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私の落車<カルテ9>サーキットの実業団レースで先頭の選手がまさかの自爆 巻き込まれて鎖骨骨折

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【落車カルテ9】

Oさん(33歳・男性)
自転車歴:6年目(事故当時)
事故当時は24歳の社会人1年目

<事故発生状況とその後>
 富士スピードウェイでの実業団のレース(カテゴリー:BR-3)で落車し、鎖骨を折る。先頭集団の2番目を走っているとき、前走者がホームストレート上に置いてあるパイロンを避けるため手信号を出したところ、その前走者が落車。落車した前走者の自転車がハンドルを切った状態で倒れたため、飛び越えることができず、自分を含めた後続選手が次々に落車。身体がふっ飛ばされ、肩から落ちて左鎖骨骨折。その他擦過傷多数。

ひとくちに実業団といっても…

 10年ちょっと前の新卒当時、実業団チームに所属していました。自分のカテゴリーはBR-3でした。実業団はBR-1~3と3段階あって、その中では一番下のクラスです。今でいうE3に近いかな。

 実業団って聞くと、「なんかすごい猛者たちが集まっている」って印象を持つかもしれませんが、実はそんなことはありません。というのも、実業団って登録制なんです。資格とか免許も不要。上のカテゴリーは実績を残さないと上がれませんが、BR-3であれば極端なことをいうと初心者でも入れてしまう。よって選手間のレベルもスキルもバラバラです。

走りやすいストレート区間でまさかの落車

 落車はレースが始まってすぐに起きました。1周目が終わって、集団が「さあいくぞ」ってエンジンを掛け始めたとき、ホームストレートで集団先頭を走っていた選手が路上に置かれていたパイロンをハンドサインで後続に示そうとしたんです。僕らのレースの前にエンデューロイベントが行われていて、その名残がコースに残っていたんですね。ふつうなら、ハンドサインを出しただけでバランスを崩すはずはないんですが、まさかの落車。スピードは時速45km出ていたかどうかってところでしょうか。

約1.5kmと長い富士スピードウェイのメインストレート。後半はなだらかな下り坂となりスピードが増す (イメージ写真)約1.5kmと長い富士スピードウェイのメインストレート。後半はなだらかな下り坂となりスピードが増す (イメージ写真)

 その先頭選手は左でパイロンを指差したのですが、そのままハンドルが左に切れてしまい、ジャックナイフのような感じにハンドルが切れて前触れなく落車しました。しかも不幸なことに、バイクが路面に引っかかるように急停止したため、直後を走っていた自分も避けることができず、巻き添えになりました。身体だけが前に飛び、宙を舞って地面に落下です。

 左肩から着地したので、左の鎖骨を折りました。余談ですが、マーク・カヴェンディッシュは集団落車の際、受け身を取って無事だったことがあるらしいけど、私はそんな芸当はできませんでした(笑)。

大勢の選手が巻き添えを食らった

 ホームストレートで、雨でも何でもない天候、しかも実業団クラスのレース…ふつうは起こり得ない事故でした。自分以外の後続の選手も次々に巻き添えになって、手首骨折や臀部を打撲して足が動かなくなった選手が続出です。不幸中の幸いだったのは、富士スピードウェイはF1が開催されるサーキットなので、メディカルが充実していました。医務室でレントゲンを撮り、複雑骨折は無しと診断され、その場で鎖骨バンド巻かれました。なお、自転車はブラケットに傷がついたぐらいで、ほぼ無傷でした。

 ちなみに、大量落車のきっかけを作った選手は軽い擦過傷程度だったのでそのままレースに復帰したそうです。ゴールスプリント時に斜行してまた大量落車を誘発させたとあとで聞きました…。

仲間の協力もあり、帰宅はできた

事故当時に乗っていたキャノンデール。幸いバイクのダメージはほとんどなかった (提供写真)事故当時に乗っていたキャノンデール。幸いバイクのダメージはほとんどなかった (提供写真)

 チームの仲間は皆、口を揃えて「大丈夫! 俺もやったことがある」と慰めてくれました。でも、職場に迷惑をかけてしまいましたね。当時はコピー機のサービスマンをしていたのですが、新卒1年目で、ちょうど新人研修から現場配属された週の最初の日曜日でした。「配属一週間で骨を折って、会社を休んだ新人」として、営業所があった地区で有名になってしまいました(笑)。

 事故の翌日、近所の整形外科で診断してもらい、「自然治癒で治そう」との診断が出ました。骨折した側の腕が上がらないので入浴が大変ですし、仕事をするにも左手では重いものを持ってはいけないので何かと苦労しました。

 ちなみに、骨折を早く治すためにはビタミンEと日光浴が大事らしいです。お酒を飲むと骨がくっつくのが遅れるので控えたほうがいいのですが、欲望に勝てず少々飲んでしまいました。自転車に乗ってOKの許可が出たのは、落車から1カ月半後ぐらいしてからでした。

身の危険を感じさせる選手の見抜き方

 事故を起こしそうだなと感じさせる、こっちが不安を覚える選手の見分け方ですか? 残念ながら、見た目や機材やバイクではわからないですね。集団内では周囲のライダーに気を配って、走り方を観察します。まず、「車体がフラフラしていないか」。キレイに直進できていない選手はたまにいます。それと、「表情がイッパイイッパイな人」からも離れますね。余裕が無いと集中力が欠け、事故が起きやすいので。あとは「バイクの乗り方、ポジション、ペダリング」ですね。上手じゃないなって思う選手には近づきません。

 脚力だけで力任せに踏むような選手は、ちょっと怖いです。アンクリング(足首が上下に大きく動くペダリング)をしている選手も避けます。あと、細かいことですが、自転車の整備を怠っている選手(チェーンから異音がする、シフトがガチャガチャしている)も危険信号です。なぜなら、変速がうまく決まらないとちょっと減速してしまうのですが、集団内でそれが起きると後続から接触され、落車につながります。ちゃんと整備した状態のバイクでレースに出場するのは、当然のたしなみです。

声やジェスチャーでコミュニケーション

 声でのコミュニケーションはかなりひんぱんに行いますね。知らない選手同士でもふつうに話すし、危ない行為をした選手には注意が飛びます。経験値が高い選手ほど、コミュニケーションがうまいし、躊躇しません。逆に経験が浅い選手は遠慮して黙りがち。ただ、走行中はどうしても大声で怒鳴るようにしか話せないんですよね。勢いに戸惑う選手とか、怒鳴られて萎縮してしまう選手もいますが、べつにケンカを売っているわけではなく、事故を未然に防ぐためにやっているので、コミュニケーションは積極的にやるべきです。

 あと、声以外に「互いを触り合う」ってコミュニケーションもあります。自分のラインに他の選手が知らずに入ってきたら、「ここにいるよ」って感じで背中やお尻をちょんと触るんです。ただこれも、集団走行のしきたりをわかっている選手の間では常識ですが、それを知らない選手は「触られた!」とビビってしまったり、「うわっ」て反射的に動いてしまって接触、落車…ということもあるので注意が必要です。

初心者サイクリストがサーキットで走るときの注意点

1.体調管理

 当たり前ですが、睡眠時間は大事。最低でもイベント前であれば5時間は寝ておきたいですね。サーキットイベントは遠方開催なので、ただでさえ起床時間が早くなるものです。前日は早めに帰宅して準備を済ませ、しっかり寝ること。体調が思わしくなければ、不参加という勇気ある撤退も視野に入れましょう。

2.無理して集団の前に出ようとしない

 サーキット走行はテンションが上がるので、体力に余裕のある序盤はつい前に出たくなるものです。かっこいいところを仲間に見せたい気持ちはわかりますが、オススメしません。まずは後ろで様子を観察すること。なぜなら、その集団は自分のスキルをはるかに超えている人たちかもしれないからです。

 自分の力量に合っていない集団で無理して先頭に出てしまうと、後ろが大迷惑だし、自分が事故原因を作りかねません。まずは集団の後ろについて、自分でも一緒に走れそうか、無理かを判断しましょう。付いていけないのであれば、ちぎれればよいだけですからね。

3.急に座り込んで休まない

(イメージ写真)(イメージ写真)

 エンデューロレースでの話になりますが、交代した後にすぐに椅子にどかっと座って休憩するのはよくないです。できればローラーでクールダウンして、再びコースに出る前にもウォーミングアップしておきましょう。

 身体を冷やさず、心拍を上げておくとスムーズにレースに復帰できます。ローラーがなかったり、それをするスペースが確保されていない会場であれば、せめてちょっと歩くとかしていきなり静止しないように心がけてください。

レース前に峠に行っておこう

 オススメしたいのは、イベントに出場する前に峠に行っておくこと。ヒルクライムでトレーニングしましょうという意味ではなく、下りを経験しておいてほしいんです。サーキットでは、ふだん公道では出せないスピード(時速50~60km)が出てしまうので、下りを使ってそのスピード域に慣れておくという意味です。コーナーでのタイヤグリップの限界、ブレーキの制動距離は前もって知っておくべきです。

 最後のアドバイスとして、「講習会に参加しよう」を挙げたいですね。エンデューロレースって、スタート前の試走タイムに初心者講習会を開催してくれるものです。「オレ、初心者じゃねーし!」、「私、中級者だし!」とバカにせず、参加してほしい。へんなプライドは無用です。サーキット走行のコツを教わる良い機会ですので、ぜひ!

<今回の教訓>
『サーキット はやる気持ちを 抑えつつ マナーを守って 無事故で走ろう』

(取材・編集 中山順司)

中山 順司中山 順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するアラフォーブロガー。ブログ「サイクルガジェット」を運営。”徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ローディの方はもちろん、これからロードバイクを始めようかとお考えの方が、「こんなコンテンツを読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。勤務先はfreee

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