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コースディレクターの山本徹也さんがレポート仲間と挑む大人の大冒険 「ラファ・プレステージ・那須」 関東初の開催を支えた地元の想い

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 5人1組のチームで急峻な山岳ルートや未舗装路をロードバイクで走り、全員で完走を目指す「Rapha Prestige Nasu(ラファ・プレステージ・那須)」が9月10日、栃木県那須町で開催されました。サイクルウェアブランド「ラファ」が主催するイベントで、今回は約170km、獲得標高3600mという難関コースに30チーム150人が挑みました。ラファ・ジャパンに自ら働きかけ、関東地方初開催となるプレステージのコースディレクターを務めた山本徹也さん(アライアンス・ファクトリー代表取締役)による“舞台裏”のレポートと、地元チームとして出走した「Nasu All Stars」の鈴木和也さんによる実走レポートです。

◇         ◇

 「ラファ・プレステージ」はレースでもなければ、エイドや立哨が充実したファンライドでもない。公式サイトの言葉を借りるなら「仲間との絆、そしてロードライディングの苦痛を引出すようデザインされ」たコースを自らGPSで辿り「魅惑の地を行く」、制限時間のある大冒険だ。今回、筆者はこの「ラファ・プレステージ・那須」のコースディレクターを務める機会に恵まれ、地元の有志で実行委員会を組織して準備に臨んだ。

林道グラベルを含む169km、3600mUPという厳しいコースで開催された「ラファ・プレステージ・那須」 ©Rapha Japan / Lee Basford林道グラベルを含む169km、3600mUPという厳しいコースで開催された「ラファ・プレステージ・那須」 ©Rapha Japan / Lee Basford

地元の魅力を知り尽くしたコースづくり

ラファ・プレステージは、仲間とともに魅惑の地を行く大冒険 ©Rapha Japan / Lee Basfordラファ・プレステージは、仲間とともに魅惑の地を行く大冒険 ©Rapha Japan / Lee Basford

 きっかけとなったのは2015年に那須で開催された全日本選手権ロードレース。同大会の企画運営委員の一人であった筆者は、モバイルサイクルクラブやエスプレッソの提供・販売、観戦ライドなどで同大会を盛り上げたラファ・ジャパンのコーディネート役を務めた。過去に例のない大観衆を集めた全日本選手権が終わる頃、ラファ・ジャパンの矢野大介代表にラファ・プレステージの那須での開催を持ちかけた。

八溝山頂へ向かう九十九折の激坂はパンチ力十分 ©Mami Matsuura八溝山頂へ向かう九十九折の激坂はパンチ力十分 ©Mami Matsuura

 この地に惚れ込んで東京から移住し、くまなく自転車で走り回っている筆者の頭の中には、すでに大まかなコースの概要が浮かんでいた。関東北部屈指の二つの険しい霊峰、那須岳と八溝山を一度に上る。その間をボリュームある峠越えグラベルで結んで。地元の熟練ライダーでさえ、かつて経験したことのない大きなチャレンジだ。

苔むした細く雰囲気のある八溝林道を進む参加者 ©Rapha Japan / Lee Basford苔むした細く雰囲気のある八溝林道を進む参加者 ©Rapha Japan / Lee Basford

 前回の開催地、徳島県上勝にはない広大な裾野を持ち、視界の開けた大きな山。そして前々回の北海道ニセコにはない、苔むした細く雰囲気のある九十九折の激坂。その両方が那須にはあり、それらをつなぐようにのどかな田園地帯が広がる。

 思えば酪農と稲作と林業が、それぞれ国内有数の規模を持ちながら密接しているのも、この地形ゆえの特性なのだろう。だからこそ、走り抜けるライダーに美しく多様な景色を見せてくれるのだ。

広大な裾野を望む那須岳へのヒルクライムは後半のクライマックス ©Rapha Japan / Lee Basford広大な裾野を望む那須岳へのヒルクライムは後半のクライマックス ©Rapha Japan / Lee Basford
稲穂が眩しい田園地帯を美しい隊列で走る参加者 ©Rapha Japan / Lee Basford稲穂が眩しい田園地帯を美しい隊列で走る参加者 ©Rapha Japan / Lee Basford

 未舗装路(グラベル)も地元営林署と交渉し、一般車通行禁止の国有林道を自転車で走行する許可を得ることができた。踏み固められた比較的スムーズなグラベルから、洗掘された溝とタイヤを取られる浮いた砂利で、進路を選ぶのにも苦労るするような難易度の高いグラベルまで、順々に難易度を上げながら3つの峠を越える20kmのグラベルルートを用意した。

第1グラベルは踏み固められた「極上のグラベル」 ©Rapha Japan / Lee Basford第1グラベルは踏み固められた「極上のグラベル」 ©Rapha Japan / Lee Basford

 しかし、直前に相次いだ台風の直撃により、第2、第3の峠越えグラベルが使用不可能となり、本番直前に相次いでコース変更を余儀なくされた。残念だが、安全第一。あらかじめ試走してあった予備のグラベルへの迂回ルートを設定し、最終的にグラベルは2カ所となり、距離は平地が15kmほど伸びて全体で169kmとなった。

グラベルでパンクした仲間をチーム全員でサポートする ©Rapha Japan / Lee Basfordグラベルでパンクした仲間をチーム全員でサポートする ©Rapha Japan / Lee Basford
台風によるコース変更で用意された予備の第2グラベルも冒険心をうずかせるに十分 ©Mami Matsuura台風によるコース変更で用意された予備の第2グラベルも冒険心をうずかせるに十分 ©Mami Matsuura

脚を止める場所では至福のひと時を

 コース中に2カ所設定するチェックポイントにもこだわった。1つめは、勾配が10%近い約7kmの激坂を登りきった八溝山頂の展望台。ここからは360度関東の山々を見渡すことができ、これから向かう那須岳も遠くに望むことができる。地元のサイクルカフェ「SUDA COFFEE」店主による淹れたてのコーヒーは格別の味だったに違いない。

山々を見渡す八溝山頂展望台に設けられた第1チェックポイントで、通過証明のスタンプとコーヒーを ©Tetsuya Yamamoto山々を見渡す八溝山頂展望台に設けられた第1チェックポイントで、通過証明のスタンプとコーヒーを ©Tetsuya Yamamoto
第1チェックポイントの八溝山頂展望台でくつろぐ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basford第1チェックポイントの八溝山頂展望台でくつろぐ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basford
夕刻の迫る那須岳へのヒルクライムで遅れた仲間を待つ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basford夕刻の迫る那須岳へのヒルクライムで遅れた仲間を待つ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basford

 グラベル区間を越えた先の第2チェックポイントは、町の中心部となる那須町役場の正面玄関前。130km、獲得標高2400mを走ってようやく人里へ戻ってきたという安堵感の先には、さらに約30kmで標高差1200mを登る那須岳へのロングヒルクライムが待ち受ける。ここからが今回のラファ・プレステージのクライマックスであり、チーム力が試される最終章となる。

日が暮れてもゴールを目指し、ようやくこの日の最高地点に辿り付く ©Rapha Japan / Lee Basford日が暮れてもゴールを目指し、ようやくこの日の最高地点に辿り付く ©Rapha Japan / Lee Basford

“サイクリストウェルカム”な態勢も完備

参加者たちの自転車はホテル併設の体育館にビニールシートを敷いて保管 ©Tetsuya Yamamoto参加者たちの自転車はホテル併設の体育館にビニールシートを敷いて保管 ©Tetsuya Yamamoto

 イベントの拠点であり、参加者の宿泊先にもなったのは、御用邸の森に隣接するリゾートホテルラフォーレ那須。サイクリストに優しい施設やサービスを整えて積極的に受け入れており、筆者の運営する「CyclistWelcome.jp」にも登録されている、サイクリストウェルカムなリゾートホテルだ。今回も、参加者150人分の自転車を体育館を使って安全かつスムーズに保管してくれた。

完走後、互いの健闘を讃え合うNasu All Starsメンバー © Mami Matsuura完走後、互いの健闘を讃え合うNasu All Starsメンバー © Mami Matsuura

 今回、筆者は運営サポートに徹し、代わりに前回のラファ・プレステージ・上勝で共に走った鈴木和也さんをリーダーに地元の精鋭を集め、地元ホストチーム「Nasu All Stars」(那須オールスターズ)を結成した。

 ここで同チームのリーダーとして参加した鈴木和也さんのレポートを紹介したい。

鈴木和也さん「冒険は見える世界を変える」

 夏の喧騒から解放された静寂の中、会場にはひときわライダーの熱気と色とりどりのサイクルウェアが放つ光がスタート前の高揚感を醸し出していた。

ラフォーレ那須でスタートを待つ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basfordラフォーレ那須でスタートを待つ参加者たち ©Rapha Japan / Lee Basford
スタート前、Nasu All Starsメンバーにも緊張が走る ©Mami MATSUURAスタート前、Nasu All Starsメンバーにも緊張が走る ©Mami MATSUURA

 我が那須町ホストチーム「Nasu All Stars」の精鋭5人も、完走ミッションを遂行すべく緊張感に包まれていた。

 コースは、朝日に映える那須高原の美しい景色の中を緩やかに下り、城下町の風情を残す那須町伊王野(いおうの)から茨城県大子町の山岳信仰の八溝山(やみぞさん)を上り、2つのグラベルを走破して福島県白河の関、そして那須連山主峰の茶臼岳の山頂登山口(峠の茶屋)を目指し上るという過酷な道のりだ。

序盤は朝日に映える那須高原の美しい景色の中を緩やかに下る ©Rapha Japan / Lee Basford序盤は朝日に映える那須高原の美しい景色の中を緩やかに下る ©Rapha Japan / Lee Basford
細かなアップダウンで削られた脚でパンチ力ある八溝山の激坂に挑む ©Rapha Japan / Lee Basford細かなアップダウンで削られた脚でパンチ力ある八溝山の激坂に挑む ©Rapha Japan / Lee Basford
クライマックスは那須岳の道路最高地点へ ©Rapha Japan / Lee Basfordクライマックスは那須岳の道路最高地点へ ©Rapha Japan / Lee Basford

 スタート直後の下り基調から八溝縦貫林道のアップダウンを経て、コース全景を眺める開放感のある高台で小休止。こんな穴場を開拓し、日本中から集まったツワモノ達と共有する機会を作り上げたコースディレクターの山本氏に敬服しつつ、充足感に浸る。

 この先からいよいよ正念場の八溝山。約7Kmのヒルクライムに突入する。試走時に足がつってペースダウンしたが、その二の舞は踏めない。第1チェックポイントは山頂、八溝峰神社の奥にある展望台。何とここから約50Km先の那須連山主峰茶臼岳が見えた。

突如林道の森が途切れると、スタートしてきた那須岳を望む絶景が広がった ©Rapha Japan / Lee Basford突如林道の森が途切れると、スタートしてきた那須岳を望む絶景が広がった ©Rapha Japan / Lee Basford

 ご多分に漏れず右足がつったが、なんとか踏ん張り、良いペースで山頂に着いた。しかし途中まで同じペースを刻んできたエースが未着。並走出来なかったことで自責の念にかられ、彼のもとへ戻ろうと思ったが、私自身、自転車で上り返す体力がないため歩いて下る。励ますことは出来る。その時、満身創痍で自転車を押して歩いて来る仲間の姿に目頭が少し熱くなってしまった。

八溝峰神社にイベントの成功と無事の完走を祈念する © Mami MATSUURA八溝峰神社にイベントの成功と無事の完走を祈念する © Mami MATSUURA
第2グラベルを快調に走るNasu All Stars © Mami MATSUURA第2グラベルを快調に走るNasu All Stars © Mami MATSUURA

 台風の影響によりグラベルはコース変更もあったが存分に楽しめた。メンバーも協調し、お互いに励まし合いながら進んだ。苦痛の先にある栄光をつかむために。

 最後の役場庁舎前のチェックポイントをクリアし、足切から逃れた安堵感がこみ上げる。ここで全員で撮った記念の1枚は一生忘れられない瞬間だ。

2つのスタンプとフィニッシュ時間が書き込まれたキューシートは完走の証 ©Rapha Japan / Lee Basford2つのスタンプとフィニッシュ時間が書き込まれたキューシートは完走の証 ©Rapha Japan / Lee Basford
第2チェックポイントを5人全員でクリア ©Tetsuya YAMAMOTO第2チェックポイントを5人全員でクリア ©Tetsuya YAMAMOTO

 那須岳を目指すヒルクライムコースは、まさにホームコース。しかし、この道がこれほどまでに辛く長いと感じたことは、これまでなかった。そして、なんとか無事に時間内に完走。嬉しさと安堵感、充実感と疲労感が一気に身体中を包み込んだ。

参加チームが持参した全国各地の地ビールがアフタパーティーを彩った ©Kazuya SUZUKI参加チームが持参した全国各地の地ビールがアフタパーティーを彩った ©Kazuya SUZUKI

 アフターパーティーには、那須が生んだ世界一のビール(ワールド・ビア・カップ2016金賞受賞)「那須高原ビール」を含む全国の地ビールが720本も集まった。

 冒険をともにした仲間、そしてロードバイクの魅力、文化を教えてくれたラファスタッフの皆様、そして冒険を通して人は大きく見える世界が変わることを教えてくれたラファ・プレステージに感謝! まだまだ冒険は続きそうだ。(了)

自転車の楽しみ方を広げるラファ・プレステージ

 今回のラファ・プレステージでは、関東初開催となったことや那須高原のリゾートイメージも手伝ってか、プレステージ初参戦というチームが3分の1を占め、また女性だけのチームや女性を含むチームの数も過去最多となった。

 これは、ラファ・プレステージが提案する仲間と共に挑む冒険スタイルの自転車の楽しみ方が、より多く、より幅位広い層のサイクリストを惹きつけるものとなっていることの現れともいえよう。

今回のラファ・プレステージ・那須では女性参加者の増加が目立った ©Rapha Japan / Lee Basford今回のラファ・プレステージ・那須では女性参加者の増加が目立った ©Rapha Japan / Lee Basford

 実際、今回のラファ・プレステージ開催に関わった地元の人たちの間でも、自転車の新たな楽しさに目覚めたという声を少なからず聞いた。今回の那須でのラファ・プレステージ開催をきっかけに、自転車を「大人の冒険道具」として多様なスタイルで楽しむ層がますます広がることを願ってやまない。

 ラファ・プレステージ・那須の当日の様子は、Instagramで「#rpnasu」または「#raphaprestige」というハッシュタグで検索していただければ、参加者が投稿した数多くの印象的な写真の数々から見ることができる。

 アフターパーティーの席上で、ラファ・ジャパンの矢野代表から、2017年のラファ・プレステージについての予告もあった。2017年は4月に熊本県の小国、9月に長野県の八ヶ岳で開催し、その間の6月には女性ライダーを対象とした「ラファ・ウィメンズ・プレステージ」を広島県尾道市で開催するという。

 次はどんなコースとなるのか、今回のコースディレクターとしての経験から、次回以降のラファ・プレステージに参加することが楽しみで仕方がない。多くの参加者からも聞かれるように、筆者も「プレステージ・ロス」を患っているのかもしれない。

山本 徹也(やまもと てつや)

(株)アライアンス・ファクトリー 代表取締役、Cyclist Welcome.jp代表。自転車関連製品の輸入代理業を営む傍ら、2014年末に移住した那須を拠点に日本全国のサイクルツーリズムを盛り上げ、地域への継続的な経済効果をもたらす仕組み作りを開始。その第一弾として自転車を楽しむ旅のための宿とルート紹介専門ウェブサイト「Cyclist Welcome.jp」を立ち上げ、全国で展開中。那須高原ロングライド実行委員

鈴木 和也(すずき かずや)

那須どうぶつ王国および神戸どうぶつ王国総支配人。那須高原ロングライド実行委員会副会長、自転車プロロードレースチーム那須ブラーゼン運営会社 NASPO 株式会社取締役兼広報マネージャー

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