ボランティア参加の大宅陽子さんがレポート難病の子供らに勇気を ‟ビーズ”に支えられた「乗鞍センチュリー・チャリティーライド」

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 長野県の乗鞍岳を舞台とする「乗鞍センチュリー・チャリティーライド」が9月11日に開催された。小児がんなど重病の子どもとその家族を支援するNPO法人「シャイン・オン・キッズ!」が主催し、参加費の一部が寄付として活用されるのはもちろん、走ることで子どもたちを勇気づけられるイベントだ。同NPOの活動に賛同するサイクリストでヨガインストラクターの大宅陽子さんが当日の様子をレポートした。

◇         ◇

 今年で8回目を数えるこのライド。私は2年ぶり2回目の参加です。乗鞍岳を朝一番にのぼり、岐阜側に下りアップダウンを繰り返し戻ってくるという157km、総獲得標高4000mのチャレンジングなコースです。なぜこれほどにタフなライドをするのか。それにはある理由があります。

それぞれピンと来たビーズをセレクト。私が選んだのは白地に小花模様 Photo: Yoko Oyaそれぞれピンと来たビーズをセレクト。私が選んだのは白地に小花模様 Photo: Yoko Oya

勇気や希望を形にしたビーズ

治療を受ける子どもが1年間に受け取るビーズ Photo: Masahiro MINOWA治療を受ける子どもが1年間に受け取るビーズ Photo: Masahiro MINOWA

 シャイン・オン・キッズ!の活動の1つに「ビーズ・オブ・カレッジ」(Beads of Courage=勇気のビーズ)というものがあります。治療を受けている子ども達が色々な種類の治療を乗り越えるたびにそれぞれの治療を象徴するビーズを受け取り、ビーズを集め、自分の乗り越えてきた治療を振り返ることで勇気や希望を実感できる効果があるそうです。

 子どもたちが、いつにもまして勇気を出して頑張らなくてはいけないときに受け取るのが「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」のビーズです。治療中に1度か2度しか受け取ることのない特別なものです。

「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」のプログラムに参加し、胸に2つのビーズをつけてレースに出場する別府史之選手 =2015年5月31日、ジロ・デ・イタリア第21ステージ(田中苑子撮影)「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」のプログラムに参加し、胸に2つのビーズをつけてレースに出場する別府史之選手 =2015年5月31日、ジロ・デ・イタリア第21ステージ(田中苑子撮影)

 今回のチャリティーライドでは、参加者全員がこの「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」に参加します。ブエルタ・ア・エスパーニャでの敢闘賞獲得が記憶に新しい別府史之選手(トレック・セガフレード)がサイクリング・アンバサダーを務めており、レース中の彼の胸にはいつも「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」のビーズが光っています。

サイクリストヨガとブラジル料理で明日への準備

 前日の夕方には、明日のチャレンジライドに挑む皆さんへ、サイクリストヨガを無償開催しました。オリエンテーションの後はウェルカムパーティー。リオ五輪にちなんでブラジル料理が振る舞われました。美味しい食事で明日へのパワーを蓄えます。

サイクリストヨガ。首周りのストレッチから Photo: Masafumi YAMANEサイクリストヨガ。首周りのストレッチから Photo: Masafumi YAMANE
ウェルカムパーティーでふるまわれたブラジル料理 Photo: Yoko OYAウェルカムパーティーでふるまわれたブラジル料理 Photo: Yoko OYA

 歓談の後にシャイン・オン!キッズの活動とチーム・ビーズ・オブ・カレッジの趣旨について、シャイン・オン!ボランティアとしてプレゼンテーションをさせていただきました。今回は机の上にビーズを並べ、ピンと来たビーズを選んで翌日のライドで身に着けて走っていただきました。

ビーズをつけたサイクリスト50人が出発

 当日の天気は曇り。朝6時に乗鞍観光センター近くのノーススターから50人のライダーがスタートしました。

スタート前の集合写真。ビーズを腕に笑顔で走ります! Photo: Michael RICEスタート前の集合写真。ビーズを腕に笑顔で走ります! Photo: Michael RICE

 皆晴れやかな表情で乗鞍岳(エコーライン)を上り始めます。段々雲が流れていき、山頂と、見下ろすと山々が眺められるように。

朝6時。勢いよく乗鞍をのぼります Photo: Yoko OYA朝6時。勢いよく乗鞍をのぼります Photo: Yoko OYA
空が晴れ、麓が眺められるように Photo: Yoko OYA空が晴れ、麓が眺められるように Photo: Yoko OYA

 乗鞍を超えて、岐阜県へ。乗鞍スカイラインを眺めながら下る。海外のコースのようなつづら折り。空気も一気にしんと張りつめて、違う世界に来たよう。頬に当たるひんやりとした風が心地よく、心が洗われるようです。飛騨農園街道を緩やかに下り、美女高原のアップダウンが続きます。

朝の乗鞍ライドは格別です Photo: Tetsuro TONSHO朝の乗鞍ライドは格別です Photo: Tetsuro TONSHO
スカイライン側も絶景 Photo: Yoko OYAスカイライン側も絶景 Photo: Yoko OYA
乗鞍をくだったあとのエイドステーションにて。ポタージュが身に沁みます Photo: Yoko OYA乗鞍をくだったあとのエイドステーションにて。ポタージュが身に沁みます Photo: Yoko OYA
ひだ朝日村エイド。チェックインしておにぎりと味噌汁で補給 Photo: Yoko OYAひだ朝日村エイド。チェックインしておにぎりと味噌汁で補給 Photo: Yoko OYA
朝日村名物のよもぎを使ったよもぎ五平餅の甘さで疲れを癒します Photo: Yoko OYA朝日村名物のよもぎを使ったよもぎ五平餅の甘さで疲れを癒します Photo: Yoko OYA

峠、峠、また峠…

大分のぼったと思ったら、あと19km…野麦峠は長い Photo: Yoko OYA大分のぼったと思ったら、あと19km…野麦峠は長い Photo: Yoko OYA

 木曽街道を越え、高根ダムを経由し、野麦峠へ。段々登りがきつくなっていきます。よし、あと少し!と思った矢先、出くわした看板に唖然。野麦峠は19kmも先…。ひたすらペダルを回します。

延々と続く山道に自動販売機はなく、日も射し始め、とうとうボトルは空になってしまいました…。

 これはまずい。と焦りながらぐっと勾配の上がったカーブを曲がったところに奇跡が!ニールプライドのマイケル・ライスさんが臨時エイドを開いてくださっていたのです。

天使に見えたマイキ― Photo: Yoko OYA天使に見えたマイキ― Photo: Yoko OYA
恵みのオレンジジュースで回復 Photo: Masahiro MINOWA恵みのオレンジジュースで回復 Photo: Masahiro MINOWA
『チャリダー★』坂バカ女子部・大宅と『Cycle Around Japan』のマイケル・ライスさんとのNHK自転車番組コラボショット Photo: Yoko Oya『チャリダー★』坂バカ女子部・大宅と『Cycle Around Japan』のマイケル・ライスさんとのNHK自転車番組コラボショット Photo: Yoko Oya

 なんでも、私同様にボトルを切らし、喉がからからになったライダーが沢の水を飲もうとしていたのを見て「これはまずい!」とエイドを開いてくださったとの事。本当にうれしい!ありがとうマイキ―!!オレンジジュースが体に染み渡りました。

 ボトルにも水をたっぷりもらい、いざ野麦峠へ。

長い野麦峠の後には、ノーススターオーナー、山口謙さんが待っていてくださいました。充電完了!あと一息! Photo: Yoko OYA長い野麦峠の後には、ノーススターオーナー、山口謙さんが待っていてくださいました。充電完了!あと一息! Photo: Yoko OYA

 延々と続く野麦峠。「ああ、野麦峠」!あと14km…そんなに続くのか。脚が売り切れ、スピードが上がりません。でも、なんだろう。心の中に燃えるものが。

 「楽しい…!」

 ‟坂バカ魂”に火がつき、仲間とともに野麦峠を無事クリアしました。

子どもたちへの思いが自分のパワーに

 野麦峠を越えて長野県へ。上高地乗鞍スーパー林道から白樺峠へ向かいます。

 「あれ?スピードが出ない…?」

スーパー林道から白樺峠へ Photo: Yoko OYAスーパー林道から白樺峠へ Photo: Yoko OYA

 延々と続く勾配10%超の坂が、3000m以上登ってきた脚にとどめを刺します。これでもか!と続く坂に皆絶句。しかし、不思議なもので、仲間と走っているとペースが落ちません。これだけ走ってきたのに、皆息を切らしながら山道をのぼっているのです。

 脚が段々回らなくなっていきます。ちぎれてゆっくり走ろうか…そんな弱い心が頭をもたげてきた時、首にかけたビーズがカチカチと音をたてました。

白樺峠クリア!まだ明るかった! Photo: Yoko OYA白樺峠クリア!まだ明るかった! Photo: Yoko OYA

 そうだった、このビーズに恥じない走りをしよう。このライドには順位は関係ありませんが、心も前を向いて坂を上ろうと思いを新たにしました。

 最後の上りを制し、白樺湖へ到着しました。でも、ここが本当に最後の上りなのか。ひたすらアップダウンを繰り返した私たちは余力のない脚で緊張しながら進みます。

 湖の先には『ここから長い下り』の看板が!「よっしゃー!!!!!」皆で歓喜のガッツポーズ!長い長い上りに別れを告げ、清々しい白樺の林を駆け抜けて、ゴール。タイムは16時4分。約10時間の濃いチャレンジライドでした。

一緒に走ってくださったお2人と Photo: Masahiro MINOWA一緒に走ってくださったお2人と Photo: Masahiro MINOWA

 参加者全員大きなケガもなく笑顔で閉会式を終えました。それぞれのライドを終えた後には爽やかで温かい笑顔が溢れていました。きっと素敵なコメントを添え、ビーズを送ってくださることでしょう。ビーズに力を込めるライドだけれど、私たち自身がビーズに力をもらっている。私は参加する度にそう感じています。

力を込めたビーズとメッセージカードはシャイン・オン!キッズに送ります Photo: Yoko OYA力を込めたビーズとメッセージカードはシャイン・オン!キッズに送ります Photo: Yoko OYA

 「乗鞍センチュリー・チャリティーライド」は、タフなライドであるため、参加できるのは完走できるだけの走力があり、パンクなどのトラブルをセルフリカバリーできる方に限られます。壮大な景色との出会いと、チャレンジングなコースを走り終えた達成感は格別です。体と心の準備が整った方は是非チャレンジを!

 「チーム・ビーズ・オブ・カレッジ」は、スポーツの大会や資格試験、発表会等目標に向かう時にご参加いただけます(私は今までヒルクライムレースの度に参加してきました。NHKBS『チャリダー★』の「坂バカ女子部」で挑むレースでも毎回参加しています)。興味をもたれた方はぜひご参加ください。

大宅陽子大宅陽子(おおや・ようこ)

自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00~18:25)に坂バカ女子部メンバーとして出演。坂を上ることをこよなく愛する。2013年まえばし赤城山ヒルクライム大会年代別1位。また、ヨガインストラクターとして、サイクリストへのヨガレッスン「サイクリストヨガ」を提供している。Facebookページ

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