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“自転車革命都市”ロンドン便り<45>自転車合宿ツアーで憧れのモン・ヴァントゥーに登頂 海外サイクリングの強い味方

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 この連載コラムの去年春の記事で、ヨーロッパでは自転車合宿ビジネスが花盛りということをレポートしましたが、現在百花繚乱いろんなタイプのものが登場している自転車ツアーの中でもとくにオシャレ&ゴージャスとして知られる「Rapha Travel」(ラファ・トラベル)のものに、この8月、日本からの女性サイクリストの友人たちと一緒に参加してきました。

ちゃんと攻めて登らなければ……という気持ちもよぎったけれど、あまりの景色の美しさに何度も止まって撮影してしまった。そして止まって撮影してよかったと思う Photo: Tomoda & Takahashi ちゃんと攻めて登らなければ……という気持ちもよぎったけれど、あまりの景色の美しさに何度も止まって撮影してしまった。そして止まって撮影してよかったと思う Photo: Tomoda & Takahashi

4日間のクライム集中コース

Rapha Travelのスタートは、マルセイユ空港隣接のホテルから。上げ膳据え膳、わたしたちはペダルを回すだけの殿様もとい姫様ツアーのスタート! Photo: Yoko AOKIRapha Travelのスタートは、マルセイユ空港隣接のホテルから。上げ膳据え膳、わたしたちはペダルを回すだけの殿様もとい姫様ツアーのスタート! Photo: Yoko AOKI

 これはその名の通り、日本でも人気のロードサイクリングアパレルのRaphaが運営する自転車ツアーで、フランス、イタリア、スペインのグランツールで有名な峠をたどるコースや、カリフォルニア、コロラドの絶景ルートなどを主な舞台に年間30本ほどが企画運営されています。じつは日本でも開催されていて、アメリカやヨーロッパのサイクリストが多数参加しているそうです。

モン・ヴァントゥーの姿が見えてきて車内に興奮と緊張が走る。比較的なだらかな一帯にいきなりそびえたつ山はすごく高く見える。頂きが真っ白なのは雪ではなく露出している石灰岩のせい。有名な電波塔もかなり遠くから見えた Photo: Yoko AOKIモン・ヴァントゥーの姿が見えてきて車内に興奮と緊張が走る。比較的なだらかな一帯にいきなりそびえたつ山はすごく高く見える。頂きが真っ白なのは雪ではなく露出している石灰岩のせい。有名な電波塔もかなり遠くから見えた Photo: Yoko AOKI

 わたしたちが参加したのは、南仏にあるサイクリスト憧れの山、Mont Ventoux(モン・ヴァントゥー)に上る4日間のクライム集中コース。今回は女性オンリーの企画で、イギリスから6人、日本から4人、合計10人が集まりました。Rapha Travelへの日本人の参加はわたしたちが初めてとのこと。合宿前夜、マルセイユ空港のホテルで集合した日本女子4人、「フフフ、男子に勝ったね」とほくそ笑みあったのはここだけの秘密です。

プロ選手さながらの手厚いサポート

部屋にはツアーの日程表や参加者とスタッフのリスト、ライド中に荷物を預けるための名前入りバッグや、洗濯物を入れて預けるメッシュ袋、記念のキャップなどが。もちろんRaphaならではのクオリティでうれしい Photo: Yoko AOKI部屋にはツアーの日程表や参加者とスタッフのリスト、ライド中に荷物を預けるための名前入りバッグや、洗濯物を入れて預けるメッシュ袋、記念のキャップなどが。もちろんRaphaならではのクオリティでうれしい Photo: Yoko AOKI

 ツアー初日、Raphaのお迎えが来るホテルのフロントまでエッチラオッチラと大きな自転車ケースを降ろして以降は、自転車のことはもうツアー終了までメカニックのクリスにおまかせ。組み立てから毎日のライド前のメンテと調整、パッキングまですべてやってもらえます。

 毎朝朝食を終えて自転車のところに行くと、ピカピカのバイクに水とドリンクで満たされた2種類のRaphaブランドのボトル「ビドン」が刺さっていて、傍らのテーブルに用意されたスタッフ手作りのライスケーキや補給食を背中に突っ込んでバイクにまたがって走り出せばいいという殿様、もとい“姫様ライド”の日々のスタートでした。プロ選手ってこんな感じなのかな〜?

 スキル・シマノなどにいた元プロ選手のアリソン・テストロエ(小麦色に日焼けした脚が美しい!)に先導されてプロヴァンスの田舎道を脚慣らしに走り出す。

ホテルはSault(ソー)というラベンダー観光で人気の中世からの町のリゾートホテル Photo: Yoko AOKIホテルはSault(ソー)というラベンダー観光で人気の中世からの町のリゾートホテル Photo: Yoko AOKI

 ステイをしているソーという町も含め、中世から続く石造りの集落が見通しのきく丘など小高いところに見られる、いかにも南仏な風景。そして手前の緑の山の向こうには見慣れた電波塔が乗っかった白いモン・ヴァントゥーの頂きが! このあたりではモン・ヴァントゥーがひとつだけ飛び抜けて高い山なので、どこを走っていても振り向くと大抵は白いピークがこちらを見ているという感じでした。

自転車の組み立てが不安〜と言っていたTさん、メカニックのクリス(オーストラリア人)に完全にお願いできると聞いてニンマリ。クリスはしっかり技術のある人で安心しておまかせ Photo: Yoko AOKI自転車の組み立てが不安〜と言っていたTさん、メカニックのクリス(オーストラリア人)に完全にお願いできると聞いてニンマリ。クリスはしっかり技術のある人で安心しておまかせ Photo: Yoko AOKI

 ツアーが始まるまで、あの白い禿山に登るぞ、ランスとパンターニの死闘の山だわ、そんなに風が強いのかしら(今年のツールでは暴風で頂上フィニッシュが短縮された)…などモン・ヴァントゥーのことばかり考えて楽しみにしていたのですが、この地域はラベンダーの世界的な生産地で、人気の観光地なのだそうです。すでに花は刈り取られてシーズンは終わっていたのに、しょっちゅう風にラベンダーの香りが紛れ込んでいるのです! ライドで苦しくなってきたときにふっと鼻や気管支をなだめてくれるラベンダーの香りの癒やし度といったら!

ここは「自転車天国」?

モン・ヴァントゥー以外にも、大きな渓谷があったりラベンダー畑の向こうに中世の城壁町があったりと美しいエリアだった。交通量も少なく、ただ走り回るだけでも楽しい。写真左が元プロ選手のアリソン(カナダ人) Photo: Yoko AOKIモン・ヴァントゥー以外にも、大きな渓谷があったりラベンダー畑の向こうに中世の城壁町があったりと美しいエリアだった。交通量も少なく、ただ走り回るだけでも楽しい。写真左が元プロ選手のアリソン(カナダ人) Photo: Yoko AOKI

 2日目にはいよいよヴァントゥーにアタック。石灰岩の壁がダイナミックな景色のネスク峡谷でウォームアップをして、麓の町ベドアンからのいちばん有名なルートで上り始めます。ここまでは元気だったのに、突然あらわれた平均10%強の上りに、みるみる弱っていく参加者たち(笑)。

 もっともキツい区間では、スタッフが1kmおきくらいでクルマを止めて、冷たいオランジーナやコカコーラを薦めてくれていました。本当に弱ってしまった人は、少し上の標高までクルマでワープしてそこから自力で山頂を目指したそうです。ずるいと言わないであげてください。自力だったら全部は上れない人でも有名な峠を味わえるのがこういったアテンド付きツアーの良さと言えます。

 ほぼ一年中風が吹いているから「風の山」という名前がついたというモン・ヴァントゥー。今年のツールのゴール地点になったシャレー・レナールより上の禿山部分は10%という斜度以上に風がツラいぞ、とサイクリングの友人経験者たちに散々おどされてきたのですが、わたしたちの山頂アタック日はなんと無風に近い好天! 深い青の空に白い頂という景色が美しすぎて、思わず何度も止まって写真を撮ってしまいました……。

地中海まで見渡せたモン・ヴァントゥーの山頂で記念撮影! 上りきれないかもと内心不安に思っていたという人はかなり感動していた様子でした Photo: Yoko AOKI地中海まで見渡せたモン・ヴァントゥーの山頂で記念撮影! 上りきれないかもと内心不安に思っていたという人はかなり感動していた様子でした Photo: Yoko AOKI

 そして、拍手してくれる観光客に迎えられつつ、ゴール。駐車スペースにうっすらと残っているゴールラインを越えるときには、数々の選手たちの思いを想像してみたりもしました。ステッカーだらけの有名な「Mt. Ventoux 1911m」という標識の前でツアー参加のみんなで記念撮影。

宿にもどったらシャワーを浴びて、順番にソワニエのヴィッキー(イギリス人)にマッサージをしてもらう。これだけで脚が愕然と軽くなる上、脚のどこを使えていないかなどの指摘ももらえて参考になる Photo: Yoko AOKI宿にもどったらシャワーを浴びて、順番にソワニエのヴィッキー(イギリス人)にマッサージをしてもらう。これだけで脚が愕然と軽くなる上、脚のどこを使えていないかなどの指摘ももらえて参考になる Photo: Yoko AOKI

 ひたすら気持ちいいだけの下りを終え、ラベンダー畑の間をすぎて宿に戻り、洗濯物をお願いし(なんとウェアの洗濯までしてくれるのです)、ソワニエにマッサージをしてもらい、プールサイドなどでインスタに撮ったばかりの写真をアップしたりそれを見ておしゃべりしたり、思い思いにリラックスして食事の時間を待つだけ。ああ、自転車天国とはここでしょうか…。

ライドに集中できるツアーならではの魅力

ライド中、お昼時になるとヴィッキーが先回りをしてこんなかわいらしいピクニックを用意しておいてくれた。パスタサラダやバゲットに地元のチーズがおいしい Photo: Yoko AOKIライド中、お昼時になるとヴィッキーが先回りをしてこんなかわいらしいピクニックを用意しておいてくれた。パスタサラダやバゲットに地元のチーズがおいしい Photo: Yoko AOKI

 翌日はまた別の、いくつもの小さな峠を越える新しいルートへ。峠ごとに山頂でクルマをとめたスタッフが待っていてくれて、カフェストップ代わりにまったりしておしゃべりをしたり、お昼にはサンドイッチでピクニックをしたり。参加者同士もこの頃までには仲良くなってきて、わいわいと楽しい雰囲気に。最後の夜のディナーでも、このツアーのメンバーで来年もどこか一緒に行かない? できるか企画してみよう! などという話にもなっていました。日本に行く予定があるから会いましょうという現実的な話も。

 今回のRapha Travelのツアーを経験しての自分的な発見は、プロがお世話をしてくれるツアーは想像以上にすばらしかった、というものでした。これまで自力で手配をして地図を読んでルートを決めてレンタカーも運転してという自転車合宿しか経験したことがなかったけれど─それもそれで安上がりだし面白いので今後も続けるだろうけれど─ペダルを回すこと以外何もしなくてよくて、ライドにひたすら集中できるありがたさは得難い魅力だと思いました。

最後のディナーで「次も企画しようね!」と誓いつつの集合写真 Photo: Yoko AOKI最後のディナーで「次も企画しようね!」と誓いつつの集合写真 Photo: Yoko AOKI
モン・ヴァントゥーや周辺の地形やライドの予定を説明する、ツアーリーダーのジェームズ(イギリス人)。今回のスタッフは4人で、ガイドをしたりクルマを運転したり補給食を準備したり、きもちよく働いてくれていた Photo: Yoko AOKIモン・ヴァントゥーや周辺の地形やライドの予定を説明する、ツアーリーダーのジェームズ(イギリス人)。今回のスタッフは4人で、ガイドをしたりクルマを運転したり補給食を準備したり、きもちよく働いてくれていた Photo: Yoko AOKI

 あとは、メンバーに脚力差や走り込みたい強度や量の違いがあっても、全員がずっとハッピーでいられるのも大きなメリットでしょう。遅い人についていてくれるガイドがいたり、いざとなればクルマでのワープも使って再集合できるから、誰かしらに走り足りない、あるいはキツすぎるという不満がたまったりという心配がないのは、じつは楽しいはずの休暇でこそ大切なことなのでは。

 高いといわれるツアーのお値段も、ホテルのレベル、知的で気持ちのいいスタッフ、食事やワインが込みであること、洗濯にマッサージに送迎に…と思い起こすと決して高くなかったと思います。とくに日本から足をのばして来る場合、何もかも高いレベルで面倒を見てくれるツアーは心強い味方でしょう。

 Rapha Travelは2017年のスケジュールは近いうちにサイトで発表するとのこと。また、いつどこを走りたいというビスポークでのツアーも作ってくれるそうです。韓国から毎年このビスポーク合宿で走りに来るお得意さんたちもいるとか。ほかにもCycling、Holidays、Tour、France、Alps…などのキーワードで検索すると、Rapha Travelのような強度高め系のロードバイクツアーからツーリング車でのまったり旅、MTBなどたくさんヒットしてきます。

日本チームはせっかくヨーロッパまで来たので、Rapha合宿終了後にニースに移動して観光とライドを楽しみました Photo: Yoko AOKI日本チームはせっかくヨーロッパまで来たので、Rapha合宿終了後にニースに移動して観光とライドを楽しみました Photo: Yoko AOKI

 わたしの知る範囲でのおすすめエリアは、アルプスとプロヴァンス(フランス)、マヨルカ島(スペイン)、ドロミテ(イタリア)、トスカーナ(イタリア)、ジローナ(スペイン)などです。

 意外と敷居の低い世界なので、来年の夏休みにいかがでしょう?

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「yokoaoki.com」を更新中。

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