悔しさの中に未来への手ごたえも日本勢は女子・細谷35位、男子・蠣崎42位が最高 UCIロード世界選手権ジュニアロード

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 カタールの首都・ドーハで開催中のUCI(国際自転車競技連合)ロード世界選手権は10月14日、男女ジュニアのロードレースが行われた。日本勢は、女子で細谷夢菜(浦和工業高校)が35位、男子では蠣崎優仁(伊豆総合高校)の42位がそれぞれ最高だった。

UCIロード世界選手権、男子ジュニアロードレースで逃げ切り勝利を収めたヤコブ・エグホルム Photo: Yuzuru SUNADAUCIロード世界選手権、男子ジュニアロードレースで逃げ切り勝利を収めたヤコブ・エグホルム Photo: Yuzuru SUNADA

女子ジュニアはイタリアのバルサモが快勝

 競技6日目の午前は、女子ジュニアロードレースが行われた。メイン会場である「ザ・パール・カタール」内に設定された、1周15.2kmのサーキットをおおよそ4周回する74.5kmで争われた。大会前半に実施したタイムトライアル種目同様、コーナーやシケインが次々と現れるテクニカルなコースだ。出場は17~18歳(1998~1999年生まれ)の選手が対象となる。

女子ジュニアロードレース、スプリントで勝利したのはイタリアのエリサ・バルサモ Photo: Yuzuru SUNADA女子ジュニアロードレース、スプリントで勝利したのはイタリアのエリサ・バルサモ Photo: Yuzuru SUNADA

 レースはスタート直後から落車が頻発。この影響で、一時は集団が複数に分裂する場面も見られたが、1周回目の後半には多くの選手が先頭へ復帰した。一方で、遅れを取り戻せず、後方での展開を余儀なくされた選手も多数。序盤で落車に見舞われていた下山もその1人となってしまった。

 メイン集団は逃げや決定的なアタックが見られず、時折ペースアップを試みる選手こそいたものの、一団のまま最終周回を迎えた。日本勢は細谷がこの中でレースを進め、チャンスをうかがった。

 フィニッシュを意識し、幾分牽制状態となった集団だったが、最終局面にかけてペースを上げたのはイタリアのスプリントトレイン。3選手が先頭を固め、他国に付け入る隙を与えない。細谷はラスト6km付近から前方をキープしスプリントに備えるが、トレインを形成してエースプリンターの引き上げを狙う他チームの動きもあり、少しずつポジションを下げてしまった。

35位でフィニッシュする細谷夢菜 Photo: Yuzuru SUNADA35位でフィニッシュする細谷夢菜 Photo: Yuzuru SUNADA

 最後もイタリア勢が実力を発揮。ライバルたちの追い上げをかわし、エリサ・バルサモがトップでフィニッシュラインを通過。2位にはスカイラー・シュナイダー(アメリカ)、3位にはスザンヌ・アンダーセン(ノルウェー)と続いた。

 トップと同集団でフィニッシュした細谷は35位、最終グルペットでレースを終えた下山は70位だった。

課題を克服し来年の世界選手権へ

 今シーズンの高校女子自転車界では、ロード・トラックを通じて敵なしだった細谷と、今年1月のアジア選手権でこの種目を制した下山。女子のジュニア年代では日本のトップを行く2人が挑んだ世界の舞台。結果に対し、それぞれに悔しさを募らせたが、未来への課題も見つかる収穫あるレースだった。

レース後に取材を受ける細谷夢菜。ボトルキャッチができていれば、との悔しさが募る Photo: Syunsuke FUKUMITSUレース後に取材を受ける細谷夢菜。ボトルキャッチができていれば、との悔しさが募る Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 メイン集団内でフィニッシュした細谷は、しばらくして日本ナショナルチームスタッフに付き添われながら、チームカーへとやってきた。何より、レース中はボトルを受け取らず、スタート時にバイクに装着していた分だけで74.5kmを走りきったのだという。

 戦いを振り返り、ボトル受け取りができなかったことを悔やむ。「きっちりボトルが受け取れていれば、きっと上位に絡むことができた」と細谷。大会前のトレーニングでは、時速50kmを超えるスピードの中でも受け取りができていたといい、かねてから苦手だったというボトルキャッチに向上の手ごたえもつかんでいた。だが、レースになると多くの選手が集団内で混走するなかでの受け取りとなり、同じタイミングで周囲の選手が手を伸ばしてくることも大いにある。他国の選手との技術的な差は、そのまま実戦での経験の差にもつながった。

 同時に、走力の充実も今後目指すところだ。得意とするスプリントだけではなく、これからは独走力や登板力にもこだわってトレーニングしていきたいと話す。来年から早稲田大学への進学が決まっているが、まず着手するのはこの2つのポイントだ。

レースを終え、ミックスゾーンへとやってきた下山美寿々。序盤の落車が響いてしまった Photo: Syunsuke FUKUMITSUレースを終え、ミックスゾーンへとやってきた下山美寿々。序盤の落車が響いてしまった Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 落車の影響で集団復帰が果たせず、完走だけを目指す格好となった下山も表情に悔しさがにじむ。「スタートして2kmくらいで落車してしまって・・・肩から地面に落ちた」と状況を説明してくれた。さらには、「落車したほかの選手と先頭交代しながら前を追ったけれど届かなかった」と続けた。

 10日の個人タイムトライアル終了後には、「来年のこの大会でメダルを獲ること」と長期的な目標を語ってくれた下山。進学校に籍を置き、競技同様に学業にも力を入れる環境にあるが、「これまで同様にどちらもおろそかにしないように。ロードに関しては今回、世界との差を強く感じ、もっと質の高い練習を組み立てていかないといけないと思った」と、これからの1年を見据える。もっとも、ロード・個人TTと世界の舞台で走ったことで思いが高まったようで、「もっと自転車に力を入れたい」と、しっかりとした言葉が返ってきた。

 両者ともに、来年もジュニア資格で競技を行う。次回大会に向けて、世界との差を縮めるためのビジョンは明確になった。

女子ジュニアロードレース(74.5km)結果
1 エリサ・バルサモ(イタリア) 1時間53分4秒
2 スカイラー・シュナイダー(アメリカ) +0秒
3 スザンヌ・アンダーセン(ノルウェー)
4 カロリーナ・ペレキトコ(ポーランド)
5 レティツィア・パテルノステル(イタリア)
6 エマ・ノルスゴール(デンマーク)
7 フランツィスカ・ブラウゼ(ドイツ)
8 サンドラ・アロンソ(スペイン)
9 リアネ・リッペルト(ドイツ)
10 シモーネ・エグ(デンマーク)
35 細谷夢菜(浦和工業高校)
70 下山美寿々(大阪教育大学附属高校天王寺校舎) +10分2秒

男子はエグホルムが鮮やか逃げ切り

 午後に行われた男子ジュニアは、ザ・パール・カタール内を8周回する135.5kmで争われた。日本からは蠣崎のほか、沢田桂太郎(日本大学)、渡邉歩(EQADS)、重満丈(北中城高校)の4人がスタートラインに並んだ。

落車に巻き込まれ、集団から遅れてしまった沢田桂太郎 Photo: Yuzuru SUNADA落車に巻き込まれ、集団から遅れてしまった沢田桂太郎 Photo: Yuzuru SUNADA

 スタート直後から早いペースを作ったのは、アメリカとフランス。猛然と飛び出す動きに、集団中段や後方ではたびたび落車が発生。他国の焦りを生む。こうした中、日本のエーススプリンターである沢田が数回にわたりクラッシュに巻き込まれてしまう。3周回目には集団から脱落した。

 逃げ狙いのアタックがかかっては、メイン集団がキャッチする流れが続いたが、大きく展開が動いたのは5周回目。15人ほどの逃げグループが形成され、有力国の多くが選手を送り込んだ。

 これが結果的に決定打となる。メイン集団とは1分近い差となり、さらには逃げグループ内でも人数の絞り込みを図る仕掛けが起こったことにより、後続の追随を許さなかった。

 残り10kmを切ったところで、ユリウス・ヨハンセン(デンマーク)がチームメートのヤコブ・エグホルムを引き連れアタック。残り6kmからはエグホルムが独走を開始し、後方ではアレクシス・ブルネル(フランス)が追うが、先頭から下がってきたヨハンセンのチェックもあり、エグホルムには届かない。

男子ジュニア上位3選手の表彰。左から2位ニクラス・マルクル、1位ヤコブ・エグホルム、3位レト・ミュラー Photo: Yuzuru SUNADA男子ジュニア上位3選手の表彰。左から2位ニクラス・マルクル、1位ヤコブ・エグホルム、3位レト・ミュラー Photo: Yuzuru SUNADA

 結局、ペースを落とさず進んだエグホルムが後続に7秒差をつけてジュニア世界一の称号を手にした。デンマーク勢は、エグホルムを含め3人を逃げグループに送り込んでレースを作る完勝だった。

 その後ろ、メイン集団はエグホルムから1分45秒差でフィニッシュへ。この中でのスプリントに挑んだ蠣崎が42位、渡邉は60位、重満は62位で終えた。なお、沢田は5周回をもってバイクを降りた。

次なる戦いを視野に入れるジュニア男子メンバー

 レースを終えてミックスゾーンへとやってきた渡邉、重満、蠣崎の3人は、一様に表情が曇る。望んでいたレース、結果とは程遠いものだったのだろう。

集団内を走る渡邉歩 Photo: Yuzuru SUNADA集団内を走る渡邉歩 Photo: Yuzuru SUNADA

 スプリント力のある沢田が序盤に落車に巻き込まれたことにより、ほかの3選手でレースを組み立てようと意思疎通を図ったメンバー。中盤に大きく動きがあったレースにあって、「アタックに対応できる位置にいたが、ほんの一瞬の躊躇で勝負する機会を失ってしまった」と悔やむのは、リーダー格の渡邉。

 メイン集団に待機となったことにより、蠣崎のスプリントに賭けたが、またしても落車の影響でポジションが崩れ、前方へ出ることすらできなかった。蠣崎も重満も「チャンスがあったのに、それを生かせなかったのは本当に悔いが残る」と肩を落とした。

力走する蠣崎優仁 Photo: Yuzuru SUNADA力走する蠣崎優仁 Photo: Yuzuru SUNADA

 だが、収穫も大いにあった。追走を余儀なくされた状況でも、「動くポイントを絞って、脚を使いすぎないようにすること。これは1年間心がけてきて、世界の舞台でも通用したと思う」と渡邉。蠣崎が「集団前方に上がったり、ボトルを受け取るといった動きは落ち着いてできていた」と臆することなく戦ったことを強調すると、重満も「チームの連携は上手くいっていた」と続いた。

集団内を走る重満丈 Photo: Yuzuru SUNADA集団内を走る重満丈 Photo: Yuzuru SUNADA

 落ち込んでもいられない。11月にはジュニア全日本選手権ロードレースが、来年2月にはバーレーンで開催されるアジア選手権が控える。3人ともに、ジュニア全日本で結果を残して、アジア選手権での代表入りを見据える。来季がジュニア2年目の蠣崎、アンダー23へと昇格する渡邉と重満、そして沢田と、世界への階段は昇り続ける心積もりだ。

男子ジュニアロードレース(135.3km)結果
1 ヤコブ・エグホルム(デンマーク) 2時間58分19秒
2 ニクラス・マルクル(ドイツ) +7秒
3 レト・ミュラー(スイス)
4 ルカ・モッツァート(イタリア)
5 ジガ・ホルヴァト(スロベニア)
6 ジガ・イェルマン(スロベニア)
7 イデ・シェリング(オランダ)
8 ヤカ・プリモヂッチ(スロベニア)
9 セドリク・ウレボ(ノルウェー)
10 ハリー・スウィーニー(オーストラリア)
42 蠣崎優仁(伊豆総合高校) +1分45秒
60 渡邉歩(EQADS)
62 重満丈(北中城高校)
DNF 沢田桂太郎(日本大学)

競技7日目は女子エリートロードレースを実施

 大会は残すところ2日。15日は女子エリートロードレースが、ドーハ近郊のカタール・ファンデーションを出発し、ザ・パール・カタールを目指す134.1kmで争われる。序盤の28kmはワンウェイコースで、残りは7周回のサーキットを走る。

 日本からは、11日の個人タイムトライアルに出場した與那嶺恵理(ポワトゥー-シャラント・フュテュホスコープ・86)、スプリンターの吉川美穂(Live GARDEN BICI STELLE)、昨年はジュニアで4位に入った梶原悠未(筑波大学)の3選手が出場する。

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