =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA悲願のマイヨジョーヌに袖を通したマーク・カヴェンディッシュ =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA
ロード比重を高める2017年は歓喜の姿を何度目にすることができるか =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADAロード比重を高める2017年は歓喜の姿を何度目にすることができるか =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 7月のツールでは、第1ステージで優勝。多くのタイトルを獲得してきた中にあって、マイヨジョーヌにだけは手が届かずにいたが、ついに栄光のジャージを手繰り寄せた。また、トラック・ロードすべてのキャリアを通じてオリンピックのメダル獲得経験がなかったが、リオデジャネイロ五輪ではトラック・オムニアムで銀メダルを獲得。金メダルにはあと一歩届かなかったが、五輪メダルにこだわって久々のトラック復帰を果たした甲斐があった。その後、ロード世界選手権でも銀メダルを収めている。

マーク・カヴェンディッシュのスプリントは、発射台マーク・レンショー(左)の働きにかかっている =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADAマーク・カヴェンディッシュのスプリントは、発射台マーク・レンショー(左)の働きにかかっている =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 五輪明けとなる来シーズンは、再びロードへの比重を高める1年となりそうだ。現時点では目標を明確にしていないが、ツールを軸にミラノ~サンレモや各地のステージレースで勝利を目指すことだろう。発射台のマーク・レンショー(オーストラリア)や、リードアウトマンのベルンハルト・アイゼル(オーストリア)といった脇を固める選手も引き続きチームメートとして走ることは心強い。カヴェンディッシュに匹敵するスプリント力の持ち主、クリスティアン・スバラーリ(イタリア)も控え、強力二枚看板の形成も現実味を帯びる。

 また、ボーラ・アルゴン18から移籍するスコット・スウェイツ(イギリス)は今年、ロード世界選手権の代表に抜擢され、カヴェンディッシュをアシスト。スプリント、逃げともに得意とするスピードマンとあって、晴れてチームメートとなって同国の先輩を支えることになりそうだ。

ボアッソンハーゲン、カミングスらも大きな勝利を狙う

 カヴェンディッシュ以外にもタレントがそろっているのが、このチームの魅力。

クラシックでの活躍が期待されるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第4ステージ、2016年6月9日 Photo: Yuzuru SUNADAクラシックでの活躍が期待されるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第4ステージ、2016年6月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その先頭に立つのが、ボアッソンハーゲン。今シーズンのUCIワールドツアーでは2勝にとどまったが、得意とするレースでは確実に上位に進出する。活躍が期待されるクラシックでも、パリ~ルーベで優勝まであと一歩に迫るなど、今後のビッグタイトル獲得を予感させる走りを見せた。これまで故障に泣かされることが多かったが、万全の調子であれば勝利量産の可能性は十分にある。

総合狙いからアシストまで幅広く走ることができるスティーヴン・カミングス =ツール・ド・フランス2016第7ステージ、2016年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA総合狙いからアシストまで幅広く走ることができるスティーヴン・カミングス =ツール・ド・フランス2016第7ステージ、2016年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スティーヴン・カミングス(イギリス)は、ツール第7ステージの逃げ切り勝利をはじめ、シーズン5勝。9月には地元最大のレースであるツアー・オブ・ブリテンで総合優勝を挙げた。ステージレースでの総合狙いからスプリントトレインの牽引まで、チームオーダーに沿って幅広く走ることができるベテランだ。

 今シーズン加入したオマール・フライレ(スペイン)は、ブエルタ・ア・エスパーニャで2年連続の山岳賞を獲得。地元レースでの活躍が光るが、今後はジロ・デ・イタリアやツールへの進出も目指したいところだ。

アフリカ勢では筆頭格のダニエル・テクレハイマノット =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージ、2016年6月12日 Photo: Yuzuru SUNADAアフリカ勢では筆頭格のダニエル・テクレハイマノット =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第7ステージ、2016年6月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このチームの目的の1つである「アフリカ人選手の育成」も順調に進行中。戦力として欠かせないダニエル・テクレハイマノットのほか、ロード世界選手権で逃げから粘って13位とインパクトを残したナトナエル・ベルハネ、注目のクライマーであるメルハウィ・クドゥスゲブレメドヒンら、エリトリア勢が台頭。そこにレイナールト・イャンスファンレンスブルフら南アフリカ勢も加わり、アフリカ大陸出身のライダーが一大勢力となる可能性を秘める。

ツール・ド・北海道2016第4ステージを制したラクラン・モートンが3年ぶりにトップチームに復帰する =2016年9月3日 Photo: Syunsuke FUKUMITSUツール・ド・北海道2016第4ステージを制したラクラン・モートンが3年ぶりにトップチームに復帰する =2016年9月3日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 新加入は現時点で5人。スウェイツのほか、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチームからは、経験豊富なベンジャミン・キング(アメリカ)が加わる。ジェリーベリーp/bマキシスから移籍するラクラン・モートン(オーストラリア)は、3年ぶりのトップチーム復帰。9月に行われたツール・ド・北海道第4ステージで優勝し、日本でも知られる選手だ。8月にはツアー・オブ・ユタでUCIワールドチーム勢を撃破し総合優勝しており、山岳やステージ総合を狙うことになるだろう。

ディメンションデータ 2016-2017 選手動向

【残留】
イゴール・アントン(スペイン)
ナトナエル・テウェルドメドヒン・ベルハネ(エリトリア)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
スティーヴン・カミングス(イギリス)
マクセブ・ドゥバサイ(エリトリア)
ニコラス・ドゥーガル(南アフリカ)
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)
タイラー・ファラー(アメリカ)
オマール・フライレ(スペイン)
ネイサン・ハース(オーストラリア)
ジャック・イャンスファンレンスブルフ(南アフリカ)
レイナールト・イャンスファンレンスブルフ(南アフリカ)
メルハウィ・クドゥスゲブレメドヒン(エリトリア)
エイドリアン・ニヨンシュチ(ルワンダ)
セルジュ・パウェルス(ベルギー)
ユーセフ・レグイグイ(アルジェリア)
マーク・レンショー(オーストラリア)
クリスティアン・スバラーリ(イタリア)
ダニエル・テクレハイマノット(エリトリア)
ジェイロバート・トムソン(南アフリカ)
ヨハン・ファンジル(南アフリカ)
ヤコブス・フェンター(南アフリカ)

【加入】
ライアン・ギブソンズ(南アフリカ) ←ディメンションデータ・フォー・クベカ
ベンジャミン・キング(アメリカ) ←キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム
ラクラン・モートン(オーストラリア) ←ジェリーベリーp/bマキシス
ベン・オコナー(オーストラリア) ←アヴァンティ・アイソウェイスポーツ
スコット・スウェイツ(イギリス) ←ボーラ・アルゴン18

【退団】
テオ・ボス(オランダ) →トラック専念
マシュー・ブラメイヤー(アイルランド) →アクアブルースポーツ
ソンゲゾ・ジム(南アフリカ) →未定
キャメロン・メイヤー(オーストラリア) →トラック専念
カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ) →バーレーン・メリダ

今週の爆走ライダー-セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 スプリント王国のディメンションデータにあって、ステージレースの総合成績を狙える貴重な存在。

山岳を中心に健闘を見せるセルジュ・パウェルス =ツール・ド・フランス2016第15ステージ、2016年7月17日 Photo: Yuzuru SUNADA山岳を中心に健闘を見せるセルジュ・パウェルス =ツール・ド・フランス2016第15ステージ、2016年7月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 さまざまな国のチームを渡り歩いてきたが、今のチームに入って自らの走りを誇示できるようになった。それまではアシストとして堅実さを見せてはいたが、自身で勝負にいけることはそう多くはなかった。

 チーム内での立場を決定付けたのは、2015年のツール。山岳で見せた再三の逃げへのチャレンジは、勝利にこそ届かなかったが、総合成績に直結させてみせた。終わってみれば総合13位。自分でも驚きの好成績となった。

 それでも、目標はあくまでもステージ優勝。ポディウムで華やかに祝福されることを夢見る。2009年にサーヴェロ テストチームで走った縁で現チームに加わった経緯があるだけに、首脳陣への恩返しもしたいところだ。

 2017年でプロキャリア12年目を迎えるが、その前には学業にも力を入れていたという努力家。高校までは科学と数学を、名門のアントワープ大学では経済学を専攻したというインテリだ。緻密に計算されたクレバーな走りを来シーズンも見せてくれることだろう。

2017年はプロ12年目となるセルジュ・パウェルス。経験に裏打ちされたインテリジェンスな走りが見られるはずだ Photo: Yuzuru SUNADA2017年はプロ12年目となるセルジュ・パウェルス。経験に裏打ちされたインテリジェンスな走りが見られるはずだ Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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