福光俊介の「寝落ち禁止!ツール三昧」 2013コースプレゼンテーション編<下>本命は? 推しメンは? ツールはすでに始まっているのだ!

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<上>ラルプ・デュエズを1日2回、シャンゼリゼはナイトレース 100回目のツール“新機軸”
2013年に100回目の開催を迎えるツール・ド・フランス。前回の記事でコースの概要についてお伝えしたが、やはり気になるのは選手の動向だ。過去のツールでのレース展開に詳しい方なら、100回目のコースがどの選手に向いているレイアウトであるか、すでに考えていることだろう。

 そこで、まだまだ2013年シーズンの各チーム陣容が固まらない段階ではあるが、ファンの立場を利用して勝手気ままに、少しばかり、いやかなり早いレース展望を書いてみたい。

コースプレゼンテーションは“パリコレ”

 10月24日にパリで開かれたコースプレゼンテーション。そこでは、2012年大会のハイライト映像や、大会責任者であるクリスチャン・プリュドム氏のコメントなどとともに、2013年大会のコースが映像によって発表された。

 また、選手やチーム関係者が多数出席。ディフェンディングチャンピオンのブラッドリー・ウィギンスや総合2位のクリス・フルーム(ともにイギリス、スカイプロサイクリング)、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、来季オメガファルマ・クイックステップ)といったビッグネームが集結した。

 プレゼンテーションの最後には、フィリップ・ジルベール(ベルギー)、カデル・エバンス(オーストラリア)、ティジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)のBMCレーシングトリオも登壇。選手としての実力もさることながら、ファッションセンスに長けた彼らの登場は、さながら“パリコレ”の様相に。この様子はリアルタイムでストリーミング配信もされ、ご覧になった方は、その辺りも楽しく観られたのではないだろうか。

 若干、陰が薄かったものの、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)も出席していた。度重なる怪我や周囲のゴタゴタに、父親のジョニーが引退を助言したとされるも、出席している様子を見る限り、キャリアを終えるといった心配はなさそうだ。

コンタドール? フルーム? エバンス? 激しい総合争いに期待

1992年7月19日、ツール第14ステージでラルプ・デュエズを上るマイヨジョーヌのミゲール・インデュライン(スペイン、バネスト)と、マイヨポワのクラウディオ・キアプッチ(イタリア、カレラ)1992年7月19日、ツール第14ステージでラルプ・デュエズを上るマイヨジョーヌのミゲール・インデュライン(スペイン、バネスト)と、マイヨポワのクラウディオ・キアプッチ(イタリア、カレラ)

 2013年ツールの総合争いは、アルプスが主戦場になるだろう。“魔の山”モン・ヴァントゥー、1ステージに2度の登坂が待ち受けるラルプ・デュエズ、最終決戦の舞台となるであろうアヌシー・セムノスと、戦いの場には事欠かない。一方で、個人タイムトライアルの距離が33km、32kmとあり、TTで圧倒し山岳でアドバンテージを守るスタイルは果たして可能だろうか。

 距離だけで考えれば、答えは「Yes」だと個人的には思うが、顔ぶれを考えた場合、TT能力の高いコンタドール、フルーム、エバンスらがひしめき合い、誰か1人が大きな差を付けることは難しいかもしれない。

2012ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで、マイヨロホを着てゴールを目指すアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)2012ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで、マイヨロホを着てゴールを目指すアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
2012ツール第7ステージを制したクリストファー・フルーム(イギリス、スカイ プロサイクリング)2012ツール第7ステージを制したクリストファー・フルーム(イギリス、スカイ プロサイクリング)

 前置きが長くなったが、総合争いの本命はコンタドールとフルームだろう。コース発表を受けて、連覇の資格を持つウィギンスがジロ・デ・イタリアに専念する意向を表明。スカイは満を持してフルームをエースに立てることとなりそうだ。

 先のブエルタ・ア・エスパーニャでコンタドールは優勝、フルームは10分差の4位にとどまり、2人の結果に大きな差が付いた。しかしフルームが本調子であれば、山岳、TTともにコンタドールに対抗する力は十分にある。

 ドーピング違反による出場停止処分を受けていたコンタドールは、2年ぶりのツール参戦となるが、万全の調整で臨むに違いない。その走りに、大いに期待したい。

 フルームが所属するスカイは、アシストを含め抜群のチーム力を誇るが、コンタドールを擁するサクソバンク・ティンコフバンクもこれまでにない補強を敢行中。ローマン・クロイツィゲル(チェコ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド)、ローリー・サザーランド(オーストラリア)が参戦した場合は、強力な山岳アシストとなる。また、モビスターからマルツィオ・ブルセギン(イタリア)の加入も噂されており、もう数人実力者が加わりそうだ。

 コンタ、フルームに続く存在は、BMCのエバンスや、アスタナへ移籍するヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)か。2011年の覇者でありながら、2012年は失意の総合7位に終わったエバンスにとって、100回目のツールはリベンジの場となる。2012年大会でただ1人、最後までウィギンス、フルームのスカイコンビに対抗したニバリも、引き連れて移籍するアシストマンに支えられながらより積極的なレースを展開したいところだ。

 2012年のツールは不調に終わったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、落車リタイアを喫したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、総合4位のユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)、2012年ジロ・デ・イタリア総合優勝のライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)らも有力だ。いずれもタイムトライアルで持ちこたえられるかどうかがポイントになるだろう。

 けがのため今年のツールは欠場したアンディ・シュレクも、出場すればもちろん総合争いに名乗りを挙げる。こちらもやはりタイムトライアル次第か。

2011年のツール最終ステージで並んで走る(手前から)アンディ・シュレック(ルクセンブルグ、レオパード・トレック)、カデル・エバンス(オーストラリア、BMCレーシング)、フランク・シュレック(ルクセンブルグ、レオパード・トレック)2011年のツール最終ステージで並んで走る(手前から)アンディ・シュレック(ルクセンブルグ、レオパード・トレック)、カデル・エバンス(オーストラリア、BMCレーシング)、フランク・シュレック(ルクセンブルグ、レオパード・トレック)
2012ジャパンカップの終盤、攻撃に出るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。この大会で念願の優勝を果たした2012ジャパンカップの終盤、攻撃に出るイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。この大会で念願の優勝を果たした

 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)、デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)といったベテラン組や、2012年は他のグランツールに専念したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが来年のツールに出場するかどうか、その判断も見逃せない。

カヴが戻ってくるマイヨ・ヴェール争い、サガンの2連覇なるか

 前回の記事で「スプリンター泣かせのツールになるか?」と書いたが、それでも彼らはマイヨ・ヴェールをめぐって厳しいステージをこなしていくことになる。中にはステージ優勝にのみ狙いを絞る選手もいるだろうが、多くのスプリンターは、まずは緑のジャージを目指して中間スプリントとゴールでのポイント獲得を目指す。

2012ツール最終ステージで勝利の雄たけび。4年連続でシャンゼリゼを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、スカイ プロサイクリング)2012ツール最終ステージで勝利の雄たけび。4年連続でシャンゼリゼを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、スカイ プロサイクリング)
2012ツール第6ステージで、ステージ3勝目をマークしたペテル・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)2012ツール第6ステージで、ステージ3勝目をマークしたペテル・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
2012ブエルタ・ア・エスパーニャ最終ステージを制したジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム アルゴス・シマノ)2012ブエルタ・ア・エスパーニャ最終ステージを制したジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム アルゴス・シマノ)

 筆頭は何といってもカヴェンディッシュ。2012年ツールでは、総合狙いのチームスカイでアシスト役も任されたが、今度は新天地のオメガファルマ・クイックステップで、自身のためのチームを組んで臨むことだろう。移籍先でのトレイン編成が俄然楽しみでもある。チームにはトム・ボーネン(ベルギー)も控えるが、クラシックはボーネン、グランツールはカヴェンディッシュと棲み分けができている様子。もしかすると、ボーネンが発射台という申し分のない“贅沢”が実現するかもしれない。

 一方、前回マイヨ・ヴェールを争ったペテル・サガン(スロバキア、来季キャノンデール)、マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は、スプリンターの中では登坂力もあり、山岳ステージでも中間ポイントで稼げるのが強み。2011、12年とステージで勝利を挙げているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は、チーム内に総合狙いのファンデンブロックがいるため、どれだけ自身のためのアシストを揃えられるか。

 あくまでも「チームが出場権を獲得した場合」という注釈が付くが、アルゴス・シマノのドイツ人スプリンター、マルセル・キッテルとジョン・デゲンコルプにも大きな期待が寄せられる。2012年はキッテルがツールでリタイア、デゲンコルプはブエルタでステージ5勝と明暗を分けたが、今後は共闘する意思を示しており、2人揃って参戦となれば、ライバルにとって脅威だ。

キャノンデール増田成幸も“挑戦”

 別府史之(現オリカ・グリーンエッジ)、新城幸也(現ユーロップカー)が2009年にそれぞれ初出場して以来、日本人選手のツール参戦が当たり前となりつつある。特に新城は2012年の第4ステージで敢闘賞を受賞するなど、その活躍ぶりは記憶に新しい。

 2012年にヨーロッパのチームで走った宮澤崇史、土井雪広は、現時点では移籍先が未定だが、トップチームとの契約を勝ち取ることができればチャンスが膨らむ。

2012ジャパンカップで記者会見を開き、来季のキャノンデール加入が発表された宇都宮ブリッツェンの増田成幸(左から2人目)2012ジャパンカップで記者会見を開き、来季のキャノンデール加入が発表された宇都宮ブリッツェンの増田成幸(左から2人目)

 そしてもう1人、キャノンデール入りが決まった増田成幸に可能性が。まずはシーズン序盤に山岳アシストとしてどれだけ機能するか次第ではあるが、そこでチームにとって貴重な存在となれれば、バッソやサガンを支える立ち位置でコルシカのスタートラインに並んでいるかもしれない。

 第14ステージのゴール地・リヨンは、別府のフランスでの拠点の街であり、彼のファンも多い場所。出場が叶えば、ハイライトとなるステージになりそうだ。また、第10ステージのスタート地となるサン・ジルダ・デ・ボワは、新城が拠点とするヴァンデ県に近い。日本人選手にとって馴染みの場所を通過するコース設定だけに、出場への意欲も強くなっていることだろう。

“推しメン”は南アの新鋭ファンレンスブルグ

 2012年大会では、直後にロンドンオリンピックがあったことから、有力選手の欠場も目立ったが、来年は100回目の記念大会でもあり、多くのビッグネームが出場することを願いたい。同時に、ステージハンターや新たな力の台頭にも期待がかかる。

 前回総合5位のヴァンガーデレン、同8位のピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)、同10位でステージ1勝のティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)は若手の筆頭株。

 ジルベールやサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファルマ・クイックステップ)などはステージ勝利を狙う存在。ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)やトニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ)はTTステージの優勝候補。

 新たな力という意味では、スプリンターのアルノー・デマール、ナセル・ブアニ(ともにフランス、FDJ・ビッグマット)、次世代のTT巧者ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ブエルタで健闘したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)、サラブレッドのモレノ・モゼール(イタリア、来季キャノンデール)あたりを推薦したい。

 もう1人、筆者が“推し”の選手を紹介。来季アルゴス・シマノ入りする南アフリカ人選手、レイナルド・ヤンセ・ファンレンスブルグ(23歳)。2012年はUCIアフリカツアーのほか、フランスやポルトガルでのUCI1クラス、2クラスのレースでタイトルを総ナメにした選手。チームの出場権獲得次第ではあるが、出場した場合はきっと何かやってくれるはずだ。名前が長いが、ぜひ彼の名前を覚えておいていただきたい。

賞金総額2億円!

 多くの人とお金が動くツール・ド・フランス。この世界最大の自転車レースの賞金総額は約200万ユーロ、日本円にして約2億円! これでも数年前より多少は減っているそうな。また、1日あたりの賞金が約5万ユーロ。これはステージ優勝以外にも各賞も含めた数字。まぁお金の問題ではないのですが、賞金額の高さはモチベーションにつながりますよね。

 ツール本番までは少し時間があるが、年明けには、ワイルドカード枠を含め出場チームが確定することだろう。そうなれば、チーム動向や戦力分析といったさまざまな情報が、より多く入手できるはずだ。選手や関係者が次のツールに向かって進むのと同様に、われわれファンにとっても「ル・ツール100」はすでに始まっているのだ!

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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