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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<178>サガンがUCIワールドツアーランキング初の年間1位 来季ワールドチームの行方は?

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 10月1日のイル・ロンバルディアをもって、2016年シーズンにUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーは全戦終了。年間ランキングが確定し、ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)が初の個人1位となった。また、来シーズンから17チーム編成となるUCIワールドチーム決定の行方も、興味深い状況となってきた。そこで、UCIワールドツアー各ランキング結果とあわせて、来季ワールドチーム決定にかかるポイントを解説していく。

2016年シーズンのUCIワールドツアー個人ランキングで初の1位に輝いたペテル・サガン。ツール・ド・フランドル優勝などビッグレースでの勝利が光った =2016年4月3日 Photo: Yuzuru SUNADA2016年シーズンのUCIワールドツアー個人ランキングで初の1位に輝いたペテル・サガン。ツール・ド・フランドル優勝などビッグレースでの勝利が光った =2016年4月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

プロトンの頂点に君臨するサガン

ツール・ド・フランス第1ステージのスタートラインに並んだビッグネームたち。いずれもUCIワールドツアー個人ランキングで上位に名を連ねた =2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス第1ステージのスタートラインに並んだビッグネームたち。いずれもUCIワールドツアー個人ランキングで上位に名を連ねた =2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 9月25日に閉幕したエネコ・ツアーで総合3位に入り、UCIワールドツアー個人ランキングで首位に浮上したサガン。この大会を終えた時点で、UCIロード世界選手権までレースへの参戦はしないことを明言し、ここまでに獲得した669点で今シーズンのランキング決定を待つ形となった。

 60点差で2位につけていたナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)は、イル・ロンバルディアで優勝(100点獲得)すればサガンを逆転できたが、両者ともに欠場。3位以下の選手は優勝しても首位に上がる望みはなかったため、この時点でサガンの年間個人1位が決まった。

ブエルタ・ア・エスパーニャを制したナイロアレクサンデル・キンタナは年間ランキング2位 =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャを制したナイロアレクサンデル・キンタナは年間ランキング2位 =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年の世界選手権ロードを制し、マイヨアルカンシエルで今シーズンに臨んだサガン。「前年の世界選手権覇者は活躍できない」といったジンクスである、“アルカンシエルの呪い”などどこ吹く風。シーズン勝利数2位タイとなる13勝を挙げ、うち10勝がワールドツアーでの勝ち星。優勝を逃したレースでも、2位や3位といった上位を確実に押さえるケースが多いのも特徴。ツール・ド・フランスでは、中間・フィニッシュといずれも上位を確保し、スプリントポイントをこつこつと稼ぐ“ポイント貯金”を得意とするが、その傾向はワールドツアーランキングでも見られた。

 近年の年間個人1位を振り返ると、2012年と2013年はホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)、2014年と2015年はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)がそれぞれ受賞している。シーズンを通しての波が少なく、常にクラシック、グランツールともに優勝争いを演じてきたあたりに、高ポイント獲得の要因があった。

年間13勝を挙げたペテル・サガン。うち10勝はUCIワールドツアーでの勝利だ =ツール・ド・フランス第11ステージ、2016年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA年間13勝を挙げたペテル・サガン。うち10勝はUCIワールドツアーでの勝利だ =ツール・ド・フランス第11ステージ、2016年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンはというと、ハイアベレージでシーズンを送った点で過去の選手たちと共通しているが、ステージ狙いやビッグクラシックでの勝利に集中してきた。高いポイントを一気に稼ぐことのできるグランツールの総合争いに加わることは基本的にないだけに、脚質的にスプリンター寄りの選手が年間個人1位を獲得するのは異例であり、快挙と捉えてもよいだろう。

 参考までに、「モニュメント」と呼ばれる歴史と格式の高いクラシックレースを優勝して獲得できるUCIポイントは100点で、ツールの総合に当てはめると5位相当。それ以外のクラシックレース優勝は80点。また、ツールのステージ優勝は20点、1週間程度のステージレースのステージ優勝は6点。ロドリゲスやバルベルデがこれまで、4月のアルデンヌクラシックで優勝争いを演じ、なおかつその後のグランツールでは総合表彰台の常連だったことを思うと、今シーズンのサガンが主要レースを次々とモノにしていたことが改めてうかがえる。

 ちなみにサガンは、3月のティレーノ~アドリアティコで総合2位となり、80点を獲得しているが、今年は重要山岳ステージが悪天候のためキャンセル。このステージに賭けていた総合系ライダーが、軒並み上位浮上できなかった経緯がある。山岳では流し気味に走るサガンだけに、もしこのステージが予定通り行われていれば総合順位は大きく変わっていたはずで、獲得したUCIポイントにも影響していたことだろう。このあたりも、年間順位決定のポイントとなっているようだ。

■UCIワールドツアー個人ランキング
1 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ) 669pts
2 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) 609pts
3 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 564pts
4 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 436pts
5 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) 428pts
6 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 420pts
7 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム) 394pts
8 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) 374pts
9 ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) 351pts
10 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) 280pts

ボーラ、バーレーンのワールドチーム入りは濃厚?

 チームランキングでは、モビスター チームが4年連続の1位。チームが獲得した1471点のうち、キンタナが609点、個人4位のバルベルデが436点を稼ぎ出した。やはり、グランツールで総合上位を争う選手が複数いると、それだけ有利だといえる。また、チーム3番手のヨン・イサギレ(スペイン)も270点で個人11位と健闘。得意とする1週間程度のステージレースでポイントを多く獲得した。

UCIワールドツアーチームランキングはモビスター チームが4年連続で1位 =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADAUCIワールドツアーチームランキングはモビスター チームが4年連続で1位 =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 だが、今年は上位チーム以上に下位チームの動向に注目が集まっている。来シーズンから、UCIワールドチームは現在の18チームから1つ減り、17チームで編成されることがすでに決定。ティンコフとイアム サイクリングの撤退が決まっているため、残り16チームは来季も安泰かと思いきや、2チームが新規参入の意思を示したことで、どのチームが落選するのかが見ものとなっているのだ。

 来シーズンからのトップカテゴリー入りを目指しているのは、ドイツ籍のボーラ・ハンスグローエ(現ボーラ・アルゴン18)と新たに結成されたバーレーン・メリダ。ボーラ・ハンスグローエはサガンやラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)らが移籍。バーレーン・メリダはヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、そして新城幸也(ランプレ・メリダ)も立ち上げメンバーとなる。

 両チームに共通するのは、今年のUCIワールドツアーポイントを多く獲得している選手をそろえている点だ。彼らが持つポイントを合計し、今シーズンのチームランキングに当てはめると、ともに上位に名を連ねる。

UCIワールドツアーチームランキングで最下位に終わったディメンションデータ。来シーズンのワールドツアー残留は不透明だ =ツール・ド・フランス2016第2ステージ、2016年7月3日 Photo: Yuzuru SUNADAUCIワールドツアーチームランキングで最下位に終わったディメンションデータ。来シーズンのワールドツアー残留は不透明だ =ツール・ド・フランス2016第2ステージ、2016年7月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、今シーズンのランク最下位は290点にとどまったディメンションデータ。選手が獲得したポイント合計だけであれば、新規参入チームを含めて18番手へと押し出されてしまう。考え方としては、ビッグポイントを持つ選手を獲得し状況を打開すべき、ということになる。ちなみに、来シーズンから移籍加入する選手は現段階で3人決まっているが、そのうちUCIワールドツアーポイントを持つのは、ベンジャミン・キング(アメリカ、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム)の4点にとどまっている。

 とはいえ、来季のUCIワールドチーム決定に際しては、過去のチーム選定と同様に資金面や具体的な運営ビジョン、アンチ・ドーピング姿勢といった部分も評価の対象となるだろう。ワールドツアーポイントはあくまでもチーム力を測る要素であって、これだけですべてが決定するわけではないことを、心にとどめておきたい。

■UCIワールドツアーチームランキング
1 モビスター チーム 1471pts
2 ティンコフ 1361pts
3 チーム スカイ 1187pts
4 BMCレーシングチーム 1128pts
5 オリカ・バイクエクスチェンジ 909pts
6 チーム カチューシャ 789pts
7 エティックス・クイックステップ 775pts
8 キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム 616pts
9 トレック・セガフレード 565pts
10 アスタナ プロチーム 539pts
11 エフデジ 516pts
12 チーム ロットNL・ユンボ 506pts
13 アージェードゥーゼール ラモンディアル 482pts
14 ロット・ソウダル 463pts
15 ランプレ・メリダ 442pts
16 チーム ジャイアント・アルペシン 435pts
17 イアム サイクリング 418pts
18 ディメンションデータ 290pts

今週の爆走ライダー-ピエールロジェ・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 昨年に続く出場となったイル・ロンバルディアでは、中盤にメイン集団を飛び出し、単独で前を追う見せ場を作った。もっとも、早々にメイン集団が縮小するきっかけとなった動きで、4位となったエースのバルデを強力にアシスト。自身も10位でフィニッシュし、このレースに帯同していたスポーツディレクターのジュリアン・ジュルジュ氏して「レースのたびに驚きをもたらしてくれるね」と大絶賛の走りだった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージを制したピエールロジェ・ラトゥール。その後のイル・ロンバルディアでも10位と健闘 =2016年9月10日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージを制したピエールロジェ・ラトゥール。その後のイル・ロンバルディアでも10位と健闘 =2016年9月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今ある勢いは、シーズン序盤から続くものだ。山岳ステージを中心にたびたび上位に進出し、6月のツール・ド・スイスでは1日だけだったがリーダージャージを着用。今年のターゲットに据えていたブエルタ・ア・エスパーニャでは、第20ステージの頂上フィニッシュを制してみせた。

 一躍脚光を浴びる存在となったが、昨年6月に出場したルート・ドゥ・シュド(フランス、UCI2.1)では、コンタドールらに食らいつき高い評価を得るなど、その可能性には大きな期待がかけられ続けている。

 プロ2年目のシーズンを終え、「勝利を必要としていたが、ブエルタでのステージ優勝以降よい流れが続いている」と明るく振り返ったラトゥール。来シーズン以降は、バルデらの山岳アシストのほかにも、自身が勝利を狙う場面が増えてきそうだ。

 ヤングスターが台頭し、ツール制覇が望まれるフランスでまた1人、大物を予感させる男が現れた。23歳のクライマーが新たな光を放つときが、刻一刻と迫っている。

ツール・ド・スイスではリーダージャージを1日着用。2017年シーズン以降の飛躍に期待がかかる =ツール・ド・スイス第5ステージ、2016年6月15日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・スイスではリーダージャージを1日着用。2017年シーズン以降の飛躍に期待がかかる =ツール・ド・スイス第5ステージ、2016年6月15日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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