日本でもおなじみ、UCIワールドチームのスポンサー「ランプレ・メリダ」の“ランプレ”って何の会社? 実は身近にある「あの」製品

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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新城幸也が手にしているのが「ランプレ」の製品。この素材は意外と身近なところで使われている Photo: Shusaku MATSUO新城幸也が手にしているのが「ランプレ」の製品。この素材は意外と身近なところで使われている Photo: Shusaku MATSUO

 新城幸也の活躍などで、日本でもおなじみとなったイタリアのUCIワールドチーム「ランプレ・メリダ」。その名を聞くと紺とピンクの鮮やかなジャージを思い出す人も多いだろう。しかし「メリダ」が台湾の自転車メーカーであると知っていても、「ランプレ」が何の企業なのか知らない人は少なくないのでは? 実は我々の身近なところにあるランプレ製品。意外にもそれを、川崎にある「秀光」(しゅうこう)という家具メーカーの工場で知ることができた。

オフィスや銀行にあるランプレ社製品

 ジャパンカップ直後の10月25日、同社で関係者向けの工場見学が行われた。訪れたのは「ランプレ・メリダ」のブルーノ・ヴィチーノ監督をはじめ、チームの広報担当アンドレア・アッピアーニ、そして選手のマッテーオ・ボーノ(イタリア)、マッティア・カッタネオ(イタリア)、マヌエーレ・モーリ(イタリア)、シモーネ・ペティッリ(イタリア)、新城の6人。さらにNIPPOヴィーニファンティーニのフランチェスコ・ペロージGMと、かつてランプレ・メリダに所属していたダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)も姿を見せるなど、豪華メンバーが集まった。

秀光の佐久間悠太さん(中央)と、見学工場に訪れたランプレ・メリダの選手たち。左からブルーノ・ヴィチーノ監督、マッティア・カッタネオ、マッテーオ・ボーノ、マヌエーレ・モーリ、シモーネ・ペティッリ Photo: Shusaku MATSUO秀光の佐久間悠太さん(中央)と、見学工場に訪れたランプレ・メリダの選手たち。左からブルーノ・ヴィチーノ監督、マッティア・カッタネオ、マッテーオ・ボーノ、マヌエーレ・モーリ、シモーネ・ペティッリ Photo: Shusaku MATSUO
ランプレ社の「プレコーティングラミネート鋼板」。二子玉川に本社を置く某企業の「壁一面ホワイトボード」としても使われている Photo: Kyoko GOTOランプレ社の「プレコーティングラミネート鋼板」。二子玉川に本社を置く某企業の「壁一面ホワイトボード」としても使われている Photo: Kyoko GOTO

 会場となった「秀光」は家具の製造販売などを手掛ける企業。自宅で使用する家具ではなく、主にオフィスや銀行、ホテルのロビーなどに設置するインテリアを取り扱う大手メーカーだ。

 この秀光が家具の製材として使用しているのが、ランプレの「プレコーティングラミネート鋼板」。ランプレ社の鋼板は特殊なフィルムでコーティングされており、一般的のカラー鋼板と違って折り曲げても変色したりしないのが特徴だ。同素材で作られた製品は、意外と我々の生活の身近なところに存在し、例えば銀行のATMコーナーに設けられた間仕切りなどは業界全体の約7割のシェアを占める。

ランプレ社の「プレコーティングラミネート鋼板」 Photo: Shusaku MATSUOランプレ社の「プレコーティングラミネート鋼板」 Photo: Shusaku MATSUO
ランプレ社のカラー鋼板を銀行などのカウンターに使用 Photo: Shusaku MATSUOランプレ社のカラー鋼板を銀行などのカウンターに使用 Photo: Shusaku MATSUO
ランプレ社のカラー鋼板を加工 Photo: Shusaku MATSUOランプレ社のカラー鋼板を加工 Photo: Shusaku MATSUO
加工作業に見入るランプレ・メリダの選手たち Photo: Shusaku MATSUO加工作業に見入るランプレ・メリダの選手たち Photo: Shusaku MATSUO
ダミアーノ・クネゴも駆けつけた Photo: Shusaku MATSUOダミアーノ・クネゴも駆けつけた Photo: Shusaku MATSUO
チームジャージの袖部分。メリダの上に「Shukoh」の文字 Photo: Kyoko GOTOチームジャージの袖部分。メリダの上に「Shukoh」の文字 Photo: Kyoko GOTO

 この鋼板を通じてランプレ社とつながった秀光も5年前からランプレ・メリダのスポンサー企業となり、ジャパンカップなど日本のレースを走るときに着用するチームジャージに企業名を連ねている。

 秀光の佐久間悠太・取締役テクニカルディレクターは「我々の場合、重要なのは対消費者よりも対企業の関係性。そう意味では一般に広く知ってもらうよりも、ビジネスの上でランプレ・メリダと関連づけて“あの秀光”といわれることを目指したい。スポンサード活動はそのための会社の名刺ともいえる」と語る。

秀光 取締役 テクニカルディレクターの佐久間悠太さん。イタリア留学の経験があり、愛車はデローザ Photo: Shusaku MATSUO秀光 取締役 テクニカルディレクターの佐久間悠太さん。イタリア留学の経験があり、愛車はデローザ Photo: Shusaku MATSUO

 一方で、「ランプレも我々も、会社としてはなかなか皆さんに知られにくい存在だが、ジャパンカップで4回ほどスポンサーを務め、ブースを出したりしていたことで、自転車ファンの方には秀光という名が認知されてきた」と語り、「自転車競技はヨーロッパで非常に人気があり、社会的にも機能しているスポーツなので、日本もそれに近づけたらおもしろい。4年後には五輪に向けてスポーツと良い関係を構築できるようになれば」とスポンサー企業としての展望を語った。

スポンサーに見る時代の変化と文化

川崎にある秀光の工場に集まったランプレ・メリダの選手たちとメディア陣 Photo: Shusaku MATSUO川崎にある秀光の工場に集まったランプレ・メリダの選手たちとメディア陣 Photo: Shusaku MATSUO

 スポンサーの歴史を紐解くと、その時代の文化的背景が見えてくる。同日行われた「自転車レースと企業スポンサーのかかわり」と題したトークセッションで、『Cyclist』の連載でもおなじみのファヴァロ・マルコ氏がイタリアのスポンサーを例にその変遷を解説。1960年代の高度成長経済期は家具メーカーが台頭し、70年代に入ると食品業界が参入、80年代はファッション業界、そしてランプレが参入した90年代は日本のゲーム機器メーカー「SEGA」なども登場した。そして2000年以降はティンコフやサクソバンクに代表されるように、金融や投資会社などの参入が始まった。

トークセッションの司会を務めたファヴァロ・マルコ氏 Photo: Shusaku MATSUOトークセッションの司会を務めたファヴァロ・マルコ氏 Photo: Shusaku MATSUO

 マルコ氏によると、ロードレースを視聴できる全世界の人口は、ツール・ド・フランスが1位のサッカーワールドカップの35億人に次ぐ2位(26億人)、ジロ・デ・イタリアは9位(6億人)となっている。そしてロードレースの最大の強みは放送時間の長さ。サッカーの放送時間が最大平均2時間であるのに対しロードレースは3~4時間。国営放送で禁じられている企業名が、チーム名として長時間読み上げられることになる。

 露出の高さだけでなく、スポンサーには自社の企業戦略も重要な判断材料となる。ランプレ・メリダ広報のアッピアーニ氏によると、ランプレ社がスポンサーとなった理由は、自転車の「紳士的で、誰でも親しめるスポーツ」というイメージを企業に重ねる意図があった。

「ランプレ・メリダ」の広報を担当するアンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Shusaku MATSUO「ランプレ・メリダ」の広報を担当するアンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Shusaku MATSUO
NIPPO・ヴィーニファンティーニのフランチェスコ・ペロージGM Photo: Shusaku MATSUONIPPO・ヴィーニファンティーニのフランチェスコ・ペロージGM Photo: Shusaku MATSUO

 一方、NIPPO・ヴィーニファンティーニのフランチェスコ・ペロージ氏は、イタリア国内だけでなく海外市場への展開を図る上でロードレースの網羅性が適していたことが最大の理由であると説明。また、レースの勝敗だけでなく若い選手たちの健闘や育成活動を企業イメージにリンクさせることにも重きを置いているとした。

チャンピオンシステム・ジャパンの棈木亮二氏 Photo: Shusaku MATSUOチャンピオンシステム・ジャパンの棈木亮二氏 Photo: Shusaku MATSUO

 サイクルウェアブランドのチャンピオンシステム・ジャパンの棈木亮二社長は、5年前にプロコンチネンタルチームを立ち上げた経験に言及。2年間活動したが十分な訴求効果が得られなかったとし、消費者への圧倒的な影響力をもつUCIワールドチームのスポンサードへと転向した。3年前からランプレ・メリダのチームウェアの供給を開始し、その結果売上が従来の5倍に増加したことを明らかにした。

中国登録となるランプレ・メリダ「日本人選手にもチャンス」

アンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Kyoko GOTOアンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Kyoko GOTO

 来シーズン以降は中国企業のスポンサードのもと中国登録のチームとなるランプレ・メリダ。日本のレースにも数多く出場してきた同チームが、本格的にアジア進出を果たした背景にはどんな狙いがあるのか。また、中国に軸足を置くことで、チーム運営として今後どのような展開を見込んでいるのか。ランプレ・メリダの広報担当、アンドレア・アッピアーニ氏に話を伺った。

――ランプレは以前から頻繁に来日しているイメージがありますが、どのようなねらいがあったのでしょうか? またこうしたアジアへの積極的な動きが中国のスポンサーの獲得につながったのでしょうか?

 「たしかに1990年代からよく日本のレースに出場しています。それはチームマネジャーであるジュゼッペ・サロンニの『イタリアに限らず他の国のレースにも参加したい』という意思によるものです。ジャパンカップも初回から参加しており、日本の大会運営や熱心なファンなどに感動したサロンニは、他の選手にも日本人の心構えを見てほしいと言っていますし、ジャパンカップにはこれからも出続けたいと言っています。

アンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Kyoko GOTOアンドレア・アッピアーニ氏 Photo: Kyoko GOTO

 中国はまだ発達段階の国ですが、ポテンシャルが高い国の1つ。2006年に研修生とし2人の中国人をイタリアに招きました。チームとして以前からアジア人を招待し、アジアにも自転車競技を広めたいと考えています。

 その理由は2つあります。経済的な側面もありますが、なにより中国は人口が多いので、近い将来チャンピオンが誕生する可能性は十分にある。また中国は次の東京五輪に向けて選手の育成にも力を入れようとしていますので、今後の伸び代に期待しています。

 そしてメリダという自転車メーカーの存在も大きいです。中国を意識し、広報活動も中国語を使って展開していたことが新たなスポンサー獲得につながったのだと思います」

――来シーズンは新城選手が移籍しますが、また新しい日本人が入る可能性は?

 「シーズン終わったばかりでまた枠が残ってるので、チームに有利な選手がいればぜひとも。新城の活躍もあり、日本に対しては好意的に思っているので、チームとして適した選手がいれば受け入れたいと思います」

――日本人の実力次第でチャンスはある?

 「はい、その通りです」

――南アフリカのルイ・メインティス選手など、他国の選手も多く採用していますが、アジア以外にも今後フォーカスしていきたい国はありますか?

 「かつて自転車競技は欧州中心のスポーツでしたが、いまはもう状況が変わりました。そういった意味ではこだわらず、チームとしてより多くの人に参加してほしいと思っています。

Photo: Kyoko GOTOPhoto: Kyoko GOTO

 チームとして、そのスポンサーの国の選手たちを優先するのは当然ですが、今はまだそこまで中国人に特化しているわけではありません。今後優れた選手が生まれると思いますが、今のところは見込みのある選手はいないので、能力のある選手はどの国の選手でも受け入れたいと思います」

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