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つれづれイタリア~ノ<さいたま編>通訳として見た「2016 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の舞台裏

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 東京、渋谷で日本最大の“仮装集会”が始まろうとしている10月29日の夜、埼玉県さいたま新都心で世界最大の自転車の祭典、ツール・ド・フランスの海外イベントの一つ、さいたまクリテリウムが終わりを告げました。4回目の開催となった同大会ですが、今回初めてすべてのチャンピオンジャージが揃い、例年にない盛り上がりを見せました。宇都宮で行われたばかりのジャパンカップに続き、世界で活躍する憧れの選手たちを間近に見られる貴重な機会。今年もスタッフとして参加しましたので、裏方として見た景色を見られなかった人のために語りたいと思います。

さいたまクリテリウムの前夜祭の一幕。通訳として選手たちと一緒にステージに(画面中央、フルームの右隣が筆者) Photo: Naoi HIRASAWAさいたまクリテリウムの前夜祭の一幕。通訳として選手たちと一緒にステージに(画面中央、フルームの右隣が筆者) Photo: Naoi HIRASAWA

プロ選手は英語とイタリア語が必須

 今年も私は通訳として参加しました。多くの言葉が飛び交う中、自転車競技において英語、フランス語、イタリア語の通訳は欠かせないものです。公式の通訳の主な仕事内容は次のようなものです。

・前夜祭の通訳
・レース後のコメント通訳
・メディアの囲み取材への対応
・見回りの対応
・運営スタッフの手伝いなど

ラファウ・マイカに通訳する筆者 Photo: Naoi HIRASAWAラファウ・マイカに通訳する筆者 Photo: Naoi HIRASAWA

 今回、私のほか3人の女性が通訳として活躍し、私が担当したのがラファウ・ マイカとペテル・サガン。2014年に続き、2度目です。両者はティンコフ所属ですが、マイカがポーランド人、サガンはスロバキア人。国境が接していても互いに言葉が通じません(まるで日本語と韓国語の違い)。

 もちろん両者は英語を少し話せますが、驚いたことに二人の間の共通語は英語ではなく、イタリア語でした。二人ともイタリア語は不思議なほど流暢。サガンも言葉遣いが繊細で、スペイン人のスタッフともずっとイタリア語を話していました。インタビューの時も「イタリア語か英語、どっちで答えればいい?」と何回も聞かれ、ミックスになりました。プロ選手は英語のほか、イタリア語が必須科目と言えるでしょう。

選手たちとの適切な距離

 選手たちが大会関係者やメディアとのコミュニケーションに困らないよう、通訳は適切な距離を保ちながらずっとそばにいます。一流の選手たちに囲まれ、ファンならきっとたまらない状況ですが、ここは仕事の場ですので一線を引く必要があります。

メディアによるサガン(左)とフルームの囲み取材 Photo : Yuzuru SUNADAメディアによるサガン(左)とフルームの囲み取材 Photo : Yuzuru SUNADA

 ただし、ずっと選手たちと行動をともすることになるため、徐々に選手から信頼され、着替えの最中や撮影時に選手たちの携帯や財布、重要な所有物などは同行するチームスタッフではなく、私に預けてくることがしばしばあります。何回もクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)やサガンなどの携帯や財布を預かることになりました。光栄なことです。

サガンとマイカ、仲がよすぎ問題!

 2年前、初めてサガンとマイカを担当した当時はまだそれほどではありませんでしたが、同じチームとなったマイカとサガンは仲が良すぎるぐらい仲がいい。移動中や控室でずっと一緒でした。

前夜祭で羽織袴を着た選手たち。まるで刀を抜くようなポーズで Photo : Yuzuru SUNADA前夜祭で羽織袴を着た選手たち。まるで刀を抜くようなポーズで Photo : Yuzuru SUNADA

 さらに前夜祭の会見中にも新人賞を獲得したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイク エクスチェンジ)の英語の強烈な訛りを聞いて、「どこの人なの?笑」と互いに笑いあっていました。他の内容も楽しく、彼らの裏に座っている私も何度か笑いそうになりました。もちろん、そこで笑ったらプロ失格ですね(プライバシー保護のため会話は非公開とします)。

カリスマ性を発揮するサガン

初優勝のゴール後、さいたまスーパーアリーナに帰ってきたペテル・サガンがウィリーを披露 Photo: Naoi HIRASAWA初優勝のゴール後、さいたまスーパーアリーナに帰ってきたペテル・サガンがウィリーを披露 Photo: Naoi HIRASAWA

 フルームやマイカの物静かな性格に対し、サガンは好奇心の塊です。明るさで人々を巻き込み、カリスマ性を発揮するタイプの人間です。大会前日に予定されていたパレードのため、侍の衣装を身にまとったサガンがいきなり日本刀を探し始めました。「せっかく侍の格好をしているので、刀がないと格好悪い」という理由からでした。

 「好きなことは好き!嫌いなものは嫌い!」このサガンのまっすぐな姿勢が人々を魅了するのです。

残念な日本のメディア

 最後ですが、自転車メディアに対する不満を述べたいと思います。サガンが最後のステージに優勝し、優勝記者会見が行われましたが、そのときのメディアの質問内容の薄さに対し、啞然としました。「さいたまクリテリウムはどうでしたか?」「優勝の決め手はどこにありました?」「さいたまはどうですか?」という程度でした。

 私が記者だったらこれほどのチャンピオンが目の前にいたら山ほどの質問をぶつける姿勢で挑みます。2度目の世界選手権優勝に対する感想、来シーズンの移籍に関する情報、ティンコフに対する思いなどなど。

 遠慮する姿勢は大事ですが、ジャーナリズムは責めることから始まるのではないかと思います。優勝者は質問がないと、逆に不安になります。記者を目指す者がいたら、ぜひ質問術を磨きましょう。

 では、来年のさいたまクリテリウムも楽しみにしていてくだい。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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