工具はともだち<102>六角が入らない! 形の違う「トルクス」というねじ

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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 今回も「工具はともだち」をお読みいただきありがとうございます。前回101回目という事で、自転車工具の第一歩である「アーレンキー」についてお話ししましたが、最近はその「アーレンキー」が入らないねじが増えてきています。一見星のような形のこのねじは「トルクス®」ねじと言い、アメリカのCamcar(カムカ)という会社が開発したねじの規格です。

力が効率良く伝わる

KTCのT型とルクスビットソケット ©KTCKTCのT型とルクスビットソケット ©KTC

 直線でつながれた六角と違い曲線で構成されていることからボルトとレンチがより面で接触するため、トルクの伝達性、つまり掛けた力が効率良くボルトに伝わります。更に接触面が増える事で、部分的に力が集中し易い通常の六角ボルトや六角穴付きボルトと違って磨耗や割れなどを起こしにくく、耐久性も高くなっています。

 ちなみにこの「トルクス®」は現在アキュメント社の登録商標になっているので、ライセンスを持っている会社しかその名前を使う事はできません(KTCはアキュメント社からライセンスと技術指導を受けているので、「トルクス®」という名称を使用することを正式に許諾されています)。そのため、一般的には「ヘックスローブ」(6つの耳たぶという意味)と呼ばれているんです。「トルクス®」ねじはトルクの伝達性や耐久性の高さから自動車をはじめ様々な分野に浸透しています。

従来の六角ボルトのトルク伝達 ©KTC従来の六角ボルトのトルク伝達 ©KTC
トルクス形状のトルク伝達 ©KTCトルクス形状のトルク伝達 ©KTC

一般の人が外せないように使用

 自転車の分野においても例外ではなく、最近では目にする機会もずいぶんと増えました。ただ、使われている箇所はブレーキ周りなどそれほど触る機会が多くないパーツに使われていることが多いようです。自動車などでも重要保安部品と言われるような車の基本性能に関わるような箇所に多く使用されていて、それは比較的レンチが出回っていない事から、「一般の人が簡単に外せないように」という観点でもあるようです。

T型トルクスねじ ©KTCT型トルクスねじ ©KTC

 100%とは言い切れませんが、自転車においても、このねじが使われている箇所はあまり不用意に触らない方がいいかもしれません。とはいえ、そんなねじでも回さなきゃいけない場合には注意いただきたい点が二つあります。

 まず、こうしたボルト頭がへこんだタイプの物は六角同様しっかり底まで入れて回す事が肝心です。アーレンキーやドライバーも同様なのですが、こうしたボルトの内側から回す工具はボルトの軸の太さより大きなレンチで回せる六角ボルトなどと違って、どうしてもボルトの軸の太さに近いサイズになる事から工具に対する負担はおのずと大きくなります。

 その分、アーレンキーやドライバー、トルクスレンチはその負担に耐えられるように硬めの素材を使用している事が多いので、その分ねじに対する攻撃性も高くなってしまう傾向にあります。ですから、しっかりと面が当たるように深く差し込まないとボルトをなめてしまい悲惨な結果になってしまいかねません。

大きなサイズから順番に試す

T型トルクスねじのA寸法 ©KTCT型トルクスねじのA寸法 ©KTC

 そして、もう一つ、「トルクス®」ねじのサイズには丸くなった角の頂点から対角線上にある角の頂点までの寸法である「A寸法」が決められています。ところが、この「A寸法」、普通の六角ほどサイズによる差が少ないのです。自転車で比較的良く使われる「トルクス®」ねじのサイズはT20やT25と呼ばれるサイズなのですが、T20の「A寸法」は3.84mmに対しT25の「A寸法」は4.40mmと、0.56mmしか差がないのです。

 ですから1mm単位で作られている六角ボルトや六角穴付きボルトと違い、間違って小さいサイズのレンチを差し込んでも、なんとなく回せそうな感じがすることが良くあるんです。また、曲線をつなぎ合わせた「トルクス®」独特な形状もそう思わせる原因かもしれません。いずれにしても、この「トルクス®」ねじを回す時はより慎重さが求められます。

 私がおすすめするのはドライバーの回でも記しましたが、「大きなサイズから順番に試す」です。基本的には大きなサイズは入りませんから、より確実にサイズを確認することができます。これもドライバーの回でも記しましたが、「なめてしまった後悔よりも、ちょっとの手間で確かな作業」ですよ。

ドライバのサイズ選択は要注意 迷ったら「大きい方」から手に取ろう

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重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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