世界を知るブランドのロードバイクヨネックス「カーボネックス」の製造現場を初公開 完全国内生産の高品質カーボンフレーム

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 バドミントン、テニスラケットの世界的ブランド「YONEX」(ヨネックス)が、ロードバイクフレーム「CARBONEX」(カーボネックス)を2014年に発売して2年半が過ぎた。話題を呼んだ新規参入は、国際レースでの活躍やリオデジャネイロ五輪代表入りなど、確かな実績を残し始めている。ヨネックスの自転車はどのようにして作られるのか、ベールに包まれた生産の現場に初めて密着し、開発者に話を聞いた。

金型が半分吊り上げられ、熱成型を終えたカーボンフレームが姿を現した Photo: Ryuta IWASAKI金型が半分吊り上げられ、熱成型を終えたカーボンフレームが姿を現した Photo: Ryuta IWASAKI

新潟の工場で完全国内生産

新潟県長岡市のヨネックス新潟生産本部 Photo: Ryuta IWASAKI新潟県長岡市のヨネックス新潟生産本部 Photo: Ryuta IWASAKI

 ヨネックスは1946(昭和21)年、現在の新潟県長岡市で、創業者の米山稔氏が木工製品の製造・販売を始めたのが発祥。昭和30年代にバドミントンラケットの製造を始めて以降、スポーツ用品を中心とした製品を展開する。バドミントンラケットでは世界的なシェアを持つ日本が誇るスポーツブランドだ。訪れたのは新潟県長岡市の新潟生産本部。ヨネックスのロードバイクは全てここで作られている。

 同じ敷地内では、テニスラケット、ゴルフクラブ、スノーボードなども作られる。スポーツサイクルを生産している棟の一角では、出荷前の最終チェックが行われていた。細部まで仕上がりを確認した後に、シリアルナンバーを刻印して箱詰めされる。工場というと機械が大きな音を立てながら、流れ作業で製品が出来上がっていく様子を想像するが、予想に反して静かな室内で繊細な作業が積み重ねられていた。

丁寧な手作業を積み重ねて仕上げられていくヨネックスのカーボンフレーム Photo: Ryuta IWASAKI丁寧な手作業を積み重ねて仕上げられていくヨネックスのカーボンフレーム Photo: Ryuta IWASAKI
完成したフレームには、誇らしげに日の丸と「MADE IN JAPAN」のマークが入る Photo: Ryuta IWASAKI完成したフレームには、誇らしげに日の丸と「MADE IN JAPAN」のマークが入る Photo: Ryuta IWASAKI

確かな品質にこだわり

ロードバイクの開発を担当した技術開発第一部の、樋熊忠治事業開発課長(左)と、前田祥吾スポーツサイクルサイクル班主任 Photo: Ryuta IWASAKIロードバイクの開発を担当した技術開発第一部の、樋熊忠治事業開発課長(左)と、前田祥吾スポーツサイクルサイクル班主任 Photo: Ryuta IWASAKI

 新潟生産本部全体では現在500人近くが働いており、ロードバイクの製造を担当するのは6人の少数精鋭体制。作業工程は重なっておらず、技術を持つ正社員がそれぞれの工程を全面的に担当することで、安定した高い品質が保たれている。例えばプリプレグ(カーボン基材)の切り出しから貼り合わせ、型に入れての成型までを1人の職人が担当している。

 ヨネックスはラケット製造においては、日本国内のほか、台湾、中国で生産を行っているが、高い品質が要求される高価格帯の製品は全て日本製だという。スポーツサイクルの開発に携わる技術開発第一部の樋熊忠治さんは、「メイド・イン・ジャパンにこだわる訳ではないが、私たちの要求する品質が、海外生産では手に入らない」と国内生産の理由を語った。ラケットの低価格帯商品は海外生産されているが、ヨネックスの要求水準が高すぎるとして、現地の工場との交渉に苦慮することも少なくないという。

大型のカッティングマシンでプリプレグ(カーボン基材)を切り出していく。数百に上るパーツは全て記憶しているという Photo: Ryuta IWASAKI大型のカッティングマシンでプリプレグ(カーボン基材)を切り出していく。数百に上るパーツは全て記憶しているという Photo: Ryuta IWASAKI

 国内生産の利点として、樋熊さんは「バラつきが少ない」ことを挙げる。海外では基準値から許容される範囲に収めれば良いという考え方が主流だが、日本人はさらに公差の中心にできるだけ近付けようと努力するという。また、開発と生産の現場が直結していることで、試作品の製作やフィードバックを直接行えるため、開発のスピードを速くできるという。

ゼロから開発 試作は100パターン以上

金型から慎重にカーボンフレームを取り外す Photo: Ryuta IWASAKI金型から慎重にカーボンフレームを取り外す Photo: Ryuta IWASAKI

 ロードバイクの開発がスタートしたのは2010年。当時の米山勉社長(現会長)が、ラケット製造で培ったカーボン技術を生かした新事業として、カーボンフレームが主流になってきたロードバイクに目をつけた。設計のコンセプトは、当時のヨネックス全体が掲げていた「最軽量」とし、フレーム重量650gを具体的な目標としたという。素材に造詣の深い樋熊さんがカーボン積層の設計を担当。フレーム形状は造形を得意とする前田祥吾さんが手がけた。

 ゼロからの自転車作りだったが、既存製品の研究や製法に関する情報を収集するなどして、フレームの形を作るまではさほど時間がかからなかったという。だがここから製品版に至るまで、形状は2度大きく作り直し、カーボン積層を変えながら100パターン以上の試作を繰り返した。

 形状面では、剛性を確保しながら軽量化する工夫が重ねられた。チェーンステーにはテニスラケットで使われるO.P.S.(オーバルプレスドシャフト理論)を採用し、適度なしなりと横剛性を同時に実現した。

 4年の開発期間を経て完成したロードバイクフレームに付けられた名は「カーボネックス」。かつてラケット、ゴルフクラブなどで、記念すべき最初のカーボン製品に使われた名称が、ロードバイクでも採用された。軽さとともに万人に使いやすいオールラウンドなロードフレームを志向し、推進力、バネ、振動吸収の全てにおいて、ほぼ狙い通りに仕上げることができたという。

カーボネックスのフレームは4ピース構造。各部を接着した後、丁寧に全体が仕上げられる Photo: Ryuta IWASAKIカーボネックスのフレームは4ピース構造。各部を接着した後、丁寧に全体が仕上げられる Photo: Ryuta IWASAKI

ラケット基準の丁寧な仕上げ

塗装を完璧に仕上げるために、非常に細かい部分まで丁寧に調整が行われる Photo: Ryuta IWASAKI塗装を完璧に仕上げるために、非常に細かい部分まで丁寧に調整が行われる Photo: Ryuta IWASAKI

 現行製品ではカーボネックスHRと合わせた全体で10種類のプリプレグを使い分け、フレームとフロントフォークで1台あたり500近いパーツを組み合わせる。カットされたプリプレグを貼り合わせ、型に入れて熱硬化成型してフレームの形が作られる。型から取り出されたカーボンフレームは、細かい生地調整の仕上げ作業を経て塗装工程へと進む。パテやヤスリを使っての生地調整は、性能に直接関わる部分ではないが、ラケットの品質基準に合わせた細かい仕上げにこだわる。

羽のように軽いフェザーライト塗装は、塗装重量を15g以下に抑えた軽量塗装 © YONEX羽のように軽いフェザーライト塗装は、塗装重量を15g以下に抑えた軽量塗装 © YONEX

 塗装も同じ工場内で行われ、細かいマスキングやマークの処理も丁寧に行われていく。塗装の質は生地調整で7~8割決まるといい、繊細な仕上げ作業の結果、使用する塗料を極限まで削減し、塗装重量を15g以下に抑えたフェザーライト塗装でも、フレームを保護する必要充分な強度は保ちながら、熟練の塗装技術によって、美しい仕上がりを実現している。

塗装も同じ工場内で行われる Photo: Ryuta IWASAKI塗装も同じ工場内で行われる Photo: Ryuta IWASAKI
マークの位置を確認する Photo: Ryuta IWASAKIマークの位置を確認する Photo: Ryuta IWASAKI
塗装したフレームは丁寧に磨き上げられる Photo: Ryuta IWASAKI塗装したフレームは丁寧に磨き上げられる Photo: Ryuta IWASAKI

 2017年モデルではブルーとグリーンの、いわゆる「ヨネックスカラー」も登場した。色選びにもこだわり、カーボネックスとカーボネックスHRではそれぞれのイメージに合わせて、同じブルーとグリーンの組み合わせでも、使用する色を微妙に変えた。色選びには同系色のカラーチップを数十パターン組み合わせて、慎重に吟味が重ねられたという。

同系色をいくつも組み合わせてカラーを吟味 Photo: Ryuta IWASAKI同系色をいくつも組み合わせてカラーを吟味 Photo: Ryuta IWASAKI
カーボネックスHRにはパールを強めたブルーが採用された Photo: Ryuta IWASAKIカーボネックスHRにはパールを強めたブルーが採用された Photo: Ryuta IWASAKI

トップスポーツシーンとともに

キナンサイクリングチームは日本だけでなくアジア、ヨーロッパを舞台に国際的に活動する Photo: KINAN CYCLING TEAMキナンサイクリングチームは日本だけでなくアジア、ヨーロッパを舞台に国際的に活動する Photo: KINAN CYCLING TEAM

 2013年秋に発表されたカーボネックスは、2014年4月に発売を開始。2015年からは全日本女子ロードチャンピオンの與那嶺恵理選手(ポワトゥー-シャラント・フュテュホスコープ・86)や、男子UCIコンチネンタルチームの「キナンサイクリングチーム」といった国内トップ選手に基材供給を行うなど、ヨネックスが手がける他のスポーツと同様、トップダウン形式の展開を進めている。

 オールラウンダーな軽量バイクとして登場した初代カーボネックスに対し、昨年登場したカーボネックスHRは、キナンサイクリングチームのフィードバックに応えて登場したバージョンだ。軽すぎるカーボネックス(UCI規定の完成車最低重量6.8kgを簡単に下回ってしまう)のバランスを変更し、若干の重量増と引き換えにペダリング剛性を上げて、反応速度をアップしている。好みによって使い分けが可能で、與那嶺選手は軽いカーボネックスを使用しているという。

今年リオ五輪に出場した與那嶺恵理選手(中央)。壮行会には米山勉会長(右から2人目)を始めヨネックス社員も駆けつけた Photo: Ikki YONEYAMA今年リオ五輪に出場した與那嶺恵理選手(中央)。壮行会には米山勉会長(右から2人目)を始めヨネックス社員も駆けつけた Photo: Ikki YONEYAMA

 開発当初は冗談交じりに「東京五輪に行けたらいいね」と話していたそうだが、今年ヨネックスに乗る與那嶺選手が五輪代表選考会で圧勝。発売からわずか2年で、リオデジャネイロ五輪の舞台に立つことになったのは、常にトップスポーツを志向するヨネックスならではだろう。ちなみにヨネックスは女子ダブルスで金メダルを獲得したバドミントンをはじめ、テニス、ゴルフ、スノーボードでも、直近の五輪に出場を果たしている。

 今後はディスクブレーキ対応や、性格を変えた異なるシリーズのフレームなど、バリエーションを増やしていきたいという。トップスポーツと共にヨネックスは、日本ならではの品質を武器に、世界で活躍する製品をこれからも生み出していく。

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