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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<177>シーズン後半のUCIワールドツアーまとめ イル・ロンバルディア展望も

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2016年のサイクルロードレースシーズンは大詰めを迎えようとしている。とはいえ、10月にはイル・ロンバルディア、UCI(国際自転車競技連合)ロードレース世界選手権、そしてわれわれの誇りでもあるジャパンカップと、ビッグレースが目白押しだ。そこで、まずはシーズン後半に行われたグランツールを除くUCIワールドツアーレースを簡単にまとめていきたい。あわせて、10月1日に開催されるイル・ロンバルディアの展望もお届けする。

「落ち葉のクラシック」イル・ロンバルディアの象徴であるギザッロ教会の前を通過する選手たち =イル・ロンバルディア2015、2015年10月4日 Photo: Yuzuru SUNADA「落ち葉のクラシック」イル・ロンバルディアの象徴であるギザッロ教会の前を通過する選手たち =イル・ロンバルディア2015、2015年10月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

UCIワールドツアー個人ランキングでサガンが首位

 今年はリオデジャネイロ五輪のロードレース種目が8月上旬に実施されたことと、UCIロード世界選手権が10月に開催されることもあり、シーズン後半のレーススケジュールが幾分変則的になっている。レースによっては、いつもと違う顔ぶれであったり、思わぬ伏兵が勝利を収めるといったケースも出ている。

■ツール・ド・ポローニュ(ポーランド、全7ステージ、7月12~18日)

 例年7月下旬から8月上旬にかけて行われているが、今年は7月中旬の開催に。ツール・ド・フランスの“裏側”で行われたが、ツール出場を逃した、または回避した有力選手たちが集結。スプリント・山岳・タイムトライアルと、バランスのよいステージ構成とあって、リオ五輪の調整として参戦した選手も多かった。

 総合争いは、雨の第5ステージで2位に4分近い差をつけて大勝したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)がそのままリーダージャージを守りきり優勝。クイーンステージと目された第6ステージが悪天候のため、キャンセルとなったことも味方した。また、若手スプリンターのフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)が2勝と奮起。

 日本勢では別府史之(トレック・セガフレード)が総合87位で完走した。

■クラシカ・サン・セバスティアン(スペイン、220.2km、7月30日)

 ツール明けやリオ五輪を間近に控えた選手が集まった、スペイン・バスク自治州を舞台とするワンデーレース。終盤に待ち受ける2カ所の山岳ポイントと、その後の下り、そしてフィニッシュまでの平坦区間をどう走るかが勝負の分かれ目となる。

 終盤の逃げ切りも多いこのレースにあって、今年も例に漏れず逃げが決まった。優勝はバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)。最後の平坦区間に入った直後のラスト8kmで単独アタックに成功し、そのまま独走でフィニッシュラインを駆け抜けた。

 このレースにも別府が出場し、モレマらのアシストをした後にバイクを降りている。

■サイクラシックス・ハンブルグ(ドイツ、217.7km、8月21日)

“スプリンターズ・クラシック”として名高いサイクラシックス・ハンブルグを制したカレブ・イーウェン =2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA“スプリンターズ・クラシック”として名高いサイクラシックス・ハンブルグを制したカレブ・イーウェン =2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この前日に開幕したブエルタ・ア・エスパーニャは山岳ステージがハードゆえ、多くのスプリンターが出場を回避。その分、スプリンターズクラシックとして名高いサイクラシックス・ハンブルグに多くの選手が集まった。

 幾度となくスプリンターによる名勝負が生まれたこの大会。今年も激しいスプリント勝負となり、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)がトップでフィニッシュラインを通過。しかし、走路妨害があったとの判定が下され降着に。カレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)が初優勝し、ブアニは先頭集団の最下位にあたる27位に終わった。

■ブルターニュクラシック・ウエストフランス(248.9km、8月28日)

 フランス・ブルターニュ地方で行われるワンデークラシック。アップダウンの多い周回コースで行われるレースとあり、スプリンター以外にパンチャーにもチャンスがめぐってくる。

 今回は4人が残り40kmでメイン集団から抜け出し、そのうちオリヴル・ナーセン(ベルギー、イアム サイクリング)とアルベルト・ベッティオール(イタリア、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム)が最後までメイン集団を寄せ付けず。最後は一騎打ちとなり、ナーセンがベッティオールを突き放し初優勝。大金星を挙げた。

 8月6日のリオ五輪男子ロードレースで金メダルを獲得したフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)も参戦。大きな注目を集めたが、最終周回にアタックしたものの失敗。最後はチームメートに勝負を託し、自身は46位でレースを終えている。

■グランプリ・シクリスト・ド・ケベック(カナダ、201.6km、9月9日)

グランプリ・シクリスト・ド・ケベックはペテル・サガン(中央)が優勝。2位のフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(左)は2日後のモンレアルで優勝。右は3位のアントニー・ルー © Grands Prix Cyclistes de Québec et de Montréalグランプリ・シクリスト・ド・ケベックはペテル・サガン(中央)が優勝。2位のフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(左)は2日後のモンレアルで優勝。右は3位のアントニー・ルー © Grands Prix Cyclistes de Québec et de Montréal

 UCIワールドツアーは、9月に入り北米大陸へと場所を移してレースを実施。近年、人気が高まっているカナダでのレースは、今年もビッグネームがそろった。

 周回の終盤に控える上りと、フィニッシュ前の長い上りが勝負どころとなるケベックのコースを制したのは、ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)。最後は19人に絞られたメイン集団でのスプリントをものにした。サガンにとってはマウンテンバイクで出場したリオ五輪後、ロード復帰2戦目での快勝。一時的なマウンテンバイク転向が、よい意味での刺激となったようだ。

■グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル(カナダ、205.7km、9月11日)

 2日前にケベックで行われたレースの出場選手がそっくりそのまま、モントリオールへと場所を移して戦いに挑んだ。ケベック同様にアップダウンが厳しく、例年人数が絞られた集団でのスプリントで勝者が決している。

 レースは、鮮やかなスプリントでケベックを制したサガンに有力選手のマークが集中。約30人に絞られたメイン集団は、最終局面を迎えると誰がサガンの後ろを確保するかでポジション争いが激化した。

 そして迎えたラスト。180度ターンをクリアするとフィニッシュへの上りスプリントとなるが、真っ先に飛び出したサガンに対し、冷静に追ったのがヴァンアーヴルマート。サガンをかわし、そのままトップでフィニッシュラインを通過した。ヴァンアーヴルマートはケベックでサガンに敗れ2位となっていただけに、見事にそのリベンジを果たした。

 サガンはカナダ2連勝とはならなかったものの、2位とまとめてみせた。結果的に、ケベックとモンレアルで1位と2位が入れ替わる格好となった。

■エネコ・ツアー(オランダ・ベルギー、全7ステージ、9月19~25日)

エネコ・ツアーは最終の第7ステージで逃げ切ったニキ・テルプストラ(右)が総合優勝。オリヴル・ナーセン(左)が総合2位で続いた =2016年9月25日 © Etixx - Quick-Step / Tim de Waeleエネコ・ツアーは最終の第7ステージで逃げ切ったニキ・テルプストラ(右)が総合優勝。オリヴル・ナーセン(左)が総合2位で続いた =2016年9月25日 © Etixx - Quick-Step / Tim de Waele

 新城幸也(ランプレ・メリダ)の出場で注目が集まった1週間のステージレース。第3ステージでは、あわや逃げ切りかという快走も見せた。

 伝統的に平坦中心で、スピードマンの競演となるが、同時にタイムトライアルの比重も高い。今大会は第2ステージで9.6kmの個人TT、第5ステージでは20.9kmのチームTTが設けられた。

 総合争いでは、2つのTTステージを制したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が首位で最終ステージを迎えた。しかし、肝心の最終日に落車し、その後も戦線に復帰できずリタイア。

 代わって総合優勝を争ったのは、最終ステージで逃げたニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)とナーセン。ステージ優勝こそエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)に譲ったが、2位でフィニッシュしたテルプストラがTTステージで得た貯金を生かし総合優勝。同じく3位で終えたナーセンは31秒差の総合2位となった。

エネコ・ツアーを総合3位とまとめたペテル・サガンはポイント賞を獲得。UCIワールドツアー個人ランキングでも首位に立っている =2016年9月25日 Photo: Bettini Photoエネコ・ツアーを総合3位とまとめたペテル・サガンはポイント賞を獲得。UCIワールドツアー個人ランキングでも首位に立っている =2016年9月25日 Photo: Bettini Photo

 第3、第4ステージを連勝したサガンは、一時総合首位に立ったが、TTステージの遅れもあってリーダージャージを明け渡した。また、コースの厳しさからいくつもの集団が形成された最終ステージでは、第1追走グループでテルプストラらを追ったが届かず。それでも総合3位、ポイント賞獲得と意地を見せた。

 これらの結果により、出場したレースではしっかりと上位入りしたサガンがUCIワールドツアー個人ランキングで首位に立っている。残りレースはイル・ロンバルディアのみ。このレースを終えた時点で、UCIワールドツアー個人・チーム・国別それぞれのランキングが確定する。

UCIワールドツアー個人ランキング(2016年9月25日付)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ) 669pts
2 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) 609pts
3 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 564pts

UCIワールドツアーチームランキング(2016年9月25日付)
1 モビスター チーム 1431pts
2 ティンコフ 1361pts
3 チーム スカイ 1187pts

イル・ロンバルディア展望

 毎年秋に行われ、シーズンの終わりが近いことを告げる意味で「落ち葉のクラシック」と呼ばれるイル・ロンバルディア。クラシックレースの中でも特に格式の高い「モニュメント」の1つとされ、クラシックハンターたちにとってはシーズンの疲れがある中で、このレースの勝利に賭けて残りの力を振り絞る。今年は10月1日に開催、241kmで争われる。

イル・ロンバルディア2016コースレイアウト © RCSイル・ロンバルディア2016コースレイアウト © RCS

 イタリアのレースらしく、登坂区間の勾配が厳しいのが特徴。それはもちろん、今年も変わらない。サイクリストの聖地「ギザッロ教会」があるマドンナ・デル・ギザッロは、レース序盤に通過。選手たちにとっては、余力のある段階で上りをこなせるだけに、教会からの鐘を聴きつつ先を目指していくことだろう。

 中盤のヴァルカーヴァは、登坂距離11.65km、平均勾配8%、最大勾配17%の難所。ここからメイン集団の絞り込みが本格化しそうだ。残り60kmを切ってからのサンタントニオ・アッバンドナト、ミラゴロ・サン・サルヴァトーレ、セルヴィーノはいずれも10%級の勾配。これを立て続けにこなす間は、有力選手のうち数人がアタックしているかもしれない。

コモ湖畔を走るプロトン。レースと並んで景観も見ものだ =イル・ロンバルディア2015、2015年10月4日 Photo: Yuzuru SUNADAコモ湖畔を走るプロトン。レースと並んで景観も見ものだ =イル・ロンバルディア2015、2015年10月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 しばらく下りと平坦区間をこなし、ラスト5kmからが最後の勝負どころ。約1.5kmの上りは最大で12%で、路面が石畳となっている箇所もある。ここを越えると、あとはベルガモのフィニッシュまで約3km下ることから、ここでアタックを決めて優位に持ち込みたい選手もいるはずだ。一方で、小集団で越えるとなると、最後はスプリント勝負となるだろう。

 現時点では出場選手が確定していないが、昨年優勝したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)は欠場の見込み。また、出場が見込まれる選手も、最終決定まで慎重な姿勢を見せており、全チーム出揃うのは大会直前となりそうだ。出場チームは18のUCIワールドチームに、プロコンチネンタルチームから7チームがワイルドカード(主催者推薦)で選出。NIPPO・ヴィーニファンティーニも出場権を獲得し、ビッグレースへの活躍をもくろむ。

今週の爆走ライダー-オリヴル・ナーセン(ベルギー、イアム サイクリング)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今シーズン限りでのチーム解体が決まっているイアム サイクリングだが、目下売り出し中なのがこのところ絶好調のナーセン。逃げを得意とし、逃げ切った小集団でのスプリントに絶対の自信を見せる。UCIレースに出場するようになった2013年以降、小さなレースながら3勝を挙げ、今年からのトップチーム入りにつなげた。

8月28日のブルターニュクラシック・ウエストフランスでUCIワールドツアー初優勝を挙げたオリヴル・ナーセン(中央)。ここから快進撃が始まった © Bretagne Classic - Ouest-France8月28日のブルターニュクラシック・ウエストフランスでUCIワールドツアー初優勝を挙げたオリヴル・ナーセン(中央)。ここから快進撃が始まった © Bretagne Classic - Ouest-France

 8月のブルターニュクラシックで逃げて大金星を得ると、9月のエネコ・ツアーでも逃げから総合のジャンプアップに成功し、2位と健闘。ここへきての大活躍が光るが、4月のパリ~ルーベで13位、ツール初出場で第4ステージ敢闘賞獲得など、いくつもの伏線があり、いつブレイクしても不思議ではない状況だった。

 それを受けて、UCIロード世界選手権のベルギー代表入りが決定。すでに9人の出走ロースター入りも確定した。トム・ボーネン(エティックス・クイックステップ)やヴァンアーヴルマートと並んで、ロードレース王国にマイヨアルカンシエルをもたらすべく大舞台に挑む。本番ではアシストを務める見込みだが、風が波乱を呼ぶカタールでのレースだけに、思わぬ形でチャンスがやってくるかもしれない。

 来シーズンからはアージェードゥーゼール ラモンディアルで走ることが決まっている。クラシックやグランツールでの活躍を誓う。何より、いまをときめく「ゴールデンエイジ」1990年生まれというのも魅力だ。出番が迫る世界選手権は、自身の可能性を高め、今後の活躍を約束させる大事な一戦となるだろう。

今年はツール・ド・フランスにも初出場。第4ステージでは逃げを試み敢闘賞を獲得した =2016年7月5日 Photo: Yuzuru SUNADA今年はツール・ド・フランスにも初出場。第4ステージでは逃げを試み敢闘賞を獲得した =2016年7月5日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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