じてつう物語<10>「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん

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 2000年に創刊し、ファッショナブルな自転車雑誌というジャンルを開拓した「BICYCLE NAVI(バイシクルナビ)」。その編集長を務めるのが、発行元の株式会社ボイス・パブリケーション代表でもある河西啓介さん(45)だ。クルマ雑誌「NAVI CARS」やオートバイ雑誌「MOTO NAVI」の編集長も兼任し、車輪の付いた乗り物大好きな河西さんだが、いちばん自由を感じるのは自転車だという。

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん雑誌「BICYCLE NAVI 編集長」の河西啓介さん(45)。

マニアックではない人のための自転車専門誌「BICYCLE NAVI」

 かつて二玄社から発行されていたクルマ雑誌「NAVI」。そのテイストを受け継いで2000年に登場した自転車雑誌「BICYCLE NAVI」のスタイリッシュな誌面は、それまでのどの自転車雑誌とも異なり、読者にも業界にも影響を与えた。河西さんは二代目の編集長で、途中、スピンアウトして自らボイス・パブリケーションを設立、自社媒体としてBICYCLE NAVIを発行している。創刊された頃はNAVIの編集者だったが、その創刊の様子はつぶさに見ていた。

 「その頃、自動車業界の中で自転車がブームになっていました。自転車の雑誌を作ったら、仕事でいろいろな自転車に乗ることができるんじゃないか……なんていう気持ちが編集者の間にあったのも事実です(笑) “マニアックではない人のための専門誌”というのが、創刊当初から現在まで続くBICYCLE NAVIの特徴です。」

 自動車業界の中での自転車ブームの到来や、社内で自転車雑誌が創刊されるといった流れの中で、クルマもオートバイも好きな河西さんが自転車に興味を持たないわけがなかった。

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん ボイス・パブリケーションの出版物。自転車雑誌のBICYCLE NAVIや女性向け自転車雑誌、オートバイ雑誌のほか、今年に入ってクルマ雑誌「NAVI CARS」を創刊した。

 「自分も自転車が欲しくなって、押上の寺田商会でBD-1を買ったのが最初です。“5万円くらいで買える折りたたみ自転車はありませんか?”といった、軽いノリだったのですが、そのときに(寺田商会の)店主の寺田光孝さんから“せっかく乗るなら”ということで勧められたのが、10万円を超えるBD-1でした。実際に試乗してみると、やっぱり、いいわけです。折りたたみ機構だって優れている。このとき10万円を超える、いい自転車を買ったのは間違いではありませんでした。いざとなればクルマや電車にも載せることができるし、高性能なノートパソコンのような自転車だと感じました」

 BD-1から自転車ライフをスタートさせた河西さん、その後オートバイ雑誌の「MOTO NAVI」を立ち上げ、さらに2003年からはBICYCLE NAVIの編集長も兼任するようになった。自転車通勤を始めたのも、この頃。会社の場所は時代とともに移っているが、往復10〜20km程度の自転車通勤を続けてきた。現在の自転車通勤は、木場から浅草橋まで片道5km、まっすぐ通えば時間にして20分ほど。オフィスの1階がガレージになっているので、その日の気分や都合に合わせて、自転車/クルマ/オートバイを選択できるといううらやましい環境だ。1週間のうち自転車通勤をするのは「週に2〜3回」だという。

移動の時間を楽しみに変えてしまおう

 河西さんが感じている、自転車通勤の良いところとはなんだろうか。

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん リノベーションした明るいオフィス。取材当日は「校了日明け」でスタッフは少なめ。

 「自転車を楽しみたいと思ったら、楽しむためだけに乗ることができればいちばんですが、楽しむための時間を取るのはなかなか難しい。しかし、通勤のときに自転車に乗れば、通勤自体を楽しむことができるようになります。それが自転車通勤の良いところだと思います。お財布に優しいとか、健康にいいとか、満員電車に乗らずに済むといったメリットも、後から付いてきます」

 そして今の時代、とくに東京においては「自転車通勤が以前よりもずっと現実的になってきている」と河西さんは言う。

 「バブルの頃は東京の地価が上がり、その結果として(人の住まいが)外へ外へと広がっていくことで、長時間の電車通勤をする人も増えていきました。しかしバブルがはじけてからは、都心にマンションが増えて、都市型生活への回帰が見られるようになりました。人々が都会に住むようになって、自転車通勤はより現実的になっています。よく“どれくらいの距離なら自転車通勤できますか?”という質問をされますが、私は片道15km以内が目安とお話しします。丸の内を中心にして半径15kmの円を描くと、西は環八、東は市川、北は川口まで収まります。そして、それくらいの距離であれば、電車と遜色のない時間で自転車通勤できる。それどころか、場合によっては電車より早いかもしれない」

 最寄駅やコンビニまでの足程度にしか自転車を使っていない人からすれば、15kmは遠いと感じるかもしれないが、そんなことはない。「心配だったら、休日にでも一度自転車で会社まで走ってみれば良いんです」と河西さん。

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん愛車の「ヘルムズ」はほぼノーマルだが、都会を走るにはぴったりの性能とルックス。

 「人生の中で、移動に費やしている時間って、とても多いんです。その移動を効率的にすることや、楽しくすることは、まさに“人生の充実”に直結します。満員電車に揺られている時間は、多くの人にとって苦痛ですよね。毎日2〜3時間といった長さ、その苦痛に耐えているというのは、とても大きいですよね。」

 自転車もクルマもオートバイも好きな河西さん。もちろん、電車に乗ったり歩いたりもする。

 「移動を効率よくしたり楽しくしたりするための方法のひとつが、移動手段の選択肢をたくさん持つことだと思うんです。選択肢が多いほど、効率的であり楽しく充実したものになります。自転車でもクルマでもオートバイでも、電車でも徒歩でもいい。距離や目的やシチュエーションによって手段を使い分けることができれば、もっと楽しく効率的になる。人間は移動する生き物ですし、デジタル技術の発達で場所にとらわれなくなれば、ますます移動型の生活が実現できるようになります。そんなとき、いろいろな移動のかたちを選べるということは、人生の“自由”につながるのではないでしょうか。そういったことを、仕事でも提案し続けていきたいですね。個人的には“移動評論家”を目指したいと思うくらい(笑)」

自転車の自由さは格別!

 そんなふうに話す河西さんだが「それでも自転車がいちばん自由だと」思うことがあるのだそうだ。

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さんヘルムズはブルホーンバー。河西さんのバーテープは好みの物に巻き替えた。

 「自転車に乗っていて思わず“自由だ!”と叫んだことがあります。クルマやオートバイよりもずっと自由に道を選択することができるし、自分の身体を使って移動することで自信にもなる。そして、道はつながっているんだという実感も持てます。クルマで高速道路を走っていても、つながっているという実感は少ない。自転車は、移動の自由度や充実感がクルマとはまったく違うのです。」

 どんな手段にしろ通勤途中に寄り道はしないという河西さんだが、自転車通勤する際のルートはいくつかあって、そこにはちょっとしたこだわりがある。

 「自転車通勤のおもしろいところは、通勤を旅にすることができること。電車だと毎日決められたルートですが、自転車であれば川沿いを行くとか、裏通りで行くとか、ルートを自由に選べることができます。毎日同じ会社に行くのに、100通りのルートを造ることだってできるかもしれない。そういった楽しみ方もできますよね。」

「移動を楽しくすることは“人生の充実”に直結します」 BICYCLE NAVI 編集長 河西啓介さん最近河西さんが気に入って使用している、TOPEAK(トピーク)のiPhone用マウント「ライドケース」。

 河西さん自身の通勤ルートにおけるこだわりポイントは何かと言えば、橋。

 「自転車通勤の途中で見る、好きな風景があります。木場から浅草橋まで来る途中に、必ず隅田川を渡るのですが、“どの橋で渡るか”というのが自分の中でのこだわり。いろいろな橋から見える風景というのが、好きなんです。橋の上で自転車を止めて、写真を撮ることもあります。そんなことができるのも、自転車通勤ならではの良さだと思っています。」

 月刊のBICYCLE NAVIのほかに、隔月刊の雑誌を2誌、年2回のムックを1誌を発行している同社。ときには4冊すべての制作進行が同じ月に重なることもあり、発行人である河西さんの激務も相当なもの。そんな河西さんがひといきつける瞬間が、通勤のときに隅田川にかかる橋から眺める景色なのかもしれない。


勤務先:株式会社ボイス・パブリケーション
ルート:東京都江東区木場〜台東区柳橋、往復10km
時間:20分(片道)
頻度:週2〜3日
マシン:ブリヂストンサイクル・ヘルムズ
じてつうの楽しみ:通勤途中で必ず隅田川を渡るので、どの橋を通っていこうか考えるのが楽しみ。橋の上から眺める景色が好き。

BICYCLE NAVI公式サイト「BN-NET」
http://www.bicycle-navi.net

TEXT&PHOTO BY Gen SUGAI

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