サイクルモード2016で初公開オージーケーカブトの技術を凝縮 空力を追求したロードヘルメット「エアロR1」登場

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 国内ヘルメットメーカー大手の「オージーケーカブト」は11月4日、千葉・幕張で開幕した「サイクルモード・インターナショナル 2016」の同社ブースで、新たなエアロヘルメット「AERO-R1」(エアロR1)を発表した。エアロ効果を極限まで追求しつつ、快適性能も突き詰めたエアロR1の開発秘話とディティールを現地レポートとともにお伝えする。

サイクルモード2016に登場したオージーケーカブトの新作エアロヘルメット「エアロR1」 Photo: Shusaku MATSUOサイクルモード2016に登場したオージーケーカブトの新作エアロヘルメット「エアロR1」 Photo: Shusaku MATSUO

追求されたエアロダイナミクス

後部には空力デバイス「ウェイクスタビライザー」を装備。空気の乱れを軽減させる Photo: Shusaku MATSUO後部には空力デバイス「ウェイクスタビライザー」を装備。空気の乱れを軽減させる Photo: Shusaku MATSUO

 ヘルメットは頭部を落車時の衝撃から守るためになくてはならない装備だ。オージーケーカブトはライダーの安全を第一に考え、衝撃緩和やダメージの軽減を目指して開発している。同時に、開発の最も大事なテーマの一つとされるのがエアロダイナミクスだ。前方投影面積では大きくはないヘルメットだが、走行状況ではライダーのパワーを数ワット軽減させる効果を生み出す。

大きく開いた前面のベンチレーションからは大量の空気をヘルメット内部へと送り込む Photo: Shusaku MATSUO大きく開いた前面のベンチレーションからは大量の空気をヘルメット内部へと送り込む Photo: Shusaku MATSUO

 エアロR1は後頭部を切り詰めた「ショートテール」で最大限のエアロ効果を得られるヘルメットとして開発された。そのコンセプトは、トラック競技で“1000分の1秒を削るため”のエアロヘルメットの開発を重ねてきた同社の歩みに由縁する。

 オージーケーカブトは2008年、北京五輪に際して「エアロTP」を開発。そして、12年のロンドン五輪ではバイザーの段差をなくし、更に空力性能を高めた「エアロTL」を投入した。これら2つは後頭部が長く設計され、背中に沿うようなデザインで整流効果を最大限に発揮するものだった。

エアロTP(右)からシールド部の段差やベンチレーション形状を見直したエアロTL(左)。空気抵抗を大幅に削減できた (提供写真)エアロTP(右)からシールド部の段差やベンチレーション形状を見直したエアロTL(左)。空気抵抗を大幅に削減できた (提供写真)
ショートテールで運動性能を高めたエアロヘルメット「エアロSL」 (提供写真)ショートテールで運動性能を高めたエアロヘルメット「エアロSL」 (提供写真)
リオデジャネイロ五輪、男子スプリント決勝の最中、後ろの選手を確認するカラム・スキナー(イギリス)。レース中、選手は正面だけを向いているわけではない Photo: Phil WALTER/Getty Imagesリオデジャネイロ五輪、男子スプリント決勝の最中、後ろの選手を確認するカラム・スキナー(イギリス)。レース中、選手は正面だけを向いているわけではない Photo: Phil WALTER/Getty Images

 しかし、これには重大な“落とし穴”があった。ケイリンやスプリントなど、複数人で走行する競技では後部に鋭角な外観のヘルメットはレギュレーション上使用できない。また、北京五輪ではチームスプリントで一走を務める長塚智広は「数グラムでも後ろに重りがあると負荷に感じる」と訴え、オージーケーカブトに「ショートタイプのエアロヘルメットを」とリクエストした。一走の選手は加速力が必要とされるため、体の動きを邪魔されたくないとの願いだった。

 こうした問題に対し、開発陣が出した答えがショートテールのエアロヘルメット「エアロSN」だ。後部を短くしながらも、整流効果を生む絶妙なデザインで、永井清史が北京五輪においてケイリンで銅メダルを獲得した。また、ロンドン五輪ではバイザー付近の段差を無くし、さらにエアロ効果を高めた「エアロSL」を開発。オージーケーカブトの製品は選手からの要望もあり、リオデジャネイロ五輪では実に9カ国の選手が使用した。

 その一人、イギリス代表選手のカラム・スキナーはリオ五輪でタイム競技の男子チームスプリントに出場し、エアロTLを被って金メダルに輝いた。さらに、一対一で勝敗を決める男子スプリントでは愛用のショートテールのエアロSLで出走。銀メダルを獲得する活躍を見せた。

リオ五輪トラック競技男子チームスプリントで金メダルに輝き、表彰台でほほ笑むイギリス代表のカラム・スキナー(右) Photo: Bryn LENNON/Getty Imagesリオ五輪トラック競技男子チームスプリントで金メダルに輝き、表彰台でほほ笑むイギリス代表のカラム・スキナー(右) Photo: Bryn LENNON/Getty Images
リオ五輪トラック競技男子チームスプリント決勝を制し、国旗を振るカラム・スキナー(イギリス) Photo: Bryn LENNON/Getty Imagesリオ五輪トラック競技男子チームスプリント決勝を制し、国旗を振るカラム・スキナー(イギリス) Photo: Bryn LENNON/Getty Images
日本代表として戦う中川誠一郎はエアロSLを被る Photo: Yuzuru SUNADA日本代表として戦う中川誠一郎はエアロSLを被る Photo: Yuzuru SUNADA

 また、アジア屈指のトッププロ競輪選手で“ロケットアワン”のニックネームで親しまれるアジズルハスニ・アワンはマレーシア代表として男子ケイリンの決勝に進出。エアロSLを被って銅メダルを獲得し、アジア人として表彰台で存在感を示した。

リオ五輪トラック競技男子ケイリンで他の選手らをリードする“ロケットアワン”ことマレーシア代表のアジズルハスニ・アワン(左) Photo: Bryn LENNON/Getty Imagesリオ五輪トラック競技男子ケイリンで他の選手らをリードする“ロケットアワン”ことマレーシア代表のアジズルハスニ・アワン(左) Photo: Bryn LENNON/Getty Images

トラックの“ショートエアロ”をロードシーンへ

 「サイクルモード2016」で初公開されたエアロR1には、同社が培ったエアロ技術が惜しみなく投入された。数値流体力学(CFD)解析を駆使したデザインに加え、左右には「ウェイクスタビライザー」を設置し、優れた整流効果を実現した。

ウェイクスタビライザーはヘルメットから離れた位置で空気を乱れさせ、抵抗を最小限にさせる Photo: Shusaku MATSUOウェイクスタビライザーはヘルメットから離れた位置で空気を乱れさせ、抵抗を最小限にさせる Photo: Shusaku MATSUO
天井部にもベンチレーションがあり、空気の“抜け”を助ける Photo: Shusaku MATSUO天井部にもベンチレーションがあり、空気の“抜け”を助ける Photo: Shusaku MATSUO

 このウェイクスタビライザーとは独自の空力デバイスで、自社の風洞実験設備で、時速300km/hを超えるオートバイ用ヘルメットの空気抵抗低減の研究を重ねて独自開発、特許を取得したシステムだ。ヘルメット後頭部左右にスタビライザーを設けることで、空気抵抗の一因となるヘルメット後部で発生する乱気流を整えることができる。これをサイクル用ヘルメットで初めて採用。ショートタイプながら、ロングテールタイプと同レベルの空力性能を発揮するという。

ベンチレーションや額の隙間から取り入れた空気は、CFD解析でシミュレーションされた溝を通り、後方へと排出される Photo: Shusaku MATSUOベンチレーションや額の隙間から取り入れた空気は、CFD解析でシミュレーションされた溝を通り、後方へと排出される Photo: Shusaku MATSUO

 ロードシーンではエアロ効果に加え、乗車時に蒸れや暑さを抑える快適性能も重要だ。エアロR1ではフロントの大きなベンチレーションから空気を取り入れ、ヘルメットの中を風が通り抜け、後部のベンチレーションに流れるエアルートをCFD解析を用いて設計。ライナー形状を作り込み、高温多湿な環境でもエアロと快適性を両立させた。

 通気性は自社の風洞設備での実験で証明されている。温めた人型の模型にエアロR1を被せ、一定の風を当てて温度変化を計測。結果、他社のエアロロードヘルメットと比べ、最高レベルの性能評価を得られたという。

 フロントに取り付けられるバイザーはマグネットで取り外しができ、使用しないときは逆向きに固定が可能。メガネをかけたままでもバイザーが使用ができ、フィット感もテスト済みだ。フロントにはベンチレーション横にアイウェアを差し込めるホールが用意され、ユーザビリティにも優れている。

マグネットで固定するシールドが同梱。メガネユーザーでも快適に使用出来る※シールドはサンプル Photo: Shusaku MATSUOマグネットで固定するシールドが同梱。メガネユーザーでも快適に使用出来る※シールドはサンプル Photo: Shusaku MATSUO
アイウェアを差し込み、固定できるホールを装備 Photo: Shusaku MATSUOアイウェアを差し込み、固定できるホールを装備 Photo: Shusaku MATSUO

 開発者の一人、オージーケーカブトの吉田健氏は「エアロR1はコンセプトを決めた段階からモーターバイク用のヘルメットの技術を応用しようと決めました。300km/hを超える世界で得た空力技術は、必ず自転車用のヘルメットにも活きるはずです」と説明。また「数値的なデータも大事ですが、ライダーが被った感覚も重要です」と話し、前面のベンチレーションの大きさや、内部の溝の深さなどを何度も変え、実際に繰り返し被ってテストをしたことを明かした。

空力デバイスについて語る開発者の吉田健氏 Photo: Shusaku MATSUO空力デバイスについて語る開発者の吉田健氏 Photo: Shusaku MATSUO

 「ショートエアロヘルメットの特徴を活かして、トラックレースやトライアスロンでも使用してもらえればと思います。テスト結果では過去に五輪で活躍したエアロヘルメットのエアロTPよりも空力性能が高いことがテストでも証明されています」と続けた。

 販売価格は未定だが、関係者の話では2万円を切るだろうと予想される。

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